家族の情景 その参

2011年04月27日 18:00

Sさんがツバサの体を持ち上げ、ブラッシングしている。
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ツバサはそうされるのが嫌なのか、小さな鳴声をあげて抵抗を見せるが、Sさんは委細構わずブラッシングをつづける。


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やがて抗っても無駄だと諦めたのか、それともブラッシングが気持ち良くなったのか、ツバサはおとなしくなった。


次は、最近以前の毛艶を取り戻したクロベエの番だ。
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クロベエは尻尾を大きく膨らませて、恍惚としている。そして‥‥、気持良さそうにぺろりと舌を出した。


他の野良たちが船宿を去っても、マサムネ独り悠然と食事を続けている。
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もし野良の世界が熾烈な競争社会だったら、マサムネは所謂“落ちこぼれ”かもしれない。
でもこの野良には優しさという徳がある‥‥。私はそんなマサムネが大好きだ。



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野良たちが見送るなか‥‥、Sさんは船宿を後にした。


Sさんが去った船宿は、さっきの賑わいが嘘のようにひっそりと静まりかえった。
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野良たちの姿は何処にも見えない。


駐車場に目を移すと、コユキがぽつねんと佇んでいた。
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用心深い彼女は周りへの警戒を怠らない。
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そんなコユキが何故独り残ったのだろう‥‥?気紛れな彼女の心情は、私にとって未だに大きな謎だ。


船宿を去ろうとする私の目に、草むらで寛ぐ野良の姿が映った。
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それはミイロと仔猫だった。この場所がよほどお気に入りのようだ。


私が近づいてもミイロは目を覚ますどころか、ぴくりともしない。
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そのミイロの傍らでは、仔猫が安らかな寝息を立てている。


釣宿の前に繋がれた船長さんの飼犬が、悲しげな鳴声をあげていた。
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自分を置いて沖へ出た船長さんを呼んでいるのか?


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船長さんの犬のけたたましい鳴声が耳に入らないのか、それともリードに繋がれた犬に脅威はないと侮っているのか‥‥ミイロと仔猫はまったく無反応だ。


ミイロは相変わらず熟睡モードのまま‥‥。
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仔猫も、動じない“母”に倣って眠りつづけている。


やがて、船長さんの犬は地面に寝転がって身もだえをし始めた。
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船長さんが恋しくて仕方ないのだろう‥‥、


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地面を転がりながら、尚も悲しげな声を上げつづける。


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さすがにうるさく感じたのか、仔猫がおもむろに顔を上げた。


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お前も、本当の母の名を呼んで鳴きたいんだろうな‥‥。


それにしても‥‥、ミイロの腹が据わった態度はどうだ。
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まさに“肝っ玉母さん”そのままだ。


そのミイロの姿を見て安心したのか、仔猫は再び眼を閉じた
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仔猫はどんな夢を見ているのだろう?もしかしたら、此処へ遺棄される前の幸せだった頃の夢を見ているのかもしれない‥‥。


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私はそんな“母子”の眠りを邪魔せぬよう、そっとその場を離れた。


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『パンドラの箱』


パンドラはゼウスがつくった“最初の女性”である。

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ゼウスの息子であるヘパイストスが粘土から“女性”をつくり、ゼウスが生命を吹きこむと、天上の神々は様々な物を彼女に授けた。

アプロディテは美しさを、ヘルメスは説得力を、アポロンは音楽を‥‥。

そうして完璧な女性になったパンドラを、ゼウスは地上にいるエピメテウスの許へ送り込んだ。

神々からの贈り物が入った“箱”を持たせて‥‥。

*

ゼウスからの贈り物には注意するよう兄のプロメテウスに忠告されていたエピメテウスだったが‥‥、
美しいパンドラの魅力には勝てず、彼女を一目見るやいなやすぐに妻として迎えてしまった。

*

パンドラはゼウスに厳しく戒められていた‥‥。
「手渡した箱は絶対に開けてはならぬ」と。

しかしゼウスの警告も、パンドラの旺盛な好奇心を抑え込むことはできなかった。

ある日、パンドラが誘惑に負けて箱の蓋を開けると‥‥、
中から疫病、飢餓、犯罪などのあらゆる災厄が飛び出した。


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パンドラが慌てて蓋を閉めた箱の中には、ただ一つの贈り物が残った。

それは“希望”だった。

*

傲った人間を罰するために地上へ送ったパンドラに、何故ゼウスは希望を託したのか?

それはゼウスの周到な謀(はかりごと)だったのだ。

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偽りの希望、空虚な希望、儚い希望は人間にとって禍に他ならないからだ。

なかんずく、指導者や権力者が自分の保身や利権のために口にする“まやかしの希望”は人間に虚しい期待を持たせるだけだった。

こうして“プロメテウスの火”の使い方を誤った我々は、ゼウスの罰に未だ苦しめられている。

*

それにしても‥‥、
本当の希望はいったい何処へ行ってしまったのだろう‥‥?



