2010年05月31日 00:00
PM 03:30
昨夜から降り出した雨は夜半過ぎには止み、朝には青空が広がっていた湘南海岸だが、この時刻西の空は新たな雲に覆われはじめていた。
凪いだ海にサーファーの姿はなく、少年がひとりその海に向かって石を投げ続けていた。

昨日同様気温は低く、冷たい風が肌を刺す。
サンマは、いつもの場所にいた。

そのサンマの顔をよく見ると、帯状の汚れが付いていた。
「サンマ、その顔どうした、どこで付けたんだ?」
いつもの場所に、ミケはいなかった。

エサ場から40mほど離れた植込みの中に、ミケはうずくまっていた。

陽が射していた頃は暖かだったと思われるその場所も、今は冷たい風が吹きこんでいる。
私の来訪を知ったミケが、エサ場へ戻ってきた。

すると、そのミケの姿を見たサンマが植込みから出てきた。
ところがサンマはミケには近づかず、柵の中へ入っていった。

そして、水を飲みはじめた。
ミケもサンマのあとを追うように、柵の中へ入っていく。

ミケも水が飲みたいのだ。
しかしこの二匹、小屋の前にも水があるのにどういう訳かこの茶碗の水を飲みたがる。
サンマは水を飲むのを止め、珍しく柵で爪を研ぎはじめた。

サンマはミケの歓心を買おうとしているのだろうか。
しかし、ミケはそんなサンマを振り返りもせず、水を飲み続けた。

ミケを見つめるサンマの眼は、いつになく真剣だ。
サンマが再び水を飲みはじめた。
どうやらさっきはミケに遠慮して、水を飲むのを途中で止めたようだ。

ミケとサンマの力関係は、既に決定されているのだろう。

ミケは、今日も私の膝の上に乗ってきた。

今日は誰の膝にも乗っていないのか‥‥?
我々の目の前で、サンマが用を足しはじめた。

サンマは自分の臭いを確認し‥‥

ちゃんと後始末をした。
そして、我々の側にうずくまった。

私の右膝は空いていたが、サンマが乗ってくることはなかった。
私はミケを膝から降ろした。

サンマがそのミケを見つめはじめた。
その視線を嫌ってか、ミケはそっとサンマから離れた。

サンマは眼を閉じた。しかしサンマは、けっして眠い訳ではない。

ミケが私のあとを追って、サイクリングロードを渡ってきた。

そのミケのいる方を、サンマの顔がしっかり向いている。
眼を閉じているのは見せかけで、実際は一時もミケから眼を離していない。
サンマは惚けた顔をしているが、なかなかの役者なのだ。
今度は、ミケが用足しのために穴を掘りはじめた。

その隙を突いてサンマがミケに近づいた。しかしその気配を感じたミケがサンマを一喝した。
サンマはミケのパンチを食らう前に、跳び退いた。サンマにも最低限の学習能力はある。

サンマは離れたところで、ミケの用足しが終わるのを待つことにしたようだ。
ミケが険しい眼でサンマを睨みつけた。

親に叱られた子供のように、サンマはうな垂れている。
再度言うが、二匹の力関係は既に決定されている。
その時、パンパンッという大きな音がした。
音がした方を見ると、近くの浜で子供達が爆竹か花火をしていた。

ミケは慌ててエサ場の中へ逃げこんだ。
ところが、サンマは意外な行動に出た。
逃げるどころか、その音がした方へ近づいていったのだ。

そして道路の真ん中にうずくまり、音がした方を凝視した。

この時もサンマの眼は閉じられていた。しつこいようだが、サンマは眠いわけではない。

その時、背の高いティーンエージャーと思われる女の子がサンマに近づいてきた。
そして何度も「カワイイ、カワイイ」と言いながら、携帯でサンマを撮影した。

カメラ慣れしたサンマは、ちゃんとポージングしている。
ミケを捜したが、どこへ潜りこんでいるのか分からなかった。

猫は隠れるのが得意な動物である。
「サンマ、もっと自分に自信を持てよ!」

「そして、ミケに振り回されないようにしろ」

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昨夜から降り出した雨は夜半過ぎには止み、朝には青空が広がっていた湘南海岸だが、この時刻西の空は新たな雲に覆われはじめていた。
凪いだ海にサーファーの姿はなく、少年がひとりその海に向かって石を投げ続けていた。

昨日同様気温は低く、冷たい風が肌を刺す。
サンマは、いつもの場所にいた。

そのサンマの顔をよく見ると、帯状の汚れが付いていた。
「サンマ、その顔どうした、どこで付けたんだ?」
いつもの場所に、ミケはいなかった。

エサ場から40mほど離れた植込みの中に、ミケはうずくまっていた。

陽が射していた頃は暖かだったと思われるその場所も、今は冷たい風が吹きこんでいる。
私の来訪を知ったミケが、エサ場へ戻ってきた。

すると、そのミケの姿を見たサンマが植込みから出てきた。
ところがサンマはミケには近づかず、柵の中へ入っていった。

そして、水を飲みはじめた。
ミケもサンマのあとを追うように、柵の中へ入っていく。

ミケも水が飲みたいのだ。
しかしこの二匹、小屋の前にも水があるのにどういう訳かこの茶碗の水を飲みたがる。
サンマは水を飲むのを止め、珍しく柵で爪を研ぎはじめた。

サンマはミケの歓心を買おうとしているのだろうか。
しかし、ミケはそんなサンマを振り返りもせず、水を飲み続けた。

ミケを見つめるサンマの眼は、いつになく真剣だ。
サンマが再び水を飲みはじめた。
どうやらさっきはミケに遠慮して、水を飲むのを途中で止めたようだ。

ミケとサンマの力関係は、既に決定されているのだろう。

ミケは、今日も私の膝の上に乗ってきた。

今日は誰の膝にも乗っていないのか‥‥?
我々の目の前で、サンマが用を足しはじめた。

サンマは自分の臭いを確認し‥‥

ちゃんと後始末をした。
そして、我々の側にうずくまった。

私の右膝は空いていたが、サンマが乗ってくることはなかった。
私はミケを膝から降ろした。

サンマがそのミケを見つめはじめた。
その視線を嫌ってか、ミケはそっとサンマから離れた。

サンマは眼を閉じた。しかしサンマは、けっして眠い訳ではない。

ミケが私のあとを追って、サイクリングロードを渡ってきた。

そのミケのいる方を、サンマの顔がしっかり向いている。
眼を閉じているのは見せかけで、実際は一時もミケから眼を離していない。
サンマは惚けた顔をしているが、なかなかの役者なのだ。
今度は、ミケが用足しのために穴を掘りはじめた。

その隙を突いてサンマがミケに近づいた。しかしその気配を感じたミケがサンマを一喝した。
サンマはミケのパンチを食らう前に、跳び退いた。サンマにも最低限の学習能力はある。

サンマは離れたところで、ミケの用足しが終わるのを待つことにしたようだ。
ミケが険しい眼でサンマを睨みつけた。

親に叱られた子供のように、サンマはうな垂れている。
再度言うが、二匹の力関係は既に決定されている。
その時、パンパンッという大きな音がした。
音がした方を見ると、近くの浜で子供達が爆竹か花火をしていた。

ミケは慌ててエサ場の中へ逃げこんだ。
ところが、サンマは意外な行動に出た。
逃げるどころか、その音がした方へ近づいていったのだ。

そして道路の真ん中にうずくまり、音がした方を凝視した。

この時もサンマの眼は閉じられていた。しつこいようだが、サンマは眠いわけではない。

その時、背の高いティーンエージャーと思われる女の子がサンマに近づいてきた。
そして何度も「カワイイ、カワイイ」と言いながら、携帯でサンマを撮影した。

カメラ慣れしたサンマは、ちゃんとポージングしている。
ミケを捜したが、どこへ潜りこんでいるのか分からなかった。

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2010年05月30日 00:00
PM 03:45
湘南海岸の空は、灰色の雲にすっぽりと覆い尽くされていた。
気温はこの時期としては異常に低く、寒いくらいだ。

海は凪ぎ、湖のように静まり返っている。
ミケのエサ場には、一眼レフを提げた男性が訪れていた。
彼は私のブログを見てここへ来たと言う。自己紹介をした彼のことを、私も知っていた。
ブロガー仲間のプシュケさんだ。

最近のサンマは男女の区別なく、膝に乗ってくる。
サンマがプシュケさんの膝に乗ると、ミケが「次はワタシの番よ」とばかりに順番待ちをする。

ミケとサンマは膝の温もりを知ってから、虎視眈々と膝が空くのを窺うようになった。
膝に乗っている時のミケは、おとなしくしているのだが‥‥

いざ降ろそうとすると、本気で怒り出すから始末がわるい。
この時も、低い唸り声を発してプシュケさんに訴えている。
プシュケさんの膝から降ろされたミケは、その憤りを側にいたサンマにぶつけた。
ミケが、いきなりサンマに猫パンチを繰り出したのだ。
バシッ! 予期せぬミケの猫パンチを、サンマはまともに食らった。
「ミケ、それは八つ当たりってもんだ。サンマは何も悪くないだろ!」

理不尽なミケのパンチを食らったサンマは、いつもの場所へ逃れた。
サンマにとっては、とばっちりを食ったのと同じだ。
これから先も、ミケに翻弄されるサンマが不憫に思えてきた。
プシュケさんは、ミケをモデルにシャッターを押す。

この時の写真はプシュケさんのブログ『プシュケの小箱』でご覧ください。
そこへ、TANYさんがやって来た。今日二度目の訪問だと言う。

TANYさんが腰を下ろすと、ミケはすかさず膝に乗った。
そして、いつもの穏やかな表情に、ミケは戻った。

TANYさんは「折りたたみ式」と言って、ミケの耳を裏返した。
膝に乗ったミケは、そんなことは一切気にしない。されるがままだ。

愛猫と22年間暮らしたTANYさんは、猫の習性を熟知している。
TANYさんが、ミケを膝から降ろそうとしている。

膝から降りるつもりなどないミケは、低い唸り声で怒りを表している。
TANYさんが抱き上げると、ミケはズボンに爪を立てて抵抗する。

そして執拗に膝の上へ戻ろうとする。

TANYさんは一気にミケを持ち上げ、地面に降ろした。
TANYさんと入れ違いに、中年の女性がエサを持ってやって来た。

初めて会うこの女性も、三匹の猫を飼っている。そして、余ったエサを海岸の野良に持ってくると言う。
水を飲み終えたサンマが‥‥

カラスによって地面にこぼされたエサを、口にした。
「サンマ、そんな砂だらけのエサ食べるんじゃない!」
プシュケさんが置いていったくれたにぼしと、さっきの女性のエサをトレーに乗せてサンマに与えた。

