ツバサの旅立ち その弐『偉大な母』

2011年06月27日 05:00

2010年11月28日、此処へ遺棄された直後のツバサは、自分が何故こんな目に遭ったのか理解出来ずに悲しげに鳴きつづけていた。
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そして周りの野良たちを恐れて、ただただ怯えていた。
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この時のツバサもある意味主役だったが、今回は栄えある本当の主役を務めることになる。



その主役の周りへ徐々に人が集まってきた。
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この後、自分の運命に大きな影響を与える出来事が待っていることを知らないツバサは、いつもと変わりない様子だ。


チャチャさんがそんなツバサにそっと手をさしのべる。
ツバサが此処へ遺棄されて以来、チャチャさんはずっとこの子のことを気にかけていた。

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この子を何とかして此処から引き取りたいと、周りの人たちにも公言していた。


しかし当時のチャチャさんの住居はペット不可だった。
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そこでまず、ご主人を説得し、ツバサのためにペット可の物件を探しはじめたのだ。


そして先月やっと希望通りの物件が見つかり、今月の中旬に引越しを完了させ、この日ツバサを迎えに来たのだ。
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1匹の野良のためにここまで熱意を持つ人がいることを、私は初めて知った。
ツバサに係わる人たちの想いも同様で、だから皆安心して彼女にツバサを託せるのだ。



syokoさんのご主人がもつ草のじゃらしに反応するツバサ。
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こういう光景を見ていると、ツバサはまだまだコドモだな、と思う。


これからはチャチャさんがツバサの遊び相手になる。
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そのチャチャさんは、船宿前でマサムネの体をブラッシングしている。
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チャチャさんは本当に猫が好きなんだなぁ、とつくづく感心させられる。


ミイロとの別れを知らないはずのツバサだが‥‥、
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この時は執拗に“母”の後を追っていった。


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ミイロの側でのんびりと毛繕いをはじめるツバサ。
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そのツバサをじゃらしでおびき寄せるIさん。
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そして隙をついて、すばやくツバサをキャリーケースの中へ。


捕獲をどうしようかと頭を悩ませていたので、こうもあっさりとキャリーに収まると、少々拍子抜けがした。
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ツバサは自分の身に起こったことを悟ると、激しく鳴きはじめた。



そのツバサの叫び声を聞きつけたマサムネが心配顔で駆けつけてきた。
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「マサムネ、大丈夫だよ。ツバサは野良を卒業し、元の家猫に戻るんだから」


ミイロもツバサの異変に気がついたようだ。
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キャリーケースに近づくと、複雑な表情を作り、しばらく扉越しにツバサの様子を窺っていた。


ところが、ふいにキャリーケースから離れると‥‥、
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あらぬ方向を眺めはじめた。


ツバサの鳴声は耳に届いているはずなのだが、ミイロはそのままの姿勢で動かない。
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利口なミイロのことだから、ツバサの身に何が起こっているのか分かっているのかもしれない。


そのうちミイロはおもむろに立ちあがると‥‥、
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ツバサの声に背を向けて歩き去ってしまった。


そこへボランティアのSさんも駆けつけてきた。
「この子がいなくなるのは寂しいなぁ」とSさんは言った。

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最近ではすっかりこのエリアのレギュラーの中核になっていたツバサだから、Sさんの想いも複雑なのだろう。


この頃になると、自分の運命を受け容れたのか、ツバサは大人しくなっていた。
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そこへ再びミイロが近づいてきた。


もう一度ツバサの顔を見たかったのだろう。
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ツバサも、7ヶ月の間“母”と慕ったミイロの顔をじっと見つめている。


ついにチャチャさんが船宿を去る時間がやってきた。
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チャチャさんは、ツバサが収まったキャリーケースをそっと持ち上げた。


最後に、世話になったSさんに挨拶をすると‥‥、
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ツバサはチャチャさんに抱かれて、船宿エリアを後にした。
「さよならツバサ、幸せになるんだよ」



雰囲気を変えるため、残った野良たちに食事を与えた。
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ただ独りミイロだけは食事に関心を示さず、ツバサが去った方向へ歩いていく。
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しばらくその場へ佇んでいたミイロだったが‥‥、


既にツバサは自分の手の届かないトコロへ行ったのを悟ったのだろう‥‥、くるりと身を翻した。
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このミイロの表情が何を語っているのか、敢えて私の感想は述べないことにする。
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ミイロはゆっくりとした足取りで船宿の方へ歩きだした。


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食事を終えた野良たちも、船宿前から姿を消していた。


先月の白猫につづいて、本当の我が子のように世話をしていたツバサにも去られたミイロの心に去来するのは何なのか‥‥?
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そんな彼女を慰める言葉を、私は持っていない。


ただこれだけは言える。
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「ミイロ、顔をあげろ!塞ぎこんでいるなんてお前らしくないぞ!」


「お前はこのエリアで唯一の“母”だ」
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「それも偉大な母なんだぞ!」


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緊急告知
しばらくの間ブログを休載します。


私が睡眠障害に苦しんでいることは、このブログで何度か報告しましたが、今年の2月からその症状が悪化し、睡眠導入剤を服用しても眠ることが出来なくなりました。
その影響で海岸を訪れる回数もブログの更新頻度も少なくなってしまい、私としても不本意な時間を過ごしてきました。

ブログ内容に係わりがなく、極めて個人的な事柄なので敢えて発表しませんでしたが、心療内科の医者に言い渡された病名は “ 鬱病 ” でした。

当節ではこのことで白眼視されることも、逆に同情されることもない、ごくありふれた病です。
知人に言わせると「心が風邪をひいたようなもの」だそうです。
それに私の場合はうつの原因がはっきりしているので、長く患うことはないとタカをくくっていたのですが、医者にかかって既に3年‥‥、少々辟易としてきました。


