故郷の猫 その七『行動』

2013年02月19日 11:00

母は、良い意味で医師の診立てに背き、周りも驚く生命力で小康状態を維持している。
以前は毎週だった通院治療が3週間ごとになり、私は時間を持て余す日が多くなった。

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そこで、無聊を慰める目的もあって、私は時間があると山門前エリアへ通った。


ここは表通りの近くにあるスナック。その店先に黒猫を発見。
私が確認した黒猫はこのエリアに2匹いるが、後ろ姿だけではどちらの黒猫か識別出来ない。

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よく見ると、黒猫のいる店先に白いトレイが置かれている。


近づいて中を覗くと、カリカリが入っていた。
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黒猫はこのカリカリを食べていたようだ。


ドアの側に置かれたトレイにも、同じカリカリが入っている。
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ところが、違うトレイには残り物か賄いらしきものが入っていた。
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味見をする訳にもいかないので断言出来ないが、手間を考えると、わざわざ猫用に味付けされているとは考えにくい。


物陰にいたので最初は気付かなかったが、顔見知りになった茶シロが、すぐ側でカリカリを食べていた。
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ここにも正体の分からない食べ物が発泡トレイに残っている。そして明らかに何者かが口を付けた痕跡があった。


このエリアの野良たちにとって、私は通りすがりの部外者に過ぎない。だから今までは、敢えて主食となるエサを避け、主にスナック類を与えていた。
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でも此処の食料事情を知るにつれて、一度はちゃんとした食事を与えたくなった。


ただ、今後過度な期待感を抱かせないように、試食程度の量に抑えた。
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気配を感知したのか、徐々に野良たちが集まってきた。


注意深く辺りを見回すと、生垣の隙間から様子をうかがっている野良の姿も確認出来る。
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何匹集まるか分からないので、取り敢えず猫缶の半分を開け、用意した紙皿に盛った。
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野良たちは争うことなく、行儀よく猫缶を食べ始めた。


オッドアイの仔猫もやってきたので、同じように猫缶を与えた。
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仔猫はゆっくりと、しかし脇目も振らず一心不乱に猫缶を食べる。


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それまで様子見に徹していた野良も寄ってきて、山門前はにわかに賑わってきた。


野良たちがどんな行動をするのか知りたくて、私は敢えて器を増やさなかった。
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すると、若いキジ白と長毛キジ白がそっと紙皿から離れた。


これまでも年長の先輩猫に譲ってばかりいた若いキジ白の行動はわかるが、厳めしい風貌の長毛キジ白が身を引いたのは予想外だった。
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とどのつまり、猫もまた、見かけでは判断出来ないということだ。


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ハチワレが、生垣からでてやっと姿を見せた。ずいぶん勿体ぶった登場である。


オッドアイの仔猫が参道を横切って、こちら側にやってきた。
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仔猫が使った紙皿を回収しに行くと‥‥、
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猫缶をほぼ完食していた。


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満足そうに毛繕いしている仔猫を見ていると、こっちまで安らぎを覚える。もちろん、一方的な想いであることは承知している。


これ以上野良の数が増えそうにないと判断し、残りの猫缶も開けた。
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と、そこへ若いサバトラが悠然とした足取りでやってきた。


あの程度の量で腹が満たされたのか、大半の野良が紙皿から離れ周辺でたむろし始めた。
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残っているのは、育ち盛りの幼い野良たちだ。
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あとからやってきたサバトラは、その遅れを取り戻そうと懸命だ。


育ち盛りは食べ盛りでもある。
すでに一皿平らげているオッドアイの仔猫も、健啖ぶりを見せる。

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きょうだいである眼ぢからの強い仔猫も、食欲は旺盛だ。


いつもは先輩猫に怯え、遠慮ばかりしていた若いキジ白だが、今日は存分に食べたと見えて、満足気に毛繕いをしている。
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ところが、ここにまだ、執拗に猫缶を漁る野良がいた。
先日仲間からおやつを横取りしたサバトラだ。今日もその横暴ぶりは健在だった。

