駐車場のケージ

2011年09月05日 08:00

それは、偶然の出会いだった。

そのとき私は、比較的交通量が多く、今回の滞在で幾度となく渡ったことのある交差点で、自転車に跨り信号待ちをしていた。

いつもなら、目の前を行き交う車か信号機を漫然と見つめているだけだったが‥‥。
何げなく移した私の視界の中に、その光景はするりと入り込んできた。
道路の反対側にある民家の駐車場に初老の男性がうずくまって、何かを熱心に覗き込んでいたのだ。

私は横断歩道を渡ると、そっとその男性に近づいていった。


そこは普通の民家ではなく“動物病院”の駐車場だった。
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その男性が見つめていたのは、ケージに収まった2匹の仔猫だった。


ケージの上には“里親募集”と手書きされた厚紙が置いてある。
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「こんにちは」
私は男性の横にしゃがみながら声をかけた。


「カワイイなぁ、カワイイなぁ‥‥」
よほどこの仔猫たちを気に入ったのだろう、男性は目を細めながら自分の指で仔猫を遊ばせる。

私との猫談義が一区切りつくと、
「孫たちの遊び相手にもなるかもしれない。電話して飼っていいか訊いてみよう」
そう言って男性はその場から足早に去っていった。


私は改めて仔猫たちに目を遣った。
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体の大きさはほぼ同じ‥‥、おそらく兄弟、姉妹だろう。


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この仔には白と黒の他に僅かに薄茶の被毛が認められるが、三毛猫とは言い難い。そこで便宜上“キジ白”と呼ぶ。


そこへ小学生2人がやって来た。
話の内容から、たまたま通りかかったのではなく、この仔猫たちを知っていて逢いに来たようだ。

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この子たちもまた、事情が許せば仔猫を連れて帰りたいのだろう‥‥。


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子供たちが立ち去ったあとも、私はなかなかケージの傍から離れることが出来ないでいた。


この日は、空を覆う薄雲のせいで陽射しが幾分和らいでいる。
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おそらく、こういう天気だから駐車場にケージを置いているのだろう。


それでも暑いことに変わりはなく、黒ブチの仔は少々バテ気味だ。
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一方キジ白の方は暑さにもめげず、遊ぶ気満々。


この2匹の仔猫がどんな経緯でケージに入れられ、動物病院の駐車場に置かれているのか、私には知る由もないが‥‥、
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この仔らに責任がないことだけは、わかる。


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やがて黒ブチの仔は眠ってしまった。


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キジ白の仔は執拗に私の指にじゃれついてくる。


まだ母親に甘えたいだろうに‥‥。
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「善い人の許へ行けるといいな‥‥」私はポツリと呟いた。


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このつぶらな瞳は、今まで何を見てきたのだろう?


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そして今、憂いを含んだその眼は何を見ようとしているのだろう‥‥?


別れた母の姿を思い浮かべているのか‥‥、
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それとも、自分の行く末に思いをめぐらせているのか‥‥。


仔猫の、それもこういう境遇の仔を見ていると、可愛いと思うより切なくなってしまう。
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こんな境遇にいるのに、どうしてお前はそんな澄んだ眼をしているんだ?


そのうちキジ白の仔は、駐車場の上に拡がる空を見つめはじめた。
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遊び疲れたのか、瞼が重そうだ。
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しばらくすると、頭を後ろに反らせたまま眠ってしまった。
あどけない‥‥、あまりにもあどけない。

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2匹が眠ってしまったのを機に、私はその場から静かに立ち去った。



翌日‥‥。

動物病院の駐車場に、あの仔たちの姿はなかった。

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昨日話をした、あの初老の男性が引き取ってくれたのだろうか?
2匹ともいないということは、揃って貰われていったのだろうか?



そうだといいなぁ‥‥。
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私は秋の気配をはらんだ故郷の空を仰いで、そう願った。



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