母性の行方

2011年04月20日 07:00

昨日とうって変わり、春の暖かい陽射しがふんだんに降り注ぐ湘南海岸は如何にも穏やかだ。
海岸110413-01.jpg
ただほぼ凪いだ海に独り漂うサーファーは見るからに所在無さそうだ。


船宿エリア
船宿エリアへ着いた私を最初に出迎えてくれたのは、のんびりと空を滑空する一羽の鳶だった。

船宿110413-01.jpg
そして‥‥地上に移した私の目にまず飛び込んできたのは、あの仔猫だ。


仔猫の表情は、最初に遇ったときより幾分落ち着いているように見える。
船宿110413-02.jpg
もしかしたら、寂しさを紛らす術を覚えたのかもしれない‥‥。


そこへ“浜の伊達男”コジローが現れた。
船宿110413-03.jpg
コジローは仔猫のことなど眼中に無いとばかりに、つれない態度を通している。


クロベエも仔猫に無関心を装っているが‥‥、
船宿110413-04.jpg
それはただ臆病なだけで、仔猫のことが気になって仕方ないようだ。


船宿110413-05.jpg
コジローは大きなアクビをすると、仔猫に視線を移した。


その仔猫の側には、いつの間にかミイロがうずくまっていた。
船宿110413-06.jpg
仔猫は不安げな面持ちで午後の陽射しを浴びている。


しばらくそうしていたが‥‥、
船宿110413-07.jpg
やがて哀しそうな表情で顔を伏せた。


そして記憶を辿るように視線を泳がせる。
船宿110413-08.jpg
もう逢えぬと悟った母や兄弟の姿を想い描いているのだろうか?


人の子なら寂しさに耐え切れず、母の名を呼び泣きわめいているはずだ‥‥。
船宿110413-09.jpg
「お前は強いな‥‥泣きもせず悲しみに耐えているんだろう?」


マサムネはただ独り、何をするでもなく駐車場で佇んでいる。
船宿110413-10.jpg
“媚びない猫”は、いくら私が名を呼んでもその場から動こうとしない。


その代わりに、呼びもしないミイロが私の目の前に現れた。
船宿110413-11.jpg
ほかの野良たちも、私の動向を静かに見つめている。


私を見つめる彼らの想いは、私に十分伝わっている。
船宿110413-12.jpg
‥‥小腹が減ったのだ。


そんな彼らの要望に応えて、食事を与えることにした。
船宿110413-13.jpg


皆がキャットフードを貪るように食べているのに、マサムネだけは口を付けようとしない。
船宿110413-14.jpg


そのマサムネの傍らでは仔猫が旺盛な食欲を見せている。
船宿110413-16.jpg
マサムネはトレイの中をただ見つめているだけだ。


ついにマサムネはトレイから離れてしまった。
船宿110413-17.jpg
腹が減っていないのか‥‥それとも私が持ってきた食べ物が口に合わないのか?


ここにも私が与えたキャットフードに見向きもしない野良がいる‥‥。
船宿110413-18.jpg
ほかの野良の食べ残しは大食漢のシシマルがキレイに片付けてくれる。


仔猫のトレイはそのシシマルの手を煩わす必要はなかった。
船宿110413-19.jpg
しっかり食べて丈夫な体を作るのが、外猫として生きていく上で一番肝要なことだ。


野良として生きていくのは厳しい。‥‥おそらく私たちが考えている以上に。
船宿110413-20.jpg
マサムネも此処で生まれ、幾多の試練を乗り越えてこうして生き残った。


野で生まれた子が成猫になる割合はどれくらいだろう?
船宿110413-21.jpg
私は正確な数字を知らないが、3割以下ではないだろうか。


船宿110413-22.jpg
仔猫がじゃれているのは、虫だ。‥‥それも小さな小さな虫だ。


しかし、子猫の様子は心から楽しんでいる風ではない。
船宿110413-23.jpg
私の目には、ただ虫を相手に寂しさを紛らわしているようにしか見えなかった。





この仔猫は独りで遊ぶことにまだ慣れていないようだ。
船宿110413-24.jpg
最近までいたトコロには、きっと一緒に遊んでくれる仲の良い兄弟がいたのだろう‥‥。