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まず、近くにいた眼ぢからの強い仔猫の猫缶を、強引に奪いとる。仔猫は為す術もなく、紙皿から後ずさった。


さらに、オッドアイの仔猫の紙皿にも触手を伸ばす。
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サバトラの横紙破りな行為に眉をひそめる人がいるかもしれない。だが、野良社会にも遵守するべき独自のオキテがあるはず。


だから、たとえ専横な振る舞いに見えても、そのオキテに反していなければ、我々がとやかく言う筋合のものではない。
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横暴なこのサバトラだって、いつかは手酷いしっぺ返しに遭わないとも限らない。


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何しろ野良社会は“力”がモノを言う、単純明快なヒエラルキーで成っているのだから。


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ちなみにこのサバトラ、容姿や艶っぽい仕草などからメスだと思っていたのだが、オスであることが判明した。


やはり、まだ物足りないのだろう、若いサバトラが執拗に猫缶のかけらを物色している。
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でもこの日用意したキャットフードは猫缶だけ。そしてその猫缶も、もう残っていない。


松の根元で寛ぐ4匹の野良。藁の敷きつめられたこの場所がお気に入りなのだろう。
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改めて周囲を見渡すと、ほかの野良たちはいつの間にか姿を消していた。


そして、参道には缶と紙皿が残された。
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中を確かめると、底に僅かなかけらがへばり付いているだけだ。気持ちいいほど綺麗に平らげている。


眼ぢからの強い仔猫が参道脇を流れる水路をじっと覗きこんでいる。
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身を乗りだしてまで、いったい何をしようとしているんだ。


「獲物でも発見したのか‥‥?」
真剣な眼差しを水面に向ける仔猫のただならぬ様子に、私は目が離せなくなった。

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この街の水路を流れる水は清く澄んでいて、冬場は数を減らすが、淡水魚をはじめとする水棲生物がいる。


とはいうものの、水を嫌う猫がそれらを獲物として狙うとは考え難いのだが‥‥。
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このあと、私は仔猫の意外な目的を知ることになる。


〈次回へつづく〉



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『血まみれの毛皮』


日本では今、ファー(毛皮)が流行している、という。

ファーは上着のフードや襟や袖口、そして手袋、帽子、ブーツ、バッグ、アクセサリー、ケータイストラップと、実に様々なものに使われる。
そして、デパート、スーパー、専門店はもちろんのこと、今や100円ショップでも売られている。


ところで、これらの製品を作るために、多くの動物が生きたまま皮を剥がされている事実を、あなたは知っていますか?


「ここに、その事実を伝える映像がある」
ただし、かなりショッキングな映像なので、相応の覚悟をして観るように。
ちなみに私は、この映像を観たとき、あまりの衝撃に嗚咽と吐き気がしばらくとまらなかった。
そして‥‥、自分がニンゲンであることを心底嫌悪した。



最近では、フェイクファー(人工毛皮)より安価というだけでリアルファーが作られるそうだ。
それがため、アジアでは犬猫だけでも毎年200万匹が殺されている。
しかも、その毛皮のほとんどが日本へ輸出されるという。

あなたはこの事実を知っても、まだファー(毛皮)を身に付けますか?


詳しい実情を知りたい方は下記のサイトへ。
あなたに出来ることもきっとあるはず。

地球生物会議ALIVE
JAVA
ヘルプアニマルズ
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『血まみれの毛皮Part2』



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故郷の猫 その六『慈愛』

2013年02月12日 15:00

山門前エリア
前日一度も姿を見せなかった長毛のキジ白が、オッドアイの仔猫の側にうずくまっていた。あたかも子供を見守る親猫のごとく。

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先日一緒にいた母親らしき猫は、その後見かけない。猫風邪に罹ったあの白猫とは、てっきり親子関係だと思ったのだが‥‥。


