臆病猫

2010年07月16日 00:00

湘南海岸‥‥そこは既に夏本番を迎えていた。http://admin.blog.fc2.com/control.php?mode=editor&process=load&eno=288#
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私が『東のエサ場』と呼ぶ場所。
ここには10匹ほどの野良が暮らしている。

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そのうちの一匹を紹介しよう。
もうじき顔を出すはずだから‥‥。



こいつは、いつも物陰に隠れている臆病で内気なヤツだ。
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周りをしきりと見回し、自分に危害を加える者がいないか確認している。


しばらくしてやっと姿を現した。
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しかしよく見ると、耳を後に向け警戒モード継続中だ。


この野良、肥っているせいか、それとも元来そうなのか‥‥、
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ひどく足が短く見える。


この野良には、もうひとつ他の猫にはない特徴がある。
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それが、この毛繕いのポーズだ。
以前も見たことがあるが、何かに縋って毛繕いをする。



そして見知らぬ人間を目にすると、毛繕いを中断する。
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その人間が見えなくなると‥‥、


すぐに同じポーズで、毛繕いを再開する。
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このように‥‥こいつは臆病で内気な野良である。


この野良がどうしてこれほど臆病になったのか、それには理由があった‥‥。
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その理由を知ったとき、思わず息を呑んでしまったことを今でもはっきり覚えている。


しばらくすると、臆病猫は再び元いた物陰に隠れてしまった。
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そこへ新たな野良が現れた。


私を見つめるその野良の眼は険しいものだった。
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果たしてこいつの性格は、臆病なのか、それとも豪胆なのか。





本日のミリオン
いつもの場所にミリオンの姿は‥‥なかった。

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ミリオンがエサ場から出歩くことは、ほとんどないはずだが‥‥


奥のねぐらも覗いてみたが‥‥
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ミリオンの姿はどこにもなかった。



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臆病猫 その弐

2010年07月17日 00:00

東のエサ場
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私が再度レンズを向けると、その野良は材木の陰に引き返してしまった。
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そして、そこからこちらの様子を窺いはじめた。


そこで私は左へ廻りこみ、その野良と相対した。
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ある程度の距離を保てば撮影はOKのようだ。


その時、ひとりの女性がエサ場に現れた。
すると、臆病猫がすぐにあとを追った。
そして私が以前『ロク』と名づけた野良もどこからか現れ、その女性の許へ急いだ。

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どうやらこの女性は、このエサ場を担当するボランティアのようだ。


ロクと臆病猫がエサに食らいついた。
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エサ場の奥から貫禄ある野良が悠然と歩いてきた。
この野良とは、これが初見だ。



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どこのエサ場でもそうだが、ボランティアの人が来るとカラスが集まってくる。
カラスはちゃんと憶えているのだ‥‥エサを持ってくる人の顔を‥‥

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そのことを熟知しているその女性は、カラスにもエサを与えた。
ところが何を思ったのか、先ほどの貫禄猫がそのエサにつられてカラスに近づいていく。



その女性が声をかけると、貫禄猫はちらりと振り返った。
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しかし貫禄猫は、その制止を聞かず、カラスと奪い合うようにエサを食べはじめた。
この野良、貫禄あるのは体だけではないようだ‥‥



この女性の名は、他のボランティアの人から何度も聞かされていた。
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Kさんは、野良の世話をはじめて8年ほどになると言う。
このエサ場は野良の数が多いから、その世話も大変だと思われた。



私達はしばらくその場で話しこんだ。
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そのうちKさんの話が、この臆病猫に及んだ。
この野良は、過去にとんでもない経験をしていた‥‥



臆病猫はミケと全く同じ危難に遭っていたのだ。
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ミケの場合は首だったが、臆病猫は頭だった‥‥
そのボウガンの矢は、この小さな頭を射抜いていたと言う。
さらにKさんは言った「私が矢を抜こうとしても抜けなかったの」と。
結局病院で矢を抜いてもらったそうだ。



