5ヶ月ぶりの訪問

2012年04月22日 20:12

「海岸猫に会いに行こう‥‥」
私がようやく腹を決めて海岸へ赴いたのは、郷里から戻って半月以上が経った頃だった。

120415-01.jpg
その日の海岸は、あいにくと上空を灰色の雲に覆われ、吹きつける海風がこの時期にしては冷たい。


父の他界で帰郷する直前まで臥していた私にとって、海岸猫との対面は実に久しぶりのことだ。過去の写真データで確認したら、その期間は5ヶ月近くに及んでいた‥‥。


船宿エリアを訪れた私を最初に出迎えてくれたのは、今回も“釣宿の看板娘ミイロ”だった。
120415-f01.jpg
私の姿を認めたミイロは、親しげな鳴声をあげながら近づいてくると、私の足許にうずくまった。


久しぶりに見るミイロに変わった様子はない。どうやら5ヶ月間息災に過ごしていたようだ。
120415-f02.jpg
彼女の気性がそのまま表出した顔貌は、今やある種の風格さえ感じさせる。


何気に目を巡らせると、ぽつねんとうずくまっている海岸猫を発見した。
120415-f03.jpg
“浜の伊達男”“船宿のクールガイ”などの異名を持つコジローだ。


久しぶりに会った私のことなど眼中にないとばかりに、コジローは大きなアクビで応えた。
「まあ、5ヶ月も無沙汰したのだから当然だが‥‥」

120415-f04.jpg
そのコジローの視線を辿ると‥‥。


そこにはアイとシシマルの姿があった。どうやら2匹も私の姿を認めたようだ。
120415-f05.jpg
「アイちゃん」
私が名を呼ぶと、アイはおもむろに近づいてきた。



そして私の脚に体をすり付けはじめた。この行為は彼女のいつもの歓待方法だが‥‥。
120415-f06.jpg
この時、私の目頭はにわかに熱くなり、危うく落涙するところだった。
そりゃ感激するだろう‥‥野良猫からこんな歓迎を受けたら。
そして私は改めて思い知った。
“やっぱり、自分は猫によって生かされているんだなぁ”と。



さて一方シシマルは、というと‥‥。
120415-f07.jpg
私が側に近づいても泰然として、微動だにしない。さらに私に対して、刺すような視線を送ってくる。逞しい体躯とあいまって、エリアのボスの貫禄十分だ。
固まった頬の毛が気になったが、怪我ではなく、ただの汚れだとわかり一安心した。



やがてシシマルはその巨体をゆっくり起こすと、大きな伸びをした。
120415-f08.jpg
そして再びどっかと腰を下ろした。ひょっとしたら、これが彼なりの私への挨拶かもしれない。


後ろをふりむくと、ミイロがひっそりと佇んでいた。
120415-f09.jpg
その面差しは、さっきの厳しさが霧散し、なぜか憂いを含んでいる。


120415-f10.jpg
周囲を見回したが、他の海岸猫の姿は見当たらない。


エサの匂いに誘われて現れることもよくあるので、取り敢えず食事タイムにした。
120415-f11.jpg
ミイロはトレイに一瞥をくれただけで、シカトを決め込んでいる。口に合わないのか、満腹なのか‥‥、この態度も以前と同じだ。


しばらくするとシロベエが姿を現した。おそらく物陰からこちらの様子を窺っていたのだろう。
120415-f12.jpg
シシマルたちがいるからか、警戒して近づいてこないので、トレイを眼の前へ持っていってやった。


するとシロベエは、まるで毒見をするように慎重に口を付けた。
120415-f13.jpg
ミイロには改めてカニカマを与えた。カニカマは彼女の好物である。


行儀よく食事する海岸猫たち‥‥。
ただこの日は、訪れた時間が早かったせいか、皆あまり腹は減っていない様子だ。

120415-f14.jpg
ふり返ると、シロベエの姿がなかった。


トレイの中には猫缶がほとんど残っている。常にがっついていたシロベエには珍しいことだ。
120415-f15.jpg
コジローとアイも猫缶を残して姿を消してしまった。


どうやら2匹はシロベエを嫌って退散したようだ。
それでも執拗にコジローの後を追うシロベエ。

120415-f16.jpg
が、シロベエはコジローを見失ったようだ。


「オイオイ、そんな狭いトコは入れないだろう」と思わずつっこんでしまった。
120415-f17.jpg
ミイロはそんな騒ぎなど自分には無関係だとばかり、冷静な表情で傍観者に徹している。


