日々徒然 その弐

2014年08月15日 07:30

この日の空模様は生憎の薄曇り。

それがために湘南の海も色彩を失い、鈍色の陰鬱とした相貌で横たわっている。

私はこの日、人生で初めての経験をした。それは嬉しくも哀しい出来事だった。


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この日も、私の姿をどこからか見ていたのだろう、ランはすぐに姿を現してくれた。
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海岸猫はある日突然姿を消してしまう。そして‥‥。
大抵の場合、二度と戻ってくることはない。


私はそういう事例を幾度も経験したし、また仄聞してきた‥‥。
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だから最近では海岸猫の写真を撮るとき、我知らず今日が最後になるかもしれない、という感慨を持ってシャッターを切る。


私を信頼してくれているランにしても、私に何も告げずにいきなり海岸からいなくなる可能性は十分あり得るのだ。
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しかし、ボランティアの人も含めて、何人もこの子たちを四六時中見守ることが出来ない以上、こればかりは防ぎようがないのだ。


私に出来るのは、状況が許す限り海岸へ足を運んで、彼らの安否を確かめること。
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そして、海岸猫と一緒にいるときには『 この猫は誰にも迷惑をかけずひっそりと暮らしている。だから多くの人に大切にされている 』という事実を言葉や態度で周りにアピールすることくらいだ。


つまりは、私など居てもいなくてもどっちでもいい役立たずなニンテンに過ぎないのだ。
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ほうら、それを裏付けるように、ランは私の自戒の吐露など聞く耳を持たないとばかりに既にほかのことに気を取られている。


ランが見つめていたのは、リードを外された一頭の黒い大型犬だった。
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犬のリードを外すことは禁じられているのだが、それを知ってか知らでか、ルールを守らない飼い主が少なからずいる。


小型犬ならいざ知らず、ニンゲンに危害を加える可能性も考えられる大型犬のリードを外す、 “ 未必の故意 ” ともいえる飼い主の心理は理解できない。
(実際に、ミケとサンマはリードを放された大型犬に襲われたし、サンマは後に犬に後ろ脚を噛まれて大怪我をした。詳細は【闖入者】【厄難】を参照)
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そうして、もし事故が起こったら、何度も耳にした「うちの子に限って‥‥」という陳腐な台詞で言い訳をするのだろうか‥‥。


さらに、私も何度か目撃しているが、犬の飼い主の中には海岸猫に犬をけしかける卑劣な輩もいる。
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そんな不心得者は自分の愛犬がライオンの檻の中に閉じ込められる光景を想像すればいい。猫にとって犬と相対するということは、それと同じ状況なのだから。

「いや、犬にはなんら罪はないのだから、想像とはいえ飼い主自らがライオンの檻に入ればいいのだ。出来れば実際に‥‥」


過去にどんな経緯があったのか私に知る由もないが、ランは犬に対して激しい敵愾心を持っている。
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ランがかかる気質になったのは、犬との間にトラウマとなる様な然るべき出来事があったのではないかと、私は推測している。


それも、恐らくは中型犬より大きい犬との事件が‥‥。
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なんとなれば、ランは体の大きさが自分とおっつかっつの小型犬にはまったく関心を示さないからだ。


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ランはその後も、好奇の目で以って飽きずに黒犬を観察する。


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その黒犬もまた、飼い主が投げるボールを波打ち際から咥えてくるという遊びを飽くことなく繰り返していた。


その様子を食い入るように見つめるラン。
今回は先日の
“ マンウォッチング ” ならぬ “ ドッグウォッチング ” という訳か
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犬の生態を観察し、今後の対抗策でも練っているのだろうか。
「でもなラン、無用なトラブルは避けろよ。お前たち海岸猫はひっそりと暮らすことで生き長らえているんだから」



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先にも述べたように、ランはその人懐こい性格のせいで、幾人かの人の世話になっていて、餓えてひもじい思いをすることはない。
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でもそれは、生命を維持するための最低限の援助であり、ニンゲンのせいで寄る辺ない身の上に貶められた彼女はそれを受ける権利を端から持っている。