そんな経験をしたら臆病になって当たり前だ。
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この野良は最後まで私を警戒して、近づいてこなかった。
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「それでいい」


「お前もそうだ‥‥」
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これからも臆病でいた方がいい。「見知らぬ人が近づいて来たら、逃げろよ‥‥いいな、臆病猫‥‥」





今日、私はある人に会うため、久し振りに早朝の海岸へ足を運んだ。
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約束を交わした訳ではないが、運よくその人と会うことができた。


さらに、昨日姿を見せなかったミリオンにも会えた。
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「ミリオン、昨日はどこへ行ってたんだ、心配したぞ」


そう言った私を、ミリオンはクールな眼で見返した。
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そして私の目の前で毛繕いする余裕をみせた。





今日の午後、ミケに逢うため、ひとりの若い女性が東京からやって来た。
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この続きは、明日にでも紹介するつもりだ。



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臆病猫 その参

2010年07月18日 00:00

今日は三連休のど真ん中‥‥茅ケ崎海岸はすっかり夏模様だ。
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昨日、私が知らぬ間に梅雨明け宣言がなされたようだ。


私はいつもどおり、まずミケに逢いにいった。
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そして「ミケ、今日もお前の仲間の顔を見てくるよ」とミケに報告した。


それから私は海風に背中を押されるようにして、東へ向かった。
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東のエサ場
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いきなり一匹の野良の姿が、私の目に飛び込んできた。


それは顔の大きい、オヤジのような野良だった‥‥
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この野良は、近くにあるソックスのエサ場で一度見かけた記憶がある‥‥


私はしばらく気づかなかったが、この写真の中にもう一匹野良の姿が写っている。
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目を凝らしてよく見てほしい‥‥物陰に浮かぶふたつのちいさな光を‥‥


物陰に黒猫‥‥ヘタな擬態より発見され難いだろう。
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ここには数匹の黒猫がいる‥‥この黒猫と初見なのかどうか‥‥私には分からない。
人の顔もまともに憶えられないオヤジにとっては、至極当然のことだと諦めた。



挨拶代わりに、カリカリを与えてみた。
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この黒猫、食べている間も周りを警戒し続けている。
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「それでいい‥‥警戒心の強い方が長生きできるからな」


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ところがそこには‥‥もう一匹、野良がいた。
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それは、臆病猫だった。


臆病猫は私の姿を認めると、ゆっくりとネットの中から姿を現した。
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そして、周囲に誰もいないか確かめはじめた‥‥





東京からやって来た若い女性は、私が急遽作ったミケの遺影をしばらく見つめていた。
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彼女の名は『momoさん』ブロガーであり、サーファーでもある。
私のブログを、彼女は自身のブログで紹介してくれた。⇒『MMK BLOG』



そこへKおじさんがやって来た。
Kおばさんは用事があり、今日は出かけていると言う。

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momoさんは、私のブログでKおじさんのことを知っていた。
Kおじさんには、東京からミケに逢いにくる女性がいることを教えていた。
しかし、時間までは知らせていなかった‥‥なのに、こうして遇えた‥‥
おそらくミケが遇わせてくれたのだろう。



自然と、ふたりの話は弾んだ。
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momoさんは生前のミケに一度も逢っていない。
彼女が最初にミケの姿を見たのは、dodoさんのブログだった。
そして、そこにリンクされていた私のブログを知ったのだと言う。

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以来、私のブログでミケのことをずっと見ていた。


それから私達は、サイクリングロードを西へ向かった。
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この写真を見たKおばさんが、ヘンな焼き餅を焼かないよう祈るばかりだ。
私が見たところ、Kおじさんの鼻の下はいつもと同じだった‥‥はず‥‥


momoさんは、ミリオンのエサ場へ入っていった。
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しばらくの間、momoさんはミリオンと話をしていた。
Kおじさんとは、ここで別れた。



私はmomoさんに請われるまま、船宿エリアへ案内した。
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momoさんの相手をしているのは、マサムネのようだ。