シシマルは、というと‥‥。
120415-f18.jpg
やはり自分には関係ないとばかりに、平然と食後の毛繕いをはじめた。


しばらくすると、物陰からアイがひょっこり姿を現した。
120415-f19.jpg
諍いの側杖を食わないように避難していたようだ。


その場に残ったシシマルとミイロが、目顔で何かを語るように見つめ合う。
120415-f20.jpg
と、次の瞬間、何かを感じたのか2匹同時に同じ方向へふり返った。


そこにいたのは‥‥、植込みの中から周りの様子を窺っているシロベエだった。
120415-f21.jpg
シロベエは不自由な後ろ脚を引きずりながらエサ場へ近づいていく。


シシマルがそのシロベエの行動を注視している。
120415-f22.jpg
シロベエがシシマルの存在に気づき、小さな声を発した。


その声に呼応するように、シシマルがゆっくりと道路に進み出る。
そうして2匹の海岸猫は対峙した。

120415-f23.jpg
束の間そうしていたが、シロベエに敵意がないのを察知したらしく、シシマルはいきなり踵を返した。


その巨体を誇示するように、シシマルが私の眼の前を悠然と横切っていく。
120415-f24.jpg
続いて、アイがやや足早に後を追う。


そしてシシマルに体を寄せて甘える仕草を見せる。
その時だった‥‥!

120415-f25.jpg
何を思ったのか、その2匹の側にシロベエがやってきたのは。
「いったい、何を‥‥?」



と、シロベエはその場にいきなり体を横たえた。
120415-f26.jpg
猫がこうやって腹を見せるのは相手を信頼している証である。なぜなら無防備な腹を晒す行為は、その相手が攻撃してこないと確信してこそ出来ることだからだ。


そしてまた、「だから、遊んでよ~」という意味も含まれている。つまりシロベエはシシマルたちと仲良くしたいのだ。
120415-f27.jpg
しかしシシマルとアイはシロベエを見向きもせず、わざとらしく毛繕いをはじめた。どうやらシロベエの想いは、この2匹に毛ほども通じていないようだ。


肩を落とし去っていくシロベエの後ろ姿は、いかにも寂しげだ‥‥。
120415-f28.jpg
今や“トラブルメーカー”だの“空気の読めないヤツ”だのと呼ばれ、他の海岸猫たちから厭われているシロベエだが、このエサ場に現われた当初は幼い仲間に慕われ、よく遊び相手になっていたものだ。そんなシロベエが他の海岸猫と頻繁に悶着を起こすようになったのは、脚に障害を負ってからだ。


シロベエは2年前に、この場所へ遺棄された所謂“捨て猫”である。それゆえ、この白猫の生い立ちを知る者はいない。
120415-f29.jpg
ミイロはシロベエと目が合うと、ついと顔を背けた。さすがの“特攻隊長”もこの空気の読めない白猫は苦手なようだ。


釣客が戻り、釣宿の店先がにわかに賑わってきた。私はそれを機に、エサ場から立ち去ることにした。
120415-f30.jpg
その気配を察したのか、アイが再びすり寄ってきた。
「アイちゃん、また来るからね」
私は別れを惜しむように、アイの背をしばらく撫でていた。



そのまま帰路に就くつもりだったが、予定を変更することにした。
120415-f31.jpg
ようやく海岸へ来られたのだから、他の海岸猫にも会いたいと思ったのだ。



ブログランキングに参加中
気に入って頂けたら下のバナーをクリックしてください
にほんブログ村 猫ブログ 野良猫へ
いつも応援ありがとうございます

関連記事
スポンサーサイト


コメント

  1. ネコリラ | URL | SLJ/JtpM

    No title

    初めまして。
    そしてお帰りなさい。
    お互い猫さん達によって生かされてますね。
    久しぶりの更新、嬉しかったです。
    どうかお体ご自愛くださいね。

  2. ito | URL | -

    ミイロ

    ミイロ、顔つきが変わった様に感じます。
    猫関係、人間関係、元飼い猫のミイロにはストレスが多いのかもしれませんね。
    私が猫なら・・・くぁーっとあくびして、のびして、すりすりして、ごろごろして、それから、くっ付いて一緒に他の猫たちを観察します。
    wabiさんの側から離れませんよ(笑)

