生きること・死ぬこと その四

2013年12月05日 18:00

母が闘病の末に他界し、さらにそれを追うようにサクラが逝ったことで、私にとって“死”はひどく身近なものとなった。
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生きることと死ぬことの境界線は曖昧模糊となり、どちらを選んでも大差ないのでは、とまで思うようになっていた。


ところが一方で、命あるものをいっそう愛しく思うようにもなっていた。
この世にかけがえのない唯一無二の命に畏敬すら感じ始めていたのだ。

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だから玄関の軒先に棲みついたヤモリの親子にも、ある種の感慨を受けていた。


同じ屋根の下に命を持つ者が暮らしていることで、凝り固まった心がほぐされていく感覚を覚えるのだ。
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しかし残念なことに、私の抱えている喪失感はヤモリ親子の存在で補填されるほどには小さくなかった。


そんな時だった‥‥。


1匹のキジトラが実家の庭に突如現れたのは。
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「それにしても‥‥」と私は独りごちた。


母が独居生活を始めて以来、私は実家に長期にわたって滞在しているが、これまでこの敷地内において猫の姿など、ただの一度も見たことがなかった。なのに何故、いまこのタイミングで私の前に出現したのか。
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「なあ君は家があるのか、それとも寄る辺ない身の上なのか?」


私がいくら問いかけても頑なに黙しているので、試しに少量のエサを与えてみた。
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その食べ方は悠揚迫らぬといった風で、飢えてる様子は感じられない。


栄養状態も良さそうな、健康体のオス猫である。
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だからといって、このキジトラを飼い猫だと決めつけつのはやはりまだ早く、もうしばらく様子を見る必要がある。


それにつけてもやはり気になるのは、どうしてこのタイミングで現れたか、ということである。
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玄関内につながれ散歩以外めったに外へ出ることはなかったとはいえ、猫が敵視する犬のサクラがいなくなったからか、と思った。が、それだとサクラがいなくなって1ヵ月以上も経って現れた説明がつかない。


私はふと思った。
このキジトラ、飼い主とともに最近引っ越してきたのかもしれない、と。



実家のある地区はいわゆる新興住宅地で、今も水田を宅地に替え、戸建てや集合住宅が増えつづけている。
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28年前に道路延伸の煽りを食い、立ち退きを余儀なくされた実家がこの地に移ってきたさいは田圃の中にただ一軒建っているだけだった。それが今や、少しの空き地を残して住居が建ち並んでいる。


そしてここ数年は土地活用を謳う建設会社が建てる賃貸住宅が雨後の筍のように増えた。
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その結果、かつてはこのあたりの風景の主役だった田圃は激減し、


今では住宅に四囲された脇役へと転落してしまった。
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これにより住民の流動化も一気に進んだと思われる。


この賃貸住宅、道なりに行くと150メートル程の距離にあるが、直線距離だと2、30メートル程で、実家の庭から建物が見通せる。
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これなら、よその庭も自由に行き来できる猫にとって、隣と言っても過言ではない。


さらに、実家から離れること約300メートル、やはり水田を潰して、今夏に分譲が終了したばかりの建売住宅の一画がある。
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壮健なオス猫にとって300メートルの距離もまた、テリトリーの領域だろう。


果たしてこのキジトラ、私が推察したように最近この地区に移ってきた新参者なのだろうか。
そこで再び訊いてみた。「どうなの実際のところ、君は最近引っ越してきたの?」

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しかしそんな私の問いかけに、この地方の方言で「カリカリをご馳走になったくらいで心を許すとでも思とんのか、このおっさんは」と言ってる風情でキジトラはそっぽを向いた。


食器の中を確かめると、カリカリを残してあった。やはり腹はそれほど空いていなかったようだ。
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植込みが邪魔して私は容易に近づけないと分かっているのだろう、キジトラは私から2メートル足らずの距離で目を閉じた。


この子もまた、私の悲嘆を癒やしにやって来たのだろうか?
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今回母の死を境に私の目の前に次つぎと現れた猫たちと同じように、ある種の使命を帯びて‥‥。


しかしそれにしてはこのキジトラ、これまでの猫と違って冷淡な態度である。
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もしかすると、私が想像もできない別の使命を帯びて、私の許へやって来たのかもしれない。


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しばらくして植込みを覗いてみたら、キジトラの姿はすでに無かった。
「家へ帰ったのだろうか?」



翌朝‥‥。
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玄関先に食事の用意をしてキジトラの来訪を待った。
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飼い猫にしろ野良猫にしろ、エサは貰っているだろうから、私のもてなしに応じるかどうか分からなかったが。


しばらく待っていたら、私の視界を何かが音も立てずに横ぎった。
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慌てて構えたカメラのモニターに見覚えのある模様が映しだされた。
「キジトラだ、またやって来たんだ」