ただ唯一、この病気に感謝していることがあります。
そもそも私が海岸へ出かけるようになったのは、「毎日散歩しなさい」という医者の勧めがあったからで、それによりそこに棲む海岸猫たちと触れ合うようになり、果てはミケという稀代の野良と運命の出会いをすることになったからです。

でもこの病のせいで、私の生活は様変わりしました。
もちろん良い方向へではなく、悪い方向へ、です。
そしてそのことがまたうつを悪化させるという‥‥、まさに負のスパイラル状態。
去年の秋に胃潰瘍を患ったのもこの悪循環の所業でした。
その後も具体的な打開策が見つからず、眠れぬ日を無為に重ねてきましたが、それもそろそろ限界に近づいてきました。

そこで今回、静養を兼ねて帰郷することにしました。
実はこのことを考えだしたのは、5月の初旬頃で、私にとっては予定の行動なのです。
期間はまったく白紙状態ですが、数週間に及ぶのではと漠然と想像しています。
実家にはネット環境が無いですし、ネットカフェの狭い空間に閉じ籠るのは静養に良いとも思えないので、しばし世俗から離れた暮らしに身を委ねることにします。
(やはりネットから隔絶した生活は刺激が無さ過ぎるので、時折ネットカフェから世間の動向を窺うことにしました)



ところが、ここまで書いているところへ、父が肺炎のため緊急入院しICUに移されたと母から電話がありました。
年齢を考えると予断を許さない状態だそうです。
当初の予定では梅雨が明けたら帰郷するつもりで、この告知もそのために準備していたのですが、急遽予定を繰り上げることにしました。


では皆さま、暫時お別れです。


管理人:wabi



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ツバサの旅立ち

2011年06月24日 23:00

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船宿エリア
願いが届いたのか‥‥、朝まで降っていた雨はあがっていた。

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ところで、今日の主役は何処にいるのだろう?


ミイロが独り船宿前にいたが、残念ながら彼女は捜している主役ではない。
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そのミイロは険しい眼つきで前方を凝視している。


そしてやおら立ちあがると‥‥、
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船宿とブロック塀が作る隙間に向かって慎重に足を運びはじめた。


その隙間に1匹の野良の姿が見える。
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それは茶トラだった。
ここ数ヶ月、この時刻に殆ど姿を見せなかったのだが、最近の出現率はそこそこの高さを誇っている。むろんこの茶トラも今日の主役ではない。



そこへふいにアイが現われた。
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「アイちゃん、悪いけど捜しているのはキミでもないんだ‥‥」


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シロベエ‥‥、申し訳ないが、お前が主役になることはとうぶん無さそうだ。


休日とあって、釣宿前は釣客で賑わっていた。
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「いた!」
今日の主役がブルーシートの上で独り寛いでいた。



この子がいないと、今日の行事は成立しない。
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“好事魔多し”‥‥この日のことが決まってから、私の頭の隅には、常にこの言葉が居座っていた。


いつもと変わりないツバサの姿を見て、私は心底安堵した。
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この日を境に、この野良の運命は大きく変わる‥‥。


いつの間にか、ミイロがツバサの側に来ていた。
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その姿を認めたツバサはすぐに“母”ミイロの側に近づいた。
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母離れを果たしたはずのツバサだったが、まだまだ甘えていたいようだ。


ミイロ2010年11月25日夕刻、ツバサ同年11月28日夕刻‥‥、これは此処へ遺棄された日時だ。
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相前後して“捨てられた”からなのか、この2匹は本当の母子のように寄り添って暮らしている。


ツバサがこのエリアに受け容れられたのは、このミイロの存在が大きい。
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ミイロの側だと安心できるのだろう、ツバサは体中の力を弛緩させて寛ぎはじめた。


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ツバサの様子を見ていると、此処にこのまま居るほうが幸せなのではと、ふと思ってしまう。


しかし、そんなニンゲンの感傷的で一方的な想いは間違っているのだ。
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「野に暮らしても良いことないのよ」
マッシュの捕獲を手伝ってくれたあの女性の言葉が、今も私の耳に残っている。



船宿前にはシシマルとマサムネが無聊そうに体を横たえていた。
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そのシシマルにミイロが挨拶を求めている。
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おずおずとそれに応えたシシマルは、挨拶が終わるとすぐに背を向けた。


ミイロの後を追ってきたのだろう、ツバサは船宿前の駐車場にいた。
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“空気を読めない野良”はいつもマイペースだ。周りのことは一切に気にしない。
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シロベエとツバサの“プロレスごっこ”のゴングがいきなり鳴った。
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最近の戦績は、成長著しいツバサの方が優っているのだが、この時はツバサのモチベーションがイマイチで、ただ馴れ合っているだけだった。


シロベエもそんな半端なツバサの態度にヤル気をそがれているようだ。
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こうやってツバサがシロベエとじゃれ合うのも、これが最後になるだろう。


アクビをするツバサは如何にもダルそうな様子だ。
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病院で抗生剤を与えられてから一時回復していた鼻の調子が最近良くないようで、それが影響しているのかもしれない。


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この頃になると、訪問客が相次いだ。
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その中にはツバサに逢うため横浜からやってきたsyokoさんとご主人の姿もあった。


そして、そこへもうひとりの主役であるチャチャさんが船宿に到着した。
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ツバサはこれからチャチャさんに連れられ、この海岸から旅立ってゆく。



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確執 その弐『野良の仁義』

2011年06月22日 08:00

コジローは水場に身を潜めたまま、一点を凝視している。
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そのコジローの視線の先にいたのは、シロベエだった。
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シロベエは空気を読めないばかりでなく、コジローの刺すような視線を浴びても何も感じないようだ。


