マサムネとカポネ

2010年09月30日 23:59

断続的に小雨が降る夕刻の湘南海岸に人影はほとんどなく、凪いだ海へ向かう釣人がいるばかりだった。
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重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
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どこへ出かけたのか、ミリオンの姿は見えず、仄暗いエサ場の中は静まり返っていた。
ただ、今朝届いたゆきママさんからのメールにはミリオンが元気でいたと記されていた。



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それにしても、一昨日の夕刻以来姿を見せない幼い黒猫はどこでこの雨をしのいでいるのか、私は気になって仕方がない。





9月某日
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海の家が跡形もなく姿を消してしまった砂浜に、秋の陽射しが優しく降りそそいでいる。


船宿に続く砂利道へ入ったとたん、私はマサムネと目が合った。
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そのマサムネに私を歓待する素振りはなく、ただその場に佇んでいた。


ほかの野良は私の顔を見て、そわそわと落ち着かない様子だ。
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とその時、彼らの動きが突然止まり、表情を一変させた。


野良たちの表情は強張り、眼に怯えの色が見える。
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何かの気配に気づき、私はふり返った。
その私の目に飛び込んできたのは、カポネだった。



カポネは、動揺を隠せない他の野良と堂々と向かい合った。
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ただ独りマサムネだけは、私と目を合わせた時と同じ姿勢で微動だにしない。


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やがてカポネがゆっくりと歩を進めはじめた。


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そうして、まるで測ったかのように皆の真ん中に陣取った。


その態度は威厳に満ち、ある種の風格さえ醸しだしていた。
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周りにいる野良たちを悠然と見廻すカポネ。


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皆そのカポネの迫力に気圧され押し黙っている。


カポネがいきなり吼えた‥‥のではなく、大きなアクビをした。
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だが、ただのアクビでさえ緊張しきっていた野良たちは脅威と感じたようだ。
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数匹の野良が慌ててカポネとの距離を広げた。


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カポネはそんな周りの野良たちには眼もくれず、身だしなみのためか、はたまた明日の天気を占っているつもりか、やおら顔を洗いはじめた。


若いコジローは、カポネの貫禄ある態度にすっかり呑まれている。
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ただこの野良、同じ猫に対しては威勢がいいが、人間には必要以上に怯えすぐシッポを巻く。
私にとってはそれが最大の謎だ。



そんなカポネを放っておいて、私は姿を見せぬクロベエを捜すことにした‥‥
クロベエは難なく見つかった。

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この青いドラム缶はクロベエのお気に入りだ。
自分の体が無彩色だから敢えて鮮やかな青を選ぶのだろうか‥‥?今度訊いてみよう。



私が振り向くと、野良たちが足元まで近づいて来ていた。
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コジローも背中にカポネの視線を感じながら、そろりそろりこっちへ近づいてくる。


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カポネの側には、マサムネとその母である三毛猫が残るだけになった。


緊張で凝った体を大きく伸ばすコジロー。
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体をほぐし終えたコジローは、カポネの側に残った母と兄を心配そうに見つめはじめた。


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そんな息子の想いが通じたのか、母が慎重な足取りで近づいてきた。


そうして船宿前に残されたのは、マサムネとカポネだけになった。
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カポネを大の苦手にしているクロベエには、このまま毛繕いを続けてほしいと、私は思った。


威光を表に出し、ほかの野良とは群れず独りで生きてきたカポネ‥‥
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あくまでも仲間を想い、身を引くことを美学として生きてきたマサムネ‥‥
まさに対照的な二匹だった。
私はことの成り行きを固唾を飲んで見守った。


<つづく>



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マサムネの現実

2010年09月29日 23:58

湘南海岸、夕刻。
午前中晴間を見せていた空には新たな雲が広がり、海岸に暗い影を落としていた。

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明日も雨の1日になると予報が告げている。秋の空は、やっぱり気紛れだ。


今日は懐かしいふたつの顔に遭遇した。
まずは、長靴おじさんの飼い猫チビ太郎。ネット越しの再会はちと味気なかったが。
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そしてウォーキングを日課としているTANYさん


