ミリオンの変化

2010年07月31日 00:00

今日、このブログでミケのことをずっと見守っていたふたりの女性がミケに逢いにきた。
東京に住むふたりがミケに会うのは、今日が初めてだ。

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私も、おなかさん(左)、はなさん(右)とはコメントやメールのやり取りで知っていたが、直接会うのは今日が初めてだ。


今年の5月、ふたりはミケとサンマに逢いにくる予定だったが、都合が悪くなり延期した。
その直後だった、サンマが犬に咬まれ大怪我をしたのは。
そしてそれをきっかけにミケが腎臓を悪化させ、虹の橋を渡ってしまった。
ふたりが生前のミケに逢うことは、ついに叶わなかった。

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今日もK夫妻がミケの世話のため、エサ場を訪れていた。
何故かKおばさんの姿を撮っていなかった。


はなさんとおなかさんは、ミケとサンマが暮らした場所を興味深そうに見ていた。
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そしてミケが好んだ場所、日向ぼっこデッキも。


それから私たちは、曇り空の湘南海岸を西へ向かっていった。
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重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
ミリオンは、今日も薬入りのチーズを素直に嚥下した。
はなさんとおなかさんとは初対面だが、何故かミリオンはすんなりとふたりを受け入れた。

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エサを眼の前にしたからか、


ミリオンの食欲は旺盛だった。
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エサは毎日何人かから貰っているはずだが、最初の猫缶をあっと言う間に平らげた。


ミリオンは、お代わりを貰った。
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はなさんが、ミリオンを優しく撫ではじめた。
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気持ち良いのか、ミリオンは目を細めうっとりした表情を作った。


今度は、おなかさんがミリオンの咽を撫でる。
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するとミリオンは眼を閉じ、咽を鳴らしはじめた。


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そして、ついには撫でられながら食事をするという、人間でも滅多にない厚遇を受けた。


それからしばらくの間、ミリオンは優しい四つの手で撫でられつづけた。
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私はこの時、ミリオンのある変化に気づいていた。


ミリオンは今日、右耳をほとんど引掻いていない。
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さらに、頭を振る回数も激減していた。


早くも薬の効果が表れたのか‥‥?
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そんなことを思い巡らしているうちに、ミリオンはすっかりふたりに懐いてしまった。
私は、軽い嫉妬を覚えた。


この続きは後日紹介します。



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病魔と闘う猫 その壱『出逢い』

2011年01月12日 10:05

2011年1月6日、この診察台で一匹の野良が手術を受けた。
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その手術は困難を極めたという‥‥




私がこの野良の存在を知ったのは、2008年の秋だった‥‥




2008年秋
その頃の私は、夕刻の海岸散策を日課にしていた。
それは『西のエサ場』へ通うためでもあった。

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当時の『西のエサ場』は、十数匹の野良が暮らす大所帯のエサ場だった。
だが、ここにいた野良のほとんどは、この後行方知れずになる。
よく見ると、ブッチの側にサンマがいる。



右の長毛の子は私が『モップ』と名づけたが、2010年の春に突然海岸から姿を消した。
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これは、寒さを凌ぐための『猫だんご』だ。一番奥にサンマの顔が見える。




その野良の名は、当時のボランティアの人たちから幾度も聞かされていたが、私の散歩コースから遠く離れていたのでなかなか逢えずにいた。





その年の晩秋、私はその野良のエサ場へ初めて足を延ばした。
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しかし警戒心の強いその野良は、植込みの奥へ身を隠し近づいてくることはなかった。


私とその野良の出逢いは、こうしてあっけなく終わった。
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その後も数回訪ねてみたが、顔を見ることも叶わなかった。




2009年春、睡眠障害が悪化した私は、日課としていた海岸散策をやめた。
そしてその野良のことは、いつしか記憶の深奥に埋没してしまった。






私が海岸散策を再開したのは、その年の晩夏だった。
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睡眠剤を服用しても眠れない私は、それならばと早朝の海岸へ足を運んだのだ。


そして私は、ミケとチビという二匹の野良と邂逅した。
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私がこのブログを始めたのは、この野良たちに巡り合ったのがきっかけだ。