コジローの眼には恨みとも憎悪ともとれる光が宿っている。
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2匹の間にどんな軋轢があったのか、私は具体的なことを知っているわけではないが、シロベエがコジローを威嚇する場面を何度か目撃している。


去勢手術を施術されたシロベエは以前に比べて穏やかになったのだが、今でも時折好戦的な態度にでることがある。
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但し、シロベエがそのことを自覚している様子は、まったく感じられない。これも“空気を読めない野良”と呼ばれる所以である。


そんなシロベエの自戒の無さも、コジローには耐え難いことなのかもしれない。
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むろん、そんなコジローの気持ちをこの“空気を読めない野良”が忖度することなどあり得ない。


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船宿へ近づいたシロベエを迎えたのはシシマルだった。去勢される前のシロベエはこのシシマルともよく諍いを起こしていた。


その頃は互角か、シロベエがやや優勢だったが、今はシシマルがその巨体にモノを言わせ元の威厳を取りもどしている。
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諍う声を聞きつけたミイロが駆けつけてきた。ミイロはこのエリアの“警備隊長”でもある。


シシマルがこの“警備隊長”に対して居丈高な態度にでることはない。このときもシシマルはミイロと眼を合わせようとはしなかった。
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その気まずい2匹の間に割った入ったのはツバサだった。


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諍いの当事者であるシロベエは素知らぬ顔で、呑気にアクビをしている。しつこいようだが‥‥、こういうトコロが“空気を読めない野良”と呼ばれる所以である。


そんなシロベエも、ツバサにとってはよく遊んでくれる良き兄貴なのだろう‥‥。
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ツバサはシロベエにそっと寄り添うと、厳しい眼でシシマルをねめつけた。



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シロベエは行き場を失ったように、しばし船宿前で悄然としていたが‥‥、


やおら腰を上がると足早に歩を進めはじめた。
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脚を引きずりながら歩き去るシロベエの後姿には哀感が漂っている。


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そんなシロベエにこれといった目的などあるはずもなく、寄る辺ない風で辺りをうろつくだけだった。


その様子をじっと見つめる母と息子。
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最近は目撃していないが、クロベエもシロベエに何度か謂われない因縁をつけらていた。
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でも今は対岸の火事‥‥、大きなアクビをする余裕があった。‥‥このときは、まだ。


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マサムネも水上バイクの上から高見の見物に徹している。


クロベエはもう一度アクビをすると‥‥、
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大きな伸びをした。


そして前方を見据えたクロベエは‥‥、
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ゆっくりと船宿の方へ歩きだした。


「クロベエ、何処へ行くんだ?今は船宿へ近づかないほうがいいぞ」
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私の心配したとおり、ミイロがクロベエを待ち受けていた。
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ところが、このあとのクロベエの行動もまた、私の理解を超えるものだった。


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クロベエが更にミイロに近づいたのだ。


こうして‥‥、反目し合う2匹が対峙した。
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今度はミイロがゆっくりとその間合いを詰めた。


これじゃ、まるで西部劇か黒澤映画の決闘シーンだ‥‥。私はつい独りごちた。
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クロベエとミイロは向き合ったまま微動だにしない。


緊迫した空気に耐えられなくなったのか、クロベエがついと視線をそらした。
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と、今度はミイロが視線をはずし、あらぬ方を見やった。


再び視線を合わせた2匹だが、どちらも動く気配がない。
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マサムネとコジロー兄弟もコトの成り行きを傍観している。


だがよく見ると、マサムネの関心は既にほかへ移っているようだ。
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周りの異変を知りたいときは、猫の動向に注意を払うといい。何故なら、彼らの五感は我々ニンゲンより遥かに優れているからだ。


こと視覚に限れば猫はかなりの近眼だが、その代わり動くモノに対しては鋭敏だ。
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マサムネの視界で動いていたのは、シロベエと突然現われたキジトラAだった。


キジトラAはこのエリアの野良たちと無用な衝突を避けるためなのか‥‥、
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足早に去っていった。


シロベエもそんなキジトラAの後を追うことはなかった。
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ほかの野良たちもキジトラAの後姿を静かに見送っている。


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彼らに代わって、私がキジトラAを追った。
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ほかのテリトリーで諍いを起こさないのは、野良の仁義と自らが生き長らえる術なのかもしれない。


そのとき、ふと足元を見た私は驚いた。ミイロとツバサが同じようにキジトラAを見つめていたからだ。
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ここは多くの野良が命を落としている国道の脇にある歩道‥‥。剣呑なこの場所へ近づくことは、最大の禁忌である。


私はすぐにミイロとツバサを従えて国道から離れた。
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だがミイロはまだキジトラAが気になるようだ。


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私が「ミイロ、もうアイツに構うな。船宿へ戻るぞ」と言っても、ミイロはその場を離れようとしない。


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キジトラAの出現は“警備隊長”のミイロにとって見過ごせないコトなのかもしれない。


ミイロが船宿を離れた隙に、クロベエは水上バイクの上へ戻っていた。
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『君子危うきに近寄らず』
クロベエ、お前にはこの諺を憶えていてほしい‥‥。



さて一方コジローはといえば‥‥。
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いつの間にか、独り漁港へ“帰って”いた。
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そして船宿にいたときとは打って変わった穏やかな面持ちで、茜色に染まった西の空を眺めていた。


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確執

2011年06月19日 22:30

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船宿エリア
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ミイロはいつものように釣宿の前で寛いでいた。
「‥‥っていうか、ちょっとリラックスし過ぎだぞ、ミイロ」



