母の膝

2011年02月12日 21:53

空気は凍てついていたが、風が凪いだ海岸は穏やな表情で私を迎えてくれた。
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ローカルサーファーがのんびり波間にたゆたう‥‥そんな冬の午後だった。


船宿エリア
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船長さんの足元にカポネがいた。


カポネは船長さんへ行儀よく向き直った。お代わりを求めているのだろうか?
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そんなカポネを横目に、船長さんはそっとその場から離れていった。


船長さんにはまだ仕事が残っているのだ。
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カポネは船長さんの姿が見えなくなっても、同じ姿勢のまま動こうとしない。


シロベエがカポネの食べ残したモノに食指を動かす。
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それでもカポネは固まったように動かない。


船長さんに貰ったのはニボシだった。
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カポネはそのシロベエに眼もくれない。


船長さんの去った方を見るカポネの表情は、如何にも寂しそうだ。
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カポネは船長さんに何を求めていたのだろう?


カポネの頭のカサブタは完全に乾き、今にも皮膚から離れようとしていた。
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前脚の傷は癒え、足先に付いた重油もさらに色が褪せている。


尚も心残りがあるようにその場へ佇むカポネに私は言った。
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「カポネ、腹減ってないか?猫缶やるから、船宿へおいで」


その時、カポネの名を呼ぶ声が聴こえた。それは『仲良し夫妻』の奥さんだった。
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カポネはまるで水先案内人のように、我々の前をゆっくりと船宿へ向かって歩いてゆく。


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何故かカポネは船宿へは直行せず、奥さんを従えて駐車場へ歩をすすめた。


奥さんは「ここ3回ほどカポネに逢えなかったから、心配していたの」と言った。
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そして‥‥カポネをそっと抱きしめた。


奥さんの抱擁を受けたカポネは、おもむろに船宿へ歩きはじめた。
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そのカポネの眼の前をマサムネが通りすぎる。


カポネに続いて、夫妻の訪問を知った野良が徐々に船宿前に集まってきた。
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カポネは奥さんに寄り添うように水場のコンクリの縁に陣取った。


人馴れしたカポネは、人の側にいるときに一番穏やかな表情を見せるようになった。
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『強面』という世評は影を潜め、今や「カワイイ」と称される。
しかし私は未だにカポネをカワイイと感じたことはない。少なくとも見て呉れだけは。



そのカポネを物陰からそっと見つめるマサムネ。
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マサムネの視線にやっかみが含まれているかどうか‥‥私には判らなかった。


数日前からこのエリアに出没するようになったハチワレのオスがまた姿を見せた。
この野良が棲むエリアは船宿から1km以上離れている。

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よく観察すると、まだ去勢手術を済ませていない。因みに、猫の恋の季節は既に始まっている。
このハチワレも本能の赴くまま相手を求めて、ここまで遠征してきたのだろうか?



しかし船宿エリアのメスは全て避妊手術を終えているので、このハチワレの願いが叶うことはない。
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「そういうことだから、諦めて自分の縄張りに帰りな」


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マサムネはご主人に抱かれて、まるで赤子のようだ。


新入り仔猫は食欲の赴くままに食べ物を求める。
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一方カポネは流石に大人で、自分の順番が来るまで行儀正しく待っている。


このミイロは元来人懐こいのだが、自らおもねることは決してない。
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そういう意味で、彼女は気位の高い野良である。


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カポネが人の手から食べ物を貰うことになろうとは、以前のカポネを知る私には想像もできなかったことだ。


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私はカポネの出自について殆ど知らない。いつ何処で生まれ、今までどんな境遇で育ったのか‥‥。
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「カポネ、お前は何処から来たんだ?そしてこれから何処へ行こうとしているんだ!?」


マサムネの表情がいつになく険しい。
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その眼には警戒の色が灯っている。


マサムネの視線を追ってふり返ると、あのハチワレが現れた。
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ハチワレは私の目の前をゆっくりと通りすぎていった。


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ハチワレは船宿に近づき、じっと様子を窺っている。


しばらくすると、ハチワレは肩を落として船宿から去っていった。
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その去りゆくハチワレのうしろ姿には一抹の寂寥感が漂っていた。


カポネも船宿を離れようとしていた。
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途中で立ち止まったカポネは、逡巡するように周りを見回している。
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「カポネ、どうするんだ。このままねぐらへ帰るのか?」


するとカポネは意を決したように東へ歩を運びはじめた。
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ところが‥‥カポネは再び立ち止まった。