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尚、『パンドラの箱』にはいくつか違った展開が存在し、その解釈の仕方も様々です。
なので、上記のお話はあくまでも管理人の管見による解釈であることをお断りしておきます。




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家族の情景 その弐

2011年04月25日 21:30

何か興味をそそるモノでも見つけたのか‥‥、仔猫が草むらの中を熱心に探りはじめた。
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その様子をじっと窺っているシシマル。


仔猫がシシマルの視線に気づき、顔を上げた。
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仔猫はおもむろに辺りを見回すと‥‥、
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改めてシシマルの方へ向き直った。


と、いきなりシシマルがその巨体を翻し‥‥、
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草むらの奥へ姿を消した。
シシマルはその巨体に似合わずシャイな猫なのだ。



シシマルがいなくなると、仔猫はさっき“オトナ”たちがさんざ遊んだ捨て置かれたカーペットへ近づいた。
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こんな汚いモノに何故“オトナ”が夢中になるのか、仔猫は理解できないようだ。


そんな仔猫の許へツバサが歩み寄っていく。
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そしてツバサは仔猫の傍らに座りこんだ。


この汚いカーペットに“オトナ”たちが何故執着するのか‥‥
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ツバサはその謂れを新参者の仔猫に教えようとしているかもしれない。


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ところが仔猫はそんな話など興味がないとばかり、ツバサからついと離れていった。


仔猫はクロベエが寛いでいたカーペットに興味を持ったようだ。
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クロベエは仔猫の接近に驚き、慌てて体を起こした。


内気なクロベエは、仔猫にどう対応していいいのか分からず困惑しているようだ。
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そんなクロベエの態度にじれたのか、仔猫は「ニャア」と鳴いた。


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それでもクロベエは動けない‥‥、まるで鉛を呑みこんだように。


そして仔猫が再び小さな鳴声を上げると、クロベエはゆっくりと体を反転させた。
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次の瞬間、クロベエは仔猫の前から遁走した。


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気弱な性格を持つ黒猫クロベエ‥‥。それ故日頃から気苦労が絶えない。


独り残された仔猫に、またもやツバサが近づいてきた。
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ツバサは“兄貴”として仔猫を守っているつもりなのだろうか‥‥?


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新たな家族を得たからといって、この仔猫がたちまち幸せになれるほど野良の暮らしは安穏ではない。


野良でいる限り、この子は様々な苦難に遭うはずだ。
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だが、そのことをこの幼い猫はまだ知らない‥‥。


そこへ、Sさんがやってきた。Sさんはこのエリアの野良の世話をしているボランティアだ。
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Sさんの到着を知った野良たちが次々に船宿へ集まりはじめた。


今まで何処にいたのか‥‥、姿を現さなかった野良たちも湧きでてきた。
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夕刻には滅多に姿を見せない茶トラも、朝食には遅刻せず船宿へやってくるようだ。
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仔猫も新参者らしく、遠慮勝ちにSさんの動向を見つめている。


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仔猫も猫缶の匂いに釣られて水場へ入ってきた。
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しかし‥‥、食事の順番はすぐには回ってこない。


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“オトナ”たちは行儀よく自分の順番が来るのを待っている。


コユキは特等席であるSさんの足元に陣取って食事をしている。
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仔猫も無事朝食に有り付いたようだ。
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やがて、おとなしく順番を待っていた“オトナ”たちにも食事が配られた。


仔猫は朝から旺盛な食欲を見せている。
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その様子を見たSさんがすかさず猫缶を追加する。


マサムネはいつでも何処でも、頑固なまでに食事のペースを崩さない。
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それにしても‥‥、Sさんの前では皆一様に食事マナーがいいのは何故なんだ?


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食事を終えたミイロは足早に船宿から離れ、さっき寛いでいた草むらに腰を下ろした。


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口を拭うのを中断したミイロが、ふと振り返った先には‥‥、


“母”のあとを追ってきた仔猫がいた。
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すると仔猫は、ミイロに倣って口を拭いはじめた。


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この子は取り敢えず、腹を満たせる此処を自分の居場所に決めたようだ。


それに此処には仔猫を守ってくれる“逞しい母”もいる‥‥。
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仔猫はミイロが側にいることを確かめると‥‥、
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安心したようにあらぬ方を眺めはじめた。



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家族の情景

2011年04月23日 06:00

私は久しぶりに朝の海岸へ足を運んだ。
海岸の上空は灰色の低い雲に覆われ、その空を映した海もくすんだ色で眼前に横たわっていた。

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漁師さんたちは互いに声を掛け合いながら、地曳網漁の準備に余念がない。
その様子をしばらく見ていた私は、本格的な春の訪れを実感した。



船宿エリア
エリアの入口でミイロと仔猫が並んで私を迎えてくれた。
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その光景は誰がどう見ても本物の母子だ。


仔猫はミイロに寄り添っている。そうすることがごく当たり前のように‥‥。
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仔猫の表情が日毎穏やかになっているように感じられる。


おそらくこの“逞しい義母”の存在が仔猫を心安らかにしているだと、私は確信している。
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それを裏付けるかのように、ミイロの傍らにいるときの仔猫の表情は如何にも柔和だ。
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ミイロの“母性”は避妊手術によって消滅することなく、未だ彼女の行動基準になっているようだ。


しばらくすると何処からかクロベエが姿を現した。
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抜け毛のせいでマダラ模様を作っていたクロベエの体も、すっかり元に戻っている。
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精悍な面差しと裏腹にこの野良は底抜けに優しい。


そのクロベエが見つめる先にはシシマルがいた。そのシシマルの後ろにはサビ三毛の姿も見える。
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船宿へ近づくと、ツバサが独りぽつねんとしていた。
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「どうしたツバサ、仔猫にミイロを独り占めされてふて腐れているのか‥‥?」


ツバサは私の顔を見ると、寂しげな鳴き声をあげて体をすり付けてきた。
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マサムネが私に目の前を悠然と通りすぎていく。
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マサムネの私へ対する態度は相変わらずすげない‥‥。


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それでも私がしつこく名を呼ぶとちらりと振りかえったが、一瞥をくれるとすぐに歩き去った。


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そして‥‥、お気に入りの場所であるマンホールの蓋に腰を下ろした。


