10ヵ月ぶりの訪問 その参

2014年06月05日 22:00

ランと10ヵ月ぶりの再会を果たした2日後の夕刻、私は再び海岸へ赴いた。

本心をいえば、ボランティアの人に会える早朝に海岸を訪れたかったのだが、私の体調は簡単にそれを許してくれない。

ちなみに、どのエリアを最初に訪れるかを決定するのは、家を出る直前か海岸へ向かう途上が常なのだが、この日は違っていた。

前回の海岸訪問中に、私は既に次回訪れるエリアを決めていたのだ。


それは、リンとランが生まれ、昨夏防砂林に住まう人の小屋が放火の災禍に見舞われたエリアである。


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エリアがある防砂林の奥へ足を踏み入れた私は、海岸猫の名を連呼した。

すると‥‥、

防砂林の奥に小さな影が現れたかと思うと、その影は一直線で私のほうへ近づいてきた。





それはランの姉妹であるリンだった。
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10ヵ月ぶりに見る、紛うことなき海岸猫リンの姿だ。


リンはしゃがんだ私の脚に自分の体を擦りつけてきた。あたかも10ヵ月の空白を埋めるように、何度も何度も‥‥。
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「リン、元気にしていたか。そして私のことを忘れずにいてくれたのか‥‥」
私の胸の中に、何だか分からない温かいモノが込みあげてきた。



“猫は情が薄い” という伝え話が、如何にいい加減で根拠がないと分かってもらえただろう。
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興奮気味に鳴き声を上げながらまとわり付くリンを、私は左手で掴まえた。


「リン、よく顔を見せてくれ」そう言って、リンの顔を多少強引にこちらへ向けた。
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ランよりも更に気丈なリン、これ以上強引に扱うと、例え信頼しているニンゲンであっても、容赦のない猫パンチが飛んでくるから匙加減が難しい。


現在のリンの食生活状況を私はまだ把握していないので、取り敢えず食事を与えることにした。
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時刻は16時過ぎ、リンの食べっぷりからして、午後の食事はまだもらっていないようだ。


久しぶりに会ったリンだが、私には健康状態も栄養状態も良好に見える。
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ということは、リンもまた、ボランティアの人の手厚い世話を受けていると思われる。


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結局リンは、トレイに盛った猫缶とカリカリをほぼ完食した。


「ところでリン、このエリアには何匹の海岸猫がいるんだ?」
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昨夏、私が帰省する直前には、リンが2012年9月に産んだ黒猫と茶トラがいた。


茶トラは撮影出来なかったが、黒猫(♀)は一度だけ撮影する機会があった。
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昨年の6月時点で黒猫は生後9ヵ月。しかし既に子供を出産した形跡があった。


この黒猫は、当ブログの里親募集の記事を見た葉山のSさんの仲介で、里親さんに貰われていったキジ白とキジトラの兄弟にあたる。

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ちなみに、リンが育児放棄したこのキジ白とキジトラは、陸(リク)と空(ソラ)と名付けられ、里親さんの許で幸せに暮らしている。


さらにこのエリアには、2012年5月にランが産んだ3匹の子のうち、母ランの意思か本人の意思か分からないが、ただ独りテント小屋に残ったユイ(♀)がいた。
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同じエリアに棲んでいるおばであるリンには、邪険にされていた様子のユイ。幸薄い印象の子だった。


実を言うと、昨年の6月には、リンも子供を産んだ形跡がみられた。
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猫が出産する仔猫の数は、3~5匹がもっとも多い、とされている。ちなみにリンの場合、2012年の春も2013年の秋も4匹の仔猫を産んだ。


そこで2013年6月にも、リンが4匹の仔猫を産んだとして‥‥。
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リンの子の黒猫が産んだ仔猫を少なめの3匹に想定すると、仔猫だけで7匹、それに成猫を加えた場合、このエリアには一時期少なとも11匹以上の海岸猫がいたことになる。


しかし、このエリアで私が目撃した海岸猫は、先日のキジ白とリンだけ‥‥。
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いや、もうひとり、火事場跡に野ざらしにされていた海岸猫がいた。


大きさからして、あの白骨は仔猫ではなく成猫のものだった。
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小屋が火事に見舞われた去年の夏に成猫だったのは、リンを除くとユイ、黒猫、茶トラになるのだが‥‥。


「リン、ほかの子はどうした。それに、火事で焼死したのは誰なんだ?」
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しかし、リンは口を閉ざして何も語ってくれない。思い出したくもない惨事だから緘黙を通しているのか‥‥?。


2日前に初めて顔を合わせたキジ白が姿を現さないのも気になっていた。
あのキジ白はリンやランの児孫ではなく、たまたまこのエリアを訪れたよそ者だったのだろうか。

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それまで毛繕いしていたリンが突然その動きを止め、防砂林の奥を凝視したまま身じろぎしなくなった。
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猫が何者かの気配を感じ取ったときに見せる仕草である。ただし、猫の視力は存外悪く、0.3程度である。


