ある闖入者

2011年05月17日 12:10

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船宿エリア
釣宿の店先にミイロが独り所在無げに佇んでいた。

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眼の前には船長さんの飼犬がいたが、ミイロはまったく意に介さない。


私は最初、ミイロが何故こんなところに居るのか分からなかった。
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そこへ若い船長さんが現れ、ミイロに一言二言話しかけると、やおらシャッターを開けた。


シャッターが開くと、ミイロはそそくさと場所を移した。そこへ申し合わせたように、仔猫も姿を現した。
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船長さんは、その二匹の側にやって来て腰を落とした。


船長さんが手にしているのは、キャットフードだった。
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待ちきれないとばかりに、ミイロが前脚を出した。食べ物に対して、こんな積極的な行動をとるミイロを見るのは久しぶりだ。


船長さんがくれるカリカリはミイロの好物なのだろう。
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ミイロは無言で船長さんに催促していたのだ。シャッターの中に仕舞われたキャットフードを‥‥。


ミイロは此処の暮らしにすっかり馴染み、誰に何をねだればいいのか、しっかり心得ているようだ。
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頭のいい元飼猫ミイロは、いつの間にか野良として生きる術を習得していた。
悲しいことだが‥‥。



ここにも元飼猫がいる。
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私の姿を認めたツバサは、甘えた声をあげながら私にすり寄ると、そのままその場へ横たわった。


ちなみに、この二匹の野良は人間に甘える術を知らない。
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シシマルの傷はカサブタを作り、ほぼ癒えている‥‥。そのうち被毛も生えてくるだろう。


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振り向くと、食器の側にミイロの姿はなく、仔猫独りが食事をしていた。


ミイロはというと、逞しい船長さんに抱きかかえられている。そのミイロの体は、いつもより小さく見えた。
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今やこのエリアの顔となりつつあるミイロは、釣宿の船長さんたちにも愛されている。


こんないい子が何故遺棄されなければならないのか‥‥、私には到底理解できない。
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ツバサと仔猫は船長さんの足元から離れようとしない。


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船長さんはその太い腕で仔猫を抱くと、慈しむように見つめはじめた。


仔猫は安心したように、船長さんの腕の中でおとなしくしている。
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私の目には、仔猫のその小さな体がいつにも増して頼りなく儚げに見えて仕方なかった。


ふと振りかえると、シシマルが知らぬ間に近づいていた。
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ミイロたちが食べ残したモノに心を引かれているようだが、用心深いシシマルが素直に近づいてくることはない。


そこで私は、シシマルの側に器を近づけた。
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ところがシシマルはその器に背を向けてしまった。


マサムネはお気に入りの場所で、如何にも無聊そうだ。
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クロベエも水上バイクの上で何をするでもなく、つくねんとしている。
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「お前たちの時間は、きっとゆっくりと流れているんだろうな‥‥」


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やって来たIさんを出迎えるツバサ‥‥。ほんの少しだけオトナの風情を漂わせ始めている。


船宿の外れに目を凝らし、何かを捜し求めるIさん。
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そのIさんの様子を、マサムネがじっと窺っている。


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何を期待しているのか、クロベエまでやって来た。


ツバサは数日前に、去勢手術をほどこされた。
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だからなのか‥‥、妙になまめかしい姿態を見せる。


Iさんがお腹を撫でると‥‥、
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ツバサは嬉々として喜んだ。


ここにも去勢手術を受けた野良がいる‥‥。
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トラブルメーカーのシロベエだ。


注意してみると、その手術の痕が残っているのがわかる。
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エリアの野良と見境なく諍いを起していたシロベエも、これで少しは穏やかになるだろうと、皆期待している。


メス猫に避妊手術をすれば、オス猫は去勢手術をしなくてもいいという人もいるが‥‥、
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他の猫と無用な争いを避けるためにも、病気の原因を一つ無くすためにも、施術するべきである。


シシマルがシロベエに威嚇の声をあげる。
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施術前なら自ら挑んでいたシロベエがおとなしく引さがり、Iさんに助けを求めた。図らずも去勢手術の有効性が実証された。


‥‥その時だった。1匹の野良がエサ場に姿を見せたのは‥‥。
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典型的なキジトラだ。


実は、先ほどIさんが捜し求めていたのは、この野良だった。
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私がこの野良に逢うのは今回が3度目になる。過去の写真を遡って調べると、初見は4月15日となっていた。
しかしIさんにとっては、去年からの顔見知りだ。



此処のリーダーらしく、マサムネがキジトラの正体を確かめようと、近づいてきた。
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食事中だから邪魔しないであげてと、Iさんがマサムネを制した。


マサムネは素直に引きさがったが、道路をはさんだこちら側から仔猫がキジトラをじっと見つめている。
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キジトラは食べるのに夢中で、仔猫の存在など気にする気配もない。


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“特攻隊長”のミイロは静観を決めこんでいた。‥‥この時はまだ。


仔猫は臆することなく、さらにキジトラへ近づいていった。
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キジトラに好奇の眼をむける仔猫の挙動は、明らかにいつもと違っている。
生き別れた眷族の中に、よく似たキジトラ柄の猫がいたのかもしれない‥‥。



食事を終えると、キジトラはゆっくりと立ち去っていった。
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そして次には、さっきミイロたちが食べ残したカリカリに迷わず口をつけた。よほど腹が減っているのだろう。


“浜の伊達男”がいつものように海辺の方から帰還してきた。
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気配を感じ、コジローがおもむろに振り返った。