元家猫だから、致し方ないと思うのだが‥‥、
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このミイロの警戒心の無さは、やはり気がかりだ。


そこへ、“浜の伊達男”が現われた。
「珍しいなコジロー、いつもなら漁港へ出張っている時分だろう」

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コジローを認めたミイロは、やにわに近づくと挨拶を求めた。


だがコジローは、如何にも迷惑そうな面持ちでミイロに背を向けた。
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そのコジローの後ろ姿を呆然と見送るミイロ。


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「コジロー、いくらなんでもつれないんじゃないのか、今の態度は」


クールが信条のコジローらしいといえば、それまでだが‥‥、
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ミイロの寂しげな様子を見ていると、何もそこまで徹底しなくてもいいだろうと思ってしまう。


しかし“特攻隊長”のミイロもまた、らしかった。ミイロは再びコジローに挨拶を迫ったのだ。
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たがコジローは、今度もするりと身をかわすと、ついとミイロから離れてしまった。


そして‥‥、2匹の間に気まずい空気が流れた。
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たとえ同じエリアの仲間であろうと、べたべた馴れ合うことを嫌うコジロー。
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さすがの“特攻隊長”もコジローの頑なな態度に遭い、挨拶するのを断念したようだ。


毛色からコジローとマサムネは父親が同じだろうと、以前から想像しているのだが‥‥、
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こうも性格が違うと、その想像が間違っているように思えてならない。


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むしろ明らかに毛色が違うこの温和な黒猫と、マサムネの父親が同じなのではと思ってしまう。


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クロベエの耳がいきなり水平に伏せられた。


そしてクロベエは警戒と怯えが綯い交ぜになった複雑な表情を作った。
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クロベエの視線を辿って足元を見ると、ミイロがそこにいた。


ミイロは今にもクロベエに飛びかからんばかりだ。
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ミイロの戦闘態勢を目の当たりにしても、クロベエは同じ姿勢のまま身を固くしているだけだ。


今回もクロベエには何の非もない、ただ水上バイクの上で独り寛いでいただけだ‥‥。
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「ミイロやめとけ、クロベエは何もしてないだろうが!」私はそう言ってミイロを制した。


元家猫のミイロは、人の言葉をその調子である程度理解することができる。
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ミイロは渋々ながらクロベエから離れていった。
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謂われないことでミイロに疎まれつづけているクロベエ。


このことがクロベエの心境に悪い影響を及ぼすのではと、私は危惧している。
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その際にミイロがどんな役割を果すのか、そこまでは分からないが‥‥。


シズクは息子のクロベエが窮地に陥っても、気にとめる様子を見せない。
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この母猫から所謂母性というものを感じることは、殆どない。


“浜の伊達男”も先程のミイロとクロベエの諍いを物陰から窺っていたようだ。
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この野良もまた、兄弟の苦境を見て駆けつけるような情愛は持ち合わせていない。


私は自分の目を疑った。
クロベエが水上バイクから降りて、のこのこと駐車場に姿を現したからだ。

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クロベエはそのまま駐車場の真ん中まで歩み出ると、敵対するミイロに背を向けて体を横たえた。
「な、何故だ、クロベエ!?」



今度は、ミイロが動いた。
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ミイロはクロベエを大きく迂回して駐車場を後にした。


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私は猫の行動が未だによく理解出来ずにいる‥‥。


船宿前に野良の姿はなく、ひっそりとしていた。
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そこへ現われたのは意外にもコジローだった。
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最近では船宿を忌避し滅多に近づかないコジローなのだが‥‥。


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漁港へ出張るのもそろそろ飽きてきたのだろうか?


だがよく見ると、コジローの表情は漁港にいるときと比べてずっと険しいものだった。
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何気なく見やったコジローの視線を辿ると‥‥、
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母と息子のシンクロシーンが目に入った。それは何とも長閑な情景だった。


しかしそんな長閑なシーンとは関係なく、コジローは緊張した面持ちで尚も周囲の警戒をつづけた。
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と、次の瞬間だった!
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コジローが身を伏せ、その眼に厳戒の火を灯したのは‥‥!



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緊急告知


6月19日夕刻、ツバサが新天地へ向けて海岸から旅立っていった。


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里親さんの用意したキャリーケースに収まったツバサは、しばらくの間悲しげに鳴いていたが、徐々に落ち着きを取り戻した。

ツバサが此処へ遺棄されたのは去年の11月28日‥‥、その時の第一発見者は私だった。
それから7ヶ月、ツバサは厳しい海岸の冬を耐え、最近では“母”ミイロからも独り立ちして逞しいオトナへと変貌を遂げた。


そしてそんなツバサをずっと見守りつづけた里親さんに連れられ、ツバサは海岸から去っていった。
もう二度と此処へ戻ってくることはない。

「ツバサ、幸せになるんだぞ!」


この“ツバサ旅立ち”の模様は過去の写真と共に編集し、後日紹介する予定です。



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ソックスの戯れ その弐『海辺』

2011年06月17日 08:30

ソックスエリア
橋の下を覗くと、ソックスは水路の縁に降り立っていた。

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それにしても、なに故橋から飛び降りたのか‥‥?
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何にせよ‥‥、人騒がせな野良だ。


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ソックスが橋の下を執拗に覗き込んでいる。


その視線の先にあったのは‥‥、
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今工事が進められている下水道に通じる水門だった。


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ソックスは潮の香に誘われるように砂浜をさらに降りてきた。


犬と違って、猫は水を極度に忌避する。
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だから何故ソックスがこんな波打ち際までやってきたのか、私には理解できなかった。


ソックスはその波打ち際で何かを探しはじめた。
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「いったいこんなトコロで、何を漁っているんだ‥‥?」


