家族の情景

2011年04月23日 06:00

私は久しぶりに朝の海岸へ足を運んだ。
海岸の上空は灰色の低い雲に覆われ、その空を映した海もくすんだ色で眼前に横たわっていた。

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漁師さんたちは互いに声を掛け合いながら、地曳網漁の準備に余念がない。
その様子をしばらく見ていた私は、本格的な春の訪れを実感した。



船宿エリア
エリアの入口でミイロと仔猫が並んで私を迎えてくれた。
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その光景は誰がどう見ても本物の母子だ。


仔猫はミイロに寄り添っている。そうすることがごく当たり前のように‥‥。
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仔猫の表情が日毎穏やかになっているように感じられる。


おそらくこの“逞しい義母”の存在が仔猫を心安らかにしているだと、私は確信している。
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それを裏付けるかのように、ミイロの傍らにいるときの仔猫の表情は如何にも柔和だ。
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ミイロの“母性”は避妊手術によって消滅することなく、未だ彼女の行動基準になっているようだ。


しばらくすると何処からかクロベエが姿を現した。
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抜け毛のせいでマダラ模様を作っていたクロベエの体も、すっかり元に戻っている。
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精悍な面差しと裏腹にこの野良は底抜けに優しい。


そのクロベエが見つめる先にはシシマルがいた。そのシシマルの後ろにはサビ三毛の姿も見える。
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船宿へ近づくと、ツバサが独りぽつねんとしていた。
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「どうしたツバサ、仔猫にミイロを独り占めされてふて腐れているのか‥‥?」


ツバサは私の顔を見ると、寂しげな鳴き声をあげて体をすり付けてきた。
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マサムネが私に目の前を悠然と通りすぎていく。
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マサムネの私へ対する態度は相変わらずすげない‥‥。


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それでも私がしつこく名を呼ぶとちらりと振りかえったが、一瞥をくれるとすぐに歩き去った。


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そして‥‥、お気に入りの場所であるマンホールの蓋に腰を下ろした。


そのマサムネの視線を辿るとこっちへ向かってくるミイロの姿があった。
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ミイロはマサムネをちらりと見ただけで歩みを止めることはなかった。
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ミイロの目的は船宿に汲み置かれた水だった。“特攻隊長”も咽は渇くと見える。
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マサムネは独り残された仔猫を見つめている。


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仔猫はミイロの後を追うこともなく、さっきの場所にうずくまっていた。


独り残されても、仔猫の顔に不安の翳りは微塵もない。
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本当の母や兄弟に二度と逢えないことを、この子は受け容れたのだろうか‥‥?
もしそうなら‥‥、それはそれで切ないことだと、私は思った。



仔猫は不意に立ち上がると、足早に近づいてきた。
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そして私の足に体をすり寄せると、「ミャア」と小さく鳴いた。


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船宿から戻ったミイロがその様子を静かに見つめている。


仔猫は差し出した私の手に纏わりついてくる。
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この様子からも、この子がつい最近まで“家猫”だったことがよく分かる。





マサムネは時折“コドモ”ように遊ぶことがある。この日も小石を相手に束の間の独り遊びに興じている。
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マサムネは遊び相手の小石を宝物のように抱えている
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そこへ私の後を追って、ツバサがやってきた


「マサムネ、その石でツバサと一緒にあそんでやれよ」
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しかしマサムネは小石を後生大事に抱いたまま何も応えない。


やがてマサムネは小石を放って、その場から足早に離れていった。
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そして、違う何かを相手に再び独り遊びをはじめた。
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時折ちらりちらりとこちらを振りかえる。仲間の誰かを誘っているのか‥‥?


どうやら今度の遊び相手は捨てられたカーペットのようだ。
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ひとしきりカーペットと戯れたマサムネはそそくさと歩き去ってしまった。


マサムネが去ったあとに、ソコヘやってきたのは‥‥、
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シシマルだった。


シシマルはめくれあがったカーペットに近づくと‥‥、
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仔細に調べはじめた。


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しばらくそうしていたシシマルだったが‥‥、


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新たな遊び相手を見つけたのだろうか‥‥、


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砂を勢い良く蹴り上げて駆けていった。


すると、また違う野良がやってきた。どうやら、このカーペットは野良たちの興味をそそるらしい。
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が、ミイロは匂いを嗅いだだけで、たちまち興趣を失ったようだ。


そのミイロへツバサがゆっくりと近づいていく。
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ツバサも“オトナ”を虜にしたカーペットには何の興味も示さず、ミイロの傍らにそっとうずくまった。
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その“オトナ”たちは揃って草むらの中で耳をそばだてている。
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知らぬ間にクロベエまでもが空地に来ていた。


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空地にやってきた仔猫は、その“オトナ”たちの様子を見回している。


周りをエリアの野良たちに囲まれた仔猫を見ているうちに、私の心は温かさで包まれてきた。
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「もう寂しくないだろ‥‥、お前を守ってくれる新しい“家族”ができたんだから‥‥」


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私の言ったことが通じたのか‥‥、仔猫は何とも穏やかな表情で頭を掻きはじめた。






【訃報】

今月に入って訃報が相次いだ。

まず、漁港で暮らしていたシャムミックスが亡くなった。仄聞したところでは、先月から体の不調が見られていたそうだ。
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此処ではやはり一年前にキジ白が病死している。