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コジローは水上バイクの上で寛いでいた。


初対面のmomoさんを警戒していたコジローだが、エサを眼の前にすると態度が変わった。
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そんなコジローを見てmomoさんが一言「現金ね~」


さらに追加のエサをもらうコジロー。
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「オヤジからエサ貰うより、若い女の人から貰った方が嬉しそうだな」
私には、コジローの鼻の下がいつもより長く見えた。



momoさんが、エサ場のトレイにエサを置くと‥‥
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どこからか現れた三毛猫とコジローが、争うようにエサを食べはじめた。

momoさんは、駐車場が閉まる午後6時ぎりぎりまで茅ケ崎海岸にいた。
そして再会を約束して、私達は別れた。







本日のミリオン
今日のミリオンは、何故か機嫌が悪い。

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そこで私は持っていたカリカリを与えた。


これはほぼ完食した。
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こういう時、長居は無用だ。
「ミリオン、今度来るときまで機嫌直しておいてくれよ」




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臆病猫 その四

2010年07月19日 00:00

今日は3連休の最終日。
午後4時近いこの時刻になっても、湘南海岸は多くの人で賑わっていた。

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私は今日も、ミケに逢いに行き‥‥そして話をした。
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話の内容は、ほとんどが私の愚痴になってしまったので、ここではとても紹介できない。


重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
ミリオンのエサ場には先客がいた。

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ミリオンは、貰った猫缶をガツガツと食べていた。


この夫妻とは、ミケのエサ場で何度か会っていた。
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月に数回、こうやってミリオンに逢いにくると言う。
ミリオンも、この夫妻に親しみを持っているようだ。



夫妻が去ると、ミリオンはエサ場の中へ戻っていった。
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そして、再びエサに食らいついた。
私はミリオンの食欲旺盛な様子を見て、思わず微笑んだ。






私は、臆病猫にもエサを与えてみた。
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すると、まず右を見て‥‥


次に、左を見て‥‥
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そして、やっとエサへ口をつけた。


この臆病猫は、常にビクビクと何かに怯えている。
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私は思った‥‥この野良に心安らぐ時はあるのだろうかと‥‥


その臆病猫が、『地面ゴロゴロ』を披露してくれた。
勿論、私は初めて目にする。

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だが、地面ゴロゴロはこれだけで終わりを告げた。
臆病猫と呼ばれる所以が、ここにある。



いつもビクビクしているこの野良を、私はいつしか『ビク』と呼んでいた。
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『ビク』‥‥その謂れを本人が知ったら嫌がるだろうが、私の乏しい語彙からはこれ以上の呼び名は浮かんでこない気がした。


と云うことで、今日からこの野良のことを『ビク』と呼ぶことにした。
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ちなみに、ビクはレディーだ。
ビク自身は捨て猫ではなく‥‥捨て猫の母から生まれた。



だからビクは人の温もりを、ほとんど知らずに育った。
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ただ、ビク本人がそれを望んでいるかどうかは‥‥まだ、分からない‥‥


その時、ウォーキング中の人が休憩のためエサ場に入ってきた。
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ビクは、固まった。


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私がちょっと目を離している隙に、人もビクも姿を消していた。


ときどき間の抜けた隠れ方をするが、総じて猫は隠れるのが巧い。
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私は、敢えてビクを捜さなかった。



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大胆な臆病猫

2010年09月01日 23:44

今日は防災の日‥‥しかし湘南海岸に、それを感じさせるものは何もない。
厳しい残暑のなか、海で興じる人が僅かにいるばかりだ。

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海の家の解体が始まっていた‥‥数日もすると、ここは元の砂浜に戻る。


重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
今日も、ミリオンが姿を現すことはなかった。
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ゆきママさんからの報告によると‥‥
昨日は、TNさんがハムに巻いた薬をミリオンに与えたら一飲みしたとあった。
そして今朝は、ゆきママさんがチーズに包んだ薬の投与に成功している。






東のエサ場
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臆病猫のビクが、私を迎えるように姿を見せた。


そして、私が写真を撮るためしゃがむと‥‥
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私の足元に擦り寄ってくる。