サンマは、ガツガツとエサを食べはじめた。
可愛い女の子がそっとミケに近づき、優しく撫でる。それを道路からお母さんが見守っている。

ミケは分かっているようだ、優しい人かそうでない人かが。
次にエサ場を訪れたのは、さらに小さく可愛い女の子とその両親だ。
その小さな女の子の名は『Yちゃん』。
私がYちゃんに「猫は好き?」と訊くと、「猫も犬も好き」と応えた。

私は願った、Yちゃんが今の気持ちをずっと持ち続けてくれることを。
その親子三人と連れられた犬を遠目から見ているうちに、私の願いは叶いそうだと感じた。
ミケの猫パンチのショックから立ち直ったサンマが、植込みから出てきた。

あんな酷い目に遭っても、サンマはミケの事が気になるのだ。
「サンマ、惚れた方は辛いな~」
今日も、ミケはマンウォッチングに余念がない。


ミケの後ろから大型犬が近づいてくる。ミケはまったく気づいていない。

その大型犬を認めても、ミケは動揺を見せない。
私が側にいるという安心感があるにせよ、いやに落ち着いているなと思った。
サンマの方が警戒心を露にしている。

普段は道路に出ることも希なミケが、珍しくその場から離れようとしない。

サンマはミケに付き合いきれないとばかり、いつもの場所へ戻って船を漕ぎはじめた。

ミケがついに私の膝に乗ってきた。

私は左の膝だけをミケに与えた。
写真に撮ることはほとんどないが、私も時折ミケを膝に乗せる。

私はミケを膝に乗せ、しばらく夕闇が迫る海を眺めることにした。

気温はさらに下り、吹く風に震えるほどだったが、左の膝だけがほのかに暖かかった。

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湘南海岸の空は、灰色の雲にすっぽりと覆い尽くされていた。
気温はこの時期としては異常に低く、寒いくらいだ。

海は凪ぎ、湖のように静まり返っている。
ミケのエサ場には、一眼レフを提げた男性が訪れていた。
彼は私のブログを見てここへ来たと言う。自己紹介をした彼のことを、私も知っていた。
ブロガー仲間のプシュケさんだ。

最近のサンマは男女の区別なく、膝に乗ってくる。
サンマがプシュケさんの膝に乗ると、ミケが「次はワタシの番よ」とばかりに順番待ちをする。

ミケとサンマは膝の温もりを知ってから、虎視眈々と膝が空くのを窺うようになった。
膝に乗っている時のミケは、おとなしくしているのだが‥‥

いざ降ろそうとすると、本気で怒り出すから始末がわるい。
この時も、低い唸り声を発してプシュケさんに訴えている。
プシュケさんの膝から降ろされたミケは、その憤りを側にいたサンマにぶつけた。
ミケが、いきなりサンマに猫パンチを繰り出したのだ。
バシッ! 予期せぬミケの猫パンチを、サンマはまともに食らった。
「ミケ、それは八つ当たりってもんだ。サンマは何も悪くないだろ!」

理不尽なミケのパンチを食らったサンマは、いつもの場所へ逃れた。
サンマにとっては、とばっちりを食ったのと同じだ。
これから先も、ミケに翻弄されるサンマが不憫に思えてきた。
プシュケさんは、ミケをモデルにシャッターを押す。

この時の写真はプシュケさんのブログ『プシュケの小箱』でご覧ください。
そこへ、TANYさんがやって来た。今日二度目の訪問だと言う。

TANYさんが腰を下ろすと、ミケはすかさず膝に乗った。
そして、いつもの穏やかな表情に、ミケは戻った。

TANYさんは「折りたたみ式」と言って、ミケの耳を裏返した。
膝に乗ったミケは、そんなことは一切気にしない。されるがままだ。

愛猫と22年間暮らしたTANYさんは、猫の習性を熟知している。
TANYさんが、ミケを膝から降ろそうとしている。

膝から降りるつもりなどないミケは、低い唸り声で怒りを表している。
TANYさんが抱き上げると、ミケはズボンに爪を立てて抵抗する。

そして執拗に膝の上へ戻ろうとする。

TANYさんは一気にミケを持ち上げ、地面に降ろした。
TANYさんと入れ違いに、中年の女性がエサを持ってやって来た。

初めて会うこの女性も、三匹の猫を飼っている。そして、余ったエサを海岸の野良に持ってくると言う。
水を飲み終えたサンマが‥‥

カラスによって地面にこぼされたエサを、口にした。
「サンマ、そんな砂だらけのエサ食べるんじゃない!」
プシュケさんが置いていったくれたにぼしと、さっきの女性のエサをトレーに乗せてサンマに与えた。

サンマは、ガツガツとエサを食べはじめた。
可愛い女の子がそっとミケに近づき、優しく撫でる。それを道路からお母さんが見守っている。

ミケは分かっているようだ、優しい人かそうでない人かが。
次にエサ場を訪れたのは、さらに小さく可愛い女の子とその両親だ。
その小さな女の子の名は『Yちゃん』。
私がYちゃんに「猫は好き?」と訊くと、「猫も犬も好き」と応えた。

私は願った、Yちゃんが今の気持ちをずっと持ち続けてくれることを。
その親子三人と連れられた犬を遠目から見ているうちに、私の願いは叶いそうだと感じた。
ミケの猫パンチのショックから立ち直ったサンマが、植込みから出てきた。

あんな酷い目に遭っても、サンマはミケの事が気になるのだ。
「サンマ、惚れた方は辛いな~」
今日も、ミケはマンウォッチングに余念がない。


ミケの後ろから大型犬が近づいてくる。ミケはまったく気づいていない。

その大型犬を認めても、ミケは動揺を見せない。
私が側にいるという安心感があるにせよ、いやに落ち着いているなと思った。
サンマの方が警戒心を露にしている。

普段は道路に出ることも希なミケが、珍しくその場から離れようとしない。

サンマはミケに付き合いきれないとばかり、いつもの場所へ戻って船を漕ぎはじめた。

ミケがついに私の膝に乗ってきた。

私は左の膝だけをミケに与えた。
写真に撮ることはほとんどないが、私も時折ミケを膝に乗せる。

私はミケを膝に乗せ、しばらく夕闇が迫る海を眺めることにした。

気温はさらに下り、吹く風に震えるほどだったが、左の膝だけがほのかに暖かかった。

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2010年05月29日 00:00
PM 04:40
この時刻、湘南岸の空は鈍色の低い雲に覆われていた。
西の空からは黒い雲が近づいて来ていて、雨が近いことを教えてくれる。

エサ場に着くと、ミケが小屋の方を覗きこんでいた。

ミケの小屋の前には猫好きおじさんがいた。おじさんは何やらブツブツと文句を言っている。
近づいてみると、サンマがミケの小屋に入っていた。
おじさんはミケのために、サンマを小屋から出そうとしていたのだ。

サンマは渋々小屋から出てきた。
「ミケ、小屋に入るなら今のうちだぞ」

しかしミケは小屋には入らず、水を飲むサンマに近づいていった。

そして、水を飲む順番を待つように、その場にしゃがみこんだ。
ところが今度も、ミケは水を飲むことなく、サンマと一緒に猫好きおじさんの足元へ寄っていった。

そしてサンマが向いの砂浜で、用を足して戻ってきた直後に、それは起こった。
その瞬間は、突然やってきた。
その時、私は迂闊にもカメラを構えていなかった。
決定的瞬間を逃すまいと、私はピントが合う前に構わずシャッターを押した。
だから、ミケとサンマが鼻をくっつけて挨拶をした瞬間の写真はピントが甘くなった。

ミケとサンマの挨拶を、私は初めて目撃した。
ミケはここにきて、やっとサンマのことを認めたようだ。
ミケとサンマは、私の知らぬ間に挨拶を交わす間柄になっていた。

猫好きおじさんを見送るつもりなのか、二匹は仲良く並んでいる。

そしておじさんは、二匹の見送りを受けて帰っていった。
猫好きおじさんが見えなくなると‥‥

二匹は顔を合わせた。
と、そこへ今度は長靴おじさんが通りかかった。

釣り師のおじさんは明日の天気が気になっているようだ。
私が「予報では明日一日雨が降る」と応えると、おじさんは渋面を作った。
この頃から、時折雨がポツリポツリと落ちてきた。

その後、ミケとサンマが近づくことはなかった。

いつものように微妙な距離をおいて、お互い顔も合わせない。
ミケは、今日もマンウォッチングをしている。

そのミケをサンマが時折見つめている。


今まで呆けた顔でうずくまっていたサンマが、いきなり駆け出した。

サンマからただならぬ気配を感じた私は、あとを追った。
私が既に薄暗くなった植込みを覗くと、そこにチビ太郎の影が見えた。
チビ太郎はその時、大きな鳴き声を上げた。私は暗闇に向けてシャッターを何度か押してみた。

すると闇の中に、チビ太郎の不敵な顔が浮かび上がった。
チビ太郎はさらに大きな鳴き声を上げ、徐々に近づいてきた。

私との距離は一m半ほどになった。
サンマは勇敢にもチビ太郎と向かい合っていた。

但し、チビ太郎との間に防風ネットを挟んで‥‥
「何やってんだサンマ、初めから逃げ腰でどうするよ」
腹が減っているかと思い、持っていたエサを与えてみたが‥‥

チビ太郎の腹は満たされているようだ。
サンマがネットを越えて、チビ太郎と対峙した。

それを見たチビ太郎の眼光が、鋭さを増した。
サンマはすぐに傘の陰に隠れてしまった。

「サンマ、チビ太郎が恐いならこれ以上近づくんじゃないぞ」
チビ太郎は東側の植込みを出て、西側の植込みに入っていった。

サンマもチビ太郎を追って、西側の植込みに来ている。
チビ太郎は最後に大きな鳴き声を上げ、植込みの奥へ姿を消した。

サンマは安堵の表情を浮かべる。
ミケはチビ太郎が残したエサを眼の前にし眼を閉じている。

二匹のオスが睨み合っていた時に食べたのか、エサは少し減っていた。

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この時刻、湘南岸の空は鈍色の低い雲に覆われていた。
西の空からは黒い雲が近づいて来ていて、雨が近いことを教えてくれる。

