5ヶ月ぶりの訪問 その弐

2012年05月01日 00:00

船宿エリアを後にした私は、他のエサ場を目指して海沿いの道を東へ向かった。
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私の心中には海岸猫と会える期待が膨らんでいたが、また同時に懸念もあった。
「みんな以前と変わらず、元気にしているのだろうか‥‥」



そんな心情をおもんぱかったように、私がエサ場へ足を踏み入れた途端、すぐさま1匹の海岸猫が姿を現した。
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そして私の眼の前で、地面にごろりと転がった。


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こ、このボディランゲ-ジは‥‥、シロベエと同じではないか。


と、いうことは5ヵ月ぶりに訪れた私を、ちゃんと憶えていてくれたんだ。なおかつ「あなたを信頼していますよ」とまで言ってくれているのか‥‥。
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ところが、その海岸猫はすっくと立ちあがると、私に背を向けて足早に離れていく。


「今のは、ひょっとしてフェイク‥‥?」
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この海岸猫の名は“ ビク ”。いつも何かに怯えてビクビクしているから、私が勝手に付けた。ちなみに、このエリアを担当しているボランティアさんやほかのブロガーさんは違う呼び名を使っている。


「ビク、久しぶりだな‥‥。元気でいたか?」
私は出来るだけ優しく語りかけた。

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しかしビクは、私を一顧だにしないで眼の前を素通りしていく。


それから、再び地面に体を横たえた。
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今度はすぐに体を起こした。それでも私をほうをチラリとも見ない。その余りににべ無いビクの態度に少々焦ってきた‥‥


と、次の瞬間、ビクはクルリと体の向きを変えると‥‥、
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早足でこちらへ歩いてきた。カメラのピントが追えない速さで。


そして、「ミャーミャー」と鳴きながら私の脚に体をすり寄せた。
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「こいつ、勿体ぶりやがって。素直に寄ってくればいいのに」そう言いながらも、私は思った。

先ほどの一連の行動は、長い間顔を見せなかった私への抗議かもしれない、と。
もしそうなら‥‥、何てささやかで、いじらしい抗いであることか‥‥。



エサ場に行くとほかの海岸猫も姿を現した。
海岸猫は押しなべて寡黙だが、この茶トラはよく喋る。この時も、間断なく「ニャア、ニャア」と何かを訴えつづけていた。

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もう1匹のメスのキジブチは尻尾を立てて側まで来たが、この行動だけでは彼女の真情をうかがい知ることは出来ない。


後ろをふり向くと、ビクがエサ場を前にして座り込んでいる。
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臆病猫のビクは、同じエリアの猫にさえ警戒心を容易に解かない。


こういう場合も耳をそばだて、周囲に目を光らせる。
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そして微かな物音や気配にも過敏に反応し、緊張した面持ちを見せるのだ。


そのビクが正面を見据えたまま固まった。
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先ほどの茶トラが、ビクに向かって近づいてきたのだ。


茶トラが歩みを停め、二匹は対峙した。
私の記憶では、このエリアでの居住期間はビクのほうが長いはず‥‥。
つまり茶トラの先輩にあたる。

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「さあ、どうするビク?」
お前は先輩としての威厳を保てるのか‥‥。



「あら‥‥」
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ビクはゆっくりとその場を離れていく。慌てた様子を見せないのは、先輩としての矜持のなせる業か‥‥?


茶トラはビクを横目に、平然として歩を進めはじめた。
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ビクは、と見ると、廃材の上に退避している。


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ビクの視線の先には、茶トラの後ろ姿があった。


茶トラが植込みの中に姿を消すまで、寸秒も眼を離さない。
こういう所為が“臆病猫”と呼ばれる所以である。

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この海岸猫は今年で8歳になるはずだ。
野良猫の寿命は一般的に飼猫より短いといわれている。
なので、これからも臆病なままでいい。無用な諍いで怪我をしてもすぐには対応出来ないのだから。



私はビクに別れを告げて、更にほかのエサ場を目指した。
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エリアに入った私の目に、いきなり海岸猫の姿が映った。
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それはソックスだった。