野良猫を本当の意味で扶けるとは、彼らに雨風を凌げる家と温かな家族の愛を取り戻してやることだ。
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野良猫たちはニンゲンを愛し、そして愛されることを願っている。それは彼らの行動をよく観察していれば自然と分かってくる。


この当たり前の願望が叶えられないところに野良猫の悲哀がある。
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そしてそんな野良猫の想いを忖度しようとしないニンゲンはだから、罪深い生き物なのだ。


私の側でくつろいでいたランの表情がにわかに険しくなった。
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そして鋭い眼光をゆっくりと移動させるラン。


訝った私が振り返ると、先ほどの黒犬と飼い主の後ろ姿があった。
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ランはそのふたりの姿が見えなくなるまで、目を離さなかった。


と、そのランが突然階段を駆け上がると、周章した様子で自分の住処である防砂林へ足早に去っていく。
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防砂ネットを背にしたランの表情には狼狽と怖れが表れていた。
「どうしたんだラン、何をそんなに怯えているんだ?」



後ろを振り向いた私は、ランが遁走した理由をすぐに納得した。
そこにいたのは兄弟と思われる二人の子供だった。

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猫はニンゲンの中でも、なかんずく子供を苦手としている。それというのも、子供は突然大声を発したり無遠慮に近づいてきたりと、慮外な行動をとるからだと思われる。


子供たちが波消しブロックからいなくなると、ランは再び階段を降りてきた。
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安全とはいえ、日が当たらない薄暗い防砂林にいるのは、やはり鬱陶しいのだろう。


それに毛繕いするならジメジメした防砂林より、海風が吹く海岸の方が気持ちいいに決まっている。
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ランは海岸猫の中でも殊の外キレイ好きで、時間をかけて念入り毛繕いをする。


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毛繕いを終えたランは、またぞろ険しい眼差しで波打ち際を見つめはじめた。


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離れていても、やはり予測のつかない行動をとる子供が気になっているようだ。


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子供の出現で不安になったのか、私が違うアングルで撮影する為に移動すると、ランが体を擦り寄せてきた。


「大型犬に立ち向かっていく肝の据わったお前も、子供だけは苦手なのか」
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海岸猫が心休まる場所は、環境がどうあれやはり防砂林の中だけなのだ。


ランが石積みの隙間を見つめたまま動かなくなった。どうやら、そこに虫を発見したようだ。
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ランはこのエリアに独りで暮らしている。当然遊び相手はいない。


先述したように役立たずな私に出来ることといえば、ときどき彼女を訪ねては暫く一緒に過ごすだけだ。
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そのあいだに彼女の写真を撮り、求めに応じて体を撫でてやり、他愛もない雑談を交わすのが常である。


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ただし、ランにとってその時間がどれ程の意味合いを持つのか、私は恐くてまだ訊けないでいる。


息子のアスカと一緒に不妊手術を受けさせた際、ふたりを部屋に一泊させたことで、私はランを一層愛おしく思うようになった。
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しかしながら、それは私の自分勝手で独りよがりな想いであって、ラン自身は淡い期待を抱かされた辛い出来事だったかもしれないのだ。


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海岸を去るにあたり、ランを促して防砂林に入ったところ、ランが私を自分のねぐらへ案内してくれた。(実際には私がランの後を付いていった)
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防砂林のどこかにねぐらがあるだろうと思っていたが、それは私の想像を超えるモノだった。


母屋の猫ハウスは二階建てになっている。
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私はいくつかの猫ハウスを知っているが、こんな立派なハウスは初めて見た。


二階部分は、それぞれにカリカリ、猫缶、水が入った食器が並ぶエサ場になっている。
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そして、一階部分がねぐらになっており、入り口には玄関ポーチまで設けられていた。


この猫ハウスを見れば、ランが如何にボランティアの人達から大切にさせているかが分かる。
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「ラン、こんなスゴイ家を作ってもらって、お前は人気者なんだなぁ」


視線を巡らせると、母屋から少し離れたところにもうひとつの猫ハウスがあった。
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「こ、これは‥‥」
私はそのハウスを見た瞬間、胸が詰まる思いに囚われた。



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「この猫ハウスは、アスカの為に作られたモノなのか‥‥」
ここでアスカが起居していたかと思うと、私の胸はますます締め付けられる。