  3. hell'skitchencatlady | URL | -

    おかえりなさい

    wabiさん、元気になられました?
    私また一時帰国してまして、一昨日戻ってきました。
    もうあれから1年近くも経つんですねぇ~早い!
    そしてぺタ、有難う御座います。
    ぺた!をみた時、お!Wabiさん元気になったな、って嬉しくなりましたよ。
    次回はソックスたちかな?
    本来なら、今回の帰国ではソックスたちの方に行けたのに~残念!
    とにかく元気になってよかったです。

  4. きょう | URL | -

    こんにちは

    wabiさん、お久し振りです。
    またこうしてブログを読むことができて、
    また海岸猫たちに会うことができてとても嬉しく思っています。
    ミイロはちょっとふっくらしたように思いますが、気のせいでしょうか。
    また次回も楽しみにしてます^^

  5. みんこ | URL | -

    No title

    久しぶりに楽しませてもらいました。
    シロベエ、かまってやりたい・・・

  6. いちこ | URL | FB7mWt1U

    No title

    wabiさん、こんにちは。
    そして、おかえりなさい^-^
    またお会いできて嬉しいです!
    海岸猫さん達、みんな元気そうで良かったです。
    アイちゃんを撫でるwabiさんの手、優しく感じます。
    でもきっとアイちゃんから元気を貰ったんですよね^^

    他ブログへ移りましたが、これからも
    海岸猫さんたちに会いにきます。
    お体、大事にされてください。

  7. マコ | URL | -

    No title

    元気な猫さんたちを見て、嬉しくなりました。
    みんなwabiさんの事を待っていたんだな~と・・。
    胸キュンでした。
    どうぞお身体無理なさらずに・・・おすごしください

  8. mimi | URL | tHX44QXM

    No title

    wabiさん

    海岸猫さんブログ更新ありがとうございます。
    拝見できて、とても嬉しいです。
    ミイロ、シシマル、アイちゃん可愛いです。懐かしい。
    あ!シロベイも。。

    ご無理せずに、お大事にしてくださいね

  9. Kiryu | URL | T2RJUesU

    No title

    wabiさん、こんにちは。
    お帰りなさい。
    こうしてまた、wabiさんのブログで海岸猫の姿を見られてうれしいです。
    僕もまた会いに行きたいなあ。

  10. きなこ | URL | -

    No title

    初めまして。あし@からきました。みんな野良野良してて最高!猫本来の可愛さです。みんな元気でね。

  11. さぶちゃん大魔王 | URL | -

    No title

    初めてコメント寄せます。私は鶏飼っています。娘が猫飼っています。そんな家族です。千葉の房総半島、館山に、沖ノ島という捨て猫エリアになっているところがあります。私は、そこに援助している、猫グッズ博物館のシンパです。これから、湘南の様子も見させてください。それでは、

  12. ぐーやま | URL | -

    No title

    こんにちは、はじめまして

    決して楽園ではない猫たちの生活を、温かな目線で見守っていらっしゃるのが、とても伝わりました
    すべて、とは言わないまでも、多くの人がwabiさんのような優しい目で外暮らしの猫たちを見てくださるといいなと、心から思います
    そして湘南の猫たちが、今日も1日を満足して過ごせますように

  13. にゃんこmama | URL | lI21MTgA

    お久しぶりです

    wabiさん、お帰りなさい。
    海岸にゃんこ達wabiさんを待っていたんですね!!

    少しづつゆっくりwabiさんのペースで行きましょう(^-^)

  14. wabi | URL | -

    ネコリラさんへ

    こちらこそはじめまして。
    そして、よろしくお願いします。

    お気遣い、ありがとうございます。
    今のような状況だからでしょう、私は“猫に生かされて”いると実感しています。
    猫には不思議な力があって、人間の心に癒しを与えてくれます。

  15. wabi | URL | -

    itoさんへ

    ミイロは今やこのエリアの“顔”的存在。
    また、ボスであるシシマルが父なら、ミイロは母ともいえます。
    さらに釣宿の看板娘としての役目もありますし‥‥色々心労が重なっているのでしょう。

    ところでitoさんの予測、当たってます。
    その様子は、近々ブログで紹介しますね。

  16. wabi | URL | -

    hell'skitchencatladyさんへ

    やっと帰って参りました。

    そうですか、帰国していたのですか‥‥残念でした。
    この1年、私にとっては激動の1年でしたね‥‥。
    それが原因で、これまでで最悪の症状も経験しました。
    その時から比べると、今は穏やかな日を過ごしています。