「マサムネ、お前が遊んでやればいいのに‥‥」
船宿110413-25.jpg
“媚びない猫”は何も応えず、そっと眼を眇めた。


野良たちのために汲み置かれた水を飲む仔猫。
船宿110413-26.jpg
こうやって少しずつ此処の生活に慣れていくのだ。


船宿110413-27.jpg
シシマルの視線を辿ると、シロベエがクロベエににじり寄っていた。低い唸り声で威嚇しながら‥‥。


争いを好まない気弱なクロベエは、後ろを振り返りながら、そろりそろりとシロベエから離れていった。
船宿110413-28.jpg
そのクロベエをシロベエが執拗に追う。


シロベエは唸り声を発しながら更にクロベエへ近づいていく。
船宿110413-29.jpg
何故シロベエがこのエリアのオスたちを敵視するのか‥‥。


少なくとも、大人しいクロベエにその原因があるとは思えない。
船宿110413-30.jpg
ちなみに、シロベエはまだ去勢手術を受けていない。このことが彼をして好戦的にせしむるのか‥‥?


ただならぬ雰囲気に怯えたのか、仔猫は車の下へ逃げこんでしまった。
船宿110413-32.jpg
仔猫は不安げな顔で私を顧みた。


と、その時だった‥‥、
船宿110413-33.jpg
ミイロが仔猫の側にそっと近づいてきたのは。


そして仔猫を護るようにその場に陣取った。
船宿110413-34.jpg
ツバサも足早に仔猫の傍らにやって来ると‥‥、


怯える仔猫にぴったりと体を寄せた。
船宿110413-35.jpg
まるで本当の兄弟のように‥‥。


ミイロは凛とした姿勢で、シロベエとクロベエの諍いを見つめている。
船宿110413-36.jpg
その厳しい形相は我が子を庇護する“母”を彷彿とさせる。


船宿110413-37.jpg
2匹の幼い猫はミイロの後ろで息を潜めている。


キュウさんによると避妊手術をしたメス猫は“母性”を失うという。
船宿110413-38.jpg
そうして‥‥ただの“オンナ”に戻るらしい。


シロベエとクロベエが争いの場を変えると、ミイロはおもむろに立ちあがった。
船宿110413-39.jpg
以前なら諍う声がするとすっとんで行った“特攻隊長”のミイロだが、今は幼い猫たちの側から離れない。


船宿110413-40.jpg
私からもシロベエとクロベエの姿は見えないが、諍う声が何処からか聞こえてくる。


振り返ると、車の下から仔猫の姿が消えていた。
船宿110413-41.jpg
なかなか止まない“オトナ”たちの怒声に怖気づいたのかもしれない。


船宿110413-42.jpg
仔猫にとって此処が“終のすみか”になるのかどうか‥‥誰にも分からない。
おそらく当の仔猫でさえ‥‥。



船宿110413-43.jpg



* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

『プロメテウスの火』


プロメテウスは人間に火を与えた神である。

prometheus.jpg

弟エピメテウスと共にこの地上の生き物をつくったとされる。

プロメテウスが粘土から動物たちをつくり、エピメテウスが必要とされる贈り物を与えていたのだが、いざ人間の番になったとき手元に贈り物は残っていなかった。

そこでプロメテウスは天上に昇り、太陽神アポロンの二輪車から用意した炬火に火を移して地上へ持ち帰ったのだ。

*

その行いを知ったゼウスは大いに怒り、召使に命じてプロメテウスを捕えカウカソス山の岩に磔にした。


prometheus-02.jpg

こうして、不老不死のプロメテウスは毎日ハゲ鷹に肝臓を食い破られ続けるという残酷な刑を受けることになった。

*


プロメテウスに与えられた火は我々に様々な恩恵をもたらした。

もう夜の暗さに怯えることも、寒さに凍えることも、ほかの動物を恐れることもなくなったからだ。

人間が文明を得ることができたのも、この“プロメテウスの火”のお陰だ。

しかし人間は鋤や鍬を作るだけでは飽きたらず、その火で剣と槍を作り、硬い岩を砕く爆薬をも手に入れた。

*

“プロメテウスの火”は言わば諸刃の剣‥‥、使い方を誤れば災いをもたらす。

はたして我々はプロメテウスがゼウスの怒りを買ってまでも与えてくれた“火”を正しく使っているのだろうか?