タラレバの話だが、あのとき‥‥。
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不妊手術した後、海岸にリリースしないで、そのまま保護していればアスカは行方不明になることもなかった。
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だが、あのときの私は、余命宣告された老母を故郷に残していたし、誰の協力も得られない状況にあったからやむを得なかったのだ。


それでもやはり、私の心にずっと引っ掛かっているし、ランに申し訳ないと思っている。
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「お前とアスカを家族に迎えられなくて、ゴメンな、ゴメンな‥‥」
その場にうずくまった私はランの頭を撫でながら、自戒の念をこめて何度も呟いた。



‥‥したところ。

「ミャア、ミャア、ミャア‥‥」と今まで聞いたことのない哀しそうな鳴き声をあげながら、ランが私の鼻に自分の鼻先を擦り付けてきた。

ランの鼻は湿っていて、ひやっとする程冷たかった。

と、次の瞬間、私の目から涙が溢れた。


人目に付かない防砂林の中、私は誰はばかることなく、そのままランの頭を撫でながら涙を流しつづけた。

ランの行為は、私を癒してくれようとしたのか、それとも哀しみを共有してくれようとしたのか、私には分からない。

でも、ランの優しい気持ちは瞬時に伝わってきた。


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鼻に鼻をくっ付けるのは猫同士の親愛の情を示す挨拶なのは知っている。
ちなみに、一緒に暮らしている元海岸猫の愛猫はグルーミングはしてくれるが、鼻を擦り付けてはこない。



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思い掛けないランの行動に、私の心は激しく揺れ動いた。

今までにも、飼い猫や野良猫に様々な愛情表現を示されたが、鼻先を擦り付けてくるという直截的な表し方をされたのは生まれて初めてのことである。

素直に嬉しいと思いたいが、やはりランが野良猫という剣呑な状況に置かれていることに考えが及ぶと、私の気持ちはふさいでしまう。



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非常識な里親募集

2014年5月の中旬に防砂林の中で遭遇した4匹の仔猫です。

今現在は “ 防砂林に住まう人 ” の庇護のもと元気に育っています。

(仔猫の情報:4月生まれ 詳しい情報が入り次第ブログで発表いたします)
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(被毛:サバ白)性別:オス

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(被毛:黒)

しかし保護できる程には人に馴れていないので、いつ譲渡できるかは確約できません。

本来なら保護して検査を受けさせて、それから里親さんを募集するのですが、それが出来ない事情があり、非常識だと誹りを受けるのを覚悟でこの告知を書いています。

私としては、様々な危険が潜んでいる防砂林から出来るだけ早くこの子たちを救い出したい一心なのです。

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(被毛:キジトラ)

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(被毛:黒シロ)

加えて、里親さんが決定した際、保護から譲渡まで一時的に預かっていただける方も募集いたします。

以上の条件を承知のうえで里親を希望される方は左カラムのメールフォームに件名『 里親希望 』と記してメール送信してください。

一時預かりが出来る方は件名『 一時預かり可能 』、この件についてもっとお知りになりた方、興味のある方は件名『 子猫について 』としてメールしてください。

また、ブログやTwitter等で拡散していただければ幸甚です。

宜しくお願いいたします。


メールフォームが使い難い場合は下記のメールアドレスに直接連絡してください。
※連絡先アドレス:nekoniikasarete★gmail.com

                   送信の際は★を@に変えてください。

鍵コメでの問い合わせも可能です。(その場合はURLかメアドを明記してください)

管理人:wabi



《2014年7月8日付 最新情報》

今年の初め、近くのエリアに棲んでいた仔猫2匹が吐瀉物を吐いて突然死したそうです。
また同じエリアの仔猫3匹の傷だらけの遺骸が、水路に遺棄されているのを発見しました。


そしてごく最近、この4匹の仔猫が棲むエリアのエサ場近くに毒物が混入されたカリカリが置かれていました。
今回は世話をする人が気付いて取り除いたので大事には至りませんでした。