と、そこへ波が打ち寄せてきた。慌てて逃げるソックス。
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「ソックス、波が高かったらさらわれるぞ」


よほど怖かったのだろう、ソックスが波打ち際に近づくことは二度となかった。
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そして気持ちを落ち着かせるためなのか、ソックスはしばらく砂の上に体を横たえたまま動かなくなった。


海岸猫のなかでもまだ若いこの野良の好奇心は旺盛だ。
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次にソックスが向かったのは、漁師小屋だった。


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ここでもソックスは地面に鼻をつけて、何かを探しはじめた。


どうやら目的のモノを探り当てたようだ。
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「あっ、た、食べた‥‥!」


ドラムの上に跳び乗ったソックスが何かを凝視している。
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さらにその匂いを嗅ぎはじめるソックス。


そして、やおらソレに食らいついた。
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「いったい何を食べているんだ‥‥?」


側に寄ってよく見てみると、それは砂まみれの“シラス”だった。
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おそらく地曳網で獲ったシラスが零れ落ちたのだろう‥‥。


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ソックスは穏やかな海を背にして、海辺の風景を眺望しはじめた。


自分が生まれ育った海辺に望んで、ソックスは何を考えているのだろう‥‥?
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‥‥残念ながら、私はこのトボけたソックスの表情から何も読みとれない。


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その後もソックスは飽きることなく周辺を眺めつづけた。


此処で生まれ育ったソックスにとっては、この海辺が全世界なのだ。
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彼女はこの世界しか知らず、やがて老い、そして死んでゆく‥‥。


その間、この愛くるしい野良は訪ねてくるニンゲンに親愛の情を示しつづけるだろう。
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それも意味のある生き方なのだろうが‥‥、やはり猫の幸せは違う場所にあると思わずにはいられなかった。


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砂まみれのシラスを貪るくらいだから、腹が減っているのだろうと思い、持っていたカリカリを与えてみた。
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ところが、ソックスは申し訳ていどに口を付けただけで、食べるのをやめてしまった。
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「砂だらけのシラスは食べても、私のカリカリは食べないんだな‥‥」
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「だったら今度からは、エサ場が違うタイツにだけエサをやることにするか」


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「だから、その顔はやめろって!」


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私がその場を立ち去ろうとしても、ソックスは海辺の風景を眺めていた。


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ソックスの戯れ

2011年06月15日 15:00

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ソックスエリア
この日、私はどうしてもソックスに逢いたいと思い、防砂林の奥へ分けいった。
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その私の願いが届いたのか、防砂林の中でソックスに遭遇した。
下水道工事のせいで、それまでのエサ場を失ったソックスは、こうして防砂林の中で暮らしている。



私の姿を認めたソックスは、ゆっくりとした足取りで近づいてきた。
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「ソックス、母親のタビは一緒じゃないのか?」
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ソックスは私の問いかけには答えず、その場に体を横たえた。


「ところでソックス、タイツとは会っているのか?」
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ソックスはこの質問にも素直に答えないで、代わりに大きなアクビをした。


下水道工事が始まって以来、姉妹であるタイツとは東と西に別れて暮らしている。
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おっと、タイツの話をしたせいか、ソックスの表情が険しくなった。


どういう経緯があるのか知らないが、ソックスとタイツの仲はすこぶる悪い。
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私の見る限りでは、ソックスが一方的にタイツを疎んじているようだが‥‥。


私が防砂林の出口に向かうと、ソックスも毛繕いをやめて後を追ってきた。
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多くの蜘蛛が生息し、見えない糸を張り巡らしている防砂林の中は、あまり長居をしたくない場所なのだ。
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ただソックスが此処から出たくないのなら、付き合うしかないが‥‥。


ややあって、ソックスは私を脇をすり抜けると‥‥、
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奇妙なモノが安置されている場所に腰を下ろした。


防砂林の中には不法に投棄された様々な廃棄物が散見されるが‥‥、
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これはそんな類のモノではなさそうだ。


素朴な木像と、陶製の動物の置物‥‥。
これらは何を模したモノなのだろう?そして誰が、何のためにこんな場所へ置いたのだろう‥‥?

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「ソックス、お前はこれが何か知っているのか?」


そんなことは自分で考えろと言わんばかりに、ソックスはにべない態度で立ち上がった。
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木像の正体はもちろん、陶製の動物の正体すら判らなかった私は、この場から早く離れたくなった。
ともあれ、防砂林は長居をするトコロではない。



そこで私はソックスの後を追って、防砂林の出口へ向かった。
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ソックスがゆっくりとした足取りで元のエサ場の方へ歩いていく。
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そして防砂林の出口で立ち止まると‥‥、
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周囲の様子を仔細に窺いはじめた。


周りの安全が確認出来たのだろう、一度私の方を振りかえると‥‥、
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ソックスは意を決したように、防砂林の外へ向かって歩を進めた。


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サイクリングロードに出たソックスは、そこでも一度立ち止まり、周囲の様子を注意深く窺った。


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ソックスは砂浜へ降りると、先回りした私の後を追ってきた。


途中、不敵な面持ちで舌なめずりをするソックス。
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ソックスは脇目もふらず、尚も私の後を追ってきた。


そのソックスの姿は威風堂々としていて、ネコ科特有の風格を漂わせていた。
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しかしその風格は、私の脚にすり寄った時点で雲散した。


それからソックスは、私の傍らでしばらく穏やかな海を眺めていたが‥‥、
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何の前触れもなく、いきなり橋の上からダイブした‥‥。