    ソックスは相変わらず愛くるしい猫でした。
    本当に癒されますね~。

  17. wabi | URL | -

    きょうさんへ

    きょうさん、ご無沙汰しています。

    私自身も顔馴染みの海岸猫に会えて嬉しかったです。
    ミイロは相変わらず人懐こく、釣宿の看板娘の職務を全うしているようです。
    確かにミイロは以前より太っていました。
    でもほかにもミイロ同様太っている海岸猫がいます。
    おそらく、冬の寒さが厳しい海岸なので、この時期に脂肪を蓄えるのでしょう。

  18. wabi | URL | -

    みんこさんへ

    ご無沙汰しています。

    エリアの海岸猫たちから厭われているシロベエですが、彼はただ遊びたいだけです。
    でもその遊びの途中でシロベエだけが“本気”になるので、嫌がられている模様。
    とにかく“しつこい”のですよ、シロベエは。

  19. wabi | URL | -

    いちこさんへ

    ご無沙汰しています。

    やっと戻ってくることが出来ました。
    でもいつ何時、また実家に呼び戻されるか分かりませんが‥‥。

    私自身、エサ場を訪れる前は期待と不安がない混ぜになった複雑な心境でした。
    でも海岸猫たちが、私を以前と同じように受け入れてくれ、感無量になりました。

    いちこさんの新しブログ拝見しました。
    迷ったのですが、猫が載っている『(日々徒然)』にリンクさせて頂きました。

  20. wabi | URL | -

    マコさんへ

    お久しぶりです。

    私も変わらない海岸猫たちに会えて、嬉しくなりましたよ。
    唐突な訪問だったためか、素直に近寄って来ない海岸猫もいましたが、それはそれで愛しいものです。
    私は猫と接していないと生きていけない、とまで考えるようになりました。
    このまま猫たちに癒されて、寛解に近づければイイなと思っています。

  21. wabi | URL | -

    mimiさんへ

    ご無沙汰しています。

    こちらこそ、ご訪問ありがとうございました。
    去年から比べると、体調的には落ち着いています。
    でもまだ、頻繁に海岸へ行ける状態ではありません。
    しばらくは、ゆっくりのんびりと過ごすつもりでいます。

    また海岸でお会いできるのを楽しみにしています。

  22. wabi | URL | -

    Kiryuさんへ

    去年は私の事情でお会いできなくて申し訳ありませんでした。

    今は個展開催中でお忙しいとお察しします。
    個展のご成功をお祈りいたします。
    そして、またお会いできるのを楽しみにしています。

  23. wabi | URL | -

    きなこさんへ

    こちらこそ、初めまして。

    海岸猫にもそれぞれ違う生い立ちがあります。
    海岸で生まれた生粋の野良、遺棄された捨猫、そして迷い猫、と。
    でも生い立ちは違っても、海岸猫になった原因はニンゲンどもの無責任な行為。
    本当に憤りを感じます。

  24. wabi | URL | -

    さぶちゃん大魔王さんへ

    初めまして。
    コメントありがとうございました。

    館山は、東京に住んでいた若い頃に一度海水浴に行ったことがあります。

    何処にでもいるんですね、無責任なニンゲンどもは。
    小さいとはいえ命ある者を遺棄するということに、心の痛痒を感じない生き物、それがニンゲンです。
    怒りとともに虚しさを感じます。
    どうか、罪のない小さな命を守ってあげてください。

  25. wabi | URL | -

    ぐーやまさんへ

    こちらこそ、初めまして。
    そして、コメントありがとうございました。

    世話をするボランティアさんがいても、海岸猫の暮らしは決して平穏なものではありません。
    いつ危難に遭ってもおかしくない剣呑な状況です。
    私が海岸猫に係わってからも、辛く悲しい出来事が何度も起こりました。
    私も祈っています。海岸猫が平穏に暮らせるように、と。

  26. wabi | URL | -

    にゃんこmamaさんへ

    ご無沙汰しています。

    お気遣い、ありがとうございます。
    猫は一般的に薄情だといわれていますが、間違っています。
    彼らは受けた恩情や愛情をしっかり憶えていて、それにちゃんと応えてくれますから。
    ニンゲンのほうがよっぽど薄情だと思います。
    私は猫と接している時が、今一番癒されます。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)