異分子

2012年11月02日 17:00

湘南海岸、早朝‥‥。
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シシマルエリア
エリアの入口で最初の海岸猫を発見。私は、朝日を浴びてのんびりと寛いでいるその海岸猫へ背後からそっと近づいていった。

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すると、海岸猫は私の気配を感じて慌てて振り返った。
“浜の伊達男”ことコジローである。コジローは一瞬険しい眼差しを向けたが、私だと分かるとすぐに安堵の表情を見せた。



私の来訪をどこかで見ていたのだろう、ミイロが足早に近づいてきた。
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この愛想の良さは元飼い猫の習い性だろうが、迎えられる側は悪い気はしない。


そこへコジローも尻尾を立ててやってきた。この場合、立てた尻尾は歓待の意味を表している。
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生粋の野良であるコジローからこのような迎え方をされると、やはり嬉しいものだ。


対照的な出自を持つミイロとコジローだが、不思議とこの2匹は仲がいい。
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体裁にこだわるニンゲンと違い、猫は氏素性で相手を差別する暗愚な生き物ではない。


そういう意味で猫とニンゲン、いったいどちらが生物として高等なのか、ときどき分からなくなる。
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ミイロの背後に新たな海岸猫が姿を現した。
しかしコジローやミイロのようにすぐに近づいてはこず、ちょこなんと腰を下ろし、こちらの様子を窺っている。



カメラのズーム倍率を上げて見ると、特徴的なハチワレ模様が確認できる。
新参者のユキムラだ。

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私の挙動から、ミイロもユキムラの存在に気づいたようで、その様子をじっと見つめている。


コジローはユキムラの出現に、たちまち警戒心を露わにして身構えた。
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ややあって、ユキムラがおもむろに歩を進め始めた。ミイロとコジローを見据えたまま‥‥。


2匹に向かうと思いきや、ユキムラは中間地点にいた私に近づくと、いきなり頭突きを食らわせてきた。
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それも思わず私の身体がのけぞるくらいの当たりである。これほどの頭突きを味わうのはカポネ以来だ。この野良の膂力の強さを改めて思い知る。


エリアの中心であるエサ場へ近づくと、ここの頭領であるシシマルがその巨体を悠然と横たえていた。
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この海岸猫もその巨体に見合った力を持っているが、性格はいたって温厚で、ほかの野良からも慕われている。


シシマルはやおら身を起こすと、大きな体躯を沈めて悠然と伸びをした。
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そして領地を検分する領主のように、エサ場付近をゆっくりと見回した。


シシマルの背後にはいつの間に近づいたのか、ミイロが緊張した面持ちで控えていた。
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眼は正面を見据えているが、耳は後ろに反らされ、後方への警戒も緩めていない。


シシマルが私の脚に身体を擦り寄せてきた。以前は簡単に体を触らせなかったシシマルが、こんな親しげな行為をするようになったのはこの夏頃からである。
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力任せのユキムラの挨拶とは違い、シシマルの当たりはあくまでも穏やかで優しさがこもっている。


ユキムラは、先程から道路の真ん中にあるマンホールの蓋の上に体を横たえている。
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ここはかつて隻眼の猫マサムネが好んで身を置いたところで、このエリアの野良たちにとってはそれなりの意味を持つ場所だと思われるのだが。


そんなところへ新参の身で平然と居座るユキムラ。そうとうに図太い神経を持っている。
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まるで臣下を睥睨する君主のように、ユキムラは周りをゆっくりと見回した。


厚顔なこの海岸猫は、エリアの平穏を少なからず脅かしている。
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この新参猫に力で対抗できるのは唯一、シシマルだけだ。


さすがに“特攻隊長”の異名を持つ気丈なミイロも、ただ遠目に見つめるだけだ。
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野良のルールを学んだミイロは、以前のように無闇に相手へ突進して行くこともなくなった。そろそろ“特攻隊長”の名を返上する頃合いかもしれない。


コジローはミイロよりさらに後方からそっとユキムラの様子を窺っている。
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伊達男の座右の銘は『君子危うきに近寄らず』だと推察される。