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コジローの事情 その弐『黙秘』

2011年06月12日 22:00

無駄と知りつつ、私はもう一度コジローに訊いてみた。
「コジロー、どうして自分のテリトリーを離れてこんなトコロに独りでいるんだ?」

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するとコジローは沈思するようにそっと眼を瞑った‥‥。私は黙って答を待った。


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ところがコジローは、大きなアクビをひとつしただけでこちらを見ようともしない。


ややあって、コジローは眼を開けたが‥‥、
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私からついと視線を外すと、あらぬ方向を見つめはじめた。
どうやらこの件には触れてほしくないのだろう‥‥、コジローは完全黙秘を貫き通した。



私はそんなコジローを放って船宿エリアへ戻ることにした。
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ところが何を思ったのか、コジローは私の後を追ってきた。


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この時は前回のように、船宿エリアへ戻ることを促したわけではないのだが‥‥。


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コジローの様子は、自分のテリトリーに独りで戻るのは心細いと言わんばかりだった。


やはりシロベエとの軋轢が、コジローを船宿から遠ざけているのだろうか?
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船宿を眼の前にしてコジローの歩みが止まった。


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コジローは真剣な面持ちで、船宿の様子を注意深く窺っている。


と、そのコジローの後ろを黒猫が横切っていく。
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このエリアの黒猫と言えば、クロベエしかいない。


「クロベエ、お前いったい何をやってんだ?」
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しかし気持良さそうに体を地面にすり付けるばかりで、クロベエは何も応えない。


戻ってきたコジローを何処かから見ていたのだろう‥‥、ミイロがコジローに近づき、委細構わず挨拶をした。
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コジローはそのミイロの強引さに気圧され、顔色を失っている。


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“浜の伊達男”“特攻隊長”が相手では、何とも不甲斐ない。


コジローは船宿の方を見つめたまま、いつまで経っても動こうとしなかった。
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その船宿には可愛い女の子が訪れていた。ミイロは臆することなく、見知らぬ訪問者に愛嬌を振りまく。


シシマルは怯えた表情で船宿から離れていく。
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人見知りのシシマルは、その相手がいくら可愛い女の子であっても、けっして心を許さない。


クロベエも車の下から、不安気に見知らぬ訪問者を見つめている。
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結局、女の子たちの相手をしたのはミイロだけだった。


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物見高いシズクでさえ船宿には近づかず、離れたところからそっと様子を窺っている。


ふと顔を上げると、マサムネの姿が見えた。
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おそらく用足しのために船宿から離れていたのだろう。


マサムネは来訪者の存在を認めても、それを忌避することはない。
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ゆっくりとした足取りで船宿へ近づくマサムネ。


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マサムネは、車の下へ潜んでいるシロベエに一瞥をくれると‥‥、


さっきと同じ歩調で船宿へ歩を運びはじめた。
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その頃、女の子たちは駐車場にいたクロベエに声をかけていた。
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だが臆病なクロベエが唯々諾々と言うことを聞くはずもなく、何処かへ身を隠したのだろう、その後姿を見せなくなった。


遊び盛りのツバサも、何故か船宿に近づかない。
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コジローに至っては誰かの攻撃を恐れるように、枯れ枝の中に身を潜めている。


“浜の伊達男”の異名を持つ狷介孤高なこの野良も、そのクールな面差しとは裏腹に用心深く、臆病な性格を持っている。
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それだから、敵の少ない漁港へ毎日出掛けているのかもしれない。


頃合いを見て、私は持ってきたキャットフードを野良たちに与えた。
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いつもなら水場で仲間と争うように食べ物を漁るシシマルは、訪問者を避けて離れたところで食事をとる。
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コジローもまた、船宿を忌避し近づかない。
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そうして結局、駐車場の片隅で独り食事をすることになった。


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優しい野良マサムネは人を殆ど恐れない‥‥、それが良いことなのかそうでないのか、私には判らない。


人を恐れない野良はエサを貰うなどの恩恵に与れるが、悪意を持つニンゲンにとっては格好の標的になるからだ。
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野良たちと触れ合い、満足したのか、可愛い訪問者は連れ立って船宿を後にした。


女の子たちが立ち去っても、マサムネは独りペースを崩さず食事をつづける。
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食事終えたシロベエが水場を離れた。
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そのシロベエの見つめる先にいるのは‥‥、


コジローだった。
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2匹はその場に留まり、しばらく対峙していた。


コジローは険しい眼でシロベエを見据えたまま、微動だにしない。
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先に動いたのはシロベエだった。


シロベエは不自由な後ろ足を引きずりながら、ツバサとシシマルのもとへ歩を進める。
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コジローが自分のテリトリーで心穏やかに居られないのは、それはそれでストレスの溜まることだろうと思われた。


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シロベエは仲間と一緒にのんびりと寛いでいる。
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空気を読めない脳天気なコイツのことだから、コジローが自分を避けていることなどまったく心に留めていない可能性も十分考えられた。


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もしそうなら、ますますコジローが可哀想に思えてきた。


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コジローの事情

2011年06月11日 10:00

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船宿エリア
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独りで寛いでいるミイロにツバサが大股で近づいてきた。


ツバサはただ遊びたいだけなのだが、ミイロの反応は少々大袈裟だ。
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ミイロは威嚇とも服従ともとれる姿態でツバサをねめつける。


それを見たツバサは、ミイロの倣うように体を伏せ一声啼いた。
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オトナの身体に成長したツバサ‥‥、そんなツバサの相手をまともにするのは、さすがの“特攻隊長”も最近では持て余し気味だ。
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どうやらツバサは、親離れを迎える時期が近いようだ。


さっきからフレームの中でチョロチョロしているマサムネ、いったい何をしているんだ?
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しばらく様子を見ていたが、これといった目的はなさそうだった。