2匹の側に、やはり前日姿を見せなかったサバトラが端然と佇んでいた。
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警戒心を含んだ面持ちで、胡乱な視線を私に投げかけてくる。


生垣にはオッドアイの子のきょうだいであろう、眼ぢからの強い仔猫が身を潜めていた。
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視線を戻すと、オッドアイの仔猫の側に黒猫がいた。
前日、私を警戒して最後まで近づいてこなかった、あの黒猫だ。

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そこへ、サバトラが尻尾を立てて擦り寄ってきた。
このサバトラ、妙な猫だ。こうやって友好的な仕草を見せるかと思えば、先日のように若い猫から食べ物を平然と横取りする傲岸さを見せる。



今回私が用意したのは、またたびが入ったスナックだ。
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野良たちは匂いを頼りに、小さなスナックを探している。用心深い黒猫も、またたびの引力には逆らえなかったようだ。


何処かに潜んで今までの様子を窺っていたのだろう、若いキジ白が尻尾を立てて足早にやってきた。
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ところが、私が次々と放るスナックを求めて右往左往する仲間を、キジ白はただ眺めるだけだ。


オッドアイの仔猫は最初こそ転がるスナックに興味を示したが、その後はただじっとしている。
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そしてカメラを構えている私に、不思議なものでも見るような虚ろな目をむける。
瞬膜に覆われ、まともに開かない左目が痛々しい。



いつの間にかハチワレも姿を見せ、小さなスナックを懸命に探している。
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スナックを与え始めて5分と経っていないのに、野良が次々に集まってくる。


サバトラと長毛キジ白が仲睦まじくスナックを探している。
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世知に長けたサバトラだから、あわよくば長毛キジ白が見つけたスナックを横取りしようと企んでいるのかもしれない。


オッドアイの仔猫は、目の前にスナックがあるのに、全く関心を示さない。
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猫風邪のせいで、嗅覚が鈍麻しているのだろう。


またまた、新たな野良が現れた。
前日、オッドアイの仔猫を抱き、寒さから護っていた茶シロだ。

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さっそくまたたび入りのスナックを見つけたようだ。


茶シロは、金縛りに遭ったように動きを止めた。
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と、次の瞬間、茶シロはいきなり地面に身体を擦りつけた。
猫によってまたたびへの反応は様々だが、この野良はかなり敏感なようだ。



このエリアの存在を知るきっかけを私に与えてくれた茶シロが、慎重な足取りでやってきた。
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そして長毛キジ白の傍らへしずしずと近づくと、何やら目顔で話しかけるような素振りを見せる。まるで上司に遅刻した言い訳をしてる平社員のように。


カリカリを与え始めると、野良たちがこぞって参道に出てきた。
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猫がこれだけ一堂に揃うと、なかなか壮観だ。


前日初見の若い白猫までもが、匂いに誘われて姿を現した。
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いつもは他の野良にエサを譲ってばかりいた若いキジ白も、今回はエサにありついたようだ。
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そのキジ白の前を、先程の若い白猫が地面の匂いを嗅ぎながら横切っていいく。
目の前にカリカリがあるのに、近眼の猫には認識出来ないようだ。



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オッドアイの仔猫は、相変わらず身動ぎせずにうずくまっている。


食事の中身はともかく、このエリアの野良の食料事情は悪くなさそうだ。
少なくとも量的には‥‥。

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飢えている様子は全く感じられないし、食べ物のせいで諍いを起こすこともない。


若い白猫が突然地面に身体を横たえた。どうやら、またたび入りのスナックに酔ったようだ。
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地面に置かれたカリカリも粗方食べ尽くされ、所在無げにしている野良の姿が目立ってきた。
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若いキジ白の様子を見ていたが、けっきょく群れの隅で遠慮がちにウロウロしていただけだった。


そしてオッドアイの仔猫は、ついに私が与えたキャットフードを食べることはなかった。
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今も目の前にまたたび入りのスナックがあるのに、目もくれず無視している。