そして晩秋‥‥私は1年ぶりにあの野良に逢いにいった。
その時の衝撃を、私は未だに忘れられない‥‥






何故なら、その野良には右耳が無かったからだ。





『ミリオン』‥‥それがその野良の名だった。
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ミリオンは右の耳殻を全て失っていた。


私が与えたカリカリを、ミリオンは用心深く口に運んだ。
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時折私に警戒の眼を向ける。


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カリカリを食べ終えたミリオンは、潅木の陰へ身を隠し私の顔をしげしげと見つめた。


私はこの時、耳疥癬に罹ったミリオンが、その痒さのため自分で右耳を削ぎ落としたのだろうと思った。
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しかしミリオンの病名は、私の想像とは違っていた。





ミリオンの右耳は、耳疥癬より重度な病魔に侵されていたのだ。
そのことを、私はずっと後になってから知ることになる。






<つづく>



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病魔と闘う猫 その弐『診断』

2011年01月13日 06:00

ミリオンの耳の状態を知った私は、彼女に係わる人たちと遇う度に、話を訊いた。
すると幾人かの人から「医者に診てもらっている」「薬を与えている」という応えが返ってきた。
私は安心したと同時に、世話をしている人がいるなら口を出す必要はないと思った。




だが実際にはこんな事実は一切無く、ミリオンが医師の治療を受けているというのは ”嘘” だったのだ。
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いったい誰が何のために、こんな嘘の情報を流布したのか!?その時には”ある男性”ということしか分からなかった‥‥



ともかく、この時失った時間は実に貴重で、なお且つ取り返しがつかないモノとなった。


しかし私は真相を知らなかった‥‥この時はまだ‥‥。



その後の私は、毎日ミケのエサ場へ通い、ミケとサンマの日常観察に没頭することになる。
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そして半年が過ぎようとした時だった。あの惨劇が起こったのは。


2010年6月1日‥‥リードを離された飼い犬にサンマが襲われ全治1カ月の重傷を負った。
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2010年6月27日‥‥サンマの惨事を目撃したミケが腎不全を悪化させ、永久(とわ)の眠りに就いた。
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ブログの主役である野良二匹をほぼ同時に失った私は、ブログの継続を諦めかけていた。



しかしミケから恩を受けたままではどうしても得心がゆかない私は、ブログ継続を決意した。



湘南海岸に棲む野良は他にも沢山いた。私はそれらの野良を紹介しようと考えたのだ。
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そしてもし出来るものなら、ミケの代わりに恩返ししたいと思っていた。



私の念頭にまず浮かんだのが、耳疥癬に苦しむミリオンだった。



久しぶりに訪れた私の姿を見ても、ミリオンは逃げなかった。
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でも私がいくら話しかけても妖艶な眼で見つめるだけで、心を開く様子も、まだなかった。


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ミリオンの右耳は、以前見たときより確実に病魔に侵蝕されていた。


加療中であるはずの右耳が何故悪化しているのか、私は不可解でならなかった。
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この時の記事を見た知人から一通のメールが届いた。
それには、懇意にしている医師にミリオンの耳を診てもらうので、モザイク処理していない写真を送って欲しいとあった。




メールに添付してミリオンの写真を送ってから数日後、私は驚くべき診断結果を知らされた。



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ミリオンの右耳は疥癬などではなかった‥‥。

『扁平上皮癌』 これがミリオンを苦しめている病魔の正体だった。




<つづく>



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病魔と闘う猫 その参『齟齬』

2011年01月14日 06:47

『扁平上皮癌』読者の方も聞き慣れない病名だと思う。
因みに、私にとってこの病名は初耳だった。

知人のメールには、この癌の特性が記されていた。
人間の舌癌に似て再発率の高い癌で、最終的には肺に転移して命を奪う、と。

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そして猫の中でも白猫がよく発病するとも。根治には患部の摘出手術しかない。
写真でミリオンを診断した横須賀の医師が、実費のみで施術してくれると、メールは結んでいた。





