確執 その弐『野良の仁義』

2011年06月22日 08:00

コジローは水場に身を潜めたまま、一点を凝視している。
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そのコジローの視線の先にいたのは、シロベエだった。
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シロベエは空気を読めないばかりでなく、コジローの刺すような視線を浴びても何も感じないようだ。


コジローの眼には恨みとも憎悪ともとれる光が宿っている。
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2匹の間にどんな軋轢があったのか、私は具体的なことを知っているわけではないが、シロベエがコジローを威嚇する場面を何度か目撃している。


去勢手術を施術されたシロベエは以前に比べて穏やかになったのだが、今でも時折好戦的な態度にでることがある。
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但し、シロベエがそのことを自覚している様子は、まったく感じられない。これも“空気を読めない野良”と呼ばれる所以である。


そんなシロベエの自戒の無さも、コジローには耐え難いことなのかもしれない。
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むろん、そんなコジローの気持ちをこの“空気を読めない野良”が忖度することなどあり得ない。


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船宿へ近づいたシロベエを迎えたのはシシマルだった。去勢される前のシロベエはこのシシマルともよく諍いを起こしていた。


その頃は互角か、シロベエがやや優勢だったが、今はシシマルがその巨体にモノを言わせ元の威厳を取りもどしている。
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諍う声を聞きつけたミイロが駆けつけてきた。ミイロはこのエリアの“警備隊長”でもある。


シシマルがこの“警備隊長”に対して居丈高な態度にでることはない。このときもシシマルはミイロと眼を合わせようとはしなかった。
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その気まずい2匹の間に割った入ったのはツバサだった。


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諍いの当事者であるシロベエは素知らぬ顔で、呑気にアクビをしている。しつこいようだが‥‥、こういうトコロが“空気を読めない野良”と呼ばれる所以である。


そんなシロベエも、ツバサにとってはよく遊んでくれる良き兄貴なのだろう‥‥。
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ツバサはシロベエにそっと寄り添うと、厳しい眼でシシマルをねめつけた。



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シロベエは行き場を失ったように、しばし船宿前で悄然としていたが‥‥、


やおら腰を上がると足早に歩を進めはじめた。
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脚を引きずりながら歩き去るシロベエの後姿には哀感が漂っている。


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そんなシロベエにこれといった目的などあるはずもなく、寄る辺ない風で辺りをうろつくだけだった。


その様子をじっと見つめる母と息子。
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最近は目撃していないが、クロベエもシロベエに何度か謂われない因縁をつけらていた。
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でも今は対岸の火事‥‥、大きなアクビをする余裕があった。‥‥このときは、まだ。


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マサムネも水上バイクの上から高見の見物に徹している。


クロベエはもう一度アクビをすると‥‥、
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大きな伸びをした。


そして前方を見据えたクロベエは‥‥、
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ゆっくりと船宿の方へ歩きだした。


「クロベエ、何処へ行くんだ?今は船宿へ近づかないほうがいいぞ」
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私の心配したとおり、ミイロがクロベエを待ち受けていた。
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ところが、このあとのクロベエの行動もまた、私の理解を超えるものだった。


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クロベエが更にミイロに近づいたのだ。


こうして‥‥、反目し合う2匹が対峙した。
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今度はミイロがゆっくりとその間合いを詰めた。


これじゃ、まるで西部劇か黒澤映画の決闘シーンだ‥‥。私はつい独りごちた。
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クロベエとミイロは向き合ったまま微動だにしない。


緊迫した空気に耐えられなくなったのか、クロベエがついと視線をそらした。
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と、今度はミイロが視線をはずし、あらぬ方を見やった。


再び視線を合わせた2匹だが、どちらも動く気配がない。
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マサムネとコジロー兄弟もコトの成り行きを傍観している。


だがよく見ると、マサムネの関心は既にほかへ移っているようだ。
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周りの異変を知りたいときは、猫の動向に注意を払うといい。何故なら、彼らの五感は我々ニンゲンより遥かに優れているからだ。


こと視覚に限れば猫はかなりの近眼だが、その代わり動くモノに対しては鋭敏だ。
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マサムネの視界で動いていたのは、シロベエと突然現われたキジトラAだった。


キジトラAはこのエリアの野良たちと無用な衝突を避けるためなのか‥‥、
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足早に去っていった。


シロベエもそんなキジトラAの後を追うことはなかった。
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ほかの野良たちもキジトラAの後姿を静かに見送っている。


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彼らに代わって、私がキジトラAを追った。
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ほかのテリトリーで諍いを起こさないのは、野良の仁義と自らが生き長らえる術なのかもしれない。


そのとき、ふと足元を見た私は驚いた。ミイロとツバサが同じようにキジトラAを見つめていたからだ。
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ここは多くの野良が命を落としている国道の脇にある歩道‥‥。剣呑なこの場所へ近づくことは、最大の禁忌である。


私はすぐにミイロとツバサを従えて国道から離れた。
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だがミイロはまだキジトラAが気になるようだ。


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私が「ミイロ、もうアイツに構うな。船宿へ戻るぞ」と言っても、ミイロはその場を離れようとしない。


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キジトラAの出現は“警備隊長”のミイロにとって見過ごせないコトなのかもしれない。


ミイロが船宿を離れた隙に、クロベエは水上バイクの上へ戻っていた。
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『君子危うきに近寄らず』
クロベエ、お前にはこの諺を憶えていてほしい‥‥。



さて一方コジローはといえば‥‥。
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いつの間にか、独り漁港へ“帰って”いた。
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そして船宿にいたときとは打って変わった穏やかな面持ちで、茜色に染まった西の空を眺めていた。


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