そのとき、背後で扉の開く音がした。私は慌てて振り向いた。
すると、しもた屋風の建物から老婦人が現れ、中華麺の入ったトレイとカリカリを無造作に置いた。

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「こんにちは。此処にはずいぶん多くの猫がいますね。何匹くらいいるんですか?」
私は笑顔を作り、老婦人に当たり障りのないことを訊いた。



「エサを食べに通りを渡って来る子もいるから、20匹ほどになるねぇ」と老婦人。
この日までに、私自身は14匹確認していたから、未だ姿を見せない野良がいることになる。

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20匹となると大所帯だ。そのことを老婦人に言うと「近所の人みんなで大事にしているから」そう言い残して老婦人は建物の中へ姿を消した。


“みんなで大事にしている”。
その言葉を聞いたとき、一瞬違和感を覚えたが、それは私の予期していた答でもあった。

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此処の支援者たちが行なっている野良猫救済の方法は、明らかに間違っている。


間違っているが、それは正しい遣り方を知らないだけで、野良たちへの慈愛自体は、いわゆる“地域猫”として護られている野良たちに向けられているそれと、大きな差異はないと思う。
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それから、猫嫌いのニンゲンの酷薄な虐待が横行する地域に比べてどちらが平穏なのか‥‥、野良たちに訊くまでもない。


〈次回へつづく〉



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故郷の猫 その伍『心情』

2013年02月07日 08:00

全てを記事にするとあまりに長くなり、冗長だと非難される恐れがあったので、敢えて割愛したが‥‥、
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実は、前日コンビニ猫と別れて再度キジトラエリアへ赴く間に、オッドアイの仔猫が暮らす山門前エリアを訪れていた。


灰色の雲が低く垂れこめる空模様では、さすがに日向ぼっこする野良の姿はなかった。
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まず最初に姿を現したのは、オッドアイの仔猫だった。


そのオッドアイの子に、おやつを与えたのだが、サバトラに先んじられてしまった。
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だがこれ見よがしに目の前で煮干しを食べられても、オッドアイの子は悔しがる素振りも怒る表情も見せない。


それは年長のサバトラへの気兼ねかもしれない、と思い、改めて仔猫に煮干しを与えてみた。
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ところが匂いを嗅いだだけで、口を付けようともしない。


煮干しを目の前にしても、心ここに有らずといった風で、目を逸らしてしまうのだ。
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(煮干しを食べたことがないのか?)
何せ、此処の野良たちは、日頃中華麺やパンを食べているくらいだから‥‥。



そこで、新たに買い求めたカリカリを煮干しの横に置いてみた。すると、これにはすぐさま反応し、音を立てて食べ始めた。
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だがやはり、煮干しにはいっさい関心を示さない。


ある程度腹が満たされたオッドアイの仔猫は、溜めおいた雨水で喉をうるおす。
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仔猫が食べ残したキャットフードは、サバトラがすぐに引き継いだ。


食べ物の匂いを嗅ぎ取ったのか、それとも仲間の咀嚼する音を聞き取ったのか、気付かぬうちにハチワレがすぐ側まで忍び寄っていた。
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このハチワレ、食べ物に誘われたとはいえ、こうやって近づいて来るところを見ると、ニンゲンを無闇に忌避している訳ではないようだ。


試しに煮干しを差し出しても、少し身を引くだけで逃げることはない。
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そればかりか私が側にいるにも拘わらず、ハチワレは煮干しを一口一口味わうようにゆっくり食べる。


オッドアイの仔猫が食べているカリカリは、私がこのエリアを訪れた時、すでにこの場に置いてあったものだ。
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恐らく近所の住人が野良たちのために置いたのだろうが、此処に暮らす野良の数を考えれば、あまりに少な過ぎる量だ。


煮干しを食べ終わったハチワレは、サバトラの様子を頭上から窺っている。
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だが関心は寄せていても、ちょっかいを出すとか、横取りをするつもりはなさそうだ。