そのマサムネの視線を辿るとこっちへ向かってくるミイロの姿があった。
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ミイロはマサムネをちらりと見ただけで歩みを止めることはなかった。
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ミイロの目的は船宿に汲み置かれた水だった。“特攻隊長”も咽は渇くと見える。
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マサムネは独り残された仔猫を見つめている。


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仔猫はミイロの後を追うこともなく、さっきの場所にうずくまっていた。


独り残されても、仔猫の顔に不安の翳りは微塵もない。
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本当の母や兄弟に二度と逢えないことを、この子は受け容れたのだろうか‥‥?
もしそうなら‥‥、それはそれで切ないことだと、私は思った。



仔猫は不意に立ち上がると、足早に近づいてきた。
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そして私の足に体をすり寄せると、「ミャア」と小さく鳴いた。


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船宿から戻ったミイロがその様子を静かに見つめている。


仔猫は差し出した私の手に纏わりついてくる。
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この様子からも、この子がつい最近まで“家猫”だったことがよく分かる。





マサムネは時折“コドモ”ように遊ぶことがある。この日も小石を相手に束の間の独り遊びに興じている。
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マサムネは遊び相手の小石を宝物のように抱えている
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そこへ私の後を追って、ツバサがやってきた


「マサムネ、その石でツバサと一緒にあそんでやれよ」
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しかしマサムネは小石を後生大事に抱いたまま何も応えない。


やがてマサムネは小石を放って、その場から足早に離れていった。
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そして、違う何かを相手に再び独り遊びをはじめた。
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時折ちらりちらりとこちらを振りかえる。仲間の誰かを誘っているのか‥‥?


どうやら今度の遊び相手は捨てられたカーペットのようだ。
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ひとしきりカーペットと戯れたマサムネはそそくさと歩き去ってしまった。


マサムネが去ったあとに、ソコヘやってきたのは‥‥、
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シシマルだった。


シシマルはめくれあがったカーペットに近づくと‥‥、
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仔細に調べはじめた。


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しばらくそうしていたシシマルだったが‥‥、


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新たな遊び相手を見つけたのだろうか‥‥、


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砂を勢い良く蹴り上げて駆けていった。


すると、また違う野良がやってきた。どうやら、このカーペットは野良たちの興味をそそるらしい。
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が、ミイロは匂いを嗅いだだけで、たちまち興趣を失ったようだ。


そのミイロへツバサがゆっくりと近づいていく。
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ツバサも“オトナ”を虜にしたカーペットには何の興味も示さず、ミイロの傍らにそっとうずくまった。
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その“オトナ”たちは揃って草むらの中で耳をそばだてている。
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知らぬ間にクロベエまでもが空地に来ていた。


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空地にやってきた仔猫は、その“オトナ”たちの様子を見回している。


周りをエリアの野良たちに囲まれた仔猫を見ているうちに、私の心は温かさで包まれてきた。
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「もう寂しくないだろ‥‥、お前を守ってくれる新しい“家族”ができたんだから‥‥」


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私の言ったことが通じたのか‥‥、仔猫は何とも穏やかな表情で頭を掻きはじめた。






【訃報】

今月に入って訃報が相次いだ。

まず、漁港で暮らしていたシャムミックスが亡くなった。仄聞したところでは、先月から体の不調が見られていたそうだ。
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此処ではやはり一年前にキジ白が病死している。


そして西に棲む黒シロの野良が、仲間同士の喧嘩で負った怪我が元で亡くなった。
残念なことだが、私は彼に一度も逢っていない。

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〈西に棲む黒シロ野良の写真はキュウさんからお借りした〉


この野良たちは『海猫伝説』の管理人まるこめさんが長年にわたって紹介している。
直接まるこめさんに聞いたところによると、ブログを始めるきっかけになった野良たちだそうだ。
まるこめさんの悲しみはいかばかりかと‥‥、察するに余りがある。

厳しい海岸で暮らした彼らだけに、心穏やかに虹の橋を渡って欲しいと願うばかりだ。




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母性の行方

2011年04月20日 07:00

昨日とうって変わり、春の暖かい陽射しがふんだんに降り注ぐ湘南海岸は如何にも穏やかだ。
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ただほぼ凪いだ海に独り漂うサーファーは見るからに所在無さそうだ。


船宿エリア
船宿エリアへ着いた私を最初に出迎えてくれたのは、のんびりと空を滑空する一羽の鳶だった。

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そして‥‥地上に移した私の目にまず飛び込んできたのは、あの仔猫だ。


仔猫の表情は、最初に遇ったときより幾分落ち着いているように見える。
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もしかしたら、寂しさを紛らす術を覚えたのかもしれない‥‥。


そこへ“浜の伊達男”コジローが現れた。
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コジローは仔猫のことなど眼中に無いとばかりに、つれない態度を通している。


クロベエも仔猫に無関心を装っているが‥‥、
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それはただ臆病なだけで、仔猫のことが気になって仕方ないようだ。


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コジローは大きなアクビをすると、仔猫に視線を移した。


その仔猫の側には、いつの間にかミイロがうずくまっていた。
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仔猫は不安げな面持ちで午後の陽射しを浴びている。


しばらくそうしていたが‥‥、
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やがて哀しそうな表情で顔を伏せた。


そして記憶を辿るように視線を泳がせる。
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もう逢えぬと悟った母や兄弟の姿を想い描いているのだろうか?