ここにも鬼畜がいるのです。それも卑劣で狡猾な鬼畜が‥‥。

仔猫たちは、こんな極めて剣呑な状況に置かれているのです。

対策として、世話をしてくれている人達と協力して見回りを強化するつもりです。
そして、犯行現場を目撃したらカメラで証拠写真を撮影して警察に通報します。



《2014年7月15日付 最新情報》

7月9日、また仔猫が毒エサの犠牲になりました。

写真の子たちではなく、生後1ヵ月くらいの仔猫で、状況から新たに遺棄された可能性が高いと思われます。

発見した “ 防砂林に住まう人 ” が埋葬してくれました。

その人が言うには毒物を全て取り除けなかったのかもしれないとのことですが、新たに置かれた可能性も否定できません。


《2014年7月23日付 最新情報》

私自身6月初めより調子を落とし、それまでのように頻繁に海岸へ行けない状態になり、現在に至っています。

そして体が動くときは、4匹の仔猫たちの様子を見に行っているのですが、なかなか全員の姿を確認することが出来ません。

がために、仔猫たちの世話をしてくれている “ 防砂林に住まう人 ” に話を訊いて、仔猫らの近況を知ることも多いのです。

最新情報として、7月21日の朝に4匹の仔猫たちの元気な姿を確認出来たことをご報告いたします。


《2014年8月4日付 最新情報》

その後、2度仔猫たちが棲むエリアに様子を見に行きましたが、全員の姿を確認することが出来ませんでした。

ただ、世話をする “ 防砂林に住まう人 ” から4匹とも元気でいることを聞いていました。

そして7月31日の夕刻、私自身の眼で4匹の仔猫が防砂林の中で元気で遊んでいる姿を見ることが出来ました。

さらに “ 防砂林に住まう人 ” の言うには、4匹とも女の子である可能性が高いとのことです。


《2014年8月24日付 最新情報》

拡散記事を見た県内在住の方から、黒シロの子を預かり、医療ケア・里親募集・譲渡まで対応することが可能です、という申し入れがありました。

この方は過去にも野良猫を保護し里親さんを募って譲渡した経験があり、私としては異存はなく、この方へお任せする方向で動き始めます。

世話をしてくれている “ 防砂林に住まう人 ” にもその旨を伝えて了解を得ました。

残る案件は『捕獲』なのですが、 “ 防砂林に住まう人 ” の話だと、日毎に馴れてきているが、まだ捕獲できる状態ではない、とのことでした。

なので、焦らず徐々に距離をつめていき、かつ周到な準備をして一回で成功させたいと思っています。

私としては残りの3匹の子たちにも朗報がもたらされることを祈るばかりです。


《2014年10月12日付 最新情報》

拡散記事を見た県内在住の方から、黒猫の子の里親になりたいとの申し入れがありました。

里親募集の記事を見た、以前からの知り合いの女性から「自分は既に8匹の野良猫を保護しているからこれ以上は増やせないが、知り合いに尋ねたところ黒猫の子を引き取りたいと言っています」という電話連絡をいただきました。

ただ捕獲の手段に苦慮しています。

捕獲器の使用も考えているのですが、失敗すると用心してさらに捕獲しづらくなるのと、ほかの子が学習して捕獲器を忌避するようになりはしないかと懸念しているからです。

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関連記事

日々徒然 その壱

2014年08月04日 01:00

ネコという名は “ 寝子 ” が語源だと言われている。
真偽の程は分からないが、猫がよく寝る動物だというのは間違いない。

家猫だと平均睡眠時間は14時間以上と、1日の半分以上は寝て過ごす。

外敵が多い野良猫の場合は、家猫より4割あまり少ない8時間程の睡眠時間だと言われる。

ところで寝ているとき以外の時間、つまり起きているとき野良猫たちは何をして過ごしているのだろう。


湘南海岸、夕刻。
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海岸猫(野良猫)が独り海を眺めている。寄せては返す波を見つめて何を思っているのか。
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この海岸猫の名はラン、2010年4月、 “ 防砂林に住まう人 ” のテントで生まれた。
そして2012年5月、チャゲ、アスカ、ユイの二男一女の子供をもうけた。



しかしその子供らは揃って行方知れずになってしまい、ランは現在独り防砂林で暮らしている。
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何の前触れもなく、ある日忽然と姿を消した子供に思いを馳せているのだろうか。