私はミリオン保護のために独り始動した。
それは、湘南が梅雨明けする数日前のことだった。





私はまず、ミリオンを世話するボランティアの人たちの了解を得ることから始めた。
Iおばさん‥‥Hさん‥‥皆快くミリオンの治療に同意してくれた。

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さらに、ミリオンに係わる人たちにも協力を請うた。


次に私は、ミリオンの信頼を得ることに専念した。
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それには、ミリオンのエサ場へ毎日通うしかなかった。



私は文字通り、ミリオンのエサ場へ日参し始めた。



何人もの人から食事を与えられているミリオン。
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その彼女に、少しばかりの食べ物を持っていっても歓心を得ることはできない。


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私はミリオンに気持ちを込めて話しかけ‥‥心の扉が開くのを静かに待った。


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推定年齢10歳のミリオンはこのエリア最後の生き残りである‥‥野良として生き抜く術の全てを持ち合わせている彼女はさすがに手強い相手だった。


そして‥‥、湘南海岸に本格的な夏が到来した。
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浜辺で楽しむ人たちを横目に、私は相も変わらずミリオンの元へ足繁く通った。



そんな蒸し暑い日の夕刻だった‥‥ミリオンの態度が一変したのは。



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エサ場へ入った私の横を、ミリオンがすり抜けていったのだ。


そして、私を妖しい眼で見つめた。
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私が名を呼ぶと‥‥


ミリオンは、私の足にすり寄ってきた。
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ミリオンが私に心を開いた瞬間だった。




そんなミリオンの姿を見た読者が、相次いで訪ねてきたのもこの頃だ。




まず東京からmomoさんがやって来た。
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そしてやはり同じ東京から、はなさんとおなかさんがミリオンを訪ねてきた。
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私のミリオン詣では、その後もつづいた。


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私を見つめるミリオンの眼は、ずいぶんと穏やかになっていた。


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ミリオンと私の距離は確実に縮まっていった。




そんな時だった‥‥ミリオンの病名を知らせてくれた知人から宅配便が届いたのは。




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中身は海岸猫のためのクスリだった。


この中のステロイド系のクスリは炎症を抑える効能があり、ミリオンのために送られてきた。
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それを飲み易いようにスライスチーズで包み、ミリオンに差し出した。


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するとミリオンは、あっさり嚥下した。




医師の指導で、後の手当てを考え手術は涼しくなってから行うことになった。
そのあいだ、このクスリで症状を抑えようというのだ。





投与期間は、1ヶ月を指示されていた。
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それから私は、クスリ入りのチーズを持って、毎日海岸へ足を運んだ。
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ミリオンはそのクスリ入りチーズを、毎回素直に嚥下してくれた。


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そのクスリの効果は意外と早く表れた。
ミリオンを世話する人たちから「血が出なくなった」「耳を引っ掻かなくなった」などの声を聞くとゆきママさんが教えてくれたのだ。





気を良くした私は、蚤や疥癬などの寄生虫を駆除するクスリを滴下することにした。
だがこれがミリオンとの間に大きな亀裂と作る結果となった。






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いつもと違う私の行動と、強烈なクスリの臭いにミリオンは敏感に反応した。


ミリオンは、エサ場の奥へ逃げこんでしまった。
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クスリは滴下できず‥‥さらにミリオンに疎まれるという最悪の結果になってしまった。




その日を境に、私がエサ場へ行っても、ミリオンは姿を現さなくなった。



<つづく>



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病魔と闘う猫 その四『捕獲』

2011年01月15日 10:27

クスリ滴下に失敗した次の日から、ミリオンの姿はエサ場から消えてしまった。


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防砂林の奥へ入ってみると、ミリオンは植込みの奥に潜んでいた。
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私がいくら名を呼んでも完全に無視され、取り付く島がなかった。


その後も毎日ミリオンを訪ねたが、ミリオンが私の呼びかけに応えることはない。
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為す術がなくなった私は、ゆきママさんに助けを求めた。



ゆきママさんはミリオンへのクスリ投与を快く引き受けてくれた。
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「ミリオン、これからはゆきママさんからクスリを貰うんだよ」