いかにも撫でて欲しそうな態度を見ると、撮影は一時ストップせざるを得ない。
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最近は、いつもこんな調子だ‥‥ミケもそうだったが、慣れ過ぎた野良は被写体に適さない。


その時、私達のすぐ側に一羽のカラスが、いきなり舞い降りてきた。
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そして小さく跳ねながら、エサ場へ近づいていった。


どうやら、野良達の食べ残したエサがないか確かめに来たようだ。
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何を思ったのか、私の側を離れたビクがそのカラスへ近づいていった。


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いったいビクは、何をするつもりなのか‥‥?


ビクの様子をしばらく観察していた私は、気づいた‥‥
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ビクの目的はカラスと同じだ‥‥ビクは、カラスの行動を見てエサが残っていると思ったのだ。


次の瞬間、カラスが大きく羽ばたくと‥‥
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ビクは大慌てで駆け出した。


ビクがいなくなると、カラスは悠然と地面に下りてきた。
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そして、ゆっくりとエサ場の探索を再開した。


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この野良‥‥臆病なくせに時折大胆な行動をとる。


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道路から死角になるトタンの陰‥‥ビクお気に入りの場所だ。


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でも、そんな場所にいても、ビクが周囲への警戒を怠ることは‥‥決してない。



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2年半振りの再会 (前編)

2015年01月21日 16:00

私はその海岸猫と2年半近く会っていない。

そのあいだに母が他界し実家に長期滞在を強いられたが、神奈川にいる時には幾度かエリアに足を運んでいる。

しかしその海岸猫は一度も私に姿を見せてくれなかった。
出現率の高い猫にもかかわらず、だ。


そしてこの日も無駄足になることを覚悟して、私はその海岸猫の住むエリアに赴いた。


湘南海岸、夕刻。
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この日は海岸に向かって強い海風が吹きつけていた。しかし私にとっては追い風となって、いつもより自転車のペダルが軽い。


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強い風が吹くとサーファーの姿はほとんどなく、海上はウィンドサーファーたちの独壇場と化する。


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彼らはセイルで海風を巧みに捉えて、海面を滑走していく。そのスピードは50km/h以上にもなる。
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目的の海岸猫が住んでいると思われる防砂林の中へ、私は足を踏み入れた。
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そして四囲に視線を巡らせながら、ゆっくりと防砂林の奥へ進んでいった。


エリアの中ほどで私はその海岸猫の名を小さな声で呼んでみた。《 聴覚の優れた猫なら聞き取れるはずだ 》
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ややあって、か細い猫の鳴き声が聞こえた。さらに名を呼ぶと再び小さな声で応えてきた。
私は声がした方向に見当をつけて、さらに防砂林の奥へ歩を進めていく。










すると、樹木を背にしてぽつねんと佇んでいる海岸猫の姿が目に入った。
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“ ビク ” は以前と変わらないころころした体型で私を迎えてくれた。


「ビク、元気だったか‥‥」
この海岸猫が達者でいることは仄聞していたが、やはり自分の目で見ると深い感慨を覚える。

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ビクは元々『 東のエサ場 』の住人だった。ところがチビ太郎の出現で、ほかの海岸猫ともども生まれ育ったエリアを離れ去ったのだ。


いつ頃ここに移り住んだのか私は知らないが、今はたった独りでこのエリアで暮らしている。
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私のことを憶えていたのか、ビクはこちらに歩み寄ってくる。


ところが途中で歩みを止めると‥‥。
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進路を右にとって私から遠ざかっていった。



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以前のビクは私の姿を認めるとすぐに足許に近づいて来ていた。2年半という空白期間が彼女の頭から私のデータを消去させてしまったのだろうか。


しかしそれなら私から離れていくことはあっても、近づいて来ないはずだ。
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なんとなれば、この海岸猫は警戒心が強い怯懦な性格を持っているからだ。
その性格ゆえ私は彼女のことを密かに “ 臆病猫のビク ” と呼んでいる。