盛夏の時期も毎日同じ時間に数kmのウォーキングを敢行していたと、TANYさんが教えてくれた。
今日は用事で出かけたため遅くなったと言う。

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TANYさんは、6月27日以降も毎日ミケに逢うためエサ場を訪ねている。
もしTANYさんに逢いたければ、午後3時過ぎにミケのところで待っていればいい。



重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
今日もミリオンは姿を現さない。
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ところが名を呼ぶと、微かな鳴き声がする。
その声がミリオンのものなのか、それとも幼い黒猫のものなのか、私は判らなかった。



私はそっとエサ場の中へ入っていき、声を頼りにその主を捜すと、柵の隅にミリオンを発見した。
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こんな場所にいるミリオンを見るのは初めてのことだった。


声をかけても何かに怯えているかのように、ミリオンはその場から動こうとしない。
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昨日ここいた幼い黒猫がミリオンの怯えの原因かも知れないと、このとき私は思った。


3日前に猫の影を目撃した防風ネットの裂け目。
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そこはまるで原生林のような様相を呈していた。
ここに幼い黒猫が潜んでいるかもしれないと思うと何だか心が痛んだ。



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ミリオンの無事を確認できたのは良かったが、いつもと違う様子に一抹の不安が残った。





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マサムネは悲しそうな表情で、彼方の海を眺めるクロベエをただ見上げている。


コジローとクロベエの兄であるマサムネ‥‥
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そのマサムネも高みに登って、兄弟と一緒に夕映えの海を眺めたいと思っているはず。


軽トラに前足をかけ荷台を覗こうとしたマサムネだが、その視線はあまりに低すぎた。
私の思ったとおり、やはりマサムネも軽トラへ跳び乗りたいのだ。

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そして弟と一緒に海を眺めたいのだ‥‥


だがマサムネは軽トラに跳び乗ることを諦め、独り広い駐車場の真ん中へ進んでいった。
でもそこから海を眺めることは、できない。

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さっきまでマサムネが昼寝をしていた水上バイク‥‥あれより高いところに登るマサムネを、私はついぞ見たことがない。


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コジローは兄の想いなど我関せずと、屋根の上で眠っている。


マサムネは自分の視線が届かないところには登りたくても登れないのだ‥‥
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それは距離感が掴めない隻眼ゆえの悲しい現実。


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マサムネは富士の頂に沈む太陽や朝靄に煙る江ノ島を見たことがあるのだろうか‥‥?
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私はいつか、どこかの高みからマサムネと一緒にそれらを眺めたいと思った。


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海を眺望する猫

2010年09月28日 23:48

湘南海岸、夕刻。
昨日から降り続いた雨は昼頃に止んだが、灰色の雲がまだ上空に居座っていた。

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西の空に目をやると、雲の切れ目から柔らかな陽射しが差し込んでいるのが見えた。


砂浜に下りようとした時、Kおばさんに声をかけられた。
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ところが声をかけたKおばさんは、挨拶もそこそこにミケのエサ場へと足早に向かっていった。
Kおじさんと私は、Kおばさんの後ろ姿を見送りながら時候の挨拶を交わした。



重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
今日もミリオンの姿はエサ場の中になかった。
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この時、どこからか猫の鳴き声が聞こえてきた。
私はてっきりミリオンの声だと思い「ミリオン、どこにいる?」と夕闇に包まれたエサ場の奥へ向かって応えた。
これくらいの暗さなら白いミリオンの体は仄かに見えるはず‥‥だが、いくら目を凝らしてもそれらしいモノはいなかった。



私はエサ場の奥へ向かって適当にシャッターを押した。
フラッシュの明かりの先に確かに猫がいた‥‥しかしそれは、ミリオンとは似ても似つかない黒い体をした猫だった。

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黒い体をしたその猫は、まだ幼かった。
腹を空かしているのか、か細い声で盛んに鳴いている。



