コジローの横顔

2011年04月03日 10:00

頃合いを見て私が猫缶を取り出すと、野良たちが行列を作った。
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クロベエが水場に来て列の後ろに並んでいる‥‥滅多にないことだ。


ツバサは待ちきれないとばかりに、猫缶の横に陣取り催促の啼声をあげる。
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今回もミイロは猫缶に目もくれない。
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食欲が無いのか、猫缶が口に合わないのか‥‥にわかに判らないが、ミイロらしい潔い拒絶反応だ。


猫缶を食べ終えたコジローは用事でもあるのか、足早に立ち去っていく。
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「漁港へ出向いて、またトラブルを起こすつもりなのかコジロー‥‥?」


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マサムネは猫缶をじっくりと味わうように食べている。


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ミイロが残した猫缶はけっきょくシシマルに回された。


そのシシマルと争うように最後まで猫缶を漁っていたツバサは、近頃あっさりと水場から離れるようになった。
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ただ単に食べ盛りの時期を過ぎたということなのだろうか‥‥?


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私が空けた猫缶は、シシマルの食欲にも助けられキレイに完食された。


だがココに猫缶をまだ食べ終わっていない野良がいた‥‥マサムネだ。
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そのマサムネの猫缶に関心を寄せるシシマルが思わず舌なめずりをする。
ニ匹の間に何やら気まずい空気が流れる。



シシマルは自分の想いを悟られまいと、ついと眼を逸らす。
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そのシシマルに釣られて、マサムネもあらぬ方を見やる。


シシマルは気持ちを落ち着かせるため、おもむろに口を拭う。
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しかしすぐさまマサムネのトレイに眼を奪われる。


マサムネが向き直ると、シシマルは慌てて姿勢を正す。
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そしてニ匹の間に再び気まずい空気が流れはじめる。


シシマルはその空気に耐えられず、自らを慰撫するように顔を洗いはじめる。
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そんなシシマルの心を忖度することなく、マサムネは再びあらぬ方を眺めはじめる。


「マサムネ、もう食べないならシシマルに譲ったらどうだ?」
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「何だ、まだ食べるのか‥‥」


「お、おい、止めるのかよ!まったく思わせぶりなヤツだなぁ‥‥」
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この頃になると、マサムネがわざとシシマルをじらすため嫌がらせをしているように思えてきた。


マサムネの腹は既に満たされていると思われる。
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いつものマサムネならとっくにトレイから離れているはずだが、何故かこの時は頑として動かなかった。


私はマサムネのトレイをそのままにして、他のトレイと空缶を洗った。
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そうしている間もマサムネは猫缶の入ったトレイを前に虚空を見つめたままだ。
シシマルはそんなマサムネを急かすことなく、ただ大人しく待っている。
まるでそうすることが規律でもあるかのように‥‥。



ややあって、マサムネがやっとその場から立ち上がった。
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するとシシマルがそっとトレイに近づいた。


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何故マサムネは、余した猫缶を素直にシシマルに譲らなかったのか‥‥?
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気まぐれな猫のことだから、その理由を尋ねても無駄だろう。


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過酷な環境に暮らす野良だから、食べ物が元で争いが起こることも稀にはある。


ただ此処には比較的穏やかな性格の野良たちが多いということもあり、私は今までそのような場面を目撃したことがない。
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人間の世界でも裕福なはずの日本人が目を血走らせてモノを買い漁る光景を、コイツらが見たらどう感じるだろう?


きっと、どうして一人で食べきれないほど抱え込むの‥‥仲間はどうなってもイイの、と訝るだろう。
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そして‥‥日頃から食べ物を粗末にするな、と言うはずだ。


船宿エリアを離れようとしたら、独り所在無さ気にしているコジローと目が合った。
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「何だコジロー、今日は漁港へ出かけないのか?」その理由は鼻に負った引掻き傷かもしれない。


私のあとを追ってきたミイロと挨拶を交わすコジロー。
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ツバサもコジローの側にやってきた。


コジローはクールな面差しを崩すことなく、ジッとこちらを向いたままだ
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そのコジローの体にそっと顔を寄せるツバサ。


そしてマサムネにしたようにツバサが“手”をかけようとすると‥‥
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コジローは消えた。


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『浜の伊達男』としてはネチネチとした係わり合いはやはり嫌なのだ。


「それにしても、ちと冷たくないかコジロー‥‥」
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「でも、そうやってお前は今まで生きてきたんだよな‥‥範を示してくれる父を知らずに‥‥」


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船宿を去る私のあとをコジローが追ってきた。
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「どういう風の吹き回しだコジロー、お前が見送ってくれるなんて」


と、いきなりコジローが砂浜に転がった!
そして私は期せずして、コジローの『地面ゴロゴロ』をはじめて見ることになった。

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コジローの意表をつくこの行動には何か意味があるのか‥‥?
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ま、コジローのことだから其の場限りの思いつきだろうと思われた。
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ともかく、私はいつも無愛想でクールなコジローの違う一面を垣間見た気がした。


コジローはすぐにいつものクールな面差しを取り戻した。
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西の空を眺めるコジローの小さな後ろ姿にはそこはかとない哀感が漂っていた。


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