試しに、松の根元に置かれている用途不明の器に、カリカリを入れてみた。
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後ろを振り向くと、ハチワレの姿が消えていた。
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私は辺りを見回した。意外なことにハチワレは私のすぐ側にうずくまっていた。


器のカリカリを最初に嗅ぎ付けたのは、若いキジ白だった。そこへハチワレが近寄っていく。
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すると、キジ白は慌てて顔を上げ、体を強ばらせて身構えた。
キジ白とハチワレの間に不穏な空気が漂う。



キジ白が前脚を上げて、パンチを出すぞとばかり、ハチワレを牽制する。が、ハチワレは、全くといっていいほど動じない。
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ハチワレの泰然とした姿勢に気圧されたのか、キジ白はあっさりと体を翻した。


実際の争いになる直前、キジ白が潔く身を引いた格好だ。
このように、このエリアの猫たちは喧嘩や諍いを起こさず、力の弱い者が身を引く傾向がある。

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此処の野良社会には、ニンゲン社会で今や死語になった“長幼の序”が未だしっかりと受け継がれているようだ。


そのハチワレを凝視するオッドアイの子。まさか、カリカリを狙っているのでは‥‥。
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そんな私の懸念を無視して、オッドアイの子は軽やかに跳躍した。


だが、私の心配は杞憂だった。仔猫の目的は他にあったようだ。
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どうやら、小さな動くもの(虫など)を目掛けての奇襲攻撃だったようだ。


今日もまた、中華麺の入ったトレイが置かれている。ただ、猫たちの口には合わなかったようで、その多くが残されていた。
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さらに、その傍にはちぎったパンまで無造作に置いていある。


よく見ると、それは“アンパン”だった。
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これもまた、野良たちの好みではなかったのか、食べた形跡はなかった。


このまま放っておけば、いずれ生ゴミと化してしまう。
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局外者の私には出過ぎたマネだと思ったが、これはそのまま処分することにした。


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私が山門近くにいると、黒猫が姿を現した。この黒猫、今回が初見である。
「いったいこのエリアには何匹の野良がいるんだ?」

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カリカリを地面に置くと、おずおずと近づいてきた。そして、カリカリを勢いよく食べ始めた。


その黒猫の背後に、先程の若いキジ白が近づいてくる。
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黒猫は、キジ白の気配を感じたのか、前方を見据えたまま低い唸り声を発した。


その声を聞いたとたん、今回もキジ白はあっさりと踵を返した。
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と、民家の石段の上から、新たな黒猫がのっそりと姿を見せた。


また初見の猫の登場だ。
この黒猫で何匹目なのか‥‥、私は数えることをとっくに放棄している。

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今回の黒猫は、私が差し出すキャットフードには目もくれず、射るような視線を投げかけてくる。
その毅然とした佇まいからは、風格さえ感じる。



私は、試すようにカリカリを置く位置をさらに手前にした。若い黒猫は警戒心の鎧を再びまとって、しばらく私の様子を窺っていた。
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だが、食べ物の魅力には抗えなかったようだ。
このとき、私との距離は1メートルあまりしかなかった。



次に姿を現したのは茶シロだった。
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茶シロは、飽くまでも穏やかな表情で黒猫を見つめている。しかし、その瞳には羨望の色が感じられた。


「お前も食べるか?」そこで私はそう言って、茶シロのためにカリカリを地面に置いた。
すると茶シロは、慎重な足取りで近づくと遠慮がちにカリカリに口を付けた。

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カリカリを置く位置を、黒猫の場合と同様に短くしてみると、躊躇いなく近づいてきた。


ハチワレが背後に回って来たので、同じようにカリカリを与えた。
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ところがハチワレは、すんでのところで中断し、慌てて後じさりした。


そこに現れたのは、さっきまで前方にいた若い黒猫だった。
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こうやって、このエリアの猫たちの力関係がさらに明らかになっていく。


黒猫がいなくなり、やっとカリカリにありついたハチワレ。
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「自分が同じ目に遭って、あのキジ白の気持ちも分かっただろ」