そこで私は、持っていたカリカリを与えた。
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いったいこの子はどこからやって来たのだろう?
国道を越えて街からやって来た迷い猫か、それともここへ遺棄された捨て猫なのか‥‥?
一昨日の夕刻、私はミリオンのエサ場近くで一匹の猫を目撃していた。
その時は、夕闇迫る防砂林に逃げこむ影のような後ろ姿を見送っただけだった。


カリカリを少しだけ食べた幼い黒猫は、逃げるように防砂林の奥へ姿を消した。

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湘南海岸に新たな野良が棲みついたのを確信した私は、重い足取りで帰路についた。





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コジローは夕陽に染まるプレハブ小屋の屋根にいた。


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一度遠くを見やったコジローは、屋根の上でやにわに毛繕いを始めた。


そのコジローを見上げる白猫。
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そこへクロベエも駆けつけてきた。


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さらにコジロー、クロベエの母である三毛猫もあとを追ってきた。


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マサムネはボートの上から弟のコジローをただ見つめているだけだ。


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コジローはそんな下界の様子をゆっくりと見渡した。


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それから自分の足を枕にコジローは、眼の前に広がる海を眺め始めた。
生命の源である海を見て、コジローは何を想っているのだろう‥‥?



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いつの間に跳び乗ったのか、軽トラの荷台で白猫が寛いでいた。


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クロベエも軽トラに同乗した。


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コジローと同じ血が流れるクロベエ‥‥高いところが好きなのはDNAのせいかもしれない。
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クロベエもコジローと同じように彼方の水平線を見つめ始めた。
これもDNAの成せる業か‥‥?



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とそこへ、やはり同じDNAを持つマサムネが近づいてきた。
やはり遺伝子の赴くまま海を眺めに来たのだろうか‥‥?



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だが軽トラを見上げるマサムネの表情は‥‥何故か悲しそうだった

<つづく>



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マサムネの憂い

2010年09月27日 23:55

小雨がそぼ降る湘南海岸はさすがに閑散としていた。
気温は15℃ほど‥‥冷たい北風が吹きつける浜辺は上着が欲しくなるくらい肌寒い。

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ただし、サーファーに暑い寒いは関係ない。波さえあればいつでも海へ入る。


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ミケのエサ場
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ここに来る度、季節から取り残され、時が止まってしまうような錯覚をおぼえる。


それは、決して変わることのないミケの穏やかな顔をいつも思い浮かべるからかもしれない。
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ミケは波音を子守唄に眠り続けている‥‥冷たい雨に凍えることは、もう二度とない。


重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
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小雨が降る中どこかへ出かけたのか‥‥ミリオンが姿を見せることはなかった。


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明日は気温が20℃を超え寒さは和らぐが、この雨は1日降り続くという。





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私が訪ねた時、マサムネは水上バイクの上にいた。


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マサムネの表情を窺うと、どうやら昼寝の最中だったようだ。


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私の姿を見た他の野良が、シッポを立てながら集まってきた。


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この白猫♀は、未だ私を警戒し自ら近づいてくることはない。


彼らの興味は、私が持っているエサに向けられている。
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そんな仲間を、マサムネは眩しそうな眼で見つめた。


遅れがちなクロベエも姿を見せた。
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そして他の野良と決して連まない茶トラも、警戒の眼を光らせながらやって来た。


マサムネが水上バイクから降りて、涼しい日陰に横たわった。
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厳しい残暑に辟易しているのか、それとも昼寝の夢見が悪かったのか‥‥マサムネは冴えない顔をしている。


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そこで他の野良と一緒にカリカリを与えた。


カリカリを食べ終えた野良はのんびりと毛繕いしている。
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が、相変わらずマサムネ独り表情が暗い。


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「マサムネどうした、今頃夏バテしたのか?」


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今度はコジローが水上バイクへ跳び乗った。


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何故か落ち着かない様子のコジロー。


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どうやら高いところが好きなコジローにとって、最初の水上バイクはあまりに低すぎたようだ。