人の子なら寂しさに耐え切れず、母の名を呼び泣きわめいているはずだ‥‥。
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「お前は強いな‥‥泣きもせず悲しみに耐えているんだろう?」


マサムネはただ独り、何をするでもなく駐車場で佇んでいる。
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“媚びない猫”は、いくら私が名を呼んでもその場から動こうとしない。


その代わりに、呼びもしないミイロが私の目の前に現れた。
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ほかの野良たちも、私の動向を静かに見つめている。


私を見つめる彼らの想いは、私に十分伝わっている。
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‥‥小腹が減ったのだ。


そんな彼らの要望に応えて、食事を与えることにした。
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皆がキャットフードを貪るように食べているのに、マサムネだけは口を付けようとしない。
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そのマサムネの傍らでは仔猫が旺盛な食欲を見せている。
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マサムネはトレイの中をただ見つめているだけだ。


ついにマサムネはトレイから離れてしまった。
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腹が減っていないのか‥‥それとも私が持ってきた食べ物が口に合わないのか?


ここにも私が与えたキャットフードに見向きもしない野良がいる‥‥。
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ほかの野良の食べ残しは大食漢のシシマルがキレイに片付けてくれる。


仔猫のトレイはそのシシマルの手を煩わす必要はなかった。
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しっかり食べて丈夫な体を作るのが、外猫として生きていく上で一番肝要なことだ。


野良として生きていくのは厳しい。‥‥おそらく私たちが考えている以上に。
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マサムネも此処で生まれ、幾多の試練を乗り越えてこうして生き残った。


野で生まれた子が成猫になる割合はどれくらいだろう?
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私は正確な数字を知らないが、3割以下ではないだろうか。


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仔猫がじゃれているのは、虫だ。‥‥それも小さな小さな虫だ。


しかし、子猫の様子は心から楽しんでいる風ではない。
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私の目には、ただ虫を相手に寂しさを紛らわしているようにしか見えなかった。





この仔猫は独りで遊ぶことにまだ慣れていないようだ。
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最近までいたトコロには、きっと一緒に遊んでくれる仲の良い兄弟がいたのだろう‥‥。


「マサムネ、お前が遊んでやればいいのに‥‥」
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“媚びない猫”は何も応えず、そっと眼を眇めた。


野良たちのために汲み置かれた水を飲む仔猫。
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こうやって少しずつ此処の生活に慣れていくのだ。


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シシマルの視線を辿ると、シロベエがクロベエににじり寄っていた。低い唸り声で威嚇しながら‥‥。


争いを好まない気弱なクロベエは、後ろを振り返りながら、そろりそろりとシロベエから離れていった。
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そのクロベエをシロベエが執拗に追う。


シロベエは唸り声を発しながら更にクロベエへ近づいていく。
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何故シロベエがこのエリアのオスたちを敵視するのか‥‥。


少なくとも、大人しいクロベエにその原因があるとは思えない。
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ちなみに、シロベエはまだ去勢手術を受けていない。このことが彼をして好戦的にせしむるのか‥‥?


ただならぬ雰囲気に怯えたのか、仔猫は車の下へ逃げこんでしまった。
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仔猫は不安げな顔で私を顧みた。


と、その時だった‥‥、
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ミイロが仔猫の側にそっと近づいてきたのは。


そして仔猫を護るようにその場に陣取った。
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ツバサも足早に仔猫の傍らにやって来ると‥‥、


怯える仔猫にぴったりと体を寄せた。
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まるで本当の兄弟のように‥‥。


ミイロは凛とした姿勢で、シロベエとクロベエの諍いを見つめている。
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その厳しい形相は我が子を庇護する“母”を彷彿とさせる。


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2匹の幼い猫はミイロの後ろで息を潜めている。


キュウさんによると避妊手術をしたメス猫は“母性”を失うという。
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そうして‥‥ただの“オンナ”に戻るらしい。


シロベエとクロベエが争いの場を変えると、ミイロはおもむろに立ちあがった。
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以前なら諍う声がするとすっとんで行った“特攻隊長”のミイロだが、今は幼い猫たちの側から離れない。


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私からもシロベエとクロベエの姿は見えないが、諍う声が何処からか聞こえてくる。


振り返ると、車の下から仔猫の姿が消えていた。
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なかなか止まない“オトナ”たちの怒声に怖気づいたのかもしれない。


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仔猫にとって此処が“終のすみか”になるのかどうか‥‥誰にも分からない。
おそらく当の仔猫でさえ‥‥。



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* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

『プロメテウスの火』


プロメテウスは人間に火を与えた神である。

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弟エピメテウスと共にこの地上の生き物をつくったとされる。

プロメテウスが粘土から動物たちをつくり、エピメテウスが必要とされる贈り物を与えていたのだが、いざ人間の番になったとき手元に贈り物は残っていなかった。

そこでプロメテウスは天上に昇り、太陽神アポロンの二輪車から用意した炬火に火を移して地上へ持ち帰ったのだ。

*

その行いを知ったゼウスは大いに怒り、召使に命じてプロメテウスを捕えカウカソス山の岩に磔にした。


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こうして、不老不死のプロメテウスは毎日ハゲ鷹に肝臓を食い破られ続けるという残酷な刑を受けることになった。

*


プロメテウスに与えられた火は我々に様々な恩恵をもたらした。

もう夜の暗さに怯えることも、寒さに凍えることも、ほかの動物を恐れることもなくなったからだ。

人間が文明を得ることができたのも、この“プロメテウスの火”のお陰だ。

しかし人間は鋤や鍬を作るだけでは飽きたらず、その火で剣と槍を作り、硬い岩を砕く爆薬をも手に入れた。

*

“プロメテウスの火”は言わば諸刃の剣‥‥、使い方を誤れば災いをもたらす。

はたして我々はプロメテウスがゼウスの怒りを買ってまでも与えてくれた“火”を正しく使っているのだろうか?