ソックスは防砂林の奥に気になる何かがあるらしく、私の来訪に気づいてないかのようだ。
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いったいソックスは何に意識を向けているのだろう?
私は姿勢を低くし、ソックスの視線の先を探ってみたが、それらしい対象物を見つけることは出来なかった。



やがて、体を反転させたソックスだが‥‥、
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特徴的なそのどんぐり眼には、まだ警戒の色が残っていた。


しばらくして、落ち着きを取り戻したのか、ソックスは初めて私へ顔を向けた。
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そして、小さな鳴声をあげながら、私の脚に体をすり寄せてきた。
「ソックス‥‥、お前に会えて嬉しいよ」
私は心の安らぎを覚え、温かい気持ちになった。



ふと目を上げると、いつの間に現われたのか、ソックスと同じキジ白がいた。
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母猫のタビだ。実に久しぶりに見る母娘のツーショットである。
親子海岸猫を何組か知っているが、これほど仲睦まじい親子を、私はまだ見ていない。



防砂林を出ようとする私の後をソックスが追ってくる。
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ソックスが鳥居の下で待っていると‥‥、


母のタビもじきにやって来て、2匹は身を寄せ合った。
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このエリアを受け持つA夫妻の愛護を受けて、母娘の栄養状態は良好だ。


去年の春に、元のエサ場があった公園で公共工事がはじまって以来、母娘は防砂林へ追い遣られてしまった。
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その工事は今も進行中で、この時も時折重機が立てる大きな音に、母娘は反応を見せる。


2匹の見つめる先は、その工事現場だ。
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竣工すれば公園が復旧されるというが、それはまだまだ先のこと。それにそんなことは海岸猫が知る由もないし。


だから自分たちの境遇を激変させた“工事”を見る時、いかにも忌々しげに顔をしかめるのだろう。
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何かを思い立ったように近づいて来たソックスは、私の脚に軽く体をすり寄せた。
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そして、しばし防砂林の奥の様子を窺っていたが‥‥、


そのまま防砂林の中へ入っていった。
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ねぐらへ戻る時間が迫ってきたのかもしれない。


こうして、私の5ヶ月ぶりのエサ場巡りは終わった。
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顔馴染みの海岸猫の元気な様子を確認できたのだから、意義ある巡回だったのだろう‥‥。



* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


ご報告

故郷から帰宅し、初めてのエサ場訪問を無難に終えることが出来て、正直安堵しました。
最近の体調は比較的安定していますが、未だ睡眠障害に改善が見られず、日中は睡魔との戦いが続いています。
そのせいもあって、物事に対しての集中力が低下し、以前から比べるとブログの編集に何倍もの時間を費やすようになりました。
なので、しばらくは間を置いた更新になりますが、どうか寛容な心でお付き合いください。
更に誤字脱字、変換ミスなど多々あると思いますが、事情お察しのうえご容赦のほどを‥‥。




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コメント

  1. マコ | URL | -

    No title

    おはようございます。

    久しぶりの、海岸猫さんの名前でホッと・・・。
    ビクさんも・・・、
    そしてソックスさん・・・母親のタビさんと一緒で、
    元気そうで、嬉しかったです。
    それぞれに、一生懸命生きているんだな~って、思い
    ました。
    猫さん達の姿を見せていただき、
    ありがとうございました。
    心が、温かくなりました。



  2. はな | URL | -

    お久しぶりです!

    wabiさんも海岸猫達も元気そうでホッとしました。
    やっぱりwabiさんのプログは一味違いますね。
    これからも楽しみにしています♪
    お体くれぐれもお大事になさって下さい。

  3. hell'skitchencatlady | URL | -

    うちは3匹がタビーだからびく、ソックス、おかぁちゃん、愛着あります。

  4. まめはなのクー | URL | -

    こんにちは。まめはなのクーです。

     立派なトラネコさんたちですね。『百万回生きた猫』に出てくるトラネコさんみたいだ…。彼らは、しっかりと自分の猫生を生きているのですね。
     静かな彼らの様子…でも、しっかりと目は思いを語っているように思えます。