エサ場に着くと、ミケが小屋の方を覗きこんでいた。

ミケの小屋の前には猫好きおじさんがいた。おじさんは何やらブツブツと文句を言っている。
近づいてみると、サンマがミケの小屋に入っていた。
おじさんはミケのために、サンマを小屋から出そうとしていたのだ。

サンマは渋々小屋から出てきた。
「ミケ、小屋に入るなら今のうちだぞ」

しかしミケは小屋には入らず、水を飲むサンマに近づいていった。

そして、水を飲む順番を待つように、その場にしゃがみこんだ。
ところが今度も、ミケは水を飲むことなく、サンマと一緒に猫好きおじさんの足元へ寄っていった。

そしてサンマが向いの砂浜で、用を足して戻ってきた直後に、それは起こった。
その瞬間は、突然やってきた。
その時、私は迂闊にもカメラを構えていなかった。
決定的瞬間を逃すまいと、私はピントが合う前に構わずシャッターを押した。
だから、ミケとサンマが鼻をくっつけて挨拶をした瞬間の写真はピントが甘くなった。

ミケとサンマの挨拶を、私は初めて目撃した。
ミケはここにきて、やっとサンマのことを認めたようだ。
ミケとサンマは、私の知らぬ間に挨拶を交わす間柄になっていた。

猫好きおじさんを見送るつもりなのか、二匹は仲良く並んでいる。

そしておじさんは、二匹の見送りを受けて帰っていった。
猫好きおじさんが見えなくなると‥‥

二匹は顔を合わせた。
と、そこへ今度は長靴おじさんが通りかかった。

釣り師のおじさんは明日の天気が気になっているようだ。
私が「予報では明日一日雨が降る」と応えると、おじさんは渋面を作った。
この頃から、時折雨がポツリポツリと落ちてきた。

その後、ミケとサンマが近づくことはなかった。

いつものように微妙な距離をおいて、お互い顔も合わせない。
ミケは、今日もマンウォッチングをしている。

そのミケをサンマが時折見つめている。


今まで呆けた顔でうずくまっていたサンマが、いきなり駆け出した。

サンマからただならぬ気配を感じた私は、あとを追った。
私が既に薄暗くなった植込みを覗くと、そこにチビ太郎の影が見えた。
チビ太郎はその時、大きな鳴き声を上げた。私は暗闇に向けてシャッターを何度か押してみた。

すると闇の中に、チビ太郎の不敵な顔が浮かび上がった。
チビ太郎はさらに大きな鳴き声を上げ、徐々に近づいてきた。

私との距離は一m半ほどになった。
サンマは勇敢にもチビ太郎と向かい合っていた。

但し、チビ太郎との間に防風ネットを挟んで‥‥
「何やってんだサンマ、初めから逃げ腰でどうするよ」
腹が減っているかと思い、持っていたエサを与えてみたが‥‥

チビ太郎の腹は満たされているようだ。
サンマがネットを越えて、チビ太郎と対峙した。

それを見たチビ太郎の眼光が、鋭さを増した。
サンマはすぐに傘の陰に隠れてしまった。

「サンマ、チビ太郎が恐いならこれ以上近づくんじゃないぞ」
チビ太郎は東側の植込みを出て、西側の植込みに入っていった。

サンマもチビ太郎を追って、西側の植込みに来ている。
チビ太郎は最後に大きな鳴き声を上げ、植込みの奥へ姿を消した。

サンマは安堵の表情を浮かべる。
ミケはチビ太郎が残したエサを眼の前にし眼を閉じている。

二匹のオスが睨み合っていた時に食べたのか、エサは少し減っていた。

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2010年05月28日 00:00
PM 03:55
昨日の雨は夜半過ぎに上り、昼間青空が広がっていた湘南海岸。
しかし、西の空には新たな雨雲が近づきつつあった。

吹く風が存外冷たいのに驚いた。
ミケのエサ場には先客がいた。

ウータンさん、ブースカさん夫妻だ。
ミケは、ウータンさんの膝の上にいた。

ウータンさんとブースカさんは、昨日の出来事を私のブログで知っていた。
「びしょ濡れのミケを見て涙が出てきた」とブースカさんは言った。
実際、昨日はこいつに心配させられた。

でも、そんなこともミケのくつろいだ顔を見れば、もうどうでもよくなる。
サンマはと言えば‥‥相変わらず、いつもの場所で‥‥

いつもの惚けた顔をしていた。
しばらくすると、ふたりはミケに別れの挨拶をし‥‥

帰っていった。
鉄砲通りで飲食店を営むふたりは、これから開店の準備に追われるのだろう。
そのふたりの姿が見えなくなるまで、ミケは道路から見送っていた。

昨夜ミケが姿を現した柵が、目の前に見える。
普段は独りでサイクリングロードを渡る事すらないミケが、何故昨日に限って柵を越え砂浜へ行ったのか‥‥
ブースカさんの推理はこうだ‥‥
犬が防風林の遊歩道からミケに近づいてきた。それもリードを外された状態の犬が。

その時ミケは柵の外へ出ていた。それも植込みにも逃げこめないエサ場の外にいたのだ。
そこでミケは仕方なく、サイクリングロードを渡り、砂浜に逃げこんだのだ。

犬が去ってからも、恐怖のためミケは砂浜の物陰に隠れ続けていた。
夜中近くになり、エサ場にいる私の姿を発見したミケが、急いで駆け寄ってきたというわけだ。
ブースカさんの納得いく推理に、私はワトスンよろしく頷くばかりだった。
そして、私もブースカさんの推理に同意した。
ミケがエサ場の方を振り返った。その表情は少し険しいものだった。

ミケの視線を辿ると、一羽のカラスがエサ場に下りているのが見えた。
ミケがサイクリングロードを横切る。

しかし、この行動は私に近づくためのものであり、普段ミケがサイクリングロードを渡ることはない。
砂浜にミケの用事はまったくない。

若い奥様方のおしゃべりに聞耳を立てるミケ。

同じ女(メス)として、やはり興味があるのだろうか、ミケはジッと聴き入っていた。
そこへ、先生がやってきた。
先生の自転車のカゴには、いつものように猫のエサと紙容器が入っている。

ミリオンの所へも行ってきた先生は、捕まえることができたらミリオンを病院へ連れて行くつもりだと言った。
ねこみどりさんが、エサ場を訪れた。

ミケは早速エサをもらっている。
ミケはねこみどりさんの膝に乗りたいくせに、何故か遠慮している。

ミケには、ねこみどりさんの「夕方ミケちゃんを膝に乗せると切なくなる」という気持ちが分かっているのだろうか?
サンマの様子を見るねこみどりさん。

しかし、サンマに反応はない。
ところが、私が少し垂れていた鼻水を拭き取ると、サンマは植込みから出て、ねこみどりさんに擦り寄っていった。

それを見たミケが、サンマに近づいていく。
そして、サンマにどけとばかりに、後ろからせっつく。

サンマがどかないと分かると、ミケはサンマの横へ座りこんだ。
ミケに遠慮したのか、それともその迫力に気圧されたのか、サンマはそっとその場を離れた。

この時、サンマが本当に水が飲みたかったのかどうか、私には分からなかった。
ねこみどりさんが、サンマのためにエサを用意した。
しかしミケは自分のエサだと思い込み、盛んに鳴き声を上げる。

その様子を見て、ねこみどりさんは仕方なくサンマのエサを少しミケに与えた。

水を飲み終えたサンマが、やっと柵から出てきた。
サンマには、ねこみどりさん手ずからエサを与える。

紙容器のエサを食べ終えたミケは、サンマを顔で押しのけて残りのエサを食べはじめた。
ミケにしては珍しい行動だ。このエサがよほど好きなのだろう。
二匹は最後、ねこみどりさんの手を舐め、一片の欠片も残さないつもりだ。

その時、ハッピーちゃんを連れたふ~さんに声をかけられた。
ふ~さんも昨日の出来事を、私のブログで知っていた。
二匹の様子を見ていたふ~さんが「すご~い、あんなに顔を近づけてる」と驚きの声を上げた。

ハッピーちゃんも、二匹の様子を興味深そうに見つめている。
ねこみどりさんが、植え込みに戻ったサンマに別れの挨拶をしている。

そして、ねこみどりさんが帰ることを知り不機嫌になったミケにも、別れの挨拶をする。
ミケは、ねこみどりさんに帰って欲しくないのだ。
エサ場を出ようとしたねこみどりさんに、ミケが駆け寄っていく。
そのミケを優しく受け止めるねこみどりさん。

ねこみどりさんも、後ろ髪を引かれる想いなのかも知れない。
ねこみどりさんが角を曲がるまで、ミケはジッと見送っていた。

ねこみどりさんの姿が見えなくなると、ミケはその場にうずくまった。
その時、小型犬の集団が通りかかった。

小型犬といえども、これだけ揃うとミケも引き下がるしかない。

ミケは再び、サイクリングロードの側に戻った。
そして、道を行き交う人を観察しはじめた。

犬に対しては念入りに観察をする。


ミケのマンウォッチングは続く。



ボウガンの矢の摘出手術を受け入院を余儀なくされた三ヶ月を除き、ミケは12年間こうして人間を観察し続けているのだろう。

一方サンマはと云えば‥‥
何の苦労も知らない子供のように眠っている。

一度拭き取った鼻からは、もう鼻水は覗いていない。
ミケはマンウォッチングを終え、エサ場へ戻ってきた。

今日の観察でミケが何を得たのか、私には知る術がないが、今後のミケ行動に活かされるかも知れない。

私は静かにその場を離れ、帰路についた。

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昨日の雨は夜半過ぎに上り、昼間青空が広がっていた湘南海岸。
しかし、西の空には新たな雨雲が近づきつつあった。

吹く風が存外冷たいのに驚いた。
ミケのエサ場には先客がいた。

ウータンさん、ブースカさん夫妻だ。
ミケは、ウータンさんの膝の上にいた。

ウータンさんとブースカさんは、昨日の出来事を私のブログで知っていた。
「びしょ濡れのミケを見て涙が出てきた」とブースカさんは言った。
実際、昨日はこいつに心配させられた。