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コジローはさらなる高みを目指し、夕焼けの空に舞った。

<つづく>



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マサムネの目的

2010年09月26日 23:58

灰色の雲が垂れ込める空模様のせいか、休日の浜辺には人影も疎らだった。
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重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
私がエサ場を訪ねた時、ミリオンはちょうど食事中だった。
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ミリオンは相変わらず食欲旺盛で、途中お代わりをするほどだった。


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5日振りに触れるミリオンの体は、微かな湿気を含みしっとりとしていた。


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予報によると、これからしばらく曇りがちの天気が続くらしい。
どうやら長雨の時期がやって来たようだ。






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しばらくマサムネの応えを待ったが、無駄だった。


マサムネは寡黙な野良だ。
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寡黙な野良は何も言わず私の目の前を通り過ぎた。


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私はマサムネの行動を見てふと疑問が湧いた‥‥果たしてマサムネが追ってきたのは私だったのだろうか‥‥?


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辺りを見回していたマサムネの視線が動かなくなった。


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マサムネの見つめる先には、カポネが姿を消したあの路地があった。


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マサムネは私の顔をチラッと振り返ったあと、ゆっくり路地へ向かっていった。


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そして路地の入口辺りの匂いを盛んに嗅ぎ始めた。


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いったい何を嗅ぎ取ったのか‥‥マサムネは私に寄り添ってきた。


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船宿へ向かいかけたマサムネだったが、何故か途中で止まり辺りを窺いだした。


マサムネが追跡した相手は私ではなくカポネだったのでは‥‥
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私はそんな思いに囚われた。


時計を見ると、私の帰る時刻が迫っていた。
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私は動こうとしないマサムネに声をかけた。「マサムネ、帰るぞ!」
私の猫語は発音も完璧だったのか、マサムネがやっと腰を上げた。



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私のあとをトコトコとついてくるマサムネ。


私はこの時、突然サンマのことを思い起こした。
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サンマもよくこうやってミケのエサ場まで連れ戻したものだ。
あの時のサンマはカワイかった‥‥
「サンマ、あらしさんとご主人の言うことを聞いていい子でいろよ!」



マサムネとふたり、船宿へ到着した。
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バーベキューの準備はまだ続いている。


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マサムネが何のために誰のあとを尾行したのか‥‥


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私は今度それを確かめてみるつもりだ。



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カポネの帰着

2010年09月25日 23:59

夕刻の湘南海岸には台風のうねりが生んだ大きな波が打ち寄せ、時折きれいなチューブを作っている。
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海には、その波を求めて多くのサーファーが集まっていた。


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夏は彼方へ去っていった。
しかし、サーファーは季節の移ろいに関係なく海へ繰りだす‥‥波さえあれば。



重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
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今日も2度エサ場を訪ねたが、ミリオンが姿を見せることは、なかった。


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一時的に回復した天気も明日の夜には崩れだし、しばらく愚図ついた空模様が続くらしい。
秋の空は、やはり移り気だ。






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カポネを見送ったコジローは、お気に入りの水上バイクへ跳び乗った。


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一時酷くなっていた顔の抜け毛もすっかり治まり、元のクールな面差しを取り戻している。


カポネは駐車場のトラックの下に身を隠していた。
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ここで泊り客がいなくなるのを、しばらく待つつもりのようだ。


その面構えとは裏腹に、臆病な心を持つカポネ。
さっきもバイクの音ではなく、たぶん郵便配達人に怯えたのだ。
この容姿ゆえ、理不尽な仕打ちを心無い人間から受けたのかも知れない。

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カポネも人間に遺棄されたのだろう。それでもこうして逞しく独りで生きている。
今までの労苦が刻まれているカポネの顔を見るうち、私は彼を敬う気持ちになっていた。



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カポネの期待とは逆に、船宿横では泊り客によるバーベキューが始まろうとしていた。


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その様子が分かったのか、カポネがトラックの下から出てきた。


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カポネは自分のねぐらへ帰る道筋を探っている。


一点を見つめたままカポネの動きが止まった。
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白猫♀と眼が合ったようだ。