そして西に棲む黒シロの野良が、仲間同士の喧嘩で負った怪我が元で亡くなった。
残念なことだが、私は彼に一度も逢っていない。

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〈西に棲む黒シロ野良の写真はキュウさんからお借りした〉


この野良たちは『海猫伝説』の管理人まるこめさんが長年にわたって紹介している。
直接まるこめさんに聞いたところによると、ブログを始めるきっかけになった野良たちだそうだ。
まるこめさんの悲しみはいかばかりかと‥‥、察するに余りがある。

厳しい海岸で暮らした彼らだけに、心穏やかに虹の橋を渡って欲しいと願うばかりだ。




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コメント

  1. 先日までビクビクしていた仔猫も、先住猫たちからいじめられることもなく受け入れられたと安心したらしく、ついにここが自分の居場所と定めたようですね。
    ここを離れて姿が見えなくなったら、と心配していました。
    良かったです。(もちろん手放しで良かったという意味ではありませんが、少なくとも、wabiさんはじめ愛情深く見守ってくださるボランティアの方々やミイロ義母や仲間がいてくれます。ゴハンも確保されました)
    今日のような雨の日、みんなどうしているのかなぁ。
    毎日、想いを馳せています。
    まだちょっと肌寒い日がありますので、wabiさん 体調に気をつけてお過ごしくださいね。
    いつも丁寧にコメントへのお返事ありがとうございます。

  2. ito | URL | -

    こねこちゃん、穏やかな顔になりましたね。良かった。
    母をした事がある猫は、避妊手術後でも母をする事があるみたいですね。
    友達の家にもいますよ。手術後なのに子育てする猫。飼い主は「何匹貰って来ても全部面倒見てくれるから楽で安心」なんて言ってました。
    確かに皆大人になっても甘えてるし、怒られてる(笑)
    ついでに人間も(私も)怒られる。えぇ、TANYさんと同じ事しますから。
    人間の母は赤ちゃんの泣き声で母乳が出るらしいから、猫も同じかもしれません。
    手術後でも子猫の泣き声やニオイに反応してしまうのかもしれません。
    人間だって子育て終わってても泣いてる赤ちゃん見るとあやしますしねぇ。
    う~ん。ミイロちゃん、若くてキレイなママ、自慢のママだぁ。

  3. wabi | URL | -

    コメントありがとうございます

    ねこやしきさんへ

    船宿エリアの野良たちは一様に寛大で優しく、行き場のなくなった仲間を受け容れてくれます。
    この仔猫もそんな野良たちの気持ちが分かったようです。
    でも、ねこやしきさんが仰るように、野良猫が増えるという意味ではこれは悲劇です。
    それも心無いニンゲンの所業が生んだ悲劇‥‥。
    いくら見守ってくれる人がいても過酷な野良の生活に変わりはなく、事故、怪我、虐待などの危難は突然やってきます。
    これらは、24時間、365日、守れない以上、防ぎようがありません。

    此処に棲む野良たちはそれぞれのねぐらを持っています。
    それが何処にあるのかはっきりとは分かっていませんが、この仔猫はきっとミイロと一緒に寝ていると思われます。

  4. wabi | URL | -

    コメントありがとうございます

    itoさんへ

    仰るように仔猫の表情は変わりました。
    特に不安げだった眼つきが影を潜め、穏やかな光を宿しています。
    やはりこの子にとっては、ミイロの存在が大きいのだと思います。
    幼い子たちに慕われているミイロを見ていると、母の寛容と慈愛を感じます。
    人間もそうですが、“母”はいつになっても子供にとって心の拠り所なのかもしれません。

    ミイロは此処へ来る前はおそらく母だったのでしょう‥‥、それも優しい母だったはず。
    ちなみにこのエリアに棲む他のメス猫は、ミイロのように母性を表すことはありません。

    幼い猫たちが逞しい母に守られ健やかに育つことを願っています。

  5. mimi | URL | tHX44QXM

    wabiさん

    こんにちわ。

    ようやく暖かくなってきましたたね。
    子猫ちゃん、船宿に慣れてきたようですね。
    ミイロはほんとお母さんのようです。
    ここの船宿の猫さん達はみんな優しいから安心ですね。
    勿論、ここに委棄されることには憤慨してますが、、
    捨てる人も後をたたないので難しいですね。

    翼君もミイロになついているので、、大丈夫かしら。。嫉妬したりして(笑)

    マサムネの遊び姿は本当に子供ようので、可愛かったです。

    来月、久々に遊びに行こうと思ってます。

  6. wabi | URL | -

    コメントありがとうございます

    mimiさんへ

    茅ヶ崎も朝晩はまだ肌寒いですが、昼間はずいぶんと暖かくなりました。

    子猫も穏やかになり、生来の人懐こさを取り戻しました。
    ミイロもしっかりと母親役を好演し、見ている者を安心させてくれます。
    また、ほかの野良たちも新参者の子猫に戸惑いを感じているようですが、苛めるようなことはありません。

    オトナのマサムネが時折見せる無邪気な仕草を私も微笑ましく見ています。

    来月お逢いできるのを楽しみにしています。

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