*

いまも尚オリュンポスの山頂から、ゼウスが我々人間の所業を苦々しい顔で見下ろしているような気がしてならない‥‥。


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擬似家族

2011年04月17日 09:00

湘南海岸に吹く風は思いのほか冷たく、まるで季節が逆もどりしたようだ。
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船宿エリア
エリアへ着いた私を、まずシズクが‥‥
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そしてツバサが迎えてくれた。


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マサムネもすぐに姿を現し、私の目の前を通り過ぎる。この野良は人間の愛情を求めて自ら近づいてくることはない。


“媚びない猫”‥‥マサムネを一言で表すと、こうなる。
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マサムネに続いて他の野良も船宿へ集まってきた。


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近づいた私をシカトしたマサムネの視線は、その私を素通りし、そして固まった。




マサムネの真剣な眼差しに釣られて、私はゆっくりと後ろを振り向いた。




そこには、あの“見知らぬ仔猫”がいた。
いつの間に忍び寄ったのか‥‥仔猫と私との間には3mほどの距離しかなかった。

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どうやら、この仔猫に帰るべき家はなかったようだ。


仔猫はおもむろに船宿へ近づいていった。
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アイが無遠慮に仔猫の匂いを嗅ぐ。
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仔猫はアイが遊んでくれると勘違いしたのか、その場で甘える仕草を見せた。


しかし仔猫は独り残された。
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そこへ、何処からかミイロが現れた。
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ミイロは船宿へ近づくと、仔猫の側にしずかにうずくまった。


その様子を離れたところからじっと窺うコジロー。
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“浜の伊達男”は厄介なことにけっして首を突っ込まない。


クロベエが見つめる中‥‥
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仔猫はオシッコをするために船宿を離れた。


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用足しを終えた仔猫は、私のあとを追ってきたミイロとツバサの側にそっと近づいた。


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この子は自分の運命を受け入れたのだろうか‥‥?それとも、まだ折り合いがつけられないまま不安に駆られているのだろうか‥‥?


何処だか分からないが、この子はつい最近まで住む家を持っていたはずだ。
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そして何らかの理由で、その家から此処へ連れてこられ、そのまま置き去りにされたのだ。母親や兄弟と引き離されて‥‥。


ミイロとツバサも数ヶ月前同じように此処へ遺棄された。
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その行為の罪深さを声高に訴えようが、科す罰を重くしようが、ある種のニンゲンはまったく意に介さない。
ましてや罪の意識に苛まれることなどない。



コジローが物陰から仔猫を見つめている。
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クールな“浜の伊達男”もやはり仔猫のことが気になるようだ。


振りかえると、仔猫はミイロとの距離をつめていた。
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まるで母猫に寄り添うように‥‥。


ふと視線を移すと、こっちの様子を窺っている“媚びない猫”の姿が見えた。
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「マサムネ、お前もこの子が気がかりなのか?」


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ミイロに寄り添う幼いこの子を見ていると、とても自分の運命を受け入れているとは言いがたい。


ミイロに母の面影を見ているのだろうか‥‥?
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むろん、このミイロにしたところで、今の自分の境遇に納得していないと思われるが‥‥。


マサムネがさらに仔猫に近づいてきた。
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傷心の仔猫を見て、マサムネは何を想っているのだろう?


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幼い頃の自分の姿を重ねているのか‥‥。


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振りかえった“媚びない猫”に私は言った。「マサムネ、あの子のことよろしく頼むよ」


マサムネは私が言い終わるやいなや体を起こした。
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そして私に背を向けて、ダンマリを決めこんだ。


マサムネが私の願いを聞き入れてくれなくても、心配はしていない。
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このミイロがいるからだ。
ツバサが母と慕うミイロなら、この幼い猫に対しても逞しい母の役回りを担ってくれるのではと、私は密かに期待している。



この若い三毛猫は此処へ遺棄される前には子を持つ母であったに違いないのだ。
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ツバサがいきなり近づき、ミイロにじゃれついた。


するとミイロはツバサに軽く噛みつき、本当の母猫がするようにたしなめた。
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仔猫はそんなミイロたちの側からついと離れた。


此処には母と慕える野良も、父と頼れる野良もいる。
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そして、一緒に遊びに興じてくれる兄弟もいる。


今はまだ隔たりがあっても、じきに家族と認めてくれるはずだ。
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たとえそれが“擬似家族”であっても、いきなり掌を返す非道なニンゲンと暮らすよりずっとましだ。


辺りを見回すと、他の野良も仔猫の周りに集まってきている。
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此処での暮らしはお前が考えているより厳しく、様々な辛苦が待ち受けているだろう。
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でも、めげるなよ!お前には生きる権利があるんだ。そして‥‥幸せになる権利も!



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見知らぬ猫 その弐

2011年04月14日 21:00

見知らぬ仔猫の側にいると、シシマルが巨体をゆすって近づいてきた。
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シシマルの顔をよく見ると、幾筋もの引っ掻き傷を負っている。
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険しい表情のシシマルとクロベエが見つめる先にいたのはシロベエだった。
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シロベエは相変わらずこのエリアのオスたちと争いを起こしている。それも、見境なしにだ。シシマルに向こう傷を付けたのはシロベエだと、私は密かに思っている。


見知らぬ仔猫は車の下へ身を隠している。
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そして何かを訴えるように時折小さな鳴声をあげる。


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何とかして身の上話を訊いたいところだが、挨拶も交わせないことには如何ともしがたい。


もし帰る家があるなら、早く帰ったほうがいい。
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外で暮らすのは厳しい‥‥それにお前はまだ幼すぎる。


その時、私の目の前にいきなりツバサが現れた。
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ツバサの出現に驚いた見知らぬ仔猫は、再び物陰に隠れてしまった。


