故郷の猫 その六『慈愛』

2013年02月12日 15:00

山門前エリア
前日一度も姿を見せなかった長毛のキジ白が、オッドアイの仔猫の側にうずくまっていた。あたかも子供を見守る親猫のごとく。

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先日一緒にいた母親らしき猫は、その後見かけない。猫風邪に罹ったあの白猫とは、てっきり親子関係だと思ったのだが‥‥。


2匹の側に、やはり前日姿を見せなかったサバトラが端然と佇んでいた。
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警戒心を含んだ面持ちで、胡乱な視線を私に投げかけてくる。


生垣にはオッドアイの子のきょうだいであろう、眼ぢからの強い仔猫が身を潜めていた。
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視線を戻すと、オッドアイの仔猫の側に黒猫がいた。
前日、私を警戒して最後まで近づいてこなかった、あの黒猫だ。

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そこへ、サバトラが尻尾を立てて擦り寄ってきた。
このサバトラ、妙な猫だ。こうやって友好的な仕草を見せるかと思えば、先日のように若い猫から食べ物を平然と横取りする傲岸さを見せる。



今回私が用意したのは、またたびが入ったスナックだ。
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野良たちは匂いを頼りに、小さなスナックを探している。用心深い黒猫も、またたびの引力には逆らえなかったようだ。


何処かに潜んで今までの様子を窺っていたのだろう、若いキジ白が尻尾を立てて足早にやってきた。
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ところが、私が次々と放るスナックを求めて右往左往する仲間を、キジ白はただ眺めるだけだ。


オッドアイの仔猫は最初こそ転がるスナックに興味を示したが、その後はただじっとしている。
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そしてカメラを構えている私に、不思議なものでも見るような虚ろな目をむける。
瞬膜に覆われ、まともに開かない左目が痛々しい。



いつの間にかハチワレも姿を見せ、小さなスナックを懸命に探している。
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スナックを与え始めて5分と経っていないのに、野良が次々に集まってくる。


サバトラと長毛キジ白が仲睦まじくスナックを探している。
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世知に長けたサバトラだから、あわよくば長毛キジ白が見つけたスナックを横取りしようと企んでいるのかもしれない。


オッドアイの仔猫は、目の前にスナックがあるのに、全く関心を示さない。
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猫風邪のせいで、嗅覚が鈍麻しているのだろう。


またまた、新たな野良が現れた。
前日、オッドアイの仔猫を抱き、寒さから護っていた茶シロだ。

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さっそくまたたび入りのスナックを見つけたようだ。


茶シロは、金縛りに遭ったように動きを止めた。
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と、次の瞬間、茶シロはいきなり地面に身体を擦りつけた。
猫によってまたたびへの反応は様々だが、この野良はかなり敏感なようだ。



このエリアの存在を知るきっかけを私に与えてくれた茶シロが、慎重な足取りでやってきた。
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そして長毛キジ白の傍らへしずしずと近づくと、何やら目顔で話しかけるような素振りを見せる。まるで上司に遅刻した言い訳をしてる平社員のように。


カリカリを与え始めると、野良たちがこぞって参道に出てきた。
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猫がこれだけ一堂に揃うと、なかなか壮観だ。


前日初見の若い白猫までもが、匂いに誘われて姿を現した。
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いつもは他の野良にエサを譲ってばかりいた若いキジ白も、今回はエサにありついたようだ。
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そのキジ白の前を、先程の若い白猫が地面の匂いを嗅ぎながら横切っていいく。
目の前にカリカリがあるのに、近眼の猫には認識出来ないようだ。



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オッドアイの仔猫は、相変わらず身動ぎせずにうずくまっている。


食事の中身はともかく、このエリアの野良の食料事情は悪くなさそうだ。
少なくとも量的には‥‥。

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飢えている様子は全く感じられないし、食べ物のせいで諍いを起こすこともない。