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そして‥‥ゆっくりと振り向いた。


次の瞬間、カポネはいきなり取って返した。
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後脚を引きずりながら、カポネが足早に船宿へ戻っていく。


カポネは奥さんの元に歩み寄ると‥‥。
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そのまま奥さんの膝へ顔を埋(うず)めた。
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そのカポネの様子が私の目には、まるで外で苛められた子供が母親の膝で宥められているように見えて仕方がなかった。


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かつて『強面』と呼ばれた野良がいた。
だがその野良は人の温もりを知り、今はその温もりの中に心の安穏を求めるようになった‥‥。




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コメント

  1. のら | URL | F9KaSNZI

    不思議と胸が熱くなる写真でした。画像を通して伝わるものって、綺麗なものや美しいものだけじゃないですね。体中生きてるまんまの汚れをつけたカポネの表情と、それを包む優しい手は、カポネが感じている安心感と同じような安堵感を与えてくれます。たったひと時のぬくもりを、目一杯受け取って、感じてるんですね。遠く離れていますが、そこに愛情を注ぐ人と、受け取る野良猫と、それを見つめる人がいて、本当にうれしく思います。素敵な画をありがとうございます。

  2. syoko | URL | sH7FMugQ

    せつないです・・・
    船長さんの姿をいつまでも見送る姿。
    思い返したように奥様の元へ戻り、もう一度撫でられて幸せそうな表情を見せるカポネ君。
    人間の傍で暮したいのかも?と勝手な想像をしてしまいます。

  3. wabiさん、いつもご苦労様です。そしてありがとうございます。
    私もwabiさんと同様に、外猫たちが外猫として暮らすようになったそれまでのいきさつを知りたいと願ってやみません。
    カポネのなつき方は以前に人のぬくもりをすでに知っているものと思われます。(そのようにできるほどに、船宿を安全な生活の場として感じられるまでになったのでしょう)
    「仲良し夫妻」の奥さんに優しく抱きしめられるもう若くはないカポネを見て涙が出ました。
    話は変わりますが、海岸の美しい様子を知らせてくださるのもいつも楽しみにしています。ありがとうございます。本当に自然は息をのむほど素晴らしいですね。
    (返信なしで大丈夫です)

  4. きょう | URL | -

    こんにちは

    カポネは人が好きなんでしょうね。
    切なくって涙が止まりません。
    カポネは可愛いですよ。
    その表情、仕草、純粋な子供のようです。

  5. にゃにゃにょ | URL | RCXKb8Z6

    もしかしたらこの傷は、猫同士の物かもしれいないですね?。
    以前の画像でも気になっていたのですが、頭も足も「牙」の
    刺さったような二つの穴が空いているようなので・・。

    穴のサイズからすると、犬のよう大きさの牙ではないように見えます。
    リアルで見たわけでは無いので、確かな事は言えませんが、
    人為的な物でなければ、多少は安心出来るのかも・・。

  6. ミポリン | URL | -

    カポネちゃんは

    きっと飼い猫だったと思います 私はまだ経験が浅いけど 本当の野良ちゃんズは マジで火を吹いて 警戒心が強いです 飼い猫ちゃんは もう一度飼い猫になるチャンスがあっても 良いと思います って 今自分で抱えてる交通事故にあって入院してる猫に対しての私の意見を述べさせてもらいました 猫を飼ってる人が言うには 「子猫より 元飼い猫の方が しつけをしないしいたずらしないし 大人しいし とても飼いやすいですよ お年寄りで 「とぎが欲しい人とかいる」と聞きます そういう方は 子猫は無理でも 元飼い猫だと適正ではないでしょうか?って 高知は高齢化が凄いのです 猫友で 人と人がつながり合える事もあると思います 高齢の方は pcやらない方が多いから やはり口コミで カポネちゃん達の里親を捜してあげると いきつくのではないでしょうか? 私はそれを実践して行きたいと思いますが って ちょっと弱腰なもんで すみません つい口調がきつくなってしまって 
          今週 退院予定の猫ちゃんをどうするか 頭を痛めてる私でした 
     

  7. モンプチ | URL | -

    こんにちは

    こんにちは。
    カポネの傷も随分良くなったみたいで安心しました。

    カポネに今までどのようなドラマがあったのか?私も気になります。
    ほかの猫ちゃん達も人慣れしているようなので、元は飼い猫だったのでしょうか?
    もしくは子猫の頃から人間と接してきたのか?