カポネは白猫♀に構わず、ゆっくりと歩を進め始めた。
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それを見て隣の水上バイクへ移った白猫♀。


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カポネは草叢を掻き分け道路に出ると‥‥


ゆっくり船宿へ近づいていった。
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自販機の陰から周りの様子をそっと窺うカポネ。
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船宿前に誰もいないと分かったカポネは、東へ向かって足早に立ち去っていく。


船宿から10mほど離れるとカポネは歩調を緩め、いつもの悠然とした態度に戻った。
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私は尚もカポネのあとを追った。


前回の追跡は、途中で釣餌屋のトラに遭遇し、中断を余儀なくされた。
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カポネは狭い路地に入っていった。
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そして、その奥へ姿を消した。私有地に入られては、これ以上追うことはできない。


私がカポネの追跡を諦め後ろを振り向くと、目の前にマサムネがいた。
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私は前回同様、マサムネの尾行にまったく気がつかなかった。


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「マサムネ、お前はどうして私のあとをつけるんだ?」
私は習いたての単語を織りまぜた猫語で訊いてみた。


<つづく>



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カポネの咆哮

2010年09月24日 23:58

湘南海岸は鈍色の雲に蓋をされ、暗く沈んでいた。
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北風が吹きつける浜辺に人影はほとんどなく、独りいた釣人も釣果のないまま去っていった。


重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
これが今日2度目の訪問だ。ミリオンの姿はどこにも見えない。
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ただ、先の訪問でミリオンの元気な姿を見ていたので心配はしていない。
その時は、他の人が訪ねていたので遠慮した。



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強い北風が、上空の雲を勢いよく海の彼方へ運んでいく。





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コジローの後を追い、クロベエが跳んだ。


そしてボンネットにいたコジローと挨拶を交わす。
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この兄弟も仲がいい。


ただクロベエは、どうしても気になることがある‥‥
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その気になるモノから眼を離さないクロベエ。


クロベエの視線を辿ると‥‥
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カポネがいた。クロベエはこのカポネの動向が気になって仕方がないようだ。


私はカポネの出現で張り詰めてしまった空気を換えようと思い、カリカリを与えた。
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カポネは皆と離れたところで食べさせることにした。
食べるのが遅く、他の野良にエサを奪われるマサムネも少し離れた場所へ移動させた。



カリカリを食べ終えたカポネが、ゆっくりと近づいてくる。
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そして皆の側にやって来たカポネは、いきなり大声で吼え始めた。
この時、私は初めてカポネの鳴き声を聞いた。その顔からどすの利いた声を想像していたが、ごく普通の鳴き声に少々がっかりした。



しかし、その鳴き声は皆を震え上がらせるには十分だった。
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ほとんどの野良が、蜘蛛の子を散らすように水場から逃げてしまった。


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威厳を取り戻したカポネは、辺りを睥睨した。


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だが、カポネの期待したカリカリはほとんど食べ尽くされている。


それを見たカポネは側にいた長毛の野良に矛先を向けた。
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この野良、体はこのエリアで一番大きいが、気は至って優しい。


見ると、カポネの迫力を前に完全に戦意を喪失している様子。
勝敗は闘う前から決まっていた。

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二匹の間に緊迫した空気が流れている‥‥一触即発の状況だった。


とその時、船宿の泊り客が帰ってきた。
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睨み合っていた二匹は、慌ててその場から遁走した。
ところが、マサムネは一向に動じる様子がない‥‥一番肝が据わっているのはこの野良かも知れない。



カポネは自販機の裏に身を隠していた。
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私を見るカポネの眼からは、さっきの迫力が完全に失せていた。


やがて船宿には若い泊り客が次々と集まってきた。
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それを見たカポネはさらに体を小さくした。


そして、ついには船宿から逃げ出した。
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この野良、他の野良には高圧的な態度を見せるが、近づく人間には簡単に尻尾を巻く。
私はそんなカポネにますます興味を持った。



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そのカポネをコジローが冷たい眼で睨んでいる。


いつもとは逆の方へ向かって、カポネがトボトボと歩き始めた。
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私はカポネの後を追うことにした。