憂いを含んだランの表情を見るにつけ、私は胸が詰まって何も言えなくなる。
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と、次の瞬間、ランは倒れるように突然その場に体を横たえた。
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猫がこうやって腹を見せる行為、これはリラックスしている証である。


なんとなれば、骨で守られていない内蔵の詰まった柔らかな腹を晒すというというのは、猫にとって非常に危険で覚悟がいる行動だからだ。
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そしてこの行為の意味するところは、ニンゲンや仲間に対して「自分はあなたを信頼しているし、情愛すら覚えている」というものだ。


安全な家に住む飼い猫には珍しくない光景だが、野良猫がこのポーズをとることはあまりない。では何故、ランは無防備なこんな格好をしたのか。
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それは傍らにいる私を信頼しきっている証左であり、ランが安全な状況だと判断した結果に他ならない。私にとっては海岸猫と接していて嬉しいと感じられる、数少ない瞬間だ。


ランはそのままの態勢で毛繕いをはじめた。
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猫のきれい好きは周知の事実であり、余程のことがない限りシャンプーなどを必要としない。


毛繕いは被毛の汚れを取り、かつ嫌な匂いを消すという衛生面を目的とした行為である。
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ただ、毛繕いには副次的な目的もある。それはストレスの解消だ。


この事例は飼い猫にも見られ、たとえばちょっとした油断から椅子やテーブルから転落したときなどに、いきなり毛繕いをすることがある。
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また何かイタズラをして、飼い主に叱られたときにも、同じような行動が見られる。
これはニンゲンで言うところの、照れ笑いや頭を掻く行為に似ている。



だが、ニンゲンがその羞恥を引きずるのに対して、猫の場合はまるでそんなことなど無かったかのようにキレイに忘れられるようだ。
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飽くまでも私見だが、猫の毛繕いには無聊を慰める意味合いもあるように思える。


海岸猫とて、起きている時間を海を眺めるだけに費やす訳にはいかないからだ。
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ところがこの日は、ランの好奇心を惹起させるモノが海岸に出現した。
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ランはその光景を興味深く見つめはじめた。


それは湘南海岸で時折見られるスカイスポーツの一種であるパラグライダーだった。
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私のとってもこんな間近でパラグライダーを、しかも準備から見るのは初めてなので、カメラを構えて離陸のときを待つことにした。


思いのほか支度にかかる時間は短く、リュックを下ろしてからここまで2分程しか経っていない。
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パイロットが軽く操作すると、キャノピーが海風を受けて孕みふわりと砂浜から浮き上がった。


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しかし風速に過不足があるのか、風向きが悪いのか分からないが、キャノピーはすぐに落下し寝袋のような形で砂浜に横たわった。


キャノピーが風を孕むときに発する音に驚いたのか、それともその大きさにビックリしたのか、ランは波消しブロックの陰に身を隠した。
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が、それでも警戒と好奇のこもった視線をパイロットへ注ぎつづけている。


海風を受けたキャノピーはラインと呼ばれる紐を伸ばし切り、パイロットの頭上まで上昇した。
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パイロットはキャノピーの挙動を見ながら砂浜を移動していく。上昇気流を探しているのだろう。


ところがキャノピーは、またもや力なく砂浜に下りてきた。
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その光景を見つめるランの面持ちには、このニンゲンはいったい何をしようとしているのだという訝る気持ちと、得体のしれない物体への恐れが表れていた。
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腰が引けている態勢からも、それが窺える。


それからもキャノピーを操るパイロットは空に舞い上がる為に、懸命に風を捉えようとしていた。
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しかし、パイロットを1ミリも離陸させることなくキャノピーは落下してくる。


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そうしているうちに、西へ傾いた太陽を背にキャノピーが風を受けて大きく孕んだ。
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「やっと上昇気流を捉えたのか‥‥」私はカメラを持つ手に力を加えた。


そして、パラグライダーとパイロットをファインダーに捉えるべくズームバックして、その瞬間を待った。
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だが、キャノピーはいっかなパイロットの思い通りにはならず、引力の赴くまま砂浜に落ちてくる。


その頃になると、ランはパラグライダーへの興味を完全に失くし、あらぬ方に目をやっていた。
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気紛れな性格の猫だから、驚くには当たらない。