ゆきママさんが海岸へ行けない日は、やはりミリオンを気にかけているTNさんが、代わってクスリを与えてくれることになった。
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一ヶ月に及ぶミリオンへのクスリ投与を終えた私たちは、涼しい秋の到来を首を長くして待った。




しかし、2010年の残暑は執拗に日本列島にへばり付き、10月に入っても夏日を記録し続けた。
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この頃になると、私の姿を見てもミリオンは逃げなくなった。


相変わらず名を呼んでも近づいてくることはなかったが‥‥
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静かに近づけば、体を触ることは辛うじて許してくれた。



長く続いた残暑も去り、湘南海岸に秋風が吹きはじめた。



やっと、ミリオン捕獲の条件が整った。
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私はミリオンに係わる人たちと連絡を取り、決行日を調整した。



2010年10月8日午後‥‥ミリオン捕獲のため、私を含め4人の男女が集まった。<



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都合良く、ミリオンはエサ場の外で寛いでいた。


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まず、キャリーケースを持ったIおばさんがエサ場へやって来た。


少し遅れてHさんが到着。
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この時、134号線の向こう側にはSさんが車を停めて待機していた。ミリオンを捕獲したら、すぐ病院へ移送するためだ。


ミリオンは相変わらず寛いだ様子で、エサ場の外に体を横たえている。
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ミリオンが我々に大人しく身を委ねてくれることを、私は心から祈った。


Iおばさんがカリカリでミリオンの気を引き、後ろからHさんが洗濯ネットで捕獲する手筈だった。
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洗濯ネットを取り出す直前のHさんに、私は「頭ごとスッポリいってください」と助言したのだが‥‥、緊張したHさんの手元は狂ってしまった。


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Hさんの繰り出したネットを、ミリオンはするりとすり抜けた。


体勢を立て直したHさんが、再度ミリオンにネットを被せる。
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ミリオンは今度も洗濯ネットを巧みにすり抜けた。
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そして植込みの奥へ逃げ込むと、険しい眼で我々を見返した。


SさんとHさんが次回のミリオン捕獲のために、お互いの電話番号を交換している。
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本人も今回のミリオン捕獲を期待していただけに、Hさんの意気消沈振りは傍目にも気の毒なほどだった。



こうして、満を持して決行されたミリオン捕獲は失敗に終わった‥‥

しかし、1度の失敗くらいで諦めるわけにはいかなかった‥‥。
私は次の捕獲計画へ頭を切り替えた。





<つづく>



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病魔と闘う猫 その五『悪化』

2011年01月17日 08:04

1回目の捕獲失敗はミリオンの警戒心を相当煽ったようで、その後エサ場に姿を見せることも稀になった。
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そこでミリオンが必要以上に戒心しないよう、最小人数での捕獲を計画した。



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2010年11月6日 私はHさんと事前に打ち合わせをし、ミリオンのエサ場で落ち合った。
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移送用の車はHさんの友人が用意し、近くで待機していた。
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ミリオン捕獲をHさんひとりに委ね、私はエサ場から離れたトコロで見守ることにした。


名を呼んでもエサ場から出てこないミリオンを、Hさんが懸命に説得している。
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でも普段と違うHさんの言動が裏目に出てしまった。Hさんが体を触った瞬間に、ミリオンは植込みの奥へ逃げてしまった。


Hさんはキャリーケースを残し、用事が待つ友人の車で帰っていった。
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独り残った私は、ミリオンが再び姿を現すことを期待し、その場に留まることにした。


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2時間近く待ったが、ミリオンはエサ場に帰ってこなかった。


2010年11月21日 友人が車を出してくれるというHさんと、私は再びミリオンのエサ場で待ち合わせた。
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しかしミリオンは、姿さえ見せてくれなかった。


防砂林内にあるミリオンのねぐらを訪ねてみたが‥‥
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ミリオンは気配さえ感じさせない。


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この防砂林のどこかで、ミリオンは息を潜めて我々の動きを窺っていたのだろう。


そうこうしている内に師走に入った。
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2010年12月4日 今回は鎌倉で野良の保護活動をしているHさんの知人が、ミリオン捕獲の支援に駆けつけてくれた。
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しかしいつもは威力を発揮する手作りの捕獲網も、ターゲットが姿を現さないことには無用の長物と化してしまう。