キジトラは玄関前に佇み、カメラを構える私の挙動を険しい眼で窺っている。
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ややあって、私に敵意がないことが分かったらしく、キジトラはゆっくりと食器に近づいていった。


それでもすぐには口を付けず、周囲の様子を注意深く見回している。
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そして私との距離を再確認するためか、見開いた眼でふり返った。


やがて、警戒を緩めたらしく、キジトラはゆっくりと食事を始めた。
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このキジトラの登場は、私が近い将来下さなければならない、ある決断に少なからず影響を与えるかもしれない‥‥。私はこれといった根拠もないまま、何となくそう思った。



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再録
『血まみれの毛皮』


日本では今、ファー(毛皮)が流行している、という。

ファーは上着のフードや襟や袖口、そして手袋、帽子、ブーツ、バッグ、アクセサリー、ケータイストラップと、実に様々なものに使われる。
そして、デパート、スーパー、専門店はもちろんのこと、今や100円ショップでも売られている。

ところで、これらの製品を作るために、多くの動物が生きたまま皮を剥がされている事実を、あなたは知っていますか?


「ここに、その事実を伝える映像がある」
ただし、かなりショッキングな映像なので、相応の覚悟をして観るように。
ちなみに私は、この映像を観たとき、あまりの衝撃に嗚咽と吐き気がしばらくとまらなかった。
そして‥‥、自分がニンゲンであることを心底嫌悪した。



最近では、フェイクファー(人工毛皮)より安価というだけでリアルファーが作られるそうだ。
それがため、アジアでは犬猫だけでも毎年200万匹が殺されている。

しかも、その毛皮のほとんどが日本へ輸出されるという。

あなたはこの事実を知っても、まだファー(毛皮)を身に付けますか?


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『血まみれの毛皮Part2』


今や死語となった感は否めないが、『鬼畜』という言葉がある。
仏教用語の『餓鬼・畜生』の略語だ。

『餓鬼』とは餓鬼道に墜ちた強欲な死者のことである。
『畜生』とは本能のままに生きていて仏の教えを得ることが出来ないニンゲン以外の生き物のこと。


ともあれ、鬼畜とは欲深く酷薄な生き物を指す、最大級の蔑称である。
(太平洋戦争中は敵国であるアメリカ、イギリスを『鬼畜米英』と呼んで蔑んでいた)

アジアでは犬猫も例外ではなく捕獲、飼育し、生きたまま皮を剥がしている。
そうやって作られた毛皮はほかの動物の名前に変えられ、その多くが日本に輸出されている。


以下の映像に写っているのはニンゲンと犬と猫だが、果たして鬼畜と呼ぶに相応しいのはどの生き物だろう?



誰が観ても、答は明らかだ。

防寒に毛皮が不可欠だった時代ならいざ知らず、金儲けのためにほかの動物を虐殺してその毛皮を剥いでいるニンゲン、そして虚栄心を満足させるために動物の死骸である毛皮を身に付けているニンゲンって‥‥、もはや鬼畜以下ではないのか

毛皮製品を買う行為は間接的にせよ、動物を殺すことに加担している。
いつまでも知らないでは済まされないだろう。


詳しい実情を知りたい方は下記のサイトへ。
あなたに出来ることもきっとあるはず。

地球生物会議ALIVE
JAVA
ヘルプアニマルズ
アニマルライツセンター


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コメント

  1. imagica | URL | -

    wabiさん、こんばんは

    お留守中、遡ってコジローやマサムネ、シロベエの話を読んでおりました。戻ってきてくださって嬉しいです。私の実家も、子供のころは裏に用水が流れ、台風のおりは、大雨で井戸は吹き井戸になり、落ちた栗の実を拾って遊んでいたものが、用水は暗渠に、工場が水汲み上げて井戸はかれ水道使用になり、栗の木は切り倒され、つまらん、俄か住宅地になり果てました。当時は犬も放し飼いで、お陰で飼いネコは屋根でよく昼寝しておりました。そんな昭和40年代前半までが、無性に懐かしいです。

  2. ゆうたん | URL | 4CvheNDY

    お久しぶりです

    wabiさん、お久しぶりです。
    ゆっくりでも復活されているようで、良かったです。
    住宅街や街が再開発されるとそこに居ついていた猫がいなくなってしまい
    工事現場が現れるたびに気持ちが凹みます。
    現れたキジトラさんとwabiさんは今後どのような関係を築いていくのか・・・。

    毛皮・・・何も知らない頃は「かわいい」だけでファー付きのコートなどを
    買っていました。以前のように毛皮は高級品ではなく、価格も落ち
    それゆえに効率的に入手するために人間はあまりにもむごいことを
    罪無き動物に強いている・・・。
    それを知った時から、購入するファーはすべてフェイクファーになりました。
    人間の今の技術であれば寒さを凌ぐための本物と見分けがつかないほどの
    ファーを作ることができます。リアルファーは必要ありません!!!