鳴き声がしたので、つと視線を上げると、そこにも初見の猫がいた。それも面差しに幼さを残した、まだ若い白猫だ。
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2匹の仔猫と血縁関係でもあるのだろうか‥‥?どちらにしてもなかなかの美猫である。


よほど腹を空かせているのか、カリカリを地面に置くたびにこの黒猫がやって来る。
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狛犬の台座の陰から年長の黒猫が顔を覗かせている。が、若い野良のようにキャットフードに釣られて近づいて来ることはなかった。
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先程門扉の柱の上にいた若い白猫も参道に出てきた。でもやはり、初見のニンゲンに安易に近づく軽はずみな行動は慎んでいる。


腹を満たしたオッドアイの子は、藁が敷かれた松の根元に独りうずくまっていた
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氷点下に下がる夜中もここで寝るのだろうか、それともほかにねぐらがあるのだろうか‥‥。


さっきハチワレにエサを横取りされた若いキジ白が、物言いたげな面持ちで、私を見つめている。
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この子には後で、存分にカリカリを与えてやるつもりだ。


ふと視線を戻すと、幼い白猫が地面に置かれたカリカリを食べていた。
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しかし、初見のニンゲンに気を許したわけでは無さそうだ。私を見つめる眼を見ればそれがよく分かる。


此処の環境は一見すれば劣悪だが、野良たちの心は、比較的満たされているような気がする。
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それを裏付けるように、食べ物を間に挟んで対立しても、そのことが諍いに進展した場面を、私は一度も目撃していない。


田舎特有ののんびりとした気風が、猫たちにも浸透しているのかもしれない。
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此処の野良たちは同じ境遇の者同士、助け合って暮らしているように見える。
都会ではとんと聞かれなくなった“相身互い”の精神が、この街にはまだ辛うじて残っているからかもしれない。



翌日、エサを与えている近隣の住人と、偶然接触することが出来た。
そのときの様子は次回紹介します。



〈次回へつづく〉



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故郷の猫 その四『困惑』

2013年02月01日 00:00

この日、私はまずホームセンターに立ち寄り、キャットフードを買った。
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晴天つづきの前日までとは打って変わり、空は灰色の雲に覆われ、気温もぐっと下がっている。


休日の昼過ぎだというのに人影が殆どない閑散としたアーケード街を通り抜けていたときだった‥‥。目の前を1匹の猫が従容とした足取りで横切っていったのは。
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「おおっ」不意を衝かれた私は、思わず声をあげて足を止めた。
私の声が耳に届いたようで、ハチワレも立ち止まっておもむろに振り返った。



そのハチワレに曳航されるように狭い路地をくぐり抜けると、そこは露天駐車場だった。
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駐車場に小さな影が散在している。「猫だ‥‥、それも1匹や2匹じゃない」


私はこのとき、白うさぎを追ってワンダーランドへ迷いこんだ少女の気持ちが、少し分かった。
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しかしなぜか、案内役だったハチワレの姿はなく、そこにいたのは全てキジトラ柄の猫だった。
駐車場の奥には3匹の仔猫が所在無さそうに佇んでいる。



私は買ったばかりの猫用のおやつを取り出して、猫たちの側へ放った。
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ちなみに、煮干しのことを西日本では『いりこ』と呼ぶ。


猫たちとの距離は十分とっているが、それでも皆、初めて見る私への警戒心を露にしている。
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それでも、小さな煮干しを砂利の中から探り当てては、音を立てて噛みしだいていく。
仔猫も大人の猫に混じって、懸命に煮干しを探している。



そんな仲間の様子を見ていたのだろう、車の下から新たな仔猫が這い出してきた。
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そして私の挙動を確認しながら、仔猫はゆるりゆるり慎重に足を運ぶ。


僅かな色の違いはあるが同じキジトラ模様‥‥、親子でなくても同じ血を分けた眷族だと思われる。
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体の大きさからいって、仔猫たちは去年の秋口あたりに生まれたようだ。