でも、そんなこともミケのくつろいだ顔を見れば、もうどうでもよくなる。
サンマはと言えば‥‥相変わらず、いつもの場所で‥‥

いつもの惚けた顔をしていた。
しばらくすると、ふたりはミケに別れの挨拶をし‥‥

帰っていった。
鉄砲通りで飲食店を営むふたりは、これから開店の準備に追われるのだろう。
そのふたりの姿が見えなくなるまで、ミケは道路から見送っていた。

昨夜ミケが姿を現した柵が、目の前に見える。
普段は独りでサイクリングロードを渡る事すらないミケが、何故昨日に限って柵を越え砂浜へ行ったのか‥‥
ブースカさんの推理はこうだ‥‥
犬が防風林の遊歩道からミケに近づいてきた。それもリードを外された状態の犬が。

その時ミケは柵の外へ出ていた。それも植込みにも逃げこめないエサ場の外にいたのだ。
そこでミケは仕方なく、サイクリングロードを渡り、砂浜に逃げこんだのだ。

犬が去ってからも、恐怖のためミケは砂浜の物陰に隠れ続けていた。
夜中近くになり、エサ場にいる私の姿を発見したミケが、急いで駆け寄ってきたというわけだ。
ブースカさんの納得いく推理に、私はワトスンよろしく頷くばかりだった。
そして、私もブースカさんの推理に同意した。
ミケがエサ場の方を振り返った。その表情は少し険しいものだった。

ミケの視線を辿ると、一羽のカラスがエサ場に下りているのが見えた。
ミケがサイクリングロードを横切る。

しかし、この行動は私に近づくためのものであり、普段ミケがサイクリングロードを渡ることはない。
砂浜にミケの用事はまったくない。

若い奥様方のおしゃべりに聞耳を立てるミケ。

同じ女(メス)として、やはり興味があるのだろうか、ミケはジッと聴き入っていた。
そこへ、先生がやってきた。
先生の自転車のカゴには、いつものように猫のエサと紙容器が入っている。

ミリオンの所へも行ってきた先生は、捕まえることができたらミリオンを病院へ連れて行くつもりだと言った。
ねこみどりさんが、エサ場を訪れた。

ミケは早速エサをもらっている。
ミケはねこみどりさんの膝に乗りたいくせに、何故か遠慮している。

ミケには、ねこみどりさんの「夕方ミケちゃんを膝に乗せると切なくなる」という気持ちが分かっているのだろうか?
サンマの様子を見るねこみどりさん。

しかし、サンマに反応はない。
ところが、私が少し垂れていた鼻水を拭き取ると、サンマは植込みから出て、ねこみどりさんに擦り寄っていった。

それを見たミケが、サンマに近づいていく。
そして、サンマにどけとばかりに、後ろからせっつく。

サンマがどかないと分かると、ミケはサンマの横へ座りこんだ。
ミケに遠慮したのか、それともその迫力に気圧されたのか、サンマはそっとその場を離れた。

この時、サンマが本当に水が飲みたかったのかどうか、私には分からなかった。
ねこみどりさんが、サンマのためにエサを用意した。
しかしミケは自分のエサだと思い込み、盛んに鳴き声を上げる。

その様子を見て、ねこみどりさんは仕方なくサンマのエサを少しミケに与えた。

水を飲み終えたサンマが、やっと柵から出てきた。
サンマには、ねこみどりさん手ずからエサを与える。

紙容器のエサを食べ終えたミケは、サンマを顔で押しのけて残りのエサを食べはじめた。
ミケにしては珍しい行動だ。このエサがよほど好きなのだろう。
二匹は最後、ねこみどりさんの手を舐め、一片の欠片も残さないつもりだ。

その時、ハッピーちゃんを連れたふ~さんに声をかけられた。
ふ~さんも昨日の出来事を、私のブログで知っていた。
二匹の様子を見ていたふ~さんが「すご~い、あんなに顔を近づけてる」と驚きの声を上げた。

ハッピーちゃんも、二匹の様子を興味深そうに見つめている。
ねこみどりさんが、植え込みに戻ったサンマに別れの挨拶をしている。

そして、ねこみどりさんが帰ることを知り不機嫌になったミケにも、別れの挨拶をする。
ミケは、ねこみどりさんに帰って欲しくないのだ。
エサ場を出ようとしたねこみどりさんに、ミケが駆け寄っていく。
そのミケを優しく受け止めるねこみどりさん。

ねこみどりさんも、後ろ髪を引かれる想いなのかも知れない。
ねこみどりさんが角を曲がるまで、ミケはジッと見送っていた。

ねこみどりさんの姿が見えなくなると、ミケはその場にうずくまった。
その時、小型犬の集団が通りかかった。

小型犬といえども、これだけ揃うとミケも引き下がるしかない。

ミケは再び、サイクリングロードの側に戻った。
そして、道を行き交う人を観察しはじめた。

犬に対しては念入りに観察をする。


ミケのマンウォッチングは続く。



ボウガンの矢の摘出手術を受け入院を余儀なくされた三ヶ月を除き、ミケは12年間こうして人間を観察し続けているのだろう。

一方サンマはと云えば‥‥
何の苦労も知らない子供のように眠っている。

一度拭き取った鼻からは、もう鼻水は覗いていない。
ミケはマンウォッチングを終え、エサ場へ戻ってきた。

今日の観察でミケが何を得たのか、私には知る術がないが、今後のミケ行動に活かされるかも知れない。

私は静かにその場を離れ、帰路についた。

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2010年05月27日 00:00
PM 03:40
昼間は晴れていたが、この時刻湘南海岸は灰色の雲に覆われていた。
それでも烏帽子岩の向こうには、大島の島影がくっきりと見えている。
さらに西を見ると。伊豆半島もその全容を現していた。

サンマはいつもの場所にうずくまっていた。

今日もサンマは鼻水を垂らしていない。鼻の具合はかなり良くなったようだ。
ミケのお気に入りの場所を覗いたが、ミケの姿はなかった。

小屋の中にもその姿はない。
ミケの姿をよく見る植込みを捜したが‥‥

どこにもいない。
私は防風林の中へ入っていった。

かつてミケがいなくなった時、ミケを発見した場所へ行ってみたが、無駄だった。
隣接するボス母のエサ場を覗いた。

ボス母のエサは、カラスに奪われることなく、食器の中に残っていた。
猫おじさんと猫おばさんが張ったネットに効果があったのだ。

しかし、カラスの死骸を模したビニールがなくなっていた。
カラスがくわえていったのか、それとも猫おばさんが外したのか‥‥?
ボス母は植込みの中にいた。

一昨日の対面で、私が敵ではないことが分かったのか、私が呼ぶと植込みから出てきた。
この時、ボス母との距離は2mほどだ。以前なら脱兎のごとく逃げてしまう距離だ。
ミケが戻っていることを期待し、エサ場へ引き返した。
すると、ミケのお気に入りの場所に、猫の後姿が見えた。

だが、それは水を飲むサンマの後姿だった。
サンマなら知っているはずだ、ミケの身に何が起こったのかを。

「サンマ、ミケはどこへ行ったんだ。お前知ってるんだろ?」
その時ビチャッという音と共に、私の目の前に糞が落ちてきた。

見上げると、ここを縄張りとするカラスが一羽、防風ネットの上に止まっていた。
「こいつ、私を狙ってわざと糞をしたのか‥‥?」
私はやみくもに捜すことをやめ、ミケが戻るのをエサ場で待つことにした。

その時、サイクリングロードからふ~さんに声をかけられた。
ふ~さんも、ミケとサンマが小屋の中で一緒にいる写真を見て驚いたそうだ。

ハッピーちゃんの鼻先と舌は、何故か砂だらけだった。
「ふ~さんの見ていないところで、拾い食いでもしたのかな~君は?」
ふ~さんと夕方にわか雨が降るという話をしている最中、ホントに雨がパラパラと降ってきた。

サンマは自分の場所へ戻っていた。

私はエサ場にとどまり、ミケを待ち続けた。

そのうちに雨も上った。
ふ~さんが帰ってから50分が経とうとしていた時、長靴おじさんがやってきた。
私がミケのいないことを伝えると、おじさんは開口一番、不吉な事を言った。

その言葉は、今の私にとって禁忌だ。
おじさんがミケの元飼い主でなかったら、一言言ってやるところだ。
でも、長靴おじさんもミケの事が心配なのだ。だからこうして毎日ミケの様子を見にくる。

サンマは深い眠りに入ろうとしている。

「サンマ、お前の夢の中にミケは出てくるのか?」
私は帰る前に、もう一度防風林の中を捜してみた。

写真では明るく見えるが、夕闇が迫る防風林はかなり薄暗くなっている。
私は目を凝らし、白くて丸いモノを求めて防風林の中を当てもなく歩いた。

しかし、ついにこの日ミケの姿を見ることはできなかった。おそらく私の捜し方が悪いのだ。
ミケは犬に追われて、しばらく身を隠しているだけだと思われる。
長靴おじさんの心配は杞憂に過ぎない。

PM 10:55
ミケの事が気になって仕方がない私は、ブログの更新を終えると、小雨がそぼ降る海岸へ再び出かけた。

ミケの小屋には、何故かサンマがいた。

「何でお前は自分の小屋で寝ないんだ」
そのサンマの小屋も覗いたが、ミケはいなかった。
いったいこんな時間まで、ミケはどこへ行っているのだろう?