ミリオン捕獲には、手詰まり感が漂い始めていた。

そして、無為な時間が流れるうちに、ミリオンの症状は悪化の一途をたどることになる。




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耳孔の下にできた浮腫が破れ、ミリオンの傷口は以前の倍以上にも広がっていた。
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赤く爛れたミリオンの右耳は、とても猫のモノとは思えないほど、その形状を変えていた。



この頃、私のブログからミリオンの姿が消えた。




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この状態のミリオンを掲載することなど‥‥とても私には出来なかった。


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ミリオンを年内に保護したいという私の願いも虚しく、2010年が今にも終わろうとしている。

老練なミリオンを捕獲することは、やはり無理なことなのだろうか?

新たな年を目前にした私に、期するものなど何もなかった‥‥

ところが、その新たな年の最初の日に、ミリオン捕獲への道が開くことになる。






<つづく>



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病魔と闘う猫 その六『通過点』

2011年01月18日 12:22

2011年元旦 ある男性から1通のメールが届いた。
私のブログの読者だというその男性はミリオンの現状を知り、捕獲、治療の必要性を訴えた。

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明くる2011年1月2日午後、メールを寄せてくれたNTさんとミリオンのエサ場で待ち合わせをした。



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ミリオンは、暖かい陽射しが当たるエサ場の外にいた。


この日初めてミリオンと遇ったという若い女性の足元に、ミリオンは寄り添うようにうずくまっていた。
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NTさんが指摘するように、ミリオンは明らかに衰弱していた。
久しぶりに陽射しの下で見るミリオンは、美しかった毛艶は薄汚れ、体もやつれていた。



ミリオン捕獲の助力を急遽お願いしたゆきママさんが駆けつけてきた。
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まず大型キャリーの中へ猫缶を置き、ミリオンをおびき寄せることにした。
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ミリオンの鼻が猫缶の匂いを嗅ぎ取った。


キャリー内のトレイを凝視するミリオン‥‥今にもキャリーへ入っていきそうだ。
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だがミリオンは直前で踵を返した。動物の勘が「ソイツには近づくな」と呟いたようだ。


この用心深さを持っているから、ミリオンはこれまで厳しい環境でも野良として生き残ってこれたのだ。
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キャリーへ誘い込むことを諦め、油断したところを取り押さえる作戦に切り替える。


食事に専心しているミリオンの後ろから、NTさんがそっと近づいていく。
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そしてミリオンを抱き上げると、用意したキャリーへ素早く運んだ。


だが、またしてもミリオンは捕獲者の手をすり抜けると、防砂柵を乗り越えて植込みの中へ逃げ込んでしまった。
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NTさんは悔やんだ。「抗うミリオンが可哀想になり、つい手の力を緩めてしまった‥‥」



捕獲をすんでのところで逃れたミリオンは、しばらく捕獲に参加した我々の前に姿を現さないだろう。

しかしミリオン捕獲には、あるタイムリミットが控えていた。




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この場所での護岸工事が6日から始まる。そうなったらミリオンの捕獲は、事実上不可能になるだろう。


そこで初めて『捕獲器』を使うことにした。
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捕獲器に入った場合、早く出してやらないと、中で暴れて思わぬ怪我をすることがある。
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だから、夜中の防砂林へも確認のため入っていかざるを得ないのだ。
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直後のブログには敢えて記さなかったが、捕獲器は2個用意されていた。
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そうすることで捕獲機会が増え、より確実に保護できると思ってのことだ。
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しかし老練なミリオンは、容易く捕獲器に入らなかった。


2011年1月4日
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私の前を行くのはゆきママさんだ。
昼間とはいえ、防砂林の中はあまり気持ちの良い場所ではない。



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2日前に仕掛けた唐揚げが干乾びる頃なので、その交換に赴いたのだ。


捕獲器を置く場所も替えてみた。
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そして、もう一つの捕獲器をエサ場の中へ仕掛けた。