     人とすべての生き物が共生できる社会を築いて行きたいと思いますね。

     猫の人間も生きにくい社会です。しっかりと自分を見つめながら日々を生きて行きたいと思う今日この頃です。お体、大事になさってくださいね。

  5. ねこやしき | URL | ezOaKyPo

    おひさしぶりです

    wabiさんのこと、心配しつつ待っておりました。
    5か月ぶりのエサ場巡り、きっといろんな思いがwabiさんの心を駆け巡ったことでしょう。
    wabiさん独特の視点でとらえたブログをまた拝見できるのは本当に嬉しいことです。
    更新のことは思い煩わず、どうかお体を第一にしていってくださいね。
    応援しています。

  6. するる | URL | gmuBEe9w

    http://sururushirasu.blog100.fc2.com/

    wabiさん

    こんにちは。

    風ちゃんの迷子記事、転載させていただきます。
    電話番号は、市外局番から載せた方が
    情報が入りやすいと思います。
    茅ケ崎以外から情報が入るかもしれませんから。

    一日も早く無事風ちゃんが保護できるよう
    祈っています。

    wabiさんもどうぞご無理をなさいませんように。

  7. いちこ | URL | -

    こんにちは、wabiさん。
    皆、元気そうで良かったですね。
    変わらずに居てくれて、
    wabiさんもどんなに嬉しかった事でしょう。
    ソックスもタビもビクも、一回り大きくなったような・・・?

    お体、どうぞお大事になさってくださいね。
    時々でも更新があると嬉しいです。
    ご無理されませんよう・・

  8. ぽきまむ | URL | -

    風ちゃん無事保護よっかったですね
    ほっとなさいましたね
    wabiさんが海岸猫に癒される日々がずっとつづきますように

  9. するる | URL | gmuBEe9w

    wabiさん

    風ちゃん無事保護本当によかったです。
    ご心配で眠れなかったのでは
    ないでしょうか。
    どうぞゆっくり休んでくださいね。
    お疲れさまでした。

  10. ゆうたん@ | URL | 4CvheNDY

    おひさしぶりです!

    wabiさん、こんにちは!
    久し振りにwabiさんの記事を拝見しました。
    1日に更新されていたんですね、訪問が遅くなってしまい申し訳ありません。

    記事のアップ、ありがとうございました。
    ビクとソックスとタビ。
    彼らの姿を見て嬉しかったとともに、wabiさんに擦り寄ってきたくだりと
    写真を拝見した時はジンときました。

    彼らも、変わらず、元気でいますように。
    またちょくちょく寄らせて頂きます。

  11. wabi | URL | -

    hell'skitchencatladyさんへ

    この3匹、以前の出現率はあまり高くなかったのですが、今回は全員の顔を見ることが出来ました。
    母猫のタビは側までは来るのですが、未だ体を触れさせてくれません。

    ビクとソックス、その人懐こさの質は違いますが、どちらも可愛いことに違いはありません。

  12. wabi | URL | -

    まめはなのクーさんへ

    残念ながら『百万回生きた猫』は未読です。
    機会があれば読んでみます。

    海岸猫の生い立ちは様々ですが、共通しているのは、自分の境遇を受け止め、逞しく生きていることです。
    そして彼らは多くは人との関わりを求めています。
    人と一緒に暮らしているのが、猫の自然な姿だと思います。

    最近、愛猫がが失踪してしまいました。
    そうなって、改めて思い知ったのです‥‥、その子が自分にとってどれほど大切な存在であったかを。

    猫を含めた動物たちは、人間に保護されないと、生きていけないなどと説く人がいますが、それは見当違いで不遜な考えだと、私は思っています。
    逆ではないかと‥‥、彼らがいるから我々も生きていけるのだと、そう思うのです。