「サンマ、わざわざここまで来なくても、小屋の前にも水があるだろ」
ミケに会うことを諦め、私がエサ場の外で何気なく空を見上げていた、その時だった。
サイクリングロードの向こうにある柵を乗り越えて、何か白いモノが転がるように私の足元に近づいてきたのは。
それは、雨で全身ずぶ濡れになったミケだった。

「ミケ、お前ずっと浜にいたのか?」
私はミケを抱き上げ、取り敢えず水入れの前まで連れていった。

ミケの身体は雨水をたっぷりと含み、毛が逆立っている。
とにかく、無事で良かった。

ミケがずっと砂浜にいたのなら、防風林を捜しても見つからないわけだ。
ミケはよほど咽が渇いていたのか、再び水を飲みはじめた。

今度は、小屋の前までミケを抱いて連れていった。
最初は何故か小屋に入るのを嫌がっていたミケだが、私が無理やり押しこむと‥‥

やっと落ち着いたようだ。
サンマは、いつもの場所でうずくまっていた。

ミケはこの柵を乗り越えて、私に駆け寄ってきた。

砂浜にいたとは‥‥私にとっては盲点だった。
何にせよ、これで安心して眠れる。
空が落ちてくることを心配することなく、ぐっすりと‥‥

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昼間は晴れていたが、この時刻湘南海岸は灰色の雲に覆われていた。
それでも烏帽子岩の向こうには、大島の島影がくっきりと見えている。
さらに西を見ると。伊豆半島もその全容を現していた。

サンマはいつもの場所にうずくまっていた。

今日もサンマは鼻水を垂らしていない。鼻の具合はかなり良くなったようだ。
ミケのお気に入りの場所を覗いたが、ミケの姿はなかった。

小屋の中にもその姿はない。
ミケの姿をよく見る植込みを捜したが‥‥

どこにもいない。
私は防風林の中へ入っていった。

かつてミケがいなくなった時、ミケを発見した場所へ行ってみたが、無駄だった。
隣接するボス母のエサ場を覗いた。

ボス母のエサは、カラスに奪われることなく、食器の中に残っていた。
猫おじさんと猫おばさんが張ったネットに効果があったのだ。

しかし、カラスの死骸を模したビニールがなくなっていた。
カラスがくわえていったのか、それとも猫おばさんが外したのか‥‥?
ボス母は植込みの中にいた。

一昨日の対面で、私が敵ではないことが分かったのか、私が呼ぶと植込みから出てきた。
この時、ボス母との距離は2mほどだ。以前なら脱兎のごとく逃げてしまう距離だ。
ミケが戻っていることを期待し、エサ場へ引き返した。
すると、ミケのお気に入りの場所に、猫の後姿が見えた。

だが、それは水を飲むサンマの後姿だった。
サンマなら知っているはずだ、ミケの身に何が起こったのかを。

「サンマ、ミケはどこへ行ったんだ。お前知ってるんだろ?」
その時ビチャッという音と共に、私の目の前に糞が落ちてきた。

見上げると、ここを縄張りとするカラスが一羽、防風ネットの上に止まっていた。
「こいつ、私を狙ってわざと糞をしたのか‥‥?」
私はやみくもに捜すことをやめ、ミケが戻るのをエサ場で待つことにした。

その時、サイクリングロードからふ~さんに声をかけられた。
ふ~さんも、ミケとサンマが小屋の中で一緒にいる写真を見て驚いたそうだ。

ハッピーちゃんの鼻先と舌は、何故か砂だらけだった。
「ふ~さんの見ていないところで、拾い食いでもしたのかな~君は?」
ふ~さんと夕方にわか雨が降るという話をしている最中、ホントに雨がパラパラと降ってきた。

サンマは自分の場所へ戻っていた。

私はエサ場にとどまり、ミケを待ち続けた。

そのうちに雨も上った。
ふ~さんが帰ってから50分が経とうとしていた時、長靴おじさんがやってきた。
私がミケのいないことを伝えると、おじさんは開口一番、不吉な事を言った。

その言葉は、今の私にとって禁忌だ。
おじさんがミケの元飼い主でなかったら、一言言ってやるところだ。
でも、長靴おじさんもミケの事が心配なのだ。だからこうして毎日ミケの様子を見にくる。

サンマは深い眠りに入ろうとしている。

「サンマ、お前の夢の中にミケは出てくるのか?」
私は帰る前に、もう一度防風林の中を捜してみた。

写真では明るく見えるが、夕闇が迫る防風林はかなり薄暗くなっている。
私は目を凝らし、白くて丸いモノを求めて防風林の中を当てもなく歩いた。

しかし、ついにこの日ミケの姿を見ることはできなかった。おそらく私の捜し方が悪いのだ。
ミケは犬に追われて、しばらく身を隠しているだけだと思われる。
長靴おじさんの心配は杞憂に過ぎない。

PM 10:55
ミケの事が気になって仕方がない私は、ブログの更新を終えると、小雨がそぼ降る海岸へ再び出かけた。

ミケの小屋には、何故かサンマがいた。

「何でお前は自分の小屋で寝ないんだ」
そのサンマの小屋も覗いたが、ミケはいなかった。
いったいこんな時間まで、ミケはどこへ行っているのだろう?

「サンマ、わざわざここまで来なくても、小屋の前にも水があるだろ」
ミケに会うことを諦め、私がエサ場の外で何気なく空を見上げていた、その時だった。
サイクリングロードの向こうにある柵を乗り越えて、何か白いモノが転がるように私の足元に近づいてきたのは。
それは、雨で全身ずぶ濡れになったミケだった。

「ミケ、お前ずっと浜にいたのか?」
私はミケを抱き上げ、取り敢えず水入れの前まで連れていった。

ミケの身体は雨水をたっぷりと含み、毛が逆立っている。
とにかく、無事で良かった。

ミケがずっと砂浜にいたのなら、防風林を捜しても見つからないわけだ。
ミケはよほど咽が渇いていたのか、再び水を飲みはじめた。

今度は、小屋の前までミケを抱いて連れていった。
最初は何故か小屋に入るのを嫌がっていたミケだが、私が無理やり押しこむと‥‥

やっと落ち着いたようだ。
サンマは、いつもの場所でうずくまっていた。

ミケはこの柵を乗り越えて、私に駆け寄ってきた。

砂浜にいたとは‥‥私にとっては盲点だった。
何にせよ、これで安心して眠れる。
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2010年05月26日 00:00
PM 03:50
鈍色の低い雨雲に覆われた湘南海岸。予報ではこれから雨が降る。

そんな砂浜に人影はなく、凪いで静まり返った海にもサーファーの姿は見えない。
エサ場には、先客がいた。ブースカさんだ。
そしてブースカさんの膝の上には、ミケがいた。

その後ろには、サンマが順番待ちでもしているように、おとなしく座っている。
膝の上のミケは、何故か落ち着かない様子だ。

この頃、ポツリポツリと雨粒が落ちてきていた。
サンマの用足しをきっかけに、雨脚がにわかに強くなってきた。

ブースカさんも、急いでミケを膝から下ろした。
ミケは、私の傘の下へ避難してきた。

傘を持たないブースカさんは、帰宅を急いだ。
水を飲むために、ミケが私の傘から出ていった。

雨脚がさらに強くなり、エサ場の砂を見る見るうちに黒く染めていく。
今日の予報は見事に当たった。

ミケは傘の下にうずくまり、降ってくる雨を見つめている。
サンマも、新しい傘がかかるいつもの場所へ避難した。

サンマは、今日も鼻の調子が良さそうだ。
雨はついに本降りとなった。

篠突く雨に、ミケは身動きができない。

その雨を見るミケの表情は、いかにも憂鬱そうだ。
サンマも目を瞑り、激しくなる一方の雨音を聞いている。

さっきまで見えていた江ノ島は雨に煙り、その姿を消している。

サイクリングロードからも人影は消えてしまった。
ミケが窮屈な体勢で水を飲んでいる。

いつ雨に打たれたのか、ミケの毛は水気を含んで逆立っていた。

時折振り返るミケの表情は、険しいままだ。
雨脚は益々強くなっていく。

その時、遊歩道の奥からいきなり大型犬を連れた人が現れ、不意を衝かれた私も少々驚いた。
その大型犬の出現で、ミケは一瞬表情を硬くした。

しかし、すぐに元の体勢に戻り、静かに眼を閉じた。
この雨で、ミケとサンマは近づくことさえできない。

今日のところは、二匹の関係に進捗はないと記すしかない。

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鈍色の低い雨雲に覆われた湘南海岸。予報ではこれから雨が降る。

そんな砂浜に人影はなく、凪いで静まり返った海にもサーファーの姿は見えない。
エサ場には、先客がいた。ブースカさんだ。
そしてブースカさんの膝の上には、ミケがいた。

その後ろには、サンマが順番待ちでもしているように、おとなしく座っている。
膝の上のミケは、何故か落ち着かない様子だ。

この頃、ポツリポツリと雨粒が落ちてきていた。
サンマの用足しをきっかけに、雨脚がにわかに強くなってきた。

ブースカさんも、急いでミケを膝から下ろした。
ミケは、私の傘の下へ避難してきた。

傘を持たないブースカさんは、帰宅を急いだ。
水を飲むために、ミケが私の傘から出ていった。

雨脚がさらに強くなり、エサ場の砂を見る見るうちに黒く染めていく。
今日の予報は見事に当たった。

ミケは傘の下にうずくまり、降ってくる雨を見つめている。
サンマも、新しい傘がかかるいつもの場所へ避難した。

サンマは、今日も鼻の調子が良さそうだ。
雨はついに本降りとなった。

篠突く雨に、ミケは身動きができない。

その雨を見るミケの表情は、いかにも憂鬱そうだ。
サンマも目を瞑り、激しくなる一方の雨音を聞いている。

さっきまで見えていた江ノ島は雨に煙り、その姿を消している。

サイクリングロードからも人影は消えてしまった。
ミケが窮屈な体勢で水を飲んでいる。

いつ雨に打たれたのか、ミケの毛は水気を含んで逆立っていた。

時折振り返るミケの表情は、険しいままだ。
雨脚は益々強くなっていく。

その時、遊歩道の奥からいきなり大型犬を連れた人が現れ、不意を衝かれた私も少々驚いた。
その大型犬の出現で、ミケは一瞬表情を硬くした。

しかし、すぐに元の体勢に戻り、静かに眼を閉じた。
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2010年05月25日 00:00
PM 04:00
今日の湘南海岸は、二日間降り続いた雨が上がり、青空が広がっている。
しかしこの時、南からの強い海風が、海岸を揺るがしていた。

その海風をセイルで掴まえたたウインドサーファー達が、海上を滑走していた。
エサ場では、サンマが独り毛繕いをしていた。

「サンマ、ミケはどこへ行ったんだ?」
サンマは惚けた顔をするだけで、何も応えない。
サンマのお気に入りの場所には、新しい傘が設置されていた。

傘と云えばKおじさんとKおばさんの顔が浮かぶ。
ふたりによって、傘のグレードアップは行われたのだろうか?
ミケは、エサ場から40mほど東の植込みにいた。

その場所にも、海風が容赦なく吹きこんでいた。
それでもその場所が気に入ったのか、ミケに動く気配ない。
いかにも所在ない様子のサンマを‥‥

防風林の奥へ連れていった。ここなら海風も、その勢いを削がれる。

サンマの鼻に、鼻水は見られない。

そのうちサンマは気持ち良さそうに、寝息を立てはじめた。
ボスエリア。

ボスの姿はなかったが、三毛が独りエサ場の近くでくつろいでいた。

ミケと三毛‥‥字は違っても音にすれば同じだ。紛らわしくて仕方がない。
そこで、こいつの呼び名を今日から『マツ』にする。
由来‥‥?以前、サンマに追われて松の木に登っていたから。ただ、それだけの理由だ。
ボス母のエサ場から数人の話し声が聞こえてきた。
不審に思った私は、声の主を確かめるべく、ボス母のエサ場へ近づいていった。
ところが、そこにいたのは全員私の知り合いだった。

猫おじさん、猫おばさん夫妻、それに長靴おじさん。
それにしても、猫おじさんと猫おばさんが、この時刻にエサ場へ来るのは珍しいことだ。
その訳を猫おばさんが話してくれた。
カラスが、ついに防風ネットの向こうにある、ボス母のエサ場への侵入方法を習得したと言うのだ。

そこで、防風ネットの穴にネットを張るため、二度目のエサ場訪問になったと言う。
カラスの学習能力は高い。
針金につけられた黒いビニールで作られたモノは、いったい何だろう?