*

いまも尚オリュンポスの山頂から、ゼウスが我々人間の所業を苦々しい顔で見下ろしているような気がしてならない‥‥。


Zeus.jpg



* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *




ブログランキングに参加中
気に入って頂けたら下のバナーをクリックしてください
にほんブログ村 猫ブログ 野良猫へ
いつも応援ありがとうございます

関連記事
スポンサーサイト


コメント

  1. 若鷹タカ子  | URL | 4ph23zis

    リンクご承諾有難うございます。
    新参の仔猫さん、心配ですね。
    高い所に登る猫さん達、黒猫を無視?する三毛猫さんに風格を感じます、いいお写真です。

    >何とかして身の上話を訊いたいところだが

    いい表現ですね。聞きたくなりますよね。
    ご飯を配達しておられるチャチャ様は作家・保坂和志氏の小説に出てくる女性を思い出します。
    猫の出てくる小説を多く書いておられます。

    私事ですが、先日地元で一番有名なブロガー様とお仲間に会って、ハンドルネーム(教えていない)で呼びかけられてギョっとしました。
    私のような無名ブロガーでさえそうですから、こちら様は尚更かもしれませんね。

  2. あと半分。 | URL | -

    こんばんわ。(^^)

    白い子猫は寂しそうな顔をしてますね。
    頭に少しだけ黒い模様がありますね。
    うちのモヒニャン&kissも、頭に少しだけ黒い模様が・・
    茅ヶ崎と茨城では遠く離れてますけど、同じ模様ですね。v-410

    ミイロが、さっと子猫の前に陣取り
    ツバサが体をくっつけて守りましたね。
    とても感動的なシーンです・・
    家族そのものに見えました。v-398

    プロメテウスの火の話・・・
    今の人類を考えると、おとぎ話ではなかったと気づかされます。
    今や火は、消えない核の炎になってしまった・・
    ゼウスがなぜ怒ったのか・・
    世界に500以上あるという原発の暴走が起きれば
    すべてが滅びます。
    神話時代のゼウスはそれを見ていたんだと思います。

  3. ルーシー | URL | -

    ミイロちゃんの頼もしさに感動し、
    それとつばさちゃんがすかさずフォローするところ、
    ミイロちゃんのつばさちゃんへの教育の行き届きを感じますv-290
    頼もしい母と兄が出来ましたね。頑張れ、仔猫ちゃん!!

  4. wabi | URL | -

    コメントありがとうございます

    若鷹タカ子さんへ

    高いところに登るのは限られた野良です。
    その中でもコジローは高いところが大好きで、コンテナ、釣宿の庇、
    ブロック塀などに登っては下界を飽きずに眺めます。

    野良の身の上話は是非訊いてみたいですね~。
    何処から来たのか分からない子を見ると、私はいつも思うのです。
    意思の疎通ができたら、掛ける言葉も見つかるのではと。

    残念ながら保坂和志氏の小説は読んだことがありません。
    どういう訳か、私の読んだ小説に出てきた猫はたいてい酷い目に遭ってしまい、
    読後感が良くありませんでした。
    幸せな猫の話を読んでみたいものです。



    あと半分。さんへ

    そうなんですよ‥‥、あの頭の模様さえなければ、紛れもない“白猫”なのに‥‥。
    神様の気紛れなイタズラ書きなのか、それとも何かの意味を含んだ“印”なのか、まだ分かりません。

    ミイロはすっかり仔猫の“母”になりきっています。
    このエリアには、メス猫が何匹かいるのですが、“母性”を持っているのはミイロだけです。
    そしてその母性を敏感に察知したのか、ツバサに続いて仔猫もミイロを母と慕っている様子。
    しばらく成り行きを見守っていきます。

    地獄の責め苦を受けてまでも人間に“火”を与えたプロメテウスは、今回の愚かで傲慢な人間の行いを
    どう思っているのでしょう。
    それでもまだ人間を信じているのでしょうか‥‥、それとも自分の行為を悔いているのでしょうか‥‥?
    神話や寓話は語り継がれただけの価値があり、その中には多くの真理が示唆されていますね。
    今の文明の永続性を信じ先ばかり見続けていた私たちも、少し立ち止まって原点に立ち戻る時かもしれません。
    ゼウスを始めとするオリュンポスの神々は、今も我々を見つめていると思います。



    ルーシーさんへ

    特攻隊長のミイロはやはり頼もしいですよ~。(笑)
    知らない人が見れば本物の母子と思うくらい子猫のことを気遣っています。
    ツバサも最初は仔猫にちょっかいを出していたのですが、
    今はすっかり“お兄ちゃん”です。

    仔猫も“二人”の愛情に触れ、表情が少し穏やかになった気がします。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)