船宿前に行くと、いきなりアイが近づいてきた。
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アイは尻尾を立てて、私に親愛の情を示す。


その巨体に似合わず照れ屋なシシマルは、いくら顔見知りの人間だからといって、自ら心を開くことはない。
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それでもあるコツを覚えると体を触ることが出来るのだが‥‥、シシマルのため、このことはナイショにしておく。先日このコツを利用しキュウさんとふたりでシシマルにレボリューションを滴下した。


そのシシマルに一方的に挨拶するミイロ。
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そして近づいてきたアイには丁寧に挨拶をした。


こういう交歓の場に、シズクが加わることは‥‥、絶対にない。
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人に追従(ついしょう)せず、仲間にも迎合しない。まさに孤高の野良シズク。


優しい野良であるマサムネも、自ら人にすり寄ってくることはない。
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野良にはそれぞれの身の上があり、同じところで育ってもその性格は一様ではない。


この野良も特異な性格を持っている。
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シズクとは性質が違うが、シロベエも独立独歩な生き方を押し通している。


周りの雰囲気など一切気にせず、自分の想いのまま行動するのが常だ。
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それ故、仲間から疎まれ、孤立することも珍しくない。この野良を一言で書き表すと“空気を読めない野良”だ。


そんなシロベエを静かに見つめるミイロとシズク。
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ミイロも敢えてこの“空気を読めない野良”に近づくことはない。


「ところでマサムネよ、弟のコジローの姿が見えないが、今日も漁港へ出張っているのか?」
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期待などしていなかったが、案の定、人に媚びない野良が素直に答えることはなかった。


そこで私は、コジローの姿を求めて漁港へ足を運んだ。
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まず最初に遭遇したのは、此処に残ったただ1匹のキジ白だった。
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以前此処には3匹の野良が肩を寄せ合うように暮らしていた‥‥。


ところが、去年の春に1匹、そして今年の春に1匹と逝ってしまった。
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このキジ白は幾人ものブロガーの被写体になっている人気の野良だ。


船宿エリアの目と鼻の先にありながらも、私は此処を滅多に訪れない。
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そんな私だが、独りになったこのキジ白はやはり気にかかる‥‥。


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漁港の外れまで来たとき、突然建物の陰からコジローが姿を現した。


やはりコジローは今日も此処へ出張っていた。
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「コジロー、どうしてお前は毎日ここへ来るんだ?」


最近はシロベエとの確執があって、船宿エリアを忌避している様子も窺えるが‥‥、
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コジローが此処へ頻繁に来るようになったのはそれ以前からなので、他の理由もあるはずである。


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その辺りのコジローの事情を是非とも知りたいと思ったが、狷介孤高のこの野良が自ら語ることはあり得ないのだ。



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物憂い午後 その弐『来訪者』

2011年06月08日 22:30

船宿エリア
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ミイロは物憂げな表情で静かに目を瞑った。


そこへコジローが戻ってきた。
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コジローのことだから、また漁港へ出張っていたのだろう。


ツバサはそのコジローにそっと寄り添うと‥‥、
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そのまま体を預けるようにして地面に横たわった。


コジローはそんなツバサを優しく受けとめている‥‥。
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ほかの猫との接触を極力避けるコジローだけに、私の目には意外な光景に映る。



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チャチャさんが船宿へ向かうと、野良たちはその後を追った。


船宿の水場には、チャチャさんの来訪を知ったほかの野良も集まってきた。
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チャチャさんはそんな野良たちに急かされるように、持参したキャットフードをトレイに盛りはじめた。
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ミイロは相変わらず、食べ物に対して無関心だ。


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クロベエは、自分を敵視するミイロがいる水場へ近づこうとしない。


事情を知っているチャチャさんがクロベエの側へトレイをおいた。
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このようにクロベエは何かと手間のかかる野良だが、大人しく臆病なコイツを見ているとどうしても不憫に思えてしまうのだ。


何事にも控えめなマサムネが食事に有り付くのは、大抵一番最後になる。
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これほど慎み深い野良を、私はほかに知らない。


チャチャさんが訪れたせいで、さっきまでの沈んだ空気は雲散したようだ。
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ただ独りミイロを除いて‥‥。


水場へ近づかず険しい表情でこちらの様子を窺っているコジロー
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ちなみに、コジローが警戒しているのはシロベエだ。


去勢手術を受けたシロベエは、それ以前に比べてずいぶん穏やかになったのだが、何故かコジローにだけは未だ敵意を露にする。
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仕方ないので、コジローに猫缶をデリバリーしてやった。


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ミイロが近くにいると食が進まないクロベエは、結局水場から離れたココで食事をすることになった。


腹が満たされていたらしく、コジローは猫缶を殆ど残した。
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そのコジローの残りは、クロベエがキレイに始末してくれるハズだ。


コジローはちらりと船宿を振りかえると‥‥、
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ゆっくりとした足取りで漁港へ向かっていった。


最近のコジローはシロベエとの軋轢もあって、殆どの時間を漁港で過ごしている。
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“浜の伊達男”“船宿のクールガイ”などの異名を持つこの野良も、無益な争いは避けたいようだ。


食事を終えたクロベエが去り難そうに佇んでいる。
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しかし、その表情は思いのほか険しい。


クロベエが見つめていた先にいたのはミイロだった。
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クロベエを見つめるミイロの表情も、これまた険しいものだった。


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そんな険悪な空気の中、チャチャさんにブラッシングされるマサムネ。


此処で生まれた生粋の野良であるマサムネは、ブラッシングなど殆どされたことがないはず‥‥。
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よほど気持ちが良いのだろう‥‥、マサムネは恍惚とした表情を見せている。


船宿を離れたミイロが植込みの中をしきりと気にしている。
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そこには潜んでいたのは“キジトラA”だった。


このエリアには最近、2匹のキジトラが出没しているが、これはそのうちの1匹。
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このキジトラは警戒心が強いことから、最近遺棄されたのではなく、何処かから流れてきた野良だと思われる。
キジトラキジトラ その弐『確認』


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“特攻隊長”と呼ばれるほどアグレッシブなミイロだが、このキジトラAに挑むことはない。


相手の力を推し測って敵わないと悟っているのか‥‥、
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それともキジトラAの境遇をおもんぱかって、エリアへの侵犯を許しているのだろうか?