<つづく>



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カポネの弱点

2010年09月23日 23:58

小ぬか雨が降る湘南海岸。昨日の暑さが嘘のように寒々とした光景が眼前に広がっていた。
昨日との気温差は8℃ほどだが、吹きつける北風がさらに体感温度を下げている。

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夏の面影は、どこを捜しても見つからない。湘南海岸はたった1日で季節を替えてしまった。


ミケが逝ってから3ヶ月が経とうとしている。
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私はもっと長くミケと逢っていない気がしてならないのだが‥‥。


ミケがお気に入りだった場所。
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ここは青っ洟を垂らしたサンマが好んだ場所だった。



この場所にあった小屋で、ミケとサンマが仲良く体を寄せ合っていた時は驚いた。
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日向ぼっこデッキは往時のまま残っている。


早朝のミケは、よくこの柵の上から道行く人を眺めていた。
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そして私の姿を見ると、急いで柵から下りてきたものだ。
ここに立つと、今でも愛嬌あるミケの丸っこい姿を鮮明に思い出す。



重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
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今日も2度エサ場を訪ねたが、ミリオンの姿を見ることはできなかった。


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雨が降るこんなに日に、ミリオンはどこへ行っているのだろう?


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雨は明日も終日降り続き、気温もさらに下ると聞いた。





船宿エリア
私と向き合ったカポネの表情は、何故かいつになく穏やかだった。
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カポネと私との距離約40㎝‥‥しばしそのままにらめっこをしていた。


気づいたら、いつの間にか他の野良たちが私とカポネの周りに集まっていた。
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こいつら、私たちの成り行きを興味本位で見物していたに違いない。


ただ、その物見高い野良たちの中に加わっていないヤツがいた。
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クロベエだ。よっぽどカポネが嫌いなのだろう。


今度は、私に代わってマサムネがカポネと向かい合っている。
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とその時、船宿に郵便配達のバイクが止まった。それと同時にカポネの姿が消えた。


そのカポネは自販機の側で小さくなっていた。
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このバイクの音に驚いたのだろうか‥‥?もしそうなら意外な弱点を晒したことになる。


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F1のエンジン音にも動じない面構えをしているくせに‥‥野良も人と同様見かけに依らない。


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三毛猫もそんなカポネを見て不可解な顔をしている。


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緊張が解けたせいか、カポネはその場へ崩れるようにうずくまった。


マサムネはカポネがいる水場からゆっくりと離れていった。
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独り水場に残されたカポネは、困憊しきったように眼を閉じた。


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他の野良は、そんなカポネをわざと見て見ぬふりをしているようだ。


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ただ一匹、コジローを除いて。


自分の威厳が失墜したのを敏感に感じ取ったのだろうか‥‥
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眼を開けたカポネはその表情を一変させていた。

<つづく>



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カポネの素顔

2010年09月22日 23:59

真夏日を記録した湘南‥‥。
しかし、今日を境に秋が急激に深まると予報が告げていた。

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重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
私は今日もミリオンを2度訪ねた。
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宵闇迫る防風林の奥に白い影が見えたが、それがミリオンなのか‥‥私には分からなかった。


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夜半前から雨が降るというが、雲ひとつない薄暮の空からは、そんな前触れは感じられない。





船宿エリア
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いつもは遅れてやってくるクロベエが、この日はどういう風の吹き回しか最初に私を迎えてくれた。


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ややあってマサムネ、コジローの兄弟が姿を見せた。


そしてその母である三毛猫も、どこからかやって来た。
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この白猫♀は未だ私を警戒の眼で見る。


さっきからマサムネが軽自動車から眼を離さない。
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白猫もマサムネ同様車を見つめたまま固まっている。


私がそっと車の下を覗くと‥‥
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そこにはカポネが潜んでいた。
私と眼が合うと、カポネは観念したような表情を作った。


カポネはかくれんぼで鬼に見つかった子のように、すごすごと車の下から出てきた。
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そしてゆっくり船宿へ近づいていった。