ビクという名も、いつも何かに怯えたようにびくびくしているから私が付けたものだ。
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だから私のことをすっかり忘れた訳ではなく、少なくともビクの頭には私が害意のないニンゲンだというデータだけは残っているようだ。


「そういえば‥‥」私は以前にもビクが同じような態度をとったことを思い出した。
それは父の他界でやはり実家に長期滞在した私が久し振りに東のエサ場を訪ねた時だった。

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その際のビクも長く顔を見せなかった私に抗議するようにつれない態度で接してきた。
(その時の様子は【5ヶ月ぶりの訪問 その弐】を参照)



こういう場合、私は自分から行動を起こさないと心に決めている。
具体的にはその猫のパーソナルスペースを侵さない十分な距離をとって、けっしてこちらから近づかないようにする。

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そして目を合わさず、こちらもあらぬ方向に視線をやり、素っ気ない態度に徹するのだ。


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これが犬の場合だと対応が全く違ってくる。私は犬も猫同様大好きで、大人しい犬と出会うとつい近づいて頭を撫でてしまう。


世間には “ 犬派 ”“ 猫派 ” という人達がいて、論戦を繰り広げていると聞いているが、私にすれば『 目くそ鼻くそを笑う 』とおっつかっつの内容空疎な争いに思える。
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犬には犬の、猫には猫の良いところがあり、どちらかを選ぶことなど私にはできない。
飽くまでも偏向した私見だが「自分は○○派だから△△は嫌い」と公言する自称動物好きは似非だと思っている。



「ん?」
ビクの顔にズームで寄った時だった。ビクの目の異常に気付いたのは。

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眼球の下半分が充血し、大量の目ヤニが目頭に溜まっている。右目ほど酷くはないが、左目にも充血が見られる。


眼病には外傷や異物などが原因の外因性と細菌やウイルスなどが原因の内因性に大別されるという。
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そして内因性なら、感染して両目が冒されるとも聞いている。私に病名が分かるはずもないが、ビクの場合は内因性の眼病の可能性が高い、と思われた。


ただ病状の悪化が進んでいないのか、それとも治癒に向かっているのか、目を気にしている様子は見られない。
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痒みや痛みがあれば足で引っ掻いたり、目を何かにこすり付けたりするはずだ。


その後もビクはかたくなに私を無視し、目を合わせようともしない。
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爪研ぎをしている時に目線を貰おうと思って名を呼んでみたが、私に一瞥もくれないのだ。
「こりゃ相当へそを曲げてるな‥‥」私は2年半におよぶ空白の重さを改めて思い知った。



ビクとしては「今頃、何しに来たのよ。目付きの悪い茶トラがエサ場を荒している時に助けに来てくれなかったくせに」とでも言いたいのだろう。
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そう言われたら私に返す言葉はない。なんとなれば、私は海岸猫たちを実際的に救う力を殆ど持ち合わせていないからだ。


猫は何者にも媚びへつらわない気高い生き物である。とすれば、これ以上ここに留まっていてもビクは私を以前のように受け容れてくれないだろう。
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《 野良猫がニンゲンに懐かないのは悪いことではない。今回はこのままエリアを離れよう 》
私がそう思った直後だった‥‥。

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ビクが真っ直ぐ私のほうへ近づいてきたのは。


そして私の足許まで来ると、ぴたりと歩みを止めた。
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この体勢が意味するのは「しばらくじっとしてあげるから、背中を優しく撫でなさい」という彼女の下知である。


久し振りにビクの身体を触ったが、野良猫とは思えない艶やかな毛並みは以前と変わらない。
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私はビクを撫でながら《 空白の2年半のあいだに、ビクは私などが想像できない艱難辛苦を経験したんだろうな 》と思った。



〈次回へつづく〉



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2年半振りの再会 (後編)

