現場

2014年06月27日 14:00

私にはどうしても気になっていることがある。

いや、正確には遣り残したことがある、というべきだ。

前回は道具を持っていなかったので、やむなく断念したのだ。


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リンとランが生まれ育ったエリア。
そして去年の8月、放火による火事に見舞われた場所へと私は再び赴いた。

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前回はよく見なかったが、改めて観察すると、火事の爪痕が至るところに残っていた。
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松の樹皮が真っ黒に焼け焦げている。


どれほどの火力を以ってすれば、このような状態になるのか、私には分からない。
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焼け出された “防砂林に住まう人” たちの生活品は、もはや元の形を推測することも出来ないほどだ。
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なかには辛うじて原型を留めているものモノもある。
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少し離れたところに火難から逃れたスニーカーが転がっていたが、却ってこの場に相応しくない異物に見える。


そして‥‥、先日発見したときと同じ場所にソレはそのまま残されていた。
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野ざらしにされて散乱した動物の白骨だ。が、この骨が猫のモノだとは決まっていない、まだ。


なんとなれば、防砂林には狸やハクビシンやアライグマなども生息しているからだ。
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もし猫の骨なら成猫のモノだろうが、一体分にしては数が少ない。


取り敢えず白骨が見えている場所を中心に松葉を掻き分けて収骨することにした。
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そして、発見した骨をティッシュの上に並べていった。
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部位が分かるのは、脚の骨が3本、肩甲骨が一対、分離した脊椎類、肋骨が数本、頭蓋骨の一部‥‥。松葉に隠れていた骨もあり、思ったより数は多かったが、それでもやはり一体分には足りていない。


その中に白骨の正体を決定づけるモノが混じっていた。猫を飼っている人なら見慣れたカタチのそれは‥‥。
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“爪” だ。最初の印象通り、この白骨はやはり猫のモノだった。
この爪を見ていると、私はついつい思いを巡らせてしまう。「最期を迎えるとき、