私は煮干しを放る距離を徐々に短くしていった。
成猫はそれに合わせて近づいてくるが、仔猫は警戒心が強く、私のちょっとした動きで逃げてしまう。

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駐車中の車の下に新たなキジトラが現れ、こちらの様子をじっと窺っている。


仲間が目の前で煮干しを頬張るのを見ても、車の下から出てくる気配がない。
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こういう頑固なまでの慎重居士は何処にでもいる。かく言う私も、臆病で優柔不断な性格なので、やはり近しさを感じてしまう。


これで成猫4匹と仔猫3匹を確認したことになるが、今までの経験からいって、このエリアには、まだほかにも何匹か棲息している気がする。
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付かず離れずにいるこの2匹は、母子かもしれない。


地面に落ちている煮干しを夢中で食べている仔猫。その様子を見ていると心が痛む。
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出来るものなら手ずから煮干しを与えたいが、それが叶わないからだ。


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2匹のキジ白が何かの気配を感じ、同じ方を凝視しはじめた。


その視線の先には、煮干しに近づこうとしている新たな猫がいた。
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やはり、こういう抜け目がないヤツは、何処にでもいるものだ。


猫のおやつを買い増すため、再びホームセンターへ向かっていた私の耳に猫の鳴き声が飛び込んできた。
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そこは青い看板でお馴染のコンビニだった。
その脇で1匹の猫が、私の顔を見て盛んに鳴くので、残っていた煮干しを与えた。



このコンビニ猫、グレーの部分が被毛の色なのか汚れなのか判然としないが、取りあえず白猫と呼んでも差し支えないだろう。
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コンビニ猫は、煮干しをあっという間に食べ尽くした。


そして私の傍にやって来ると、親しげに躰を擦り寄せる。
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やたらと人懐こいが、このやさぐれたナリはどう贔屓目に見ても飼い猫には見えない。


人馴れしているのは、元々飼い猫だったためか、それとも野良として生きていくために身につけた世知なのか‥‥、私には知る由もないことだ。
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人が集まるコンビニに棲みつき、食べ物をねだって糊口を凌ぐ野良は珍しくない。


確かに、コンビニにもキャットフードは置いてある。
置いてあるが、わざわざそれを買って野良に与える奇特なニンゲンは稀だろう。

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多くは、自分のために買った食べ物の一部を分け与えるにとどまる。
そうやって得た、甘い菓子や辛いツマミを食べつづければ、いずれ臓腑を毀し寿命を縮めてしまう。



このコンビニ猫、見れば見るほど薄汚れた印象を受ける。
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けれど、とぼけた顔は何ともいえない興趣があり、何故か憎めない野良である。


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だがニンゲンに取り入るため、冴えない容姿を補おうと愛嬌を会得したとしたら、それはそれで切ないことだ。


さて此処は、この野良を最初に見かけた建物の脇だが‥‥、
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地面を仔細に見ると、食べ残しと思われるキャットフードが散らばっていた。


コンビニの店員が与えたのか、ほかのエサ遣りさんが与えたのか分からないが、この野良を心に留めていてくれる人へ、礼を言いたい気持ちになる。
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ところで、この野良に決まったエサ場やねぐらはあるのだろうか‥‥?


裏へ回り、通用口の辺りを調べたが、それらの在り処は見当たらなかった。
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側に透明のトレイが一つ転がっていた。しかし、これだけでは何とも判断のしようがない。


世慣れた野良だから、しばらくは此処で生きていけるだろう。
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が、そんな暮らしがいつまで保つのか、それは誰にも分からない‥‥。


ホームセンターへ戻った私は、同じ煮干しのおやつとカリカリを買い求めた。
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この一画はいわゆる飲み屋街‥‥。
昼間の飲み屋街に人気はなく、まるで打ち捨てられ無人となった街のようだ。

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スナックや居酒屋が軒を連ねるその通りを、私はゆっくりとした歩度で歩いていった。