若い白猫が突然地面に身体を横たえた。どうやら、またたび入りのスナックに酔ったようだ。
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地面に置かれたカリカリも粗方食べ尽くされ、所在無げにしている野良の姿が目立ってきた。
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若いキジ白の様子を見ていたが、けっきょく群れの隅で遠慮がちにウロウロしていただけだった。


そしてオッドアイの仔猫は、ついに私が与えたキャットフードを食べることはなかった。
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今も目の前にまたたび入りのスナックがあるのに、目もくれず無視している。


そのとき、背後で扉の開く音がした。私は慌てて振り向いた。
すると、しもた屋風の建物から老婦人が現れ、中華麺の入ったトレイとカリカリを無造作に置いた。

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「こんにちは。此処にはずいぶん多くの猫がいますね。何匹くらいいるんですか?」
私は笑顔を作り、老婦人に当たり障りのないことを訊いた。



「エサを食べに通りを渡って来る子もいるから、20匹ほどになるねぇ」と老婦人。
この日までに、私自身は14匹確認していたから、未だ姿を見せない野良がいることになる。

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20匹となると大所帯だ。そのことを老婦人に言うと「近所の人みんなで大事にしているから」そう言い残して老婦人は建物の中へ姿を消した。


“みんなで大事にしている”。
その言葉を聞いたとき、一瞬違和感を覚えたが、それは私の予期していた答でもあった。

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此処の支援者たちが行なっている野良猫救済の方法は、明らかに間違っている。


間違っているが、それは正しい遣り方を知らないだけで、野良たちへの慈愛自体は、いわゆる“地域猫”として護られている野良たちに向けられているそれと、大きな差異はないと思う。
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それから、猫嫌いのニンゲンの酷薄な虐待が横行する地域に比べてどちらが平穏なのか‥‥、野良たちに訊くまでもない。


〈次回へつづく〉



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コメント

  1. きなこっち | URL | -

    あるブログで、繁華街の裏通りで子猫がねずみ同様に虐待され殺されている
    所がある・・・と記されていました。
    涙が止まらず、言葉を失いました。

    人間って・・・
    そんなに偉いんでしょうか?
    生きる為に生まれて来た小さな命、その生きることさえ許さない人間・・・

    それでも、野良猫は人間を恨む事無く、今極寒の冬を懸命に乗り越えようと
    みんな精一杯頑張っています。

    どうか、どうか野良猫と人間が共存出来る世の中になる事を心から祈ります。

  2. 茶チャママ | URL | Wb6Olee.

    人間の傲慢さに

    うんざりしています
    去勢・避妊は人間の傲慢さだと言う人も
    傲慢と言う言葉もその人によって違うのでしょうが
    共存していくにはたくさんお課題が有ると思います
    オッドアイちゃん心配でる
    これからの時季また倉庫には隔離すり子達が
    入るのでしょうか・・・

  3. wabi | URL | -

    きなこっちさんへ

    最近のニュースでも、広島や滋賀で殺された猫の死骸が発見されたと報道されていますね。
    そして、2月19日付けの記事に載せたように、ファッションのために多くの動物が
    無惨に殺されています。

    本当に何者なのでしょう?
    地球を汚し、同じ生き物を平気で殺すニンゲンって。

    恐らくニンゲンが共存を望んでも、他の生き物が拒絶するでしょう。
    私自身は人間性善説を信じていません。
    何が正しくて、何が間違っているか、しっかり学ぶべきです。
    今のままの人類なんて、1日でも早く滅亡しほうが良いとまで思っています。

  4. wabi | URL | -

    茶チャママさんへ

    ニンゲン自身は生き物の最上位に君臨していると思っているかもしれませんが、
    やってきたことを顧みれば、最低最悪の生物でしょう。
    我欲のために殺し合い、己の都合で他の生き物を殺戮してきたのですから。

    地球とそこに棲む生物にとって、傲慢なニンゲンなんて外敵に過ぎません。
    体を蝕む癌と同じです。

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