猫おばさんが「これはカラスの死骸のつもりなの」と説明してくれた。
「なるほど」と私は頷いたが、どう見てもカラスには見えない。
猫おばさんが指を指し、私に合図を送ってきた。

長靴おじさんの足元に何かいるようだ。
それはこのエサ場の主である、ボス母だった。こんな近くで見るのは初めてだ。
ボス母が気を許している三人の存在があったから実現した対面である。

それでも、見慣れない私を警戒して、ボス母は潅木の中へ入っていった。

やはりボスの母猫、娘のボスによく似ている。

仕事を終えた猫おじさんと猫おばさんは帰っていった。
私ひとりになっても、ボス母が逃げることはなかった。

でも、これで私を認めてくれたとは思っていない。
次遇った時、おそらくボス母は私から逃げるだろう。
ミケのエサ場に戻ると、ミケが植込みから出て私の足元に寄ってきた。

そこで、ミケも防風林の奥へ連れていった。
ミケは周囲を見回し、この場所が安全かどうか確かめる。

こちらを向き、再び周囲に目を配る。

そのミケの眼が、何かを発見したようだ。

ミケは、それから眼を離さなくなった。
視線の先には、サンマがいた。

ミケの存在に気づいたサンマが、いつの間にかミケの側まで来ていた。
二匹はしばらくの間、その場で動かずじっとしていた。(サンマは毛繕いに余念がなかったが)
ミケの表情を見て、それ以上近づくことを諦めたのか、サンマはミケの側から離れていった。

ミケは、そんなサンマをちらとも見ない。

そしてあらぬ方を見つめたまま、動かなくなった。

サンマは、再び草むらの中でまどろみはじめた。

ミケとサンマの関係を確かめるような出来事は、今日何も起こらなかった。

二匹が微妙な距離に近づくことすらなかった。
これから二匹の距離がどうなっていくのか、静かに見守るしかない。


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今日の湘南海岸は、二日間降り続いた雨が上がり、青空が広がっている。
しかしこの時、南からの強い海風が、海岸を揺るがしていた。

その海風をセイルで掴まえたたウインドサーファー達が、海上を滑走していた。
エサ場では、サンマが独り毛繕いをしていた。

「サンマ、ミケはどこへ行ったんだ?」
サンマは惚けた顔をするだけで、何も応えない。
サンマのお気に入りの場所には、新しい傘が設置されていた。

傘と云えばKおじさんとKおばさんの顔が浮かぶ。
ふたりによって、傘のグレードアップは行われたのだろうか?
ミケは、エサ場から40mほど東の植込みにいた。

その場所にも、海風が容赦なく吹きこんでいた。
それでもその場所が気に入ったのか、ミケに動く気配ない。
いかにも所在ない様子のサンマを‥‥

防風林の奥へ連れていった。ここなら海風も、その勢いを削がれる。

サンマの鼻に、鼻水は見られない。

そのうちサンマは気持ち良さそうに、寝息を立てはじめた。
ボスエリア。

ボスの姿はなかったが、三毛が独りエサ場の近くでくつろいでいた。

ミケと三毛‥‥字は違っても音にすれば同じだ。紛らわしくて仕方がない。
そこで、こいつの呼び名を今日から『マツ』にする。
由来‥‥?以前、サンマに追われて松の木に登っていたから。ただ、それだけの理由だ。
ボス母のエサ場から数人の話し声が聞こえてきた。
不審に思った私は、声の主を確かめるべく、ボス母のエサ場へ近づいていった。
ところが、そこにいたのは全員私の知り合いだった。

猫おじさん、猫おばさん夫妻、それに長靴おじさん。
それにしても、猫おじさんと猫おばさんが、この時刻にエサ場へ来るのは珍しいことだ。
その訳を猫おばさんが話してくれた。
カラスが、ついに防風ネットの向こうにある、ボス母のエサ場への侵入方法を習得したと言うのだ。

そこで、防風ネットの穴にネットを張るため、二度目のエサ場訪問になったと言う。
カラスの学習能力は高い。
針金につけられた黒いビニールで作られたモノは、いったい何だろう?

猫おばさんが「これはカラスの死骸のつもりなの」と説明してくれた。
「なるほど」と私は頷いたが、どう見てもカラスには見えない。
猫おばさんが指を指し、私に合図を送ってきた。

長靴おじさんの足元に何かいるようだ。
それはこのエサ場の主である、ボス母だった。こんな近くで見るのは初めてだ。
ボス母が気を許している三人の存在があったから実現した対面である。

それでも、見慣れない私を警戒して、ボス母は潅木の中へ入っていった。

やはりボスの母猫、娘のボスによく似ている。

仕事を終えた猫おじさんと猫おばさんは帰っていった。
私ひとりになっても、ボス母が逃げることはなかった。

でも、これで私を認めてくれたとは思っていない。
次遇った時、おそらくボス母は私から逃げるだろう。
ミケのエサ場に戻ると、ミケが植込みから出て私の足元に寄ってきた。

そこで、ミケも防風林の奥へ連れていった。
ミケは周囲を見回し、この場所が安全かどうか確かめる。

こちらを向き、再び周囲に目を配る。

そのミケの眼が、何かを発見したようだ。

ミケは、それから眼を離さなくなった。
視線の先には、サンマがいた。

ミケの存在に気づいたサンマが、いつの間にかミケの側まで来ていた。
二匹はしばらくの間、その場で動かずじっとしていた。(サンマは毛繕いに余念がなかったが)
ミケの表情を見て、それ以上近づくことを諦めたのか、サンマはミケの側から離れていった。

ミケは、そんなサンマをちらとも見ない。

そしてあらぬ方を見つめたまま、動かなくなった。

サンマは、再び草むらの中でまどろみはじめた。

ミケとサンマの関係を確かめるような出来事は、今日何も起こらなかった。

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2010年05月24日 00:00
PM 04:00
昨日から降り続く雨は、この時刻小降りになっていた。
しかし、立ち込める靄で江ノ島は霞み、水平線も模糊としている。

サイクリングロードに人影はない。
お気に入りの場所に、ミケとサンマの姿は見えない。

こんな日は、小屋の中で寝ているのが常だ。

このあと、ミケに挨拶しようと小屋の中を覗いた私は、信じられない光景を目の当たりにすることになる。
思ったとおり、ミケは小屋の中にいた。
しかし、ミケの体勢に違和感を感じた私は、目を凝らして薄暗い小屋の中を見直した。

ミケの身体は、何かと接触している。それは、見覚えのある模様をしていた。
「ま、まさか‥‥!」
私は我が目を疑った。

ミケが小屋の中で、サンマと寄り添っていたのだ。
この状況を、どう表現したらいいのか?
『呉越同舟』‥‥いや、違う。この言葉はいがみ合っている仲の悪い者同士が、同じ場所にいるという意味だ。
ミケはともかく、サンマはミケの事を嫌ってはいないのだから。
私の乏しい語彙に、適当な言葉は見つからない。
サンマの惚けた顔が現れた。

しばらくの間、私は無言でシャッターを押し続けた。
この状態から推測すると、まずサンマがミケの小屋に入り、そのあとミケがサンマがいるのを承知の上で無理やり入ったと思われる。
ややあって、サンマが小屋から出てきた。

この頃、雨は上っていた。
日頃、サンマに近づかれることを、ミケは嫌がっている。

それなのに何故‥‥?
気紛れなミケの行動は、わたしの理解を超えていた。

「サンマ、いったい何があった。ミケといつからああしていたたんだ?」
雨が上った事を知ったのか、ミケも小屋から出てきた。

ミケとサンマは眼を合わせた。
ミケに近づき、挨拶でもしようとしたサンマを、ミケは当然のように無視した。


そして、二匹はいつもの微妙な距離に位置した。
しばらくすると、ミケとサンマは相前後してエサ場の外へ出てきた。

ミケが、アスファルトのへこみに溜まっている雨水を飲み出した。

そのミケに、サンマが近づいていく。

そして、ミケの側でサンマも雨水を飲みはじめた。
二匹の距離は微妙な距離を超えているように、私には思えた。

しかし、サンマの存在に気づいているミケの表情は、普段と変わらない。
サンマの接近を、ミケは快く受け入れることにしたのだろうか?

ミケの横顔からは、何も読み取ることができない。

この時、ミケの表情が一瞬曇った。

ミケとサンマが睨み合っている。

ミケの眼は、明らかに怒気を含んでいる。
小屋の中で見せた穏やかな表情は、いったい何だったのだろう?