コジローはそのまま表情を固くし、眼に警戒の灯を点した。
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コジローの視線はキジトラに注がれた。
このキジトラとコジローに面識があるのかどうか‥‥私は知らない。



コジローはキジトラから眼を逸らさず、ゆっくりと姿勢を低くする。
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コジローの眼に点った警戒の色が、みるみる濃くなっていく。


前回の記事に書いたように、クールなコジローは自ら危険を冒すようなことはしない。
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コジローはそのままの姿勢で、キジトラをただ凝視するだけだ。


キジトラはコジローを一顧だにしないで食事に専心している。
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しばらくの間コジローは微動だにせず、キジトラの食事風景を眺めていた。
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やがて腹を満たしたキジトラは、そろりそろりとした足取りでエリアがら離れていく。


意外なことに、コジローがキジトラの歩調に合わせてあとを追いはじめた。
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キジトラは後ろを振り返ることなく、悠然と歩を進める。


コジローは容疑者を尾行する刑事よろしく、キジトラとの距離を保ちながらあとを付けていく。
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コジローが突然立ち止まった。


そのコジローの視線を辿ると、ネットに腰を下ろしているキジトラの姿が見えた。
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やはり冷静を信条とするコジローだ‥‥。それ以上キジトラに近づくことはなかった。


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その時、そのコジローの後ろを見て私は驚いた。
ミイロがソコにいた‥‥!ミイロは私も気づかぬうちに、我々の後を付けてきていたのだ。



キジトラがおもむろに振り返った。
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その視線の先にいたのは、“特攻隊長”のミイロだ。


2匹の間には、まだ7メートルほどの隔たりがあった。
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ミイロはキジトラ見据えたまま、その場にうずくまった。


ミイロの接近を知り、にわかにそわそわし始めるキジトラ。
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結局コジローは、ただの傍観者、追跡者に終始した。

この後、私はミイロを抱きかかえてキジトラから引き離した。
腹の傷も癒えていないミイロを、こんな最前線に置いておく訳にはいかないからだ。






ブログをやっていて良かったと思うことが時折ある。
この日もそんなことを感じさせられる出来事があった‥‥。
船宿に見慣れないレジ袋が置かれてあり、その中には野良たちへのプレゼントが詰まっていた。
そして表には、黒いマジックペンで記された温かいメッセージがあった。

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翌朝ボランティアのSさんから、このプレゼントの送り主に私から謝意を伝えてほしい旨のメールが届いた。
だが私には心当たりがなかった‥‥。
3月にも2度、同じように野良たちへのプレゼントがあったとSさんから報告を受けたが、それは後で厚木のNさんだと判明した。
しかし今回のメッセージの筆跡は、以前貰ったNさんの置き手紙のそれと明らかに違っていたのだ。


「どなたか存じませんが、ありがとうございました」


【私信】
厚木のNさんへ。
野良たちへのプレゼントのお礼を、以前伺ったメールアドレスへお送りしたのですが、お手元に届いていますか?
また海岸でお逢いできるのを楽しみにしています。




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コメント

  1. ミポリン | URL | -

    ♂の去勢も必要です

    仏教には「不殺生」という言葉あり 発情期に他所に行き かかったら また子供が出来てしまいます 運良く拾われたらいいですが また可哀想な猫が増やす結果になりますよ と お坊さんから教えていただきました こういう話を嫌う方には 申し訳ないですが 
     ボランティアの友達にも「発情期になって メスを追いかけ回して 帰れなくなって 餌を見つける事が出来ず 餓死したり がりがり ぼろぼろになって帰ってくるとか 本当に悲惨ですよ」と現実も教えていただきました 猫は生後3ヶ月でも ♂がかかると妊娠するそうです
     また仏教をだしてごめんなさい 前世では 人間だったものが なんらかの悪事を働き 畜生界に落とされてるそうです 自分に深く関わる動物は前世で関わりのあった人間だと  
     世話をするには 本当に手間とお金がかかるのが 現実です かわいがるのとは違います 責任があります 
    本当に いつもいつもこのブログを読ませていただき 勉強になります 

      餌やりをして情をかわしてる猫達が 与えられて生をまっとう出来るように お手伝いをしてるんだを 私自身はそう思います いつかは皆 生をまっとうし行かなければ行けない所なのですから なるだけ笑顔で会いたいですよね ( 笑
     追伸最近 「ペットの声がきこえますか?」という本を読んでる影響かもしれません すみません!

  2. wabi | URL | -

    コメントありがとうございます

    ミポリンさんへ

    仏教の話は分かりませんが、去勢していないオス猫の行動は何度か目撃しています。
    その行動範囲は我々が考えているより広く、また移動速度も存外速く、そして発情を機に行方知れずになる野良もいます。
    最近ではカポネがそうです。
    ただカポネは長年海岸で暮らし、時折姿を消していますから、またひょっこり戻ってくるかもしれませんが。

    ミポリンさんがおっしゃるように、野良の世話はエサを与えるだけでなく、その命を守っていくという大きな責任があります。
    そして当然、命を守る活動に休みはなく、一日の空白も許されません。
    ですから各ボランティアさんに対しては“尊敬”の念しかありません。

    私も周りの人たちから様々なことを学びつづけていて、それらをブログを通じて紹介しているに過ぎません。
    また野良たちから学ぶことも少なくないですね。
    でもまだ野良たちの言っていることはまだ理解できませんが‥‥。(笑)

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