  13. wabi | URL | -

    ねこやしきさんへ

    ご心配をお掛けし、申し訳ありませんでした。

    ブログでも報告しましたが、今は比較的落ち着いています。
    ところが、睡眠障害は以前より酷くなり、昼間いきなり睡魔に襲われ倒れるように眠ることも珍しくありません。
    でも気鬱に襲われるよりは、遥かに楽です。

    猫たちに癒されながら、ゆっくりと寛解に向かっていければ、と思っています。

  14. wabi | URL | -

    いちこさんへ

    この日は、顔馴染みの海岸猫たちが姿を現してくれて、大いに癒されました。
    海岸猫たちの以前と変わらぬ反応に接し、もう少しで落涙するところでした。

    海岸猫の中には、寒い冬をしのぐために自ら太る者もいますが、ビク、タビ、ソックスは単に肥満気味のようです。(笑)
    それでもソックスは一時よりは痩せました。

    お気遣い、ありがとうございます。
    しばらくは、無理せずのんびりと更新していくつもりです。
    私としては、週一くらいのペースで更新出来ればいいな、と思っています。

  15. wabi | URL | -

    ぽきまむさんへ

    風のことでは、ご心配をお掛けしました。

    最初は、ハーネス型のリードを付けたままなので、すぐに見つかるだろうと高をくくっていました。
    なので、目撃情報がないまま日にちが経っていくと、徐々に不安が増していきました。
    それから、市役所、保健所、警察署、保護センターと、届け出られる機関には全て連絡をし、每日ビラをポスティングしながら住宅街を捜し回りました。
    幸いビラを見た人からの電話で発見、保護出来ましたが、あまりの情報のなさに、一時は諦めかけていました。
    ですから、風を胸に抱いた時は本当に安堵しました。

  16. wabi | URL | -

    するるさんへ

    お陰様で、風を無事保護できました。

    それでなくても眠れない日々を過ごしていましたが、風の失踪以来、さらに睡眠時間は浅く短くなりました。
    ですから、夜明け前から真夜中まで、一日数回、町内を捜索していました。
    しかし、情報のなさに、日毎不安が増していき、一時は諦めかけたほどです。

    『絶対に会える』と信じていれば、いつかは現実となります。

  17. wabi | URL | -

    ゆうたん@さんへ

    ゆうたん@さん、こちらこそご無沙汰していました。

    海岸へ行って撮影しても、倦怠感といきなり襲ってくる睡魔に悩まされ、記事の編集が出来ずにいました。
    今の症状はしばらくつづくと思われますので、ご訪問は“ちょくちょく”ではなく“時々”で結構ですよ。(笑)

    海岸猫の変わらない様子に、私自身も安堵と同時に言いようのない感動を受けました。
    猫に接している時は、日頃の嫌なことも忘れ、心が穏やかになります。
    やはり、私は猫がいないと生きていけないようです。(笑)

    事後報告になりましたが、ゆうたん@さんの新しいブログ『陽の光 街の灯り 猫の瞳』をリンクさせて頂きました。
    過去記事も拝見しました。素敵な写真がいっぱいで、楽しみがひとつ増えた思いです。

  18. wabi | URL | -

    マコさんへ

    私の手落ちでコメント返しが遅くなり申し訳ありませんでした。

    久しぶりの対面にも関わらず、海岸猫たちは、私を以前同様に暖かく迎えてくれました。
    人同士だとお互いに気を遣って、却って疲れていたかもしれません。

    期せずして、タビとソックス母娘のツーショットも撮れましたし、私としてもこの日のエサ場巡りには満足しています。

    しばらくは間隔を開けての更新になりますが、どうかご了承ください。

  19. wabi | URL | -

    はなさんへ

    マコさん同様、私の手落ちでコメント返しが遅くなり申し訳ありませんでした。

    お陰様で、今回は穏やかな精神状態が続いています。
    ただ、睡眠障害だけは以前より酷くなってしまい、昼間は睡魔との闘いです。
    そのため、注意力が散漫になったり、物忘れが酷くなっています。
    だから、コメント返しを忘れるなんてミスを犯してしまったのでしょう。

    今後はこのような事のないよう気をつけます。

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