気紛れなミケの態度に、サンマも戸惑っている様子だ。
それでも、ミケとサンマの距離は以前より縮まっているように、私には見えた。

これからもサンマはミケの気紛れな態度に、惑わされ続けるのだろうか‥‥

エサ場の奥へ戻った私の足元に、ミケが寄ってきた。
この時、再び雨が降り出した。

ミケは、私の傘の下へ潜りこんできた。
サンマも傘の下へ避難した。

私とミケは相合傘のまま、しばらく波の音を聴いていた。

雨脚が強くなってきたので、ミケを抱いて小屋の前へ連れていった。

ミケはすぐに小屋の中へもぐりこみ、そのままうずくまった。
私が帰路についた頃、雨脚がさらに強まり、本降りになってきた。

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昨日から降り続く雨は、この時刻小降りになっていた。
しかし、立ち込める靄で江ノ島は霞み、水平線も模糊としている。

サイクリングロードに人影はない。
お気に入りの場所に、ミケとサンマの姿は見えない。

こんな日は、小屋の中で寝ているのが常だ。

このあと、ミケに挨拶しようと小屋の中を覗いた私は、信じられない光景を目の当たりにすることになる。
思ったとおり、ミケは小屋の中にいた。
しかし、ミケの体勢に違和感を感じた私は、目を凝らして薄暗い小屋の中を見直した。

ミケの身体は、何かと接触している。それは、見覚えのある模様をしていた。
「ま、まさか‥‥!」
私は我が目を疑った。

ミケが小屋の中で、サンマと寄り添っていたのだ。
この状況を、どう表現したらいいのか?
『呉越同舟』‥‥いや、違う。この言葉はいがみ合っている仲の悪い者同士が、同じ場所にいるという意味だ。
ミケはともかく、サンマはミケの事を嫌ってはいないのだから。
私の乏しい語彙に、適当な言葉は見つからない。
サンマの惚けた顔が現れた。

しばらくの間、私は無言でシャッターを押し続けた。
この状態から推測すると、まずサンマがミケの小屋に入り、そのあとミケがサンマがいるのを承知の上で無理やり入ったと思われる。
ややあって、サンマが小屋から出てきた。

この頃、雨は上っていた。
日頃、サンマに近づかれることを、ミケは嫌がっている。

それなのに何故‥‥?
気紛れなミケの行動は、わたしの理解を超えていた。

「サンマ、いったい何があった。ミケといつからああしていたたんだ?」
雨が上った事を知ったのか、ミケも小屋から出てきた。

ミケとサンマは眼を合わせた。
ミケに近づき、挨拶でもしようとしたサンマを、ミケは当然のように無視した。


そして、二匹はいつもの微妙な距離に位置した。
しばらくすると、ミケとサンマは相前後してエサ場の外へ出てきた。

ミケが、アスファルトのへこみに溜まっている雨水を飲み出した。

そのミケに、サンマが近づいていく。

そして、ミケの側でサンマも雨水を飲みはじめた。
二匹の距離は微妙な距離を超えているように、私には思えた。

しかし、サンマの存在に気づいているミケの表情は、普段と変わらない。
サンマの接近を、ミケは快く受け入れることにしたのだろうか?

ミケの横顔からは、何も読み取ることができない。

この時、ミケの表情が一瞬曇った。

ミケとサンマが睨み合っている。

ミケの眼は、明らかに怒気を含んでいる。
小屋の中で見せた穏やかな表情は、いったい何だったのだろう?

気紛れなミケの態度に、サンマも戸惑っている様子だ。
それでも、ミケとサンマの距離は以前より縮まっているように、私には見えた。

これからもサンマはミケの気紛れな態度に、惑わされ続けるのだろうか‥‥

エサ場の奥へ戻った私の足元に、ミケが寄ってきた。
この時、再び雨が降り出した。

ミケは、私の傘の下へ潜りこんできた。
サンマも傘の下へ避難した。

私とミケは相合傘のまま、しばらく波の音を聴いていた。

雨脚が強くなってきたので、ミケを抱いて小屋の前へ連れていった。

ミケはすぐに小屋の中へもぐりこみ、そのままうずくまった。
私が帰路についた頃、雨脚がさらに強まり、本降りになってきた。

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2010年05月23日 00:00
PM 01:50
明け方から降り出した雨に、湘南海岸は濡れそぼっていた。
砂浜に人影はなく、凪いだ海から微かな波音が聞こえてくるだけだ。

サイクリングロードも雨に打たれて、閑散としている。
そんな天候にも関わらず、ミケのエサ場には訪問者がいた。
その訪問者の膝に、サンマがしがみつくように乗っている。

ふたりは兄弟だと言う。サンマを膝に乗せる兄とは、先日会っている。
その日も雨が降っていた。
弟がサンマを自分の膝に誘うが、サンマはそれに応じない。
いかにも小さい膝に、サンマも躊躇ったのだろう。

サンマは一度、地面に下ろされた。
そして、弟に抱きかかえられた。

私が知る、最も小さい膝の上に、サンマは乗っかった。
サンマは自分の前足で、弟の膝をしっかり抱えこんでいる。

そのうち、小さい膝に慣れてきたのか、サンマは満更でもない表情を見せてきた。
我々の話し声が気になったのか、ミケが小屋から出てきた。
サンマは、急いでミケのお尻に鼻をくっつけた。
「子供の前で何してんだ、お前は!」私は、足でサンマをミケから引き離した。

ミケは、いつもの場所へ駆けこんだ。
サンマが再び、弟の膝に跳び乗った。

こんな日に、男女の区別をしている余裕はないとばかりに‥‥

この兄弟の家で四月から飼いはじめた猫は、ふたりの膝には乗ってくれないと言う。

「お父さんとお母さんの膝には乗るけど‥‥」と兄がポツリと言った。

その時、兄が小さな声で、私に時間を訊いてきた。
私の腕時計は、午後2時16分を指していた。

今度は、兄が持つ三本目の傘を見て「誰かに傘を届けるの?」と、私が訊きかえした。
すると、弟が「色々あってね」と、大人びた口調で応える。
私は苦笑しながら「そうだな、色々あるもんな」と言い、それ以上詮索することは止した。
サンマが執拗に弟の膝に乗ってくる。

ふたりには、傘を届ける約束の時間があった。

兄が再び、私に小さな声で「鉄砲通りに出たいんですけど‥‥?」と訊いてきた。
話を聞くと、傘を待つ人はラチエン通りより東にいるらしい。
そこで私はラチエン通りに抜ける道を、兄に説明した。
ふたりを見送るように、サンマがあとをついていく。

サンマの見送りを受け、兄と弟は仲良く並んで帰っていった。
ふたりの想いは、既に傘を届ける人へ移っているのかも知れない。
サンマはふたりを見送ると、急いでエサ場の中へ戻ってきた。

そして、傘の下にうずくまった。
雨脚は一向に衰えない。


身体が濡れることを嫌う猫にとって、雨の日は退屈この上ないだろう。

ミケは落ちてくる雨を見て、何を想っているのだろう?

私の耳に聞こえてくるのは、雨音と波音だけだ。
狸の墓に、新たな花が供えられていた。

狸が埋葬されて、既に三ヶ月半が経とうとしている。
ミケの顔が、にわかに険しくなった。

サンマの接近を知ったからだった。
サンマはこの時、ただ水が飲みたかっただけかも知れない。
しかし、サンマの接近を簡単に許すミケではなかった。

サンマはすごすごと、元の場所へ戻っていった。
「サンマ、水なら小屋の前にもあるだろう」
雨の中、ミケが傘の下から出てきていた。
「どうした、ミケ、そこにいると濡れるぞ」

すると、ミケは急いで私の傘に入ってきた。そして私の足元にうずくまり、動かなくなった。
ミケの身体が濡れないよう、私はしばらくその場にしゃがんでいた。
私が立ち上がる素振りをすると、ミケは慌てて小屋の中へ潜りこんだ。

「ミケ、予報だと明日も一日雨だ。おとなしく小屋の中にいろよ」
「サンマ、お前も早く小屋へ入った方がいいぞ」

「また、明日来るからな」

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明け方から降り出した雨に、湘南海岸は濡れそぼっていた。
砂浜に人影はなく、凪いだ海から微かな波音が聞こえてくるだけだ。

サイクリングロードも雨に打たれて、閑散としている。
そんな天候にも関わらず、ミケのエサ場には訪問者がいた。
その訪問者の膝に、サンマがしがみつくように乗っている。

ふたりは兄弟だと言う。サンマを膝に乗せる兄とは、先日会っている。
その日も雨が降っていた。
弟がサンマを自分の膝に誘うが、サンマはそれに応じない。
いかにも小さい膝に、サンマも躊躇ったのだろう。

サンマは一度、地面に下ろされた。
そして、弟に抱きかかえられた。

私が知る、最も小さい膝の上に、サンマは乗っかった。
サンマは自分の前足で、弟の膝をしっかり抱えこんでいる。

そのうち、小さい膝に慣れてきたのか、サンマは満更でもない表情を見せてきた。
我々の話し声が気になったのか、ミケが小屋から出てきた。
サンマは、急いでミケのお尻に鼻をくっつけた。
「子供の前で何してんだ、お前は!」私は、足でサンマをミケから引き離した。

ミケは、いつもの場所へ駆けこんだ。
サンマが再び、弟の膝に跳び乗った。

こんな日に、男女の区別をしている余裕はないとばかりに‥‥

この兄弟の家で四月から飼いはじめた猫は、ふたりの膝には乗ってくれないと言う。

「お父さんとお母さんの膝には乗るけど‥‥」と兄がポツリと言った。

その時、兄が小さな声で、私に時間を訊いてきた。
私の腕時計は、午後2時16分を指していた。

今度は、兄が持つ三本目の傘を見て「誰かに傘を届けるの?」と、私が訊きかえした。
すると、弟が「色々あってね」と、大人びた口調で応える。
私は苦笑しながら「そうだな、色々あるもんな」と言い、それ以上詮索することは止した。
サンマが執拗に弟の膝に乗ってくる。

ふたりには、傘を届ける約束の時間があった。

兄が再び、私に小さな声で「鉄砲通りに出たいんですけど‥‥?」と訊いてきた。
話を聞くと、傘を待つ人はラチエン通りより東にいるらしい。
そこで私はラチエン通りに抜ける道を、兄に説明した。
ふたりを見送るように、サンマがあとをついていく。

サンマの見送りを受け、兄と弟は仲良く並んで帰っていった。
ふたりの想いは、既に傘を届ける人へ移っているのかも知れない。
サンマはふたりを見送ると、急いでエサ場の中へ戻ってきた。

そして、傘の下にうずくまった。
雨脚は一向に衰えない。


身体が濡れることを嫌う猫にとって、雨の日は退屈この上ないだろう。

ミケは落ちてくる雨を見て、何を想っているのだろう?