捕獲器に誘うには、ミリオンを満腹にしてはならない。
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そこで世話をする人たちへ、メッセージを書きしたためる事にした。



だが、我々が片付けた食器を捜し出し、ミリオンへエサを与える身勝手なエサやりさんの妨害に遭い、この日も捕獲できなかった。

私たちに残された時間は、あと1日になった。




2011年1月5日
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エサ場内に仕掛けてあった捕獲器が消えていた。
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ミリオンの保護に公然と異を唱える人たちがいる。

彼らの言い分は「手術するのは可哀想だ」「ココからいなくなるのは寂しい」等々。

だがそんなエゴイスティックな意見に、貸す耳を私は持っていない。

ミリオンが我が子でも同じ台詞を言えるのだろうか‥‥?
彼らに訊いてみたいものだ。






そんな連中が捕獲器を持ち去った可能性も考えられた。
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だが、犯人は意外な人物だった。



それは‥‥ミリオンを捕獲したらすぐに横須賀の病院へ移送することを伝えていたはずのIおばさんだ。



捕獲器に入ったミリオンを発見し慌てたIおばさんが、市内の病院へ運びこんでいたのだ。
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キャリーから出たミリオンは、診察台に移された。
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エリザベスカラーを装着しているからか、ミリオンは借りてきた猫のように大人しかった。


私はNTさん運転の車で一路横須賀へ向かった。
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後部座席では、ミリオンが観念したように寝息を立てていた。


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去年の7月から教えを受けていた医師に、ミリオンを委ねた。


帰りの車の中、私は脱力感に襲われていた。
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ここ数日の捕獲作戦で昂った神経がいきなり弛緩したためだと思われる。


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湘南に戻った私は、夕闇が濃くなった海岸へ足を運んだ。


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この場所へミリオンが再び戻ってくることはあるのか‥‥それは、まだ分からない。


2011年1月6日
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予告どおり護岸工事が始まり、重機がけたたましい音を立てていた。
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ミリオンのエサ場横の通路をダンプが引っ切り無しに行き交っている。


私たちは、ぎりぎりのところで間に合ったのだ。
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役目が終わった貼紙を貼り替えることにした。


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この日、ミリオンは右耳の手術を受けた。その手術が無事終わったことを私が知ったのは、翌7日だった。
だが、これもただの通過点に過ぎない。





ミリオンの闘いは、まだ終わっていなかったのだ。




<つづく>



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病魔と闘う猫 その七『声』

2011年01月21日 13:16

ミリオンは湘南海岸で野良の母猫から生まれた。
それは1999年秋の頃だというから、今年で12歳を迎える。

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数年前から、このエリアに残る最後の1匹に、ミリオンはなっていた。


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そのミリオンも病魔に侵され、今は海岸を離れ横須賀の病院で治療を受けている。
(上の3枚はHさん撮影)




2011年1月6日に癌の摘出手術を受けたミリオン。
翌朝にはガツガツと食事をし、先生を驚かせるほどの快復ぶりを見せていた。





2011年1月14日
私は、そんなミリオンを見舞うことにした。

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その日はちょうど抜糸の日だった。
大手術だったにも拘らず、縫合跡もきれいで、心配された顔への影響もほとんど無かった。
抜糸する間、ミリオンは嫌がりもせずじっとしていた。
私が診察台に近づくと、ミリオンはそっと顔を寄せてきた。
私はミリオンの頭を撫でながら「ミリオン、よく頑張ったな」と褒めてやった。
先生も「名前を呼ぶとお返事するし、とってもいい子ですよ」と目を細めた。



ケージへ戻されたミリオンに別れの挨拶をしようと、私は声をかけた。
「ミリオン、また来るからな。それまで先生の言うことを聞くんだぞ」

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するとミリオンは私の顔を見つめ、大きな鳴声を上げた。

私がその部屋を出てからも、ミリオンは何かを訴えるように懸命に啼きつづけた。
だが周りの患者の声が混じり、私はミリオンが何を言っているのか聞き取れなかった。
「今度来た時にゆっくり聞いてやるよ」私はそう独りごち、病院を後にした。