と、何を思ったのか、ユキムラはやおら立ち上がると肩を怒らせて歩きだした。
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そしてシシマルに近づくと、低く威嚇の声を発した。


シシマルに視線を注いだまま、ゆっくりと腰を下ろすユキムラ。
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シシマルは敢えてそんなユキムラを無視するように顔を背ける。


ユキムラは眼光鋭く、シシマルを睨めつける。その視線をシシマルは当然感じているはずだ。
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ユキムラのこのふてぶてしく高圧的な態度は、ほかの猫を怯えさせ辟易とさせていると思われる。


穏健なシシマルは無益な諍いを避けるためか、ユキムラからそっと距離をとった。
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この海岸猫、年齢は定かでないが、風格からしておそらく人でいうところの不惑の歳は超えていると思われる。大人の対応からしてもそれが窺える。


さっきからそんな2匹の駆け引きを傍観しているミイロとコジロー。
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特にコジローは、ことの成り行きに注目しているようだ。


今年になってこのエリアにいきなり姿を現したこの猫の出自を知る者は誰一人いない。
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ただ分かっているのは、ユキムラのせいで、このエサ場にぴりぴりとした緊張感が漂うようになったことだ。


ゆきママさんの訪問が、その張りつめた空気をいっとき解きほぐした。
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ゆきママさんは、たびたびボランティアのSさんに代わって、ここの野良たちの世話をするためにエサ場を訪れる。


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伊達男も空腹には勝てないと見えて、猫缶に舌鼓を打つ。


ミイロは相変わらずここで与えられる食事には関心を示さない。
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そこでミイロの別腹であるカニカマを与えた。しかしその好物にさえ、ミイロは見向きもしなかった


試しにコジローに与えてみると、以前は匂いを嗅ぐだけで口にしなかったがはずだが‥‥。
どうやら人と同じように、時が経てば猫の嗜好も変わるようだ。

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ミイロはけっきょく最後まで何も食べず、ほかの海岸猫たちの食事風景を、ただ見ているだけだった。


振り向くとすでにコジローの姿はなく、ユキムラがカニカマを食べていた。
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猫缶を食べるのを中断してまで。


おおかたコジローは、ユキムラに追いやられ、カニカマを横取りされたのだろう。
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食べ物のために争うのは、きっと伊達男の美学に反するのだ。


そこで伊達男に代わって、ユキムラからカニカマを取り返してやった。
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豪胆なユキムラは少しも機嫌を損ねることなく、残りの猫缶を食べることに集中した。


そのとき、エサ場から数十メートルほど離れた道路を1匹の猫が横切った。
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シャムミックスのアイ、この愛すべき野良は私が帰省しているときに、いきなり後脚が動かなくなり、歩行困難に陥ったと聞いている。


Sさんに保護され、動物病院に10日入院し、その後Sさん宅で数日過ごしてやっと歩けるようになったそうだ。
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今後も朝と夕に薬を投与する必要があるのだが、以前より警戒心が強くなったアイはなかなかエサ場に寄り付かなくなった。


なかんずく何かと絡んでくるユキムラをアイは忌避し、この猫の姿を認めるとけっして近づいてこない。
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かといって、野良猫であるユキムラをエサ場から締め出すわけにもいかず、関係者は苦慮している。


『郷に入れば郷に従え』とユキムラを諭しても無駄なこと。
人の物差しをそのまま野良猫に当て嵌めることもまた、暗愚な行為である。

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それに異分子だと見るや平然と差別し迫害するニンゲンが、いったい彼らに何を言えるというのか‥‥。



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コメント

  1. ミュウ | URL | -

    みんないろんな事情を抱えてここに集まってきた子達。

    なんとか打ち解けて仲良くしてくれるといいですね。(o゜▽゜)人(゜▽゜o)

  2. wabi | URL | -

    ミュウさんへ

    期せずして同じエリアに棲むことになった猫たちですから、
    気の合う者がいれば気の合わない者もいる、これは人間社会と同じですね。
    ただ人間社会と違い、野良猫の場合は仲間はずれになると最悪命にかかわる事態もありますから
    気を揉みます。

    これから寒い季節を迎えますから、私としては猫団子を作るくらい仲良くしてもらいたいです。

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