私の耳に聞こえてくるのは、雨音と波音だけだ。
狸の墓に、新たな花が供えられていた。

狸が埋葬されて、既に三ヶ月半が経とうとしている。
ミケの顔が、にわかに険しくなった。

サンマの接近を知ったからだった。
サンマはこの時、ただ水が飲みたかっただけかも知れない。
しかし、サンマの接近を簡単に許すミケではなかった。

サンマはすごすごと、元の場所へ戻っていった。
「サンマ、水なら小屋の前にもあるだろう」
雨の中、ミケが傘の下から出てきていた。
「どうした、ミケ、そこにいると濡れるぞ」

すると、ミケは急いで私の傘に入ってきた。そして私の足元にうずくまり、動かなくなった。
ミケの身体が濡れないよう、私はしばらくその場にしゃがんでいた。
私が立ち上がる素振りをすると、ミケは慌てて小屋の中へ潜りこんだ。

「ミケ、予報だと明日も一日雨だ。おとなしく小屋の中にいろよ」
「サンマ、お前も早く小屋へ入った方がいいぞ」

「また、明日来るからな」

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2010年05月22日 00:00
PM 03:30
午前中に25℃以上の夏日を記録した湘南海岸は、この時刻まだその名残をとどめていた。

エサ場の中をざっと見回したが、ミケとサンマの姿はない。

日向ぼっこデッキにも‥‥
小屋の中にもいない。

実は今日の早朝‥‥正確にいうと午前二時頃、このエサ場は農薬の霧に包まれた。
防風林を、マツクイムシの被害から守るための農薬散布だ。
先週、農薬散布の貼紙を見た私は心配になり、記事にも載せた。
しかし掲載直後に、農薬散布が毎年行われている事を教えられ、いたずらに不安を煽らぬよう、記事を削除した。
今朝も、二匹がいつもと変わりなく元気でいたことを、ゆきママさんからコメントで知らされていた。
エサ場から東に50mほど離れた植込みの中に、ミケはいた。

私がいくら呼びかけても、ミケに目覚める気配は感じられない。
その時たまたま通りかかった猫好きおじさんに、サンマの事を訊いた。
すると、おじさんは「いつもの所にいるよ」と応えて、私を案内してくれた。

いつもの場所から少し西の植込みに、サンマがうずくまっていた。
「ミケもサンマも、どうして今日に限っていつもと違う場所にいるんだ?」

「サンマ、農薬散布の時、どこにいた。小屋の中にいたのか?」
しばらくすると、サンマが植込みから出てきた。

しかし、すぐにその場へうずくまった。

サンマの顔が酷く疲れているように、私には見えた。
その時、後ろから声をかけられた。振り向くと、あらしさんが立っていた。

これが二度目の訪問だと、あらしさんが言う。
午後一時頃、あらしさんは二匹の様子を見にきていたのだ。
あらしさんの姿を見たサンマは、さっきまでの疲れた顔を一変させた。
そして、あらしさんの足に擦り寄っていった。

「現金なヤロウだ‥‥」
万が一を考えたあらしさんは、新しい水を持ってきていた。

さらに、ミケとサンマの好物も一緒に。
「また明日来るね」とサンマに約束して、あらしさんは帰っていった。

「サンマ、お前は自分が幸せ者だって事、分かってるのか?」
ミケは、まだ眠り続けている。



チビ太郎の飼い主、そしてミケの元飼い主でもある長靴おじさんが、ミケの様子を見にきた。
長靴おじさんは、ミケに声をかけることもなく、ジッと様子を見ているだけだ。

しばらくして、おじさんは私を振り返って言った。「そうとう疲れているみだいだ」と。
長靴おじさんとエサ場を離れていた数分間に、ミケのエサはカラスに襲われていた。
紙容器は遊歩道の奥へ運ばれ‥‥

もらったばかりのエサは、地面にばら撒かれていた。
サンマは、いつもの場所へ戻っていた。

そして眼を瞑り、夢の入口へ入ろうとしている。
猫好きおじさんに一度拭き取られたサンマの鼻に、新たな鼻水は見られない。

最近の陽気で、サンマの鼻は快方に向かっているようだ。

サイクリングロードにいた私は、後ろからふ~さんに声をかけられた。
しかしふ~さんは立ち止まることなく、そのままハッピーちゃんと散歩を続けた。
ふ~さんの背中には、気だるさが漂っているように見えた。
私は取りあえず、ふ~さんのあとを追った。

来月、ハッピーちゃんはこの自慢の長い毛をバッサリと切る。
ふ~さんに言わせると「人間で言ったら、三分刈り」だそうだ。
そうすると、かなり涼しくなると言う。
その時、ひとりの若い女性が、ミケのエサ場を訪れた。ブースカさんだった。
私はブースカさんを、ミケのいる場所へ案内した。

このブースカさん、実に大胆な行動をしていた。
ミケのエサ場が農薬に包まれた午前二時に、ここを訪れたと言うのだ。
その時、国道134号線にいる噴霧車から撒かれた農薬は防風林を越え、ブースカさんがいたサイクリングロードまで飛んできたと言う。
そのあと小屋を覗いたが、二匹の姿はなかったそうだ。
どうやら、農薬散布中、ミケとサンマは防風林から離れていたようだ。
「ブースカさん、これからはあまり無理をしないようにしてください」
しばらくすると、ミケが眼を覚ました。

しかし、ミケの顔には疲労の色が濃いように見えた。
ミケが爆睡する理由が分かった。
農薬散布中、防風林から避難していたミケは、おそらくその間眠っていない。

その時削られた睡眠時間を、ミケは取り戻そうとしていたのだ。
サンマも、完全に熟睡している。

こうして年に一度、海岸に棲む野良たちは、昼間睡眠を貪るのだ。

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午前中に25℃以上の夏日を記録した湘南海岸は、この時刻まだその名残をとどめていた。

エサ場の中をざっと見回したが、ミケとサンマの姿はない。

日向ぼっこデッキにも‥‥
小屋の中にもいない。

実は今日の早朝‥‥正確にいうと午前二時頃、このエサ場は農薬の霧に包まれた。
防風林を、マツクイムシの被害から守るための農薬散布だ。
先週、農薬散布の貼紙を見た私は心配になり、記事にも載せた。
しかし掲載直後に、農薬散布が毎年行われている事を教えられ、いたずらに不安を煽らぬよう、記事を削除した。
今朝も、二匹がいつもと変わりなく元気でいたことを、ゆきママさんからコメントで知らされていた。
エサ場から東に50mほど離れた植込みの中に、ミケはいた。

私がいくら呼びかけても、ミケに目覚める気配は感じられない。
その時たまたま通りかかった猫好きおじさんに、サンマの事を訊いた。
すると、おじさんは「いつもの所にいるよ」と応えて、私を案内してくれた。

いつもの場所から少し西の植込みに、サンマがうずくまっていた。
「ミケもサンマも、どうして今日に限っていつもと違う場所にいるんだ?」

「サンマ、農薬散布の時、どこにいた。小屋の中にいたのか?」
しばらくすると、サンマが植込みから出てきた。

しかし、すぐにその場へうずくまった。

サンマの顔が酷く疲れているように、私には見えた。
その時、後ろから声をかけられた。振り向くと、あらしさんが立っていた。

これが二度目の訪問だと、あらしさんが言う。
午後一時頃、あらしさんは二匹の様子を見にきていたのだ。
あらしさんの姿を見たサンマは、さっきまでの疲れた顔を一変させた。
そして、あらしさんの足に擦り寄っていった。

「現金なヤロウだ‥‥」
万が一を考えたあらしさんは、新しい水を持ってきていた。

さらに、ミケとサンマの好物も一緒に。
「また明日来るね」とサンマに約束して、あらしさんは帰っていった。

「サンマ、お前は自分が幸せ者だって事、分かってるのか?」
ミケは、まだ眠り続けている。



チビ太郎の飼い主、そしてミケの元飼い主でもある長靴おじさんが、ミケの様子を見にきた。
長靴おじさんは、ミケに声をかけることもなく、ジッと様子を見ているだけだ。

しばらくして、おじさんは私を振り返って言った。「そうとう疲れているみだいだ」と。
長靴おじさんとエサ場を離れていた数分間に、ミケのエサはカラスに襲われていた。
紙容器は遊歩道の奥へ運ばれ‥‥

もらったばかりのエサは、地面にばら撒かれていた。
サンマは、いつもの場所へ戻っていた。

そして眼を瞑り、夢の入口へ入ろうとしている。
猫好きおじさんに一度拭き取られたサンマの鼻に、新たな鼻水は見られない。

最近の陽気で、サンマの鼻は快方に向かっているようだ。

サイクリングロードにいた私は、後ろからふ~さんに声をかけられた。
しかしふ~さんは立ち止まることなく、そのままハッピーちゃんと散歩を続けた。
ふ~さんの背中には、気だるさが漂っているように見えた。
私は取りあえず、ふ~さんのあとを追った。

来月、ハッピーちゃんはこの自慢の長い毛をバッサリと切る。
ふ~さんに言わせると「人間で言ったら、三分刈り」だそうだ。
そうすると、かなり涼しくなると言う。
その時、ひとりの若い女性が、ミケのエサ場を訪れた。ブースカさんだった。
私はブースカさんを、ミケのいる場所へ案内した。

このブースカさん、実に大胆な行動をしていた。
ミケのエサ場が農薬に包まれた午前二時に、ここを訪れたと言うのだ。
その時、国道134号線にいる噴霧車から撒かれた農薬は防風林を越え、ブースカさんがいたサイクリングロードまで飛んできたと言う。
そのあと小屋を覗いたが、二匹の姿はなかったそうだ。
どうやら、農薬散布中、ミケとサンマは防風林から離れていたようだ。
「ブースカさん、これからはあまり無理をしないようにしてください」
しばらくすると、ミケが眼を覚ました。

しかし、ミケの顔には疲労の色が濃いように見えた。
ミケが爆睡する理由が分かった。
農薬散布中、防風林から避難していたミケは、おそらくその間眠っていない。

その時削られた睡眠時間を、ミケは取り戻そうとしていたのだ。
サンマも、完全に熟睡している。

こうして年に一度、海岸に棲む野良たちは、昼間睡眠を貪るのだ。

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