ミイロの悲哀

2011年06月02日 08:00

仔猫が去った海岸へ、私は初めて足を運んだ。
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船宿エリア
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エリアに到着した私をミイロが真っ先に出迎えてくれた。


そしてそのまま私の足元にそっと腰を下ろした。
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ミイロが私を迎えてくれるのは珍しいことではないが、ここまでの親密さを表すのは初めてのことだ。


この変化は仔猫のいなくなったことが影響しているのだろうか‥‥?
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早々とシャッターを下ろした釣宿は人気もなく、しんと静まり返っていた。


船宿の駐車場には珍しくクロベエが姿を見せていた。
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いつもなら私の姿を認めてからおずおずと姿を現していたので、少々意外に思った。


私の足元にはいつの間に忍び寄ったのか、ミイロがうずくまっていた。
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そのミイロの視線は、既にクロベエに注がれている。


ミイロはそうするのが責務でもあるかのように、いきなりクロベエへ挑みかかっていった。
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ミイロのこの行為だけは何があっても変わらないようだ。


私は無駄な争いをさせぬよう、すかさず2匹の間に割って入った。
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クロベエはただ茫然としているだけだ。


その精悍な面差しとは裏腹に、この黒猫は大人しく心優しい野良なのだ。
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謂れのないことでミイロに疎まれつづけているそんなクロベエに、私は同情を禁じえない。


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あっさりと引きさがったミイロは、そっとその場を離れた。


それからミイロは釣宿の方を眺めはじめた。
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その場所は‥‥、いつも仔猫が遊んでいた場所だった。


ミイロは仔猫がこのエリアからいなくなったことを、未だに納得していないのだろうか‥‥?
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ツバサが釣宿へ向かうのを見たミイロはそのあとを追った。


ところが、ミイロはついと後ろを振りかえると‥‥、
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踵を返し、そのまま引き返してきた。


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何か気ががりなことでもあるのだろうか?


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ミイロの行動を見ているうちに、私は思い出した。
此処へ遺棄されたばかりの仔猫がこの植込みの中へよく潜んでいたのを。



私は確信した。
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やはりミイロは、いなくなった仔猫を捜しているのだ、と。


賢いミイロのことだから、仔猫がキャリーへ収まって此処から去ったことは認めているはず‥‥。
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しかしツバサが去勢手術を受けるため一時的に船宿を離れたとき同様、仔猫が再び戻ってくるとミイロは信じているのだろう。


だからミイロは待っているのだ。
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仔猫が元気な姿を見せてくれるのを。


そこへ、ツバサがそっと近づいてきた。
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そして、ミイロの側で体を横たえた。


そっと顔を見合わせるミイロとツバサ。
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ツバサもミイロと同じように、戻ってこない仔猫を待っているのだろうか?


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「ミイロ、あの仔猫はもう此処へ戻ってこないんだ‥‥二度と。でもそれはあの仔にとって幸せなことなんだ」


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私の言ったことをミイロが理解したのか、私にはうかがい知るすべがなかった。


そのミイロの許へマサムネが近づいてきた。
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マサムネはミイロから少し離れたところに座ると、顔を伏せた。


優しいマサムネはミイロの傷心を知って気遣っているのだろうか?
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そんな仲間の優しい気持ちをもってしても、今のミイロの憂いを拭い去ることは簡単ではなさそうだ。


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シシマルの傷はすっかり癒え、短いながら被毛も見えている。


いつの間に漁港から戻ったのか、コジローがひっそりと佇んでいた。
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コジローが船宿へ来る目的はただひとつしかない。


私はそのコジローの希望通り、持ってきた猫缶を開けた。
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しかしミイロは猫缶に何の関心も示さず、相変わらず辺りを見回している。
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私はしばらくの間、黙ってミイロの表情を観察していた。
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ニンゲンの表情もまともに読めない無粋な私に猫の表情など読めるはずもないが‥‥、
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そんな私にもミイロの寂しい気持ちが伝わってきた。


船宿エリアを去る私を、ミイロが先回りして待っている。
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ミイロは私のあとを追ってくると‥‥、


シャッターの閉まった釣宿の店先にちょこなんと座った。
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そのミイロの表情は物憂げに沈んだままだ。


いつもなら執拗にあとを追ってくるミイロなのだが‥‥、
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この日は何故か釣宿の前から離れず、静かに私を見送った。



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仔猫の現況

海岸を去った仔猫の近況を既に知っている方もいると思いますが、遅ればせながら当ブログでもご報告します。

仔猫は海岸から去ったその足で、一時預かりの女性に連れられ病院へ行き検査を受けました。
幸い血液検査の結果は、エイズ、白血病ともに陰性。
その後ツバサからうつったと思われる猫風邪の治療に時間がかかりましたが、里親希望の方と何度かのお見合い、トライアルを経て、この度正式譲渡にこぎ着けることが出来ました。
仔猫は“はなみ”と名付けられ、里親さん家族にもすっかり慣れ親しんでいるようです。
その様子は里親さんのブログ『気まま日記』でご覧ください。
仔猫が立派な家猫に見えるのは、ピンクの首輪のせいだけではない気がするのですが‥‥。



私とこの仔猫との出会いは、4月の初めだった‥‥。
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そのとき仔猫は、空腹のあまり砂まみれの魚の粗を貪り食べていた。


そして翌日にはコンテナハウスの下から恐る恐る這いでてきた。
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遺棄された直後の仔猫は、そのショックからか心を固く閉ざし、けっして近づいてくることはなかった。
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その後ミイロという“母”の存在もあり、徐々にこのエリアに馴染んでいった。
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さらに兄ツバサ父マサムネの愛情を受け、仔猫は捨猫としては幸運な環境のもと日々の生活を送るようになった。
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やがて過酷な野良の境遇からこの仔を救い出したいと思った女性の目に留まり、一時保護の家に引き取られることになる。


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この仔が寒さに震えたり、飢えに苦しんだり、寂しさに涙することは‥‥、もう二度とない。
「良かったな、“はなみ”ちゃん‥‥」



今回、仔猫の里親探しにご尽力いただいた女性に心から感謝いたします。



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