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どちらにせよ、無用な諍いは起こしてほしくないものだ。


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「お前もアウエーの此処では大人しくしていろよ」


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遅れてやってきた“気まぐれレディー”のアイにも漏れなく猫缶が振る舞われた。


ミイロはやはりキジトラAが気になっているのだろう、植込みに向かって動かなくなった。
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“特攻隊長”のミイロは、エリアの“警備隊長”でもある。


ツバサが側にきて甘えたが‥‥、
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ミイロは植込みを見つめたまま、にべない態度であしらった。


そんな緊迫した空気の中、猫じゃらしと遊ぶ脳天気な野良がいる。
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それは今年4歳になる“オヤジ猫”のマサムネだ。
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ブラッシング同様、こうして猫じゃらしで遊んでもらったことも今まで殆どなかったのだろう。





最近のツバサはこうして独りでいることが多くなった。
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此処に遺棄された直後のツバサは、鳴いてばかりいる弱虫猫だった。


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まだまだコドモの部分も多く残っているが、ツバサが時折見せる表情はオトナの風情を感じさせる。


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でもお前には、このまま此処でオトナになって欲しくないのだが‥‥。



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物憂い午後

2011年06月05日 09:00

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船宿エリア
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先日仔猫と一緒のいたトラックの荷台に、この日はミイロ独りが寛いでいた。


挨拶代わりに声をかけてみたが、ミイロは眇めた目で私に一瞥をくれただけだった。
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「このあいだの愛想は何だったんだ?」‥‥まったく、猫は気紛れなイキモノだ。


船宿前
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船宿前には如何にも無聊そうなシズクの姿があるだけだった。


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私が執拗に声をかけると、マサムネは煩わしそうにこちらを振りかえった。


そして‥‥、すぐさま視線を逸らした。
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マサムネの愛想の無さは覚悟していたが、この日はいつにも増してすげない‥‥。


それでも私の来訪を知った野良たちが姿を見せはじめた。
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だが、手放しで私を歓待してくれる野良は1匹もいない‥‥。


ツバサは私を無視して、大きなアクビをすると‥‥、
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おもむろに伸びをした。


そして近くにいたシロベエのもとへ歩み寄っていった。
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いきなりシロベエヘじゃれつくツバサ


シロベエに軽くいなされたツバサは‥‥、
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地面に横になったまま動かなくなった。


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ヤル気のないツバサの態度に、シロベエもどう対応していいか戸惑い気味だ。


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ツバサの表情が冴えないのは、仔猫がいなくなったことと関係あるのだろうか?


そのままの姿勢で、シロベエをかえりみるツバサ。
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シロベエもそんなツバサに優しい眼差しを向ける。


そういえば、シロベエは去年此処から里子に出した“新入り猫”とよく遊んでいた。
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あの後、シロベエは新入り猫の不在を受け容れられず、しばらく寂しそうにしていたものだ。


最近では“トラブルメーカー”の異名が相応しくないほど、穏やかになったシロベエ。
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これからはツバサの兄貴分として、いい遊び相手になってくれるといいのだが‥‥。


そろそろ1歳になると推定されるツバサ。人間でいえば、17~20歳の成人期にあたる。
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そのせいか、最近では“母”ミイロにまとわり付くシーンを目にすることも、めっきり少なくなった。


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この日の野良たちは際立った動きも見せず、物憂げな時間を持て余しているようだった。


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シシマルはその巨体を器用に折り曲げ、毛繕いに余念がない。


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マサムネにしても、午後の陽射しを受けながらのんびりと毛繕いをしている。


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ミイロに至っては、さっきと寸分違わない場所に体を横たえたままだ。


この日ミイロは、いなくなった仔猫を捜す素振りを見せない。
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仔猫が此処へ戻ってこないことを受け容れたのだろうか‥‥?


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クロベエが前方を凝視したまま固まっている。


その視線の先にいたのはツバサだった。
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ツバサはシャッターが開け放たれたコンテナハウスのなかを興味深そうに窺っている。


そして、コンテナハウスに置かれた荷物の間を縫うように奥へ進むと‥‥、
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そのまま物陰へ姿を消してしまった。


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その様子をつぶさに観察するクロベエ。


そのクロベエが見つめるなか、やっと姿を現したツバサだったが‥‥、
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再びコンテナハウスの探索をはじめた。“オトナ”になっても、ツバサの旺盛な好奇心は健在だ。


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コンテナハウスの探索を終えたツバサは、釣宿前の空地に姿を現した。


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そのツバサを後を追うシロベエ。


そして、その様子を物陰からそっと覗き見するシズク。物見高いこの三毛猫はこうして何処へでも顔を出す。
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そこへ、船宿の野良を訪ねてチャチャさんがやってきた。


ツバサはチャチャさんのもとに駆けつけると、さっそく甘えはじめた。
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無邪気に遊ぶツバサは、やはりまだまだ“コドモ”だった。


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ふと顔をあげると、いつの間に荷台から降りたのか、沈鬱な表情でミイロが佇んでいた。



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