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気配を察知したのか、マサムネが側に来てこちらの様子を窺っている。


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チャチャさんが野良たちのために食事の用意をはじめた。


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マサムネは皆と離れたところから、その様子をただ見ている。


普段いがみ合っているシロベエとシシマルも食事の時は休戦する。
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私はそっと船宿から離れ、見知らぬ仔猫のために猫缶を置いた。
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腹が減っていれば、食べるだろう‥‥。


船宿に戻ると、食事にありついているマサムネの姿があった。
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ただ食べるスピードは、いつものようにひたすら遅い。


ミイロは今日も食べ物に無関心だ。
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そのミイロの顔色を窺いながら、クロベエがゆっくりとトレイから離れていく。
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ミイロとクロベエはしばし向き合った。
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しばらくすると、ミイロがおもむろに水場に近づいてきた。


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そしてチャチャさんの差し出したトレイに口をつけた。


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マサムネはまだ食事を続けている。一口一口噛みしめるようにゆっくりと‥‥。


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食事を終えたミイロは、目的でもあるように足早に船宿から離れていった。


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そのミイロの後をクロベエがつけていく。


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日頃ミイロから謂れない疎外を受け続けているクロベエ‥‥ついに業を煮やして反攻に出るつもりか‥‥?


大人しいクロベエがどうするのか、私は事態を静観することにした。
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ミイロはクロベエから眼を逸らしている。


しばらくすると、クロベエもミイロから眼を離した。
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そして何かに思いをめぐらすように、前方を凝視しはじめた。


やがてその場を離れたクロベエは、コンテナの周りをうろつきはじめた。
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このクロベエの行動は、私には理解不可能だ。


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結局ミイロはクロベエをまともに相手にしなかった‥‥。
最近のミイロはある種の風格さえ感じさせるようになった。



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食事を終えたマサムネは、最初に居た場所へ戻った。この水上バイクはこのところ彼のお気に入りのようだ。


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全ての野良が食事を終えると、チャチャさんは帰っていった。


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シズクはそのチャチャさんの後ろ姿をしばらく見送っていた。


船宿前にはツバサ独り残るだけになった。
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そのツバサの表情は寂しげだった。


船宿に姿を見せなかったコジローがコンテナの上からこちらを窺っている。
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にしても、この野良は高いところがホントに好きなんだなぁ、と改めて思った。


高みから眺める人間社会はコジローの眼にはどんな風に映っているのだろう‥‥?
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コジローの鼻の傷もほぼ癒えたようだ。


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そのコジローを見上げるコユキの顔は、まるで神々しいモノでも見つめているようだった。


見知らぬ仔猫はついに姿を現さなかった。
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どうやらこの場所を離れてしまったようだ。「家へ帰ったのだろうか?」


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あの子が此処へ来たのは気紛れだったのか‥‥それとも‥‥。



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見知らぬ猫

2011年04月12日 07:00

湘南海岸は穏やかな春の午後を迎えていた。
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船宿エリア
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私が船宿エリアへ着いた時、ミイロは若い船長さんと遊んでいる真っ最中だった。


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船長さんは船宿の野良のためにネコじゃらしを用意していた。


ミイロは勢い余って腹まで見せてしまった。
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数ヶ月前まで家猫だったミイロに、野良としての自覚はまだないようだ。


ひとしきり遊んで荷台から降りようとしたミイロだったが‥‥。
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船長さんの誘いに、いとも簡単に乗ってしまった。


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船長さんは側に来たツバサを遊びに誘おうとしたのだが‥‥。


ミイロの熱中振りに気後れしたのか、ツバサは手を出せないでいる。
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そしてミイロは、そのまま船長さんに広い空き地へと誘導されていった。


船宿エリアにはチャチャさんが訪れていた。
よく見ると、チャチャさんはクロベエの体をブラッシングしている。

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そして近づいてきたツバサも、ついでとばかりにブラッシング。その隣ではブラッシングを終えたクロベエが、気持ち良さそうに伸びをしている


元の毛並みを取り戻しつつあるクロベエ。
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滅多にされないブラッシングに満足したのか、ペロリと舌舐めずりした。


チャチャさんは次に、水上バイクで寛ぐマサムネの体をブラッシングし始めた。
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そのマサムネと目が合ってしまった‥‥。


しかし、その隻眼はすぐに閉じられた。
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そしてチャチャさんの手の動きに呼応するように、至福の表情を作った。


存分にブラッシングされたマサムネは、何とも名状しがたい面持ちで体を起こした。
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こんな複雑なマサムネの顔を、私は初めて見た。


その時だった‥‥!
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何気なく振りかえった私の目に、1匹の猫の姿が飛び込んできたのは。


その猫は私の気配に気づくと、慌てて物陰に隠れてしまった。
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実はこの子と会ったのは今回が2度目になる。
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最初遇った時、この子は砂の中から掘り出した魚の粗を貪っていたのだ。


出てくる気配がないので、カリカリを置いてみた。
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そうして、私はそっとその場から離れた。


釣宿の前に戻ると、そこにはコジローがいた。
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コジローは船長さんが置いたカリカリを食べている。


何故かしきりに周りを気にしているコジロー。
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「誰も側にいないのに、変なヤツだ‥‥」


と、思ったら、そのコジローをクロベエが険しい顔で見つめていた。
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さっきの場所へ様子を見に行くと‥‥
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置いてあったカリカリはほぼ食べ尽くされていた。


そこで新たにカリカリを入れたトレイを置いたのだが、真っ先に近づいてきたのはクロベエだった。
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ところがクロベエはその場で身構えた。どうやら物陰にいる見知らぬ猫と眼が合ったようだ。


気弱なクロベエは、すぐさまその場からいなくなった。
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しばらく待っていると、さっきの子が姿を現した。


そしてカリカリを味わうようにゆっくりと食べはじめた。
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その食べっぷりに飢えている様子は感じられない。


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ただ時折見せる表情は如何にも不安げだ。


近くにいるツバサはこの子の存在に気づいていない。
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ただクロベエだけは心の動揺を隠せないでいる。


改めて見ると、まだ幼い猫だ。
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生後半年くらいだろうか‥‥。


こんな幼い子が迷うとは考え難い。
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まして家猫が砂まみれの粗を食べるとは更に考え難いことだ‥‥。


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いったいお前は何処からどんな事情で此処へ来たんだ‥‥?