それにしても、ミリオンは私に何を訴えていたのだろう‥‥?
以来、ミリオンの鳴声が耳から離れなくなった。




翌1月15日
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船宿エリア
私は2日ぶりに船宿を訪ねた。

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寒さのためか、野良たちはいかにも無聊そうだった。


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ミリオンを保護した安堵からか、私は心身ともに疲弊し、この1週間で野良を訪ねたのはこの日で3日目だった。
さらに翌16日も、私は海岸へ赴くことなく、倦怠感を抱えたまま1日を無為に過ごした。




そして17日‥‥その日の朝、私は1通のメールを受け取った。
それは16日の夜、横須賀の医師が留守電へ残したメッセージを要約した、NTさんからのメールだった。

NTさんは慌てたのか、そのメールには主語がなく、最初私は別の野良のことだと勘違いしていた。
しかしその文面からすぐにミリオンのことだと判ったが、その内容を理解するのにしばしの時間が必要だった。

何故ならそのメールには、にわかに信じ難いことが書かれていたからだ。

とにかく、横須賀の病院へ行かねばならない‥‥
だがその時私の睡眠サイクルは大きく狂い、さらに睡眠剤のせいで起き上がることすら出来なかった。




1月18日午後 今回は船宿を担当するSさんの車で横須賀の病院へ赴くことになった。
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私は国道134号線でSさんに拾ってもらい、ミリオンが待つ横須賀へ急いだ。



私が見舞ってから2日後の2011年1月16日21時30分、ミリオンと病魔との闘いはいきなり幕を閉じた。



ミリオンは無言のまま、私たちを迎えた。
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16日の夕刻までミリオンは元気でいたという。
先生によると、朝は食欲もあり順調に快方へ向かっていたが、夕方糞をした直後に倒れたそうだ。

その後先生が懸命に治療をしたが、ミリオンはお気に入りだったゼブラ模様の毛布と戯れながら静かに息を引き取ったという。




この時先生から、病理検査の結果を聞かされた。
それによると、ミリオンの右耳はやはり扁平上皮癌に侵されていた。
さらにリンパ管への転移が認められていることから、脳を含めた他の臓器へも転移しているだろうとも‥‥




お世話になった先生に礼を言い、私たちはミリオンと一緒に湘南を目指した。
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私は車窓の風景に目を遣りながら、ここ半年のことを顧みた。


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私のしたことは、果たして正しかったのだろうか‥‥?
保護したことで、ミリオンの寿命を徒らに縮めたのではないだろうか‥‥?


ただ最後の10日間、ミリオンが暖かい場所で耳の痒みから開放された時間を過ごしたことだけは救いだった。



Hさんからミリオンの通夜をしたいという願いがあり、途中◯◯市に立ち寄ることになった。
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ミリオンの亡骸はHさんに託された。


私は独り、夕闇迫る湘南海岸へ赴いた。
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ミリオンのエサ場の上に、満月まであと2日の丸い月が架かっていた。


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「ミリオン、今夜はHさんにうんと甘えるんだよ」私はそう呟き、海岸を後にした。


1月19日 湘南海岸
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ゆきパパさんを先頭に、ミリオンの葬儀に参列する人たちが歩いてくる。
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ミリオンはHさんの胸に抱かれている。
仔猫の頃から世話をしていたHさんは、ミリオンに添い寝をして一夜を明かしたそうだ。



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ミリオンは、2週間ぶりに棲み慣れたエサ場へ戻ってきた。


狭いエサ場の中へ埋葬することは難しいので、少し離れた防砂林にミリオンを連れていった。
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お気に入りのゼブラ模様の毛布にくるまれたミリオン。
最期はこの毛布を足で踏み、口を寄せ愛しそうに舐めていたという。
因みにミリオンの母猫の被毛は黒シロ柄だった。


ミリオンは亡き母を思い出していたのかもしれない。



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Hさんがミリオンのためにお経を唱えはじめた。ゆきママさんも一緒に手を合わせる。


そこへKおじさんが駆けつけてきた。
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写真を前に、生前のミリオンの話が次々に語られた。