その代わり聴覚が優れ、なかんずく高音域の聞き分けは、犬の2倍、ニンゲンの4倍、と言われるほど抜きん出ている。
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そこで私もリンに倣い、防砂林の奥へ自分の持てる聴力を集中させた。


すると‥‥、防砂林の中から猫の鳴き声が聞こえてきた。
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それも「ニャア‥、ニャア‥、ニャア‥」と甘ったれた声が断続的に聞こえてきたのだ。
「先日のキジ白か‥‥?」



ところが、私が注視していた場所から少し左側の防砂林から顔を出したのはキジトラだった。
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先日のキジ白同様、私にとって初見の海岸猫である。


全身を現したキジトラは、リンのふたまわり程大きく骨太な体躯をしたオスだった。
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被毛の色といい、尻尾の形状といい、この子は間違いなくリンの児孫だと思われる。


そのキジトラの為に、新たにトレイに猫缶を盛ったが、リンが先んじた。
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キジトラは、というと、私を警戒して樹木の陰に隠れてしまい、そこからリンが猫缶を食べる様子を羨ましそうな面持ちで凝視している。


と、今度は私の目の前を素早く横切って、植込みの中へ移動した。
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リンがトレイから離れ去り、ややあってキジトラが慎重な足取りで近づいてきたが、トレイの中には欠片しか残っていない。


と、そのとき、キジトラと目が合った私は息をのんだ。キジトラの左の眼球が白濁していたからだ。
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よく見ると、瞳孔の奥にある水晶体ではなく、手前の角膜が濁っているようだ。だとすると、ケガやウイスル感染などによる角膜炎の可能性がたかい。


私はもう一つ猫缶入りのトレイを用意し、キジトラが逃げないよう注意を払いながら、少し離れたところにそっと置いた。
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ところが、キジトラは僅かしか残っていない猫缶を食べるのに没頭して、なかなか気づかない。


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巨漢ゆえに、食べる量も多いはず。このキジトラを賄うボランティアの人の苦労がうかがえる。


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この場を立ち去ろうとした段になって、キジトラはよくやく猫缶の入ったトレイに気づいた。


用心深い性格のようで、トレイに慎重に近づいていった。が、中身を確かめると一転、ガツガツ猫缶を食べはじめた。
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「ところで、お前の左眼はちゃんと見えているのか?」
会ってからの一連の行動を見ていた私には、キジトラの視覚に支障があるようには感じられなかったのだが‥‥。



このキジトラ、リンの子だろうが孫だろうが、まだ1歳に達していないことになる。なのにこの図体の大きさはどうだ‥‥。
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リンの小柄な体からすると、父親が巨体の持ち主だと思われるが、そんな巨漢の海岸猫はにわかに私の脳裏に浮かんでこない。


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キジトラは今日会って以降、私のことを終始気にしている。
おそらく、彼なりに「このニンゲンは何者で、ボクらの敵か味方か、どっちなんだ!?」と推し量っていたに違いない。



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そして、キジトラは最後に私を一瞥すると、植込みの中へ姿を消した。


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トレイには猫缶を半分程度と一握りのカリカリをよそったのだが、なんとも微妙な残しかたをしていた。


辺りを見回したが、リンの姿も既になかった。
ねぐらだったテント小屋が火災で消失したが、その後決まったねぐらは確保出来たのだろうか?

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結局、この日会えたのはリンと巨漢のキジトラだけだった。


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私の推測通りなら、リンエリアには10匹以上の海岸猫が生活していた。

なのに2度の訪問で、確認できたのは3匹だけ。野ざらしにされていた子を加えても4匹だ。


これが実際の数だとすれば、激減と表現してもいい減りかたである。

彼らの庇護者だった防砂林に住まう人が居なくなったのが大きな要因だと思うが、果たしてそれだけで説明がつくのだろうか‥‥。


ランエリアへ寄ると、前回と同じようにランはすぐに姿を現してくれた。
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しかし、今日もアスカは姿を見せない。
私としてはまだ認めたくはないが、アスカが海岸から居なくなった事実が現実味をおびてきた。



ランの表情も、やはり以前より物悲しく感じる。
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私の体験だと、海岸猫の8割ほどが、アスカと同じようにある日突然行方知れずになる。
こういう事例があると、優しい人に保護されて幸せに暮らしている、と無理矢理にでも思い込むようにしている。



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たった2度海岸を訪れただけで、私の心は鉛を呑み込んだような暗然たる思いに沈んでしまった。

病を得た私の心がこれからも海岸猫との交誼を続けることに耐えられるのか‥‥。

そして、そのことを追確認するブログ制作を続けられるのか‥‥。

正直に言うと、私のその答を見付けられずに、心が大きく揺らいでいる。



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