2015年02月01日 23:00

“ 臆病猫のビク ” に会いたいという私の願いは、2年半振りにようやく叶った。

ビクの元気な姿を確認できた私はほっと安堵の胸を撫で下ろした。

しかし‥‥。


重症とはいえないが、彼女は目を病んでいた。


湘南海岸、夕刻。
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ビクの身体を撫でながら、私の頭には様々な思いが駆け巡っていた。
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まず脳裏に浮かんだのは《 ビクはいったい誰の世話を受けているのだろう? 》という疑問だった。


東のエサ場を担当していたKさんは、世話をしている海岸猫がエリアから去ったのを機に海岸へ来なくなったと人づてに聞いている。
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しかしビクは以前と変わらない丸々と太った体型を維持している。ということは、十分な食事を与えられているはずだ。


食べ物を得られる機会が多い街中で暮らす野良猫と違って、海岸猫は定期的に給餌してくれるボランティアの人がいないと生きていけない。
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ただ臆病で警戒心の強いビクとて、生きるためならほかのエサ場へ出張ることもありえる。


しかしこのエリアで独り暮らしていることからも、やはり誰かがエサ遣りに通っていると考えた方が自然だろう。
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《 ではいったい誰が‥‥? 》結局私の思考は最初の疑問に回帰してしまう。


この日も食事を終えた直後なのか、空腹を訴える素振りをまったく見せない。
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ただ不可解なのは、エリア内にエサ場が見当たらないことだ。


給餌するのに紙製の器を用い、毎回処分するエサ遣りさんもいるが、それでも飲料水用の食器は置いてあるものだが‥‥。
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ここ数年は両親が相次いで他界したり、また私自身の体調不良が原因で、以前に比べて海岸を訪れる回数がめっきり減ってしまった。


当たり前のことだが、私が不在のあいだにも海岸猫を取りまく環境は変わり続けている。
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海岸猫の顔ぶれが替わりエリアの区分も不明瞭になり、そしてエサ遣りさんも入れ替わった。


そのせいだろうか‥‥、私が “ 海岸 ” から疎外されているように感じるのは。
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ほんの少しだが、陸に戻った際の “ 浦島太郎 ” の心境が分かる気がした。


爪研ぎを終えたビクは何かの気配を察知したようで、いきなり身構えた。
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耳をそば立て険しい目付きで防砂林の一角を見つめている。ビクの視線を辿って振り返ったが、私にはビクが何を見ているのか分からない。


胡乱な気配は消え去ったのだろうか、ビクは表情をやや和らげて開けた場所へ出てきた。
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しかし警戒を完全に解いていないのは、ビクの目が雄弁に語っている。
おそらくニンゲンの私には聞こえない “ 音 ” にビクは反応しているのだろう。



猫の耳は27もの筋肉、言うところの『 耳介筋 』で出来ている。
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だから猫の耳はパラボラアンテナのように方向を自在に変えられるのだ。それも左右別々に前後180度の角度で動かせる。


ちなみにニンゲンの耳の筋肉は三つだけで、またその筋肉も退化しているため耳を動かせるのは10人にひとりくらいだ。
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ビクは何かを見つめている風だが、耳を見れば分かるように実際は後方の音に神経を集中している。


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おもむろに体を横たえたビクはしかし、まだ警戒を解いていない。


ビクが執拗に気にしている音の正体が何なのか、ニンゲンである私には分からない。
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私の耳に聞こえるのは海風とその風が樹木を揺らす音くらいだ。


2004年、ビクは東のエサ場で野良猫の母から生まれた。


野良猫の平均寿命は4~6歳というのが事実なら、10歳を迎えたビクは稀な存在だ。
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その10年間、ビクは様々な苦難に遭ったと推測されるが、とりわけ “ あの事件 ” はビクを危殆に瀕しさせた出来事だったと思われる。


想像するだにおぞましい事件が起きたのは今から8年前‥‥、
ビクが2歳の時だった。



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ボランティアのKさんは、その日も日課である海岸猫への給餌のために海岸へやって来た。

おそらくKさんの目には、海岸の風景がいつもと変わらない平穏なものに映っただろう。

だがKさんはじきに、信じがたい異様な光景を目にすることになる。


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Kさんの到着を前もって知っていたかのように、エサ場にはすでにビクの姿があった。