訃報を知ったブースカさんが、花を手にミリオンへ最後の挨拶をしにやって来た。
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Hさんに抱かれ、ミリオンが静かに墓穴へ移される。
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母を想い起こさせたゼブラ模様の毛布の上に、ミリオンは横臥した。


参列者の手によりミリオンの埋葬がはじまった。
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ミリオンの体が少しずつ土に隠れてゆく。


土がかからぬようティッシュで顔を覆い、その上に花を供えた。
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そして最後にSさんの手で、ミリオンの体へ土がかけられた。
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ミリオンに供える花を用意したせいで、遅れてKおばさんがやって来た。
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そして最後に参列者全員が焼香を行い、ミリオンの葬儀、埋葬はつつがなく終わった。


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長く病魔と闘ったミリオンの体は、波音が聴こえるこの場所でひっそりと眠り、やがて土に還る。
そして虹の橋を渡ったミリオンの魂は、きっと母や兄弟たちと再会していることだろう。



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ミリオンと最後の別れをした参列者たちは、来た道を戻っていった。




今回の結果を知り、ミリオンの保護、手術に関してとやかく言う人はいるだろう。
どんな謗りも私は甘受する覚悟だ。

但し、ミリオンを懸命に治療してくれた先生や私に協力してくれた人たちへの誹謗は絶対許さない。

私にしても、言葉だけの無責任なニンゲンの言うことなど気にするつもりは、ない!





私が唯一気になっているのは、私に向けられたミリオンの最後の鳴声だ。
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「ミリオン、お前はあの時私に何を訴えようとしたんだ?」
「やはり恨み言を言いたかったのか‥‥?」




たとえ罵られてもいい‥‥

ミリオン、お前の声を‥‥私はもう一度‥‥聴きたい‥‥




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遺影

2011年01月22日 22:03

2011年1月20日 夕刻の湘南海岸
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ミリオンのエサ場近くでは、今日も護岸工事が行われていた。


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砂を搬入するダンプカーの出入りが引っ切り無しに続いている。


そこから少し離れた防砂林の中で、ミリオンは永久(とわ)の眠りに就いている。
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私は用意してきた遺影をそっと供えた。それは特集記事の最後を飾った妖艶な表情でこちらを見返す、プロフィール写真だ。


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今回のミリオン逝去に対して多数の温かいコメント、メールを頂き感謝しています。
今はまだ全ての方に返信できませんが、時間が出来次第お返事を差し上げます。

私がしたことは正しかったのか‥‥?
ミリオンの最後の言葉が判らなかった私には何も言えない。

ただ、これだけは言える。
あのまま放置していれば、野良の常として、死期を悟ったミリオンは人目に触れない防砂林の奥深くに身を隠し、独り寂しく癌に蝕まれて死んでいっただろうと。
そして次に待つのは死肉を漁るカラスの攻撃だ。奴らの鋭い嘴でミリオンの身体はズタズタに引き裂かれてしまう。
ミリオンに意識がなければ苦痛はないが、息があるうちから彼らの攻撃は容赦なく始まるだろう。
私は以前、カラスについばまれたタヌキの亡骸を防砂林で見たことがあるが、骨もあらかた無くなっていた。

ミリオンを保護などせず、生まれ育った海岸で静かに死期を迎えさせてやるべきだという謗りに近い公開コメントを寄せてきたヒトがいたが、あまりに無知で身勝手なその内容に承認する気にもならなかった。
この人物とは以前ミリオン保護について口論したことがある。
その際聞いた理屈だとミケやサンマも保護せず放置しろということになる。
これが無分別な若者なら分かるが、眼鏡をかけた物分りが良さそうな50男だから始末が悪い。
コメントの最後には私に向かって「安眠できると思うなよ」と脅しの文句まで付け加える念の入れようだ。
まさに知性と人格を疑う内容に終始している。ふくよかな奥さんと海岸散策するのは構わないが、他の海岸猫には係わって欲しくないものだ。保護するときにまた邪魔をされては堪らない。
この手のニンゲンと接すると、怒りより虚しさを感じてしまう。


野良が外で安らかに死を迎えることなど出来はしないのだ。



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