するとまた、何処からか猫の鳴き声が聞こえてきた。
その声を頼りに声の主の姿を探すと、時間貸しの駐車場で白猫を発見した。

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私が舌を鳴らすと、白猫は、まるで年来の友人と会ったように、いそいそとした足取りで近づいてきた。


勿論、単なる偶然だろうが、二度も続けて同じシチュエーションに出くわすと、この街の白猫は一様に人懐こいのでは、と思ってしまう。
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買ったばかりのカリカリを与えると、白猫は貪るように食べはじめた。


ところが、そこには初めから同じカリカリが無造作に置かれていたのだ。
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やがて、白猫は私が与えたカリカリを食べ終えると、速やかにそのカリカリに取り掛かった。


食器が置かれていないところを見ると、固定のエサ場ではないようだが、残飯ではなくちゃんとしたキャットフードを与えられている。
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改めて確認すると、そこはログハウス風に意匠された居酒屋の店先だった。


私は再び、駐車場のキジトラエリアを訪れた。
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キジトラとキジ白の2匹が胡乱な目付きをもって私を迎えてくれた。


だが、この猫たちが先程煮干しを食べていたのかどうか、にわかに判断出来ない。
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個体の識別には多少の自信があったが、さすがにこれだけ一度によく似た猫に遇うと手に余る。


つい見逃してしまうところだったが、こんなとこにもキジトラがいた。
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駐車されたばかりと思われる車のエンジンルームの余熱で、暖を取っているようだ。
よほど気持ちいいのか、私が近づいてもキジトラは身動ぎしない。



駐車場の隅には、先程の仔猫が身を寄せ合っていた。
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仔猫たちの個体識別は、はなから諦めている。


猫の数は減ったが、せっかく買ったので、捨てられていたトレイにカリカリを盛ってみた。
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離れて様子を見ていると、キジ白が慎重な足取りで近づいていく。


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このキジ白、よほど用心深い性格のようで、すぐには口を付けず盛んに匂いを嗅いでいる。


そのとき、駐車場に隣接した民家から、人の声と何かを打ち鳴らす音が聞こえてきた。
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予感がした私は、急いでその家の正面に回りこんだ。
すると、果たして玄関先に数匹のキジトラが集まっていた。さらによく見たら、エサらしきモノが入った塵取りが置いてある。



辺りに視線を巡らせると、隣の民家の軒下には初めて見る猫の姿もあった。
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玄関の扉が開き、80歳を超えていると思われる老婦人が現れて、言った。
「お向かいで飼ってる猫なんだけど、可哀想だからゴハンとパンを上げてるの」



老婦人が家の中に入っても、私はしばらく思案に沈んだままだった。
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私には、この状態が“飼っている”とは、とても思えない‥‥。
仔猫がいるからには、個体が増えることを承知で不妊手術を受けさせていないことになる。



同様に、飼っているなら、近隣の人から「可哀想」と同情されエサを貰うなど、普通は考えられない。
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それとも、“飼う”という意味の捉え方が、根本的に違っているのだろうか?
老婦人の言う飼うとは、あくまで“エサを与えているだけ”かもしれない。それも気の向いた時にだけ‥‥。



老婦人は、そんな猫たちの状況を見るに見かねて、善意から食べ物を与えている。
そんな人に向かって「猫にニンゲンの食べ物を与えないで」なんて、私には言えない。



複雑な思いのまま駐車場に戻ると、2匹の仔猫が、私の置いたカリカリを仲良く食べていた。
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やがて仔猫は食べるのを中断し、ついと視線を上げた。


仔猫に倣って空を仰ぎ見ると、灰色の空からチラチラチラチラと、白いものが舞い落ちてきた。
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そうして、私は寒々とした気持ちを抱いたまま家路についた。
冒頭に例えた少女のワンダーランドは夢と共に消えたが、私が出会った猫たちは、今も現実の中で懸命に生きている‥‥。



番外編である『故郷の猫シリーズ』、まだ続きます。


〈次回へつづく〉



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