ところがビクはとても奇態な姿をしていた。


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ビクは頭に細長い棒状のモノをくっつけていたのだ。

訝ったKさんがよく見ると、その棒はビクの小さな頭を貫いていることが分かった。

驚いたKさんは棒を握ってビクの頭から抜こうと試みたが、頭蓋骨を串刺しにしている棒はぴくりとも動かない。


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自分の手に余ると判断したKさんは、すぐにビクを動物病院へ連れて行った。

医師によって抜き取られた棒の正体は “ ボウガンの矢 ” だった。

つまり誰かが故意にビクをボウガンの標的にしたのだ。


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ビクはしかし、奇跡的に一命を取りとめた。

ボウガンの矢は頭の部位に致命的な傷を負わせていなかった。運が良かったと言うほかない。


この出来事はKさんから直接聞いた実話である。


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この地球上で最も残忍酷薄な生き物、それは間違いなく我々ニンゲンだ。


強い者が弱い者を餌食にする、 “ 狭義の食物連鎖 ” の上位捕食者であるライオンでさえ、満腹の時はたとえ獲物が目の前にいても食指を動かさない。
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それなのに‥‥、ニンゲンだけだ、慰みに無辜な弱者を虐待したり命を奪ったりする生き物は。


弱肉強食は自然の摂理だが、自分たちが生殺与奪の権をほしいままに握っていると心得違いしているのもまた、ニンゲンだけだ。
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かかる卑怯な犯罪者はいずれ地獄の業火で焼かれる運命とはいえ、この世でも相応の報いを受けるべきだ。


初めてボウガン事件の顛末をKさんから聞かされた私は、ビクが臆病になったのはこの事件が原因だと思った。
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しかし猫と交誼を続けていくうちに、彼らの性格形成はそんな単純なものではないことが分かるようになった。


だから今はビクの臆病な性格が先天的なものなのか、それともボウガンの矢で頭を射抜かれた事件の衝撃が影響しているのか私には判断できない。
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いずれにしろビクの臆病な性格は変わらないが、あんなむごい目に遭いながらもビクはニンゲンを慕い、愛情を求め続けている。


2年半も会っていなかった私のことをちゃんと憶えていて、以前と同じようにこうして身を委ねてくれる。
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《 九死に一生を得たビクにはぜひ長生きしてもらいたい 》と私は強く願った。


ビクはいきなり私から離れると、防砂林の奥へ逃げ込んでしまった。
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「ビク、ごめんよ、驚かせてしまって」私は自戒の念を込めてビクに謝罪の言葉をかけた。


ニンゲン同士でもままあるだろう、良かれと思ってしたことが却って相手の機嫌を損ねてしまうことが‥‥。
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ビクの身体を撫でている行為に乗じて、私はティッシュをポケットから取り出し、ビクの目にこびり付いた目ヤニを拭おうとしたのだ。


猫は保守的な生き物で変事を厭い、環境が急変したり相手がいつもと違う行動をとると敏感に反応する。
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ビクもまた、私の行動に常ならぬものを感じたから急いで私から離れたのだ。


爪研ぎには古くなった爪を剥ぎ武器である爪を尖らせるという実際的な目的と、ストレス解消や気分転換をするという精神的な目的がある。
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この時のビクの目的は明らかに後者で、昂ぶった気持ちを鎮めるために爪を研いでいるのだ。


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爪を研ぎ終えたビクは私を一顧だにしないで、防砂林のさらに奥へと歩き去ってしまった。


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こうして少し気まずい別れ方をしたが、ビクに会えた喜びで私の心は充足していた。


『 猫は三年の恩を三日で忘れる 』とか『 犬は人につき猫は家につく 』などと猫が薄情なように言われているが、これらはニンゲンの認識不足による妄言虚言の類である。

前述したように環境の変化が苦手なだけで、猫は情に厚く、受けた恩もしっかり憶えている生き物だと分かってもらえただろう。



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