不妊手術 その弐『熟考』

2013年04月14日 11:00

ラン捕獲失敗の2日後‥‥早朝。
海岸へむかう途中、私は顔見知りの茶トラと遭遇した。

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2012年のゴールデンウィーク中に失踪した、元海岸猫の愛猫“風”を捜索していたときに、同じこの場所で出会ったのだ。


その茶トラにカリカリをふるまうと、黒猫が何処からともなく現れ、しばらく物欲しげに様子を窺っていた。が、突然、茶トラのトレイに横槍をいれた。
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黒猫に押し切られそうな茶トラだったが‥‥、


プライオリティーは自分にあるという自恃のせいか、何とか踏ん張った。
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首輪をしているからには、この黒猫は近隣に家を持つ飼い猫だろう。
「お前は家があるんだから、ほかの猫のエサなんて横取りしないで帰ってエサをもらいな」



私の言ったことを理解したのか、それとも強めの語調に気圧されたのか、黒猫は急におとなしくなった。
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邪魔者がいなくなったので、茶トラはのんびりと食事をつづけた。


そしてカリカリを完食すると、満足そうに伸びをした。
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立ち去ろうとした茶トラが、おもむろに振り返った。


その視線の先にいたのは、恨めしそうな顔をしたさっきの黒猫だった。
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胡乱げな黒猫の目付きに比べ、茶トラの表情はあくまでも穏やかだ。猫も性格が顔貌に表れる。先ほどの黒猫の横車にも怒らなかったことでも、この野良(おそらく)の“猫柄”が窺える。


そんな茶トラにほだされた私は、再びカリカリを与えた。
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と、そこへ黒猫が駆け寄ってきて、今度は強引にトレイを奪った。


茶トラはさっきとは打って変わって、すんなり引き下がると、そばで静観している。すでに腹が満たされているから敢えて譲ったのか
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が、そうではなかった。
茶トラは頭突きをするように、強引にトレイに割り込んだ。



茶トラと黒猫は、互いに一歩も引かないで競り合っている。
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この状況で諍いが起こらないのは、もしかしてこの2匹、本来は仲がいいのかもしれない。


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やがて黒猫はついとトレイから顔を上げると、ゆっくりとその場から離れた。


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そして、そのまま目の前の戸建ての庭へ入っていった。茶トラは独り残された。


飼い猫には帰る家があるが、「お前に帰るところはあるのか?」
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この場所は交通量の多い道路のすぐ脇だ。ここでは今まで何匹もの猫が車に轢かれて命を落としている。
縁があったら、また会おう。それまで事故などに遭わず元気でいろよ」


茶トラに別れを告げた私は、今度は寄り道せず一路海岸へ向かった。
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私が与えた猫缶を食べるアスカ。だが、いつもの健啖ぶりは何処へやら消え失せ、仕方なく口を付けているといった風だ。
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それに何かをしきりと気にかけ、たびたび食事を中断する。


側では、ゆきママさんと玄ママさんが、にこやかな表情で何かを見つめている。
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ゆきママさんは、協力したランの捕獲が失敗に終わったのを気にして、たまたまこの日海岸を訪れていた。


玄ママさんと玄ちゃんは、日課の散歩中に偶然通りかかったのだ。
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柴犬の玄ちゃんもやはり、その何かに向かって体を前のめりにして、興奮気味だ。




この場にいる全員が注目している“何か”とは‥‥、




防砂林に置かれたキャリーバッグである。
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正確にいうと、そのキャリーバッグに収まったランを見ているのだ。
私はこの日、ランを捕獲しようなどと微塵も考えていなかった。少なくとも失敗から一週間は捕獲を控えるつもりだったのだから。


では何故、捕獲に成功したのか。
ただいくつかの幸運が重なっただけ、というしかない。何の気なしに、折り畳み式のキャリーバッグを持参していたこと‥‥。
そして、成功の最大の要因と思われるのは、先述したとおり、私に捕獲の企図がまったく無かったことだ。
ホントに世の中はままならない。‥‥実に皮肉だ。



やはり母のことが気になるのだろう、アスカは食事をやめてキャリーバッグに近づいた。
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恐らくアスカは、ランの身に何が起こったのか、理解していないだろう。


どうして母に触れられないのか、どうして母は四角い物体から出てこないのか、と。
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アスカは母に寄り添おうとして、鳴き声を上げながら懸命にバッグの隙間を探している。


ランは観念したのか、抗うことなく、時折鳴き声を発するだけだ。
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その声音も、悲嘆に暮れる息子を諭すような穏やかさだ。


しかしアスカは納得しない。爪を立て、ネットを破ろうとする。
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母を慕うアスカの鳴き声とネットを引っ掻く音に、私の決心が一瞬揺らぎそうになる。


しばらくすると、アスカも落ち着きを取り戻し、キャリーバッグの脇に座り込んだ。
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アスカは母と己の運命を悟ったように、悲哀のこもった面持ちで、押し黙っている。





ランの捕獲に成功したら、アスカも捕獲し去勢手術を受けさせようと思っていた。
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だがこの日は、捕獲するつもりがなかったので、キャリーバッグを一つしか持ってきていない。


通常、メスに避妊手術を施すと、病院に一泊する。そうなると、幼いアスカは独りぼっちで夜を迎えることになる。
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いつも寄り添うようにしている母子を、一晩とはいえ無理やり引き離すことに、私はためらいを感じはじめていた。「やはり2匹一緒のほうがいいのか?」


その思いと、“二兎を追う”ことへの戒めが、私の胸中で激しくせめぎ合った。

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動物病院の診療受付開始までは、まだ時間の余裕があった。そこで私は、熟考の末、ある試みを実行することにした。
その試みとは‥‥。



〈次回へつづく〉



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