が、ランの表情は真剣で、漫然と海辺の風景を眺めている訳ではなさそうだ。
ランの興味を惹いたモノは何なのか、私は彼女の視線を辿ってみた。

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するとそこには波打ち際をウォーキングする女性の姿があった。


ランの視線はその女性の後ろ姿を追っている。
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言うところの “ マンウォッチング ” なのか?ニンゲンの仕草や行動を観察しその行動パターンや習性を学ぶ、という‥‥。


振り向くと、キャノピーを操っているパイロットの悪戦苦闘はつづいていた。
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しかし、努力はいつも報われるとは限らない。というか、報われない場合が多いのだ。


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私と同じようにパラグライダーの離陸の瞬間を見ようと数人の見物人がいたのだが、やがて潮が引くように姿を消し、テラスに残った人も海を眺望している様子だ。


単独で飛行するからには、このパイロットはそれなりのテクニックを持っているはず。
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それでも飛翔できないのは、海岸からのテイクオフが如何に難しいか、素人の私にも推測された。


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パイロットは、とうとうこの日のフライトを諦めたようだ。
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気象条件に左右されるスポーツには、こういう状況も多いのだろう、パイロットは残念そうな風ではあるが、呪詛の言葉を吐く様子はない。
彼が猫なら毛繕いすれば、すぐに軽快な気分になれるだろうに。



ランは毎日こうした海辺で起こる様々な出来事を観察して過ごしているのだろう。
果たしてニンゲンの行動はランの眼にはどう映っているのか‥‥?

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猫は身の丈に合った欲求しか持っていず、そんな猫には煩悩だらけのニンゲンの行動は理解出来ないモノかもしれない。


健康のために走ったり歩いたり、はたまた空を飛ぶなどという行為をどう思っているのだろう。
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そして、たまにやって来ては黒くて四角い箱様のモノを手にして、自分の周りをウロウロするニンゲンを何者だと思っているのだろう‥‥。


2年前、2人の子供を連れて生まれ育ったエリアを出たのは、同時期に子供を産んだリンとの間に軋轢が生じたからだと聞き及んでいる。
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元々姉妹の仲は良かったのだが、互いの子供たちが反目し合ったのがきっかけらしい。


その結果、生まれ育ったエリアを出てからは転々と住処を変え、そして1年後この場所に定住したのだ。
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以前にも述べたが、私はこの海岸猫に不妊手術を受けさせて以来、特別な心情を持つに至った。(詳細は【不妊手術 その参『退院』】を参照)


だから、ランには天寿を全うしてもらいたい、と私は切に祈っている。
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今は複数のボランティアの人の世話を受けていると仄聞しているが‥‥。
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出来れば優しい人に引き取られ、その人の許で平穏な生活を送ってほしい、と願ってやまない。


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数日後、私が再びランが暮らすエリアを訪れると、ランは自分のねぐらに招待してくれた。

そこで私が目にしたのは意外な光景だった‥‥。



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【緊急告知】


非常識な里親募集

2014年5月の中旬に防砂林の中で遭遇した4匹の仔猫です。

今現在は “ 防砂林に住まう人 ” の庇護のもと元気に育っています。

(仔猫の情報:4月生まれ 詳しい情報が入り次第ブログで発表いたします)
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(被毛:サバ白)性別:オス

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(被毛:黒)

しかし保護できる程には人に馴れていないので、いつ譲渡できるかは確約できません。

本来なら保護して検査を受けさせて、それから里親さんを募集するのですが、それが出来ない事情があり、非常識だと誹りを受けるのを覚悟でこの告知を書いています。

私としては、様々な危険が潜んでいる防砂林から出来るだけ早くこの子たちを救い出したい一心なのです。

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(被毛:キジトラ)

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(被毛:黒シロ)