    カポネやマサムネが一時の温もりと分かって甘えているのか?
    猫達が、その一瞬一瞬を大事に、一生懸命に生きているのだなぁと思い、
    たくましくも感じ、少し切なくもなりました。

    猫達の、あの穏やかで安心した表情を見ていると、ここに集まる方々の愛情の深さを感じます。
    猫は駆け引きもないし正直ですからね・・
    wabiさんの写真は、いつもいろんな事が伝わってきます。
    つい色々と思いを巡らせては感情移入をしてしまいます。
    いつも素敵な写真ありがとうございます。



  8. wabi | URL | -

    コメントありがとうございます

    のらさんへ

    私は常日頃から留意していることがあります。
    それは野良と人との交流を、私が見たまま読者の方に伝えたいということです。
    私は写真やカメラ自体に興味はなく、きれいな画を撮ろうと思うことは稀で、出来るだけ野良たちの内面が表れている瞬間を捉えたいと思っています。
    これからも私の感じるまま野良たちを撮っていくつもりです。



    syokoさんへ

    どんな野良と接しても切なさは付いて離れません。
    猫の幸せはやはり人の温もりを得られる場所で暮らす以外あり得ないと思います。
    カポネも人の温もりを求めています。
    私には束の間彼に温もりを与えることしかできません。
    切ないですが‥‥。



    ねこやしきさんへ

    私がカポネの過去について知っていることは殆どありません。
    唯一8年前に、近くの駐車場で既に野良生活をしていたカポネを見たという情報を得ているだけです。
    ですからカポネがいつ人の温もりを知ったのか‥‥私には判りません。
    ただ、今のカポネが人の温もりを求めていることだけは確かです。



    きょうさんへ

    初めてカポネを見たときは、周りの野良を威嚇しつっぱっていましたが、それは彼の本来の姿ではなかったのでしょう。
    群れに加わらず、独りで生きていく上で必要な虚勢だったのかも知れません。
    カポネは今でも孤独を癒すために船宿へ現れ、ひと時人と触れ合うのでしょう。



    にゃにゃにょさんへ

    当初は虐待によるものだと思っていましたが、傷の具合からそうではないようです。
    カポネが怪我について複数の方から推測を寄せて頂きましたが、その中で一番信憑性を感じられたのが車のエンジンルームでファンベルトに負わされたという情報でした。
    しかし、確かなことはカポネしか知りません。
    何にせよ、二度とこのような事が起きないよう願うばかりです。



    ミポリンさんへ

    カポネの過去‥‥私も大変興味があるのですが、こればかりは本人に訊くしかありません。
    他の方へのコメント返しに書いたように、私がカポネの過去について知っているのは8年前に既に野良だったということだけです
    しかし最近のカポネを見ていると、元々は家猫だったのでは、と私も思うようになりました。
    確かにしつけのされていない仔猫より、家猫としてしつけされた成猫の方が飼い猫としては適していますね。
    トイレ、爪とぎ‥‥しっかり教えないといけないことは沢山ありますから。



    モンプチさんへ

    カポネの快復力は頼もしいかぎりです。

    船宿の野良の中で捨猫でないのは、マサムネ、コジロー、アイ、クロベエの兄弟たちです。
    彼らはシズクがこの船宿で産んだ生粋の野良です。
    でもこの兄弟は総じて人懐こく、ここの環境が恵まれていたのだと想像できます。

    船宿の野良の多くは我々に食べ物だけでなく、愛情も求めているのがよく分かります。
    そのひと時の交流を大切に思い、生きる糧にしているようです。
    そしてそんな彼らを見ている我々も心を癒されるのです。
    人と猫との関係はこの心の交流なくしては語れないでしょう。
    私はこれからもその交流を少しでもブログを通じて伝えたいと思っています。

  9. たかたん | URL | NM1EMLgs

    おひさしぶりです。

    続く悲劇に、言葉も出ずにただ成り行きを見てました。
    ヘッダー部が、あり日しのカポネの勇姿になったのが嬉しいです。
    今は、カポネの安らかな表情を見て、少しホッとしてます。
    皆さんの献身的な活動に敬意を表します。

  10. wabi | URL | -

    コメントありがとうございます

    幸いカポネの怪我は大事に至らずほぼ癒えました。
    彼の快復力に負うところが大きかったのですが、周りの人の温かい目が彼を守ってくれたと感謝しています。

    タイトルの威風堂々としたカポネに戻る日も近いと思います。

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