小さい膝

2010年05月23日 00:00

PM 01:50
明け方から降り出した雨に、湘南海岸は濡れそぼっていた。
砂浜に人影はなく、凪いだ海から微かな波音が聞こえてくるだけだ。

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サイクリングロードも雨に打たれて、閑散としている。


そんな天候にも関わらず、ミケのエサ場には訪問者がいた。
その訪問者の膝に、サンマがしがみつくように乗っている。

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ふたりは兄弟だと言う。サンマを膝に乗せる兄とは、先日会っている。
その日も雨が降っていた。



弟がサンマを自分の膝に誘うが、サンマはそれに応じない。
いかにも小さい膝に、サンマも躊躇ったのだろう。

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サンマは一度、地面に下ろされた。


そして、弟に抱きかかえられた。
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私が知る、最も小さい膝の上に、サンマは乗っかった。


サンマは自分の前足で、弟の膝をしっかり抱えこんでいる。
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そのうち、小さい膝に慣れてきたのか、サンマは満更でもない表情を見せてきた。


我々の話し声が気になったのか、ミケが小屋から出てきた。
サンマは、急いでミケのお尻に鼻をくっつけた。
「子供の前で何してんだ、お前は!」私は、足でサンマをミケから引き離した。

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ミケは、いつもの場所へ駆けこんだ。


サンマが再び、弟の膝に跳び乗った。
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こんな日に、男女の区別をしている余裕はないとばかりに‥‥


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この兄弟の家で四月から飼いはじめた猫は、ふたりの膝には乗ってくれないと言う。
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「お父さんとお母さんの膝には乗るけど‥‥」と兄がポツリと言った。


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その時、兄が小さな声で、私に時間を訊いてきた。
私の腕時計は、午後2時16分を指していた。

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今度は、兄が持つ三本目の傘を見て「誰かに傘を届けるの?」と、私が訊きかえした。
すると、弟が「色々あってね」と、大人びた口調で応える。
私は苦笑しながら「そうだな、色々あるもんな」と言い、それ以上詮索することは止した。



サンマが執拗に弟の膝に乗ってくる。
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ふたりには、傘を届ける約束の時間があった。
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兄が再び、私に小さな声で「鉄砲通りに出たいんですけど‥‥?」と訊いてきた。
話を聞くと、傘を待つ人はラチエン通りより東にいるらしい。
そこで私はラチエン通りに抜ける道を、兄に説明した。



ふたりを見送るように、サンマがあとをついていく。
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サンマの見送りを受け、兄と弟は仲良く並んで帰っていった。
ふたりの想いは、既に傘を届ける人へ移っているのかも知れない。



サンマはふたりを見送ると、急いでエサ場の中へ戻ってきた。
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そして、傘の下にうずくまった。


雨脚は一向に衰えない。
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身体が濡れることを嫌う猫にとって、雨の日は退屈この上ないだろう。
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ミケは落ちてくる雨を見て、何を想っているのだろう?


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私の耳に聞こえてくるのは、雨音と波音だけだ。


狸の墓に、新たな花が供えられていた。
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狸が埋葬されて、既に三ヶ月半が経とうとしている。


ミケの顔が、にわかに険しくなった。
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サンマの接近を知ったからだった。


サンマはこの時、ただ水が飲みたかっただけかも知れない。
しかし、サンマの接近を簡単に許すミケではなかった。

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サンマはすごすごと、元の場所へ戻っていった。
「サンマ、水なら小屋の前にもあるだろう」



雨の中、ミケが傘の下から出てきていた。
「どうした、ミケ、そこにいると濡れるぞ」

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すると、ミケは急いで私の傘に入ってきた。そして私の足元にうずくまり、動かなくなった。
ミケの身体が濡れないよう、私はしばらくその場にしゃがんでいた。



私が立ち上がる素振りをすると、ミケは慌てて小屋の中へ潜りこんだ。
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「ミケ、予報だと明日も一日雨だ。おとなしく小屋の中にいろよ」


「サンマ、お前も早く小屋へ入った方がいいぞ」
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「また、明日来るからな」


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コメント

  1. mimi | URL | tHX44QXM

    wabi さん

    おはようございます。

    雨の中お疲れさまです。

    びっくりしましたが、ミケちゃんのお尻に鼻をつけたのって初めてですか??
    本当は、二人は仲良しなのかしら??

    サンマ君と小さい膝乗り写真かわいいですね。
    そのまま、サンマ君を自宅に連れ帰ってほしい、、と思ってしまいましたわ(笑)

    雨の雫と緑の写真綺麗です。

  2. wabi | URL | -

    mimiさんへ

    mimiさん、いつもコメントありがとうございます。

    > びっくりしましたが、ミケちゃんのお尻に鼻をつけたのって初めてですか??
    > 本当は、二人は仲良しなのかしら??

    以前何度か目撃したことがありますが、その時はミケの強烈な拒絶に遭い、サンマがいつも逃げていました。
    昨日は雨が降っていたこともあり、ミケは他に気をとられているような様子でした。

    > サンマ君と小さい膝乗り写真かわいいですね。
    > そのまま、サンマ君を自宅に連れ帰ってほしい、、と思ってしまいましたわ(笑)

    一生懸命サンマを自分の膝に誘っている光景は、実に微笑ましいものでした。
    自宅にいる猫が膝に乗ってくれないから、サンマで体験したかったのでしょう。

  3. 気まぐれpapa | URL | r0n3ENrY

    人間の子どもも可愛いね♪

    ご無沙汰しています。
    子どもとニャンのやりとりを楽しく拝見しました。
    動物に接して育つ子どもは「優しさ」を持ち合わせています。
    大人になっても動物を可愛がってもらいたいものですね。
    一週間あまりぶらりと旅に出てしまい、茅ヶ崎の海に出没で
    きずにいましたが、数日前漁港に行ったのですが、ニャンを
    見かけることが出来ませんでした。真夏日であったためでし
    ょうか、涼しいところでお昼寝していたかもしれませんね。
    相変わらずのご多忙なようですね。
    今度時間を作っていただき、コーヒータイムなどいかがでし
    ょうか。

  4. wabi | URL | -

    気まぐれpapaさんへ

    気まぐれpapaさん、コメントありがとうございます。

    旅行中に撮った美しい写真、拝見しています。

    雨の日の幼い訪問者、見ているこちらも思わず微笑むいい光景でした。
    気まぐれpapaさんの言うように、今の気持ちを忘れず、小さな命を大事にする大人になって欲しいものです。

    私が、漁港へ行けるのは休日になります。
    その折に連絡させて頂きます。

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