コジローがカポネの行く手を阻まぬよう居場所を移動する。
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それだけの威圧感をカポネは持っている。


カポネは牢名主よろしく水場を囲むコンクリの縁に陣取った。
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するとクロベエが、そろりそろりとこっちへ近づいてきた。


そして私の陰へ身を隠した。
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どうやらクロベエはカポネが苦手のようだ。


カポネは実に堂々としていた。
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その姿は、まるでこのエサ場のボスのようだ。


この野良の出自を知る人に私は未だ遇っていない。
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いつどこで生まれ‥‥これまでどんな経験をしてきたのか‥‥いつか語ってくれるのだろうか?


私は意を決して、正面からカポネに近づいていった。
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てっきり歯を剥き、凄まれると思ったのだが‥‥


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カポネはそんな私の予想を裏切り、はにかんだ表情で眼を伏せた。

<つづく>



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白猫の想い

2010年09月21日 23:58

湘南海岸は真夏に逆戻りしていた‥‥!
ただ平日の夕刻ということもあり、海岸には釣人とサーファーが目立つばかりだった。

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強い陽射しがミケのエサ場に濃い影を作っている。
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ミケの周りには物が散乱していた。


水入れはひっくり返され、水もほとんど残っていなかった。
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ミケに供える線香が容器から出され周りに散らばっている。


ミケの眠りを妨げる許しがたい犯人は、今頃どこかの高みでカァーカァー鳴いているに違いない。
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生前のミケは、カラスに毎日エサを横取りされ、何度も小屋を荒らされた。
それでも私自身はカラスに対して憎悪や敵意を持つことはなかったのだが‥‥
この時ばかりは心の中に小さなほむらがちらりと燃え上った。



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ちょうどそこへやって来たKおばさんは、去り際に私へ念を押した。
「お線香の火を消してから帰ってね」と。



線香立やマッチを片付けたのはKおばさんだった。
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訳を訊くと「お線香の火で火事にでもなったらミケがここに居られなくなる」とKおばさんは言った。
ミケへの想いがこもったその言葉に、私は肯くことしかできなかった。



重度の耳疥癬に苦しむ白猫、ミリオン
夕闇が濃くなったミリオンのエサ場‥‥これがこの日2度目の訪問だった。
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先の訪問では防風林から出てきてくれなかったからだ。
私はこのあと、しばらくミリオンの体を撫でてやった。



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この時刻になると、涼しい風がどこからともなく吹いてきた。





船宿エリア
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白猫はいきなりコジローに体当たりをした。たじろぐコジロー。


コジローはやんわりと白猫を避けた。
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二匹の間に妙な空気が流れている。


やがてコジローはゆっくりとその場から離れていった。
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今度は、二匹の間に微妙な距離が生まれた。


その微妙な距離を白猫が詰めていく。
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白猫の執拗な誘いにコジローは困惑気味だ。


今度も気遣うようにそっと白猫から離れるコジロー。
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この距離もまた微妙だった。(この場合、どんな距離でも微妙となる)


白猫はただ一緒に遊んでほしいだけだ。新入り猫と遊んだように‥‥
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コジローはその場を空気を換えようとしてか、入念な毛繕いを続けた。


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果たして白猫の想いは通じるのだろうか‥‥?


そこへいきなりクロベエが近づいてきた。
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いったいここへ何をしに来たのか‥‥


気がつくと、クロベエは白猫と向かい合っていた。
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クロベエはとっさにその場の状況を把握した。
「アッ、やべ!」と呟いたように私には聞こえた。



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慌てて側にあった車の屋根へ逃れるクロベエ。


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食事の時間に遅れてきたり、間の悪いときに現れたり‥‥とにかくこの野良は運がない。


白猫はクロベエを追うこともなく、寂しげな眼でただ見つめるだけだ。
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その白猫の視線に耐えられないのか、クロベエは有らぬ方を眺めはじめた。


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結局、白猫のささやかな想いは誰にも届かなかった。



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