加えて、里親さんが決定した際、保護から譲渡まで一時的に預かっていただける方も募集いたします。

以上の条件を承知のうえで里親を希望される方は左カラムのメールフォームに件名『 里親希望 』と記してメール送信してください。

一時預かりが出来る方は件名『 一時預かり可能 』、この件についてもっとお知りになりた方、興味のある方は件名『 子猫について 』としてメールしてください。

また、ブログやTwitter等で拡散していただければ幸甚です。

宜しくお願いいたします。


メールフォームが使い難い場合は下記のメールアドレスに直接連絡してください。
※連絡先アドレス:nekoniikasarete★gmail.com

                   送信の際は★を@に変えてください。

鍵コメでの問い合わせも可能です。(その場合はURLかメアドを明記してください)

管理人:wabi



《2014年7月8日付 最新情報》

今年の初め、近くのエリアに棲んでいた仔猫2匹が吐瀉物を吐いて突然死したそうです。
また同じエリアの仔猫3匹の傷だらけの遺骸が、水路に遺棄されているのを発見しました。


そしてごく最近、この4匹の仔猫が棲むエリアのエサ場近くに毒物が混入されたカリカリが置かれていました。
今回は世話をする人が気付いて取り除いたので大事には至りませんでした。


ここにも鬼畜がいるのです。それも卑劣で狡猾な鬼畜が‥‥。

仔猫たちは、こんな極めて剣呑な状況に置かれているのです。

対策として、世話をしてくれている人達と協力して見回りを強化するつもりです。
そして、犯行現場を目撃したらカメラで証拠写真を撮影して警察に通報します。



《2014年7月15日付 最新情報》

7月9日、また仔猫が毒エサの犠牲になりました。

写真の子たちではなく、生後1ヵ月くらいの仔猫で、状況から新たに遺棄された可能性が高いと思われます。

発見した “ 防砂林に住まう人 ” が埋葬してくれました。

その人が言うには毒物を全て取り除けなかったのかもしれないとのことですが、新たに置かれた可能性も否定できません。


《2014年7月23日付 最新情報》

私自身6月初めより調子を落とし、それまでのように頻繁に海岸へ行けない状態になり、現在に至っています。

そして体が動くときは、4匹の仔猫たちの様子を見に行っているのですが、なかなか全員の姿を確認することが出来ません。

がために、仔猫たちの世話をしてくれている “ 防砂林に住まう人 ” に話を訊いて、仔猫らの近況を知ることも多いのです。

最新情報として、7月21日の朝に4匹の仔猫たちの元気な姿を確認出来たことをご報告いたします。


《2014年8月4日付 最新情報》

その後、2度仔猫たちが棲むエリアに様子を見に行きましたが、全員の姿を確認することが出来ませんでした。

ただ、世話をする “ 防砂林に住まう人 ” から4匹とも元気でいることを聞いていました。

そして7月31日の夕刻、私自身の眼で4匹の仔猫が防砂林の中で元気で遊んでいる姿を見ることが出来ました。

さらに “ 防砂林に住まう人 ” の言うには、4匹とも女の子である可能性が高いとのことです。


《2014年8月24日付 最新情報》

拡散記事を見た県内在住の方から、黒シロの子を預かり、医療ケア・里親募集・譲渡まで対応することが可能です、という申し入れがありました。

この方は過去にも野良猫を保護し里親さんを募って譲渡した経験があり、私としては異存はなく、この方へお任せする方向で動き始めます。

世話をしてくれている “ 防砂林に住まう人 ” にもその旨を伝えて了解を得ました。

残る案件は『捕獲』なのですが、 “ 防砂林に住まう人 ” の話だと、日毎に馴れてきているが、まだ捕獲できる状態ではない、とのことでした。

なので、焦らず徐々に距離をつめていき、かつ周到な準備をして一回で成功させたいと思っています。

私としては残りの3匹の子たちにも朗報がもたらされることを祈るばかりです。


《2014年10月12日付 最新情報》

拡散記事を見た県内在住の方から、黒猫の子の里親になりたいとの申し入れがありました。

里親募集の記事を見た、以前からの知り合いの女性から「自分は既に8匹の野良猫を保護しているからこれ以上は増やせないが、知り合いに尋ねたところ黒猫の子を引き取りたいと言っています」という電話連絡をいただきました。

ただ捕獲の手段に苦慮しています。

捕獲器の使用も考えているのですが、失敗すると用心してさらに捕獲しづらくなるのと、ほかの子が学習して捕獲器を忌避するようになりはしないかと懸念しているからです。

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