    もっとこの事実をたくさんの人に知ってもらい、
    考えてもらいたいと思います。

  3. おこちゃんちゃん | URL | -

    私も毛皮の付いたものは、買わなくなりましたよ!

    ウサギアレルギーもあるから尚更です…

    5月にきた、4才のソリは、お腹の上で、寝てくれて、前足で、モミモミしてくれるまでになりました。
    ケージ飼育さるていたのだと、思います。

    抱っこや甘えたり、おもちゃでの遊びかたが、わからなかったようです。
    今は、くっ付いてきます!
    (*^_^*)

    wabiさんとのまたまた、ニャンニャンとの出会いどんな展開になりますかね?

  4. 6256ー3 | URL | K04oVQZQ

    はじめましてwabiさん。
    この場をお借りしてで申し訳ございません。
    「ペットに関する話」のブログ記事を書いている6256ー3です。
    今日は、相互リンクのお願いでコメントさせていただきました。
    ご訪問させていただき、是非、相互リンクしてもらえればと思いコメントいたしました。
    wabiさんのブログは、こちらのブログにリンクさせていただきましたのでご確認お願いします。

    私のブログは、
    「ペットに関する話」
    URL⇒http://stepmonrin5.blog119.fc2.com/ ←ブログURL
    になります。

    宜しければで結構ですので、ご検討よろしくお願いします。

  5. wabi | URL | -

    imagicaさんへ

    街の中心部にはマンションが建ち並び、新たなマンションも建設中です。
    30年前には想像も出来なかったことです。
    その当時は土地信仰が強く、市民はマンションなど空中を買うようなものだ、と揶揄していたものです。
    おそらく主な購買層である若い世代の意識が変わったのでしょう。
    それにつれて郷里の風景も様変わりしてしまいました。
    さいわい地下水が豊富なので多くの用水路は健在ですが、水田は次つぎと住宅地へとその姿を変え、
    実家の周りはすっかり様相が変わりし、以前は気にもしなかった近隣への気遣いで神経を使います。
    夏に捕虫網を持って走り回る子供の姿もまったく見なくなりました。というより外で遊ぶ子供はほとんどいません。
    そういう変化が私の眼には寂しく映ります。

  6. wabi | URL | -

    ゆうたんさんへ

    こちらこそご無沙汰しています。
    なかなか訪問できなくて申し訳なく思っています。

    私自身は精神的に復調している実感はないのですが、
    それでも前向きに考えるようには努めています。

    突然現れたキジトラ、この子が今の私の心ににどんな影響を与えるのか、
    私自身にもまだ分かりません。
    でも私の心に大きな楔を打ち込んでいることを実感しています。

    私が毛皮製作の実態を知ったのは今年の初めです。
    副産物だと思っていた毛皮がこのような非道な方法で作られていることに
    憤りを通り越して悲しみを覚えました。
    ニンゲンって本当に残酷で身勝手な生き物だと痛感し、気持ちは一気に塞ぎました。
    しかしこのことを知ってしまったからには看過できないと思い、しつこくブログで訴えることにし、
    冬を迎えて以前の記事を再録した次第です。
    出来だけ多くの人が毛皮産業の実態を知り、意識を変えてくれることを望んでいます。

  7. wabi | URL | -

    おこちゃんちゃんさんへ

    幸い私は毛皮製品を持っていませんでしたが、
    紹介している映像を観ている途中から涙が止まりませんでした。
    そして目を逸らしてはいけないと己を叱咤し、なんとか最後まで観ました。
    酷く落ち込みましたが、この事実を多くの人に知ってもらいたいと思い、記事にした次第です。
    今回も冬の間は毎回掲載するつもりです。

    遊び方を知らない猫って、それまでの境遇を想像すると不憫になりますね。
    これからはいっぱいいっぱい遊んであげてください。

    そういえば記事にしたキジトラ、猫じゃらしで遊びに誘ったのに、まったく無反応でした。
    この子も遊び方を知らないようです。

  8. wabi | URL | -

    6256ー3さんへ

    こちらこそはじめまして。
    コメントありがとうございました。

    さて相互リンクご依頼の件ですが、申し訳ありませんが今現在相互リンクは受け付けていません。
    当ブログにリンクしている各ブログは私自身が何度か訪れて内容を確認してからリンクを張っています。
    ですからこれから6256ー3さんのブログを拝見して検討したいと思います。

    不遜だと謗りを受けるのは覚悟していますが、無条件に相互リンクを受け付けると後々支障が生じる可能性があるのでどうかご理解ください。

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