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孤立する猫 その参

2011年04月10日 09:00

シロベエは粗が入ったバケツの在り処を懸命に捜している。
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しかしそのバケツは船長さんの手により既に片付けられていた。


釣宿を離れたシロベエは粗の欠片が残っていないか、さっきの場所へ確認しに戻った。
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その様子を凝視するシシマル‥‥。


シロベエは草叢を丹念に調べたが、一片の粗も残っていなかった。
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一方ツバサは粗に食らいついたままだ。
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だが少々手こずっている様子‥‥。
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ツバサの側では所在無さそうにミイロが落日に身を晒している。
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ただ彼女の表情は物憂げで、心は何処か別のところにあるよう見えた。


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船宿に独り残っていたマサムネがおもむろに伸びをする。


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そして目的でもあるように歩きはじめたマサムネだったが‥‥。


すぐに歩みを止め振りかえった。
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マサムネの視線の先を辿ると‥‥。


のんびりと毛繕いするシロベエがいた。
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さっきまで血まなこで粗を捜していたはずなのに‥‥コイツの行動は未だに読めない。


私が猫缶を取り出すと、野良たちが船宿へ集まってきた。
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いつもなら仲間を押しのけるように猫缶をせがむツバサは、まだ粗に夢中だ。


ところが私が猫缶を開けると‥‥。
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ツバサはあっさりと粗を放ってやって来た。


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今回もミイロは猫缶にまったく関心を示さない。


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他の野良たちが猫缶を食べ終えても、マサムネの食事は相変わらずスローペースだ。


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腹が満たされると、コジローはそわそわと落ち着かなくなる。


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そうして、慌ただしく船宿から離れていった。


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結局、この日もマサムネが最後まで残った。


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ツバサも腹が十分満たされたのか、それとも残した粗のことを忘れてしまったのか、船宿に留まったままだ。


と、そこへアイが姿を現した。
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でも猫缶は全て野良の腹に収まり、一欠片も残っていない。


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アイは兄が食べる猫缶に興味を示す。


マサムネは仕方なさそうに猫缶を妹に譲る。
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マサムネが再び猫缶を食べようとすると、アイが無遠慮に手を出した。
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マサムネが遠慮したのをいいことに、アイは堂々とトレイの猫缶に食らいついた。


そして自分の足元に猫缶を手繰り寄せた。
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トレイに残ったのは僅かな欠片だけだった。マサムネはその欠片を舐めるように食べはじめた。
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アイは兄の猫缶を食べ終えると、満足そうに舌舐めずりをした。
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さらに猫缶の残りを確かめると、来た時と同じように忙しげに去っていった。


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残されたマサムネも大きなアクビをひとつすると、水場を後にした。


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そして母シズクの元へ足早に近づいていった。


妹アイの不躾な振る舞いを母に言いつけるつもりなのか?
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しかしシズクがマサムネの願いを素直に聞くとは思えなかった。


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船宿エリアを去ろうとした私は、釣宿の庇にいるコジローと目が合った。


「コジロー、お前は本当に高いところが好きなんだなぁ」
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私が声をかけると、コジローはいきなり釣宿の壁を登りはじめた。そういえば、以前にも同じシーンを目にしたことがある。


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コジローは看板の上から悠然と下界を見下ろした。


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このシーンも以前とまったく同じだ。「今度はどうするつもりだ、コジロー?」


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やはり今度も意を決して跳び降りた。


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今のアクロバチックなコジローの行動はただの遊びなのか、それとも何か特別な意味があるのか‥‥私には判らない。


猫の行動を気紛れという言葉で片付けるのは簡単だが‥‥。
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その中には彼らなりの感情表現があるハズだ。


先刻のシロベエを見つめるコジローの厳しい眼にも、それなりの意味があると思うのだが‥‥。
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「コジロー、その鼻の傷を負わせたのはひょっとして‥‥」


粗の残りを確かめようとしたが‥‥。
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跡形もなく消えていた。
最後に見たときはココにあったのだが‥‥いったい誰が持っていったんだろう?



