家族

2013年01月07日 13:30

チャゲがいなくなった湘南海岸‥‥。早朝。
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まず最初に姿を現したのは、母猫のランだった。
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ランは朝日を浴びながら穏やかな面持ちで私を迎えてくれた。


息子チャゲとの別れを、ランはどう思っているのだろう?
そして‥‥。

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いつも一緒いて、仲良く遊んでいたアスカは、兄弟の不在を受け容れたのだろうか?


物陰から所在無げに、そっと母を見遣るアスカ。
母に遊んでもらおうとでも思っているのか、アスカはそうやってしばらくランの様子を窺っていた。

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しかし、母にその意思が無いのを察したようで、アスカは寂しげにランに背を向けた。


するとアスカは、地面に落ちていた雑草を相手に独りで遊びに興じはじめた。
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誤解を与えないためにいっておくが、草の反対側を私が持っているわけではない。
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アスカは、地面に捨ておかれた草に自らじゃれついているのだ。


その雑草を、いったい何に見立てているのだろう‥‥?
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まるでアスカが、独りの寂しさを紛らすために、動かぬ草と無理から戯れているように、私には見えた。
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事情を知らなければ、無邪気に遊ぶ仔猫の姿に目を細めるところだが‥‥。


独り遊ぶアスカの胸中を忖度するうちに、私は徐々に遣る瀬無くなってくる。
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アスカ自身もさすがに虚しくなってきたのだろう。


遊ぶのを唐突に止めると‥‥、
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植込みの中へとぼとぼと歩き去っていった。


「アスカ‥‥、兄弟をなくしたお前の気持ち、私にも少し分かるよ」
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この世でたった一人の弟を亡くしている私には、アスカの寂しさが想像出来た。でも私の場合は、幼い時分に2歳違いの弟とよく遊んだので、アスカよりはまだ良いほうだ。


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私の姿を認めた一羽のカラスが、あわよくばおこぼれにあずかろうと、さっきから防砂ネット上でそわそわしている。


そのカラスに促されるように、私はランとアスカのために猫缶を開けた。
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母と息子の2匹だけの食事風景。


その食事風景に僅かな寂寥感を感じるのは、私の思いすごしなのか。
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ただ、アスカの食べ方がいつもより長閑やかに感じた‥‥。


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ランはあっさりとトレイから離れた。アスカもそれまで、母のトレイに横槍を入れることなく、おとなしく猫缶を食べていた。
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今朝は鳴りを潜めていたが、アスカの食欲もじきに元へ戻るだろう。


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ちなみに、弟が急逝した直後の私は、五感のすべてが鈍麻になってしまった。なかんずく、味覚は完全に麻痺し、何を食べても味を感じることがなかった。


チャゲの場合は死んだわけではないが、アスカにとっての喪失感はそれとおっつかっつだと思われる。
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そしてその喪失感は、同じ家族の情でしか埋めることが出来ないだろう‥‥。


一般的に猫は情が薄いなどと言われているが、それは大きな誤解である。
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ニンゲンに対する愛情の深いことは、ベンチ猫のサブや首輪をしたまま遺棄されたミイロを見ていてよく分かった。


一緒に暮らしている元海岸猫などは、私が落ち込んでいると、そっと近づいてきて、手や腕を優しくグルーミングしてくれる。だから私は、この子がいないと生きていけない、とまで思ってしまう。
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だから、親子や兄弟同士の情愛も、猫とニンゲンはほぼ比肩していると、私は勝手に決めつけている。


ランやアスカが、海岸を去ったチャゲにどんな感慨を抱いているのか‥‥?
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ニンゲンと同等の感情を持っている猫相手でも、そこまでの機微を読むことは私には出来なかった。


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ランとアスカに別れを告げた私は、ランのもう一匹の子供であるユイが棲むエリアへ足を運んだ。
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ユイは人馴れしていないので、名を呼んでも素直に姿を見せることはない。


しばらく待っていると、下草の中からユイが姿を現した。
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ユイは慎重にゆっくりと、そして用心深く朝日に身を晒していく。


私はそんな警戒心の強いユイを誘いだすために、猫缶を入れたトレイを見やすい場所に置いている。
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食べ物の存在を確認してもなお、ユイは安易に近づこうとしない。


周囲に私しかいないのを視認したユイが、やおら行動を開始した。
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それでも決して急がず、緩やかな足取りで、トレイに近づいていくユイ。


なおもユイは警戒を解かず、いつでも遁走出来る態勢で猫缶に口を付けた。
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ユイはリンと共に防砂林に住まう人と暮らしている。なので、その人たちと一緒にいるときは、これほど警戒はしない。


おそらく、護ってくれる人が側にいることと、自分のテリトリーであることが安心を生むのだろう。
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ユイにとっては、その人たちが主であり、家族なのだから‥‥。


私の背後で何かの気配がしたのだろう、ユイは食事を中断してその方向へ振り返った。
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周りに脅威を感じなくなったのか、ユイはようやくトレイが置かれている鉄骨の台座によじ登った。


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そうして、残りの猫缶を一心に食べはじめた‥‥。


猫缶を食べ終わったユイは、しばらくその場に佇んでいた。
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ややあって、姿を現した同じ下草の中へと、ユイは入っていく。


この草むらの奥は人目に付かず、安息を得ることが出来るのだろう。
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トレイの隅に残された猫缶に、ユイの性格を垣間見たような気がした。


離散してしまったラン親子が今後どうなっていくのか、私は感興を持って見守っていきたい。
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何といっても、今の私の最大の関心事が“家族”であるから‥‥。



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