海風に抗って

2011年03月29日 21:30

東日本大地震が起こるホンの少し前のお話‥‥


海風が哮り声をあげながら湘南海岸のあらゆるモノを揺るがしていた。
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海は荒れ、波が白い波頭を立てて打ち寄せては、岩礁に大きな飛沫をあげる。


船宿エリア
海風は船宿へも容赦なく吹きつけている。
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ミイロはそんな海風に独り身を晒していた。
「何しているだミイロ、こんなところで。寒くないのか?」



マサムネとシシマルは海風から避難していた。
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そこへ風に吹かれてシズクがやってきた。
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「シズク、こんな日はあちこち嗅ぎ回らないで大人しくしてた方がいいぞ」


海風は弱まるどころか益々その勢いを増してきた。



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ミイロも皆に倣って船宿の玄関先へ避難してきた。


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そのミイロが見つめる先‥‥そこはカポネのねぐらがあった場所だ。
以前ならこの道を悠然と歩いてきたカポネだが、ある日を境に突然姿を消してしまった。



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新入り仔猫が私の足元で盛んに鳴声をあげる。


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黒豹を彷彿とさせるクロベエだが、実際は至って穏やかで気の優しい野良だ。
私が見ていて気の毒なほどに‥‥。



クロベエがすぐに船宿へ近づくことはない。
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いつもこうして離れたところから様子を窺う。


そのクロベエの被毛を海風が翻弄する。
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それでもクロベエはジッとうずくまったままだ。


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シズクは海風を避けて船宿の水場に身を潜める。


新入り仔猫も不安げな顔で動かない。
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野良たちが無聊に苦しみはじめたその時だった‥‥。


海風に抗うようにTANYさんが船宿へやってきたのは。
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TANYさんは近づいてきた新入り仔猫に「ゴメンね、今日は猫缶持ってこなかったんだよ」と言った。
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そして申し訳なさそうに新入り仔猫を撫でた。


TANYさんの誘いに乗るのはいつもミイロと新入り仔猫と決まっていた。
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その様子をじっと見つめるマサムネ。
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TANYさんもマサムネの視線に気がついたようだ。


「お前も遊びたいの?」とTANYさんがマサムネに水を向けた。
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今年6歳になる大人のマサムネだが、TANYさんの誘いにすぐさま乗っかった。


TANYさんもそのマサムネの反応に「いやぁ、この子が遊ぶとは思わなかった」と嬉しそうに笑った。
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小枝のジャラシで無邪気に遊ぶマサムネを見て、私は無性に切なくなった。


「お前はこういう風に遊ばせて貰うことなんて、今までなかったんだよな‥‥」
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「過酷な生活にお前自身もそんな余裕はなかったはずだ‥‥そうだろマサムネ?」


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野良たちと遊んだTANYさんは「今日は寒いから、これで帰ります」と言って立ちあがった。


そして新入り仔猫を優しく撫でながら「またね」と言った。
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TANYさんの後ろ姿を見送りながら、私は思わず呟いた。
「TANYさん、猫缶なんて持ってこなくてもいいんですよ。それより素敵なモノを両手いっぱい持ってきてくれたんだから‥‥」



船宿前は再び強烈な海風の音に支配された。
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これは以前紹介した『陰湿なトラップ』だ。
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だがよく見ると、手前の釘だけが人為的に曲げられている。
この釘の意味するところは実に明快だ。つまり手前の家の人が野良たちを傷つけるかもしれない陰湿なトラップをひん曲げたのだ。それも律儀に自分の敷地の分だけ‥‥。



陰湿なトラップを見れば分かるように、此処に棲む野良たちの存在を快く思っていない近隣住民がいる。
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でも逆に野良たちを温かく見守っている近隣住民もいるのだ。


その時、強い海風に抗ってやってきたのはキュウさんだった。
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キュウさんは乱れた髪を直しながら「こんな日は外に出ちゃダメ、家に居るべきよ」と後悔の言葉を口にした。


実はキュウさんと此処で会う約束をしていたのだ。ただその約束を交わしたのは海風が吹く前だった‥‥。
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キュウさんが来たことを知った野良たちが水場に集まってきた。


ところが、いきなりクロベエとシロベエの間に不穏な空気が流れはじめた。
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シロベエが威嚇の唸り声をあげた。クロベエはただ身じろぎもせず、その場で身を硬くしている。
この2匹の間に何があったのか‥‥側にいた私たちにもまったく見当がつかない。



後ろ脚を脱臼して戻ってきた直後はひどく怯えて萎縮していたシロベエだったが、最近はやたらと仲間と諍いを起こすトラブルメーカーになってしまった。
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怪我をするほど酷い喧嘩でない限り野良の諍いは仲裁しない。何故なら私たちが一時的に止めても根本的な解決にならないからだ。


それに多くの場合、威嚇し合うだけで収束に向かう。今回もそうだろうと思った次の瞬間だった‥‥。
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2匹が縺れ合ったまま跳びあがったのは!


場所を替え再びいがみ合う2匹‥‥。
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このままでは何時まで経っても収まりそうもないので、仕方なく割って入った。
しかし特攻隊長のミイロが参戦しないのは珍しいことだ。



キュウさんが取り出したのは、彼女お手製の猫用おやつだ。
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その正体は鰹のたたきを茹でたモノ‥‥。海岸猫の前に舌鼓を打つキュウさんちのニャンズの様子はこちら。


匂いを嗅ぎつけ、真っ先に食らいついたのは新入り仔猫だった。
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二番手は特攻隊長のミイロ‥‥。


茹でた鰹のたたき‥‥。
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おそらく此処の野良たちは初めて口にするモノだろう。


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猫によっては食べ慣れないモノに目もくれないことがよくあるのだが‥‥。


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食材が良いのか、キュウさんの腕が良いのか‥‥口にしていない私には分からないが、野良たちには好評のようだ。


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マサムネの場合、初めて口にするモノであろうがなかろうが、食べるスピードは飽くまでもスローペースだ。


トラブルメーカーのシロベエも鰹のたたきが気に入ったようだ。
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新入り仔猫以外は皆脇目も振らず黙々と食べつづけている。


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キュウさん手作りの鰹のたたきは、欠片も残さずキレイに売れ切れてしまった。


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海風は勢いを弱めず、その後も吹き荒れつづけた。



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信じるモノが何であれ、とどのつまり私たちはまた歩き始めなければならないのだ。
涙を流しながらでも‥‥。



『上を向いて歩こう』 唄:坂本 九

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