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コジローが何を求めて更に高いところへ登ったのか‥‥もちろん私には知る由もない。


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孤立する猫 その弐

2011年04月07日 14:00

コジローは厳しい眼でシロベエを見つめたままだ。
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そのシロベエは潅木の中へ入っていく。


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尚もシロベエを見つめたままのコジロー。


シロベエは潅木を抜け釣宿の方へ歩いて行く。
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コジローを見ると、一時もシロベエから眼を離していない。
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マサムネまでもがシロベエを見つめたままだ。


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いつものようにミイロとツバサが私のあとを追ってきた。


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ツバサはそのまま仕事中の船長さんの側へ近づいていった。


しかし興趣を感じなかったのか、あっさりと引き上げてきた。
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次に船長さんへ近づいていったのはシロベエだった。
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そのシロベエの様子を見て、シシマルがゆっくりと歩み寄ってきた。


この時私は分からなかったが、シシマルはあるモノを察知していたのだ。
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シシマルはシロベエを見据えたまま動かなくなった。


何と、コジローまで出張ってきた。
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勘がいいコイツのことだから、何かを嗅ぎつけたのかもしれない。


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どういうつもりか‥‥シロベエに対してシシマルが身を低くし臨戦態勢に入った。


しかし当のシロベエは全く気づいていない。
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シロベエは船長さんがいなくなった隙を窺いバケツに近づいていく。


そのバケツに前脚をかけると‥‥
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シロベエは何かを咥えて走り去った。そのあとを船長さんがゆっくりと追ってきた。


そのシロベエの動きを見て、シシマルもあとを追った。
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船長さんに訊くと、シロベエが魚の粗を咥えて行ったとのことだ。


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シロベエが粗を貪るように食べている。


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「そんなに欲しいなら」と船長さんが粗を一切置いていってくれた。


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シロベエを羨ましそうに見ていたシシマルにその粗を差し出した。


ところが何故か興味を示さない。
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そこで近くにいたコジローに与えてみることにした。


「ほらコジロー、食べるか?」
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コジローは慎重に匂いを嗅ぐと、ペロリと舐めた。


しかしすぐに顔を逸らした。
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どうやら『浜の伊達男』の口には合わないようだ。


以前カポネと競うように粗を食べていたツバサに委ねることにした。
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シロベエは新たな獲物を求めて船長さんの動向を窺っている。
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しかし今度はあっさりと諦めた。


シロベエが自分の食べ残した粗を捜しに戻ると、そこにはシシマルがいた。
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シシマルの目的もシロベエが残した粗のようだ。


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2匹は対峙したまま動かなくなった。


痺れを切らして先に動いたのはシロベエだった。
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シロベエが次の標的にしたのはツバサが貪っている粗だ。


手を出したくてウズウズしているシロベエ。
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ツバサはそんなシロベエに眼もくれず、黙々と粗を食べている。


そんなツバサの食べっぷりを見たシロベエは、横取りすることを諦め側にうずくまった。
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ツバサの残り物にありつこうとでも考えているのか‥‥?


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その時、何かを嗅ぎつけたのか、シロベエが突然釣宿目がけて走りだした。


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どうやら、目的はさっき粗が入っていたバケツのようだ。


シロベエは匂いを頼りに粗の在り処を探っている。
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毎日仲間と一緒にSさんから食事を貰っているのに、何故お前だけそんなに飢えているんだ?

<この回つづく>



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孤立する猫

2011年04月04日 19:00

湘南海岸にもやっと春が訪れたようだ。
海も穏やかに凪ぎ、波打ち際では数十羽のカモメが獲物を漁っている。

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船宿エリア
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目ざといミイロにしては珍しく、私の訪問にまったく気づかない。


最初に私と目を合わせたのはシズクだった。
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因みに、マサムネやコジローの母であるこの野良の趣味は『マンウォッチング』だ。


ミイロがやっと私の存在に気づいた。
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ゆっくりと立ち上がったミイロは、そのまま私の方へ近づいてくる。


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ミイロは私の側へやって来るなり、地面に転がった。


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ふと顔を上げると、こちらに近づいてくるツバサの姿が目に入った。


ツバサは寝ているミイロと挨拶を交わすと‥‥
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いきなりジャレついた。しかしミイロはそれを拒絶した。


ミイロにニベなくされ、戸惑うツバサ。
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ミイロはその場から立ち去ってしまった。
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独り残されたツバサは、取りあえず大きく伸びをした。


まだ若いミイロ自身よく遊ぶのだが、今はそんな気分ではないようだ。
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何をするつもりなのか、見ていると‥‥
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ミイロは爪を研ぎはじめた。


猫が爪を研ぐのは狩りをしていた頃の名残りであり、さらに気分を落ち着かせる効用もあるそうだ。
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つまりストレス発散のために爪を研ぐ。


その様子をジッと観察しているシズク。
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ツバサは私の足元にうずくまって、何かを訴えるように盛んに啼声を上げる。


珍しく船宿に野良が1匹もいない。
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振り向くと、気持よさそうに日向ぼっこしているシシマルの姿があった。


「シシマル、今日は日向ぼっこ日和だなぁ」
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シシマルは昼寝を邪魔した私の顔を恨めしそうに睨み返した。


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私は早々に退散した。


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一時酷かったクロベエの抜毛もだいぶ治まってきた。


最近のマサムネはこの場所がお気に入りのようだ。
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しかし何が気に入らないのか、私に対しては相変わらず無愛想だ。


浜の方からコジローが姿を現した。
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尻尾を高く上げるコジロー‥‥どうやらご機嫌は良さそうだ。
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マサムネの眼がにわかに険しくなった。
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シシマルも眼を据えた。


2匹の視線の先にいたのはシロベエだった。
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最近やたら仲間と諍いを起こしているシロベエ。何が彼をしてそうせしむるのか‥‥?


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シロベエも仲間の冷たい視線に気づいたのか、そっと船宿から離れた。


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そのシロベエを見つめるコジローの眼は一際厳しい‥‥。


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シロベエは所在無さそうに寝転がった。


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独り横になるシロベエは如何にも寂しそうだ。


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シロベエはおもむろに起き上がると、駐車中の車へ向かっていった。


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船宿にいる野良たちは、シロベエの一挙一動をずっと見つめたままだ。


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シロベエとこのエリアの野良たちの間にどんな軋轢が生じたのか‥‥?


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なかんずくコジローの表情が異様に緊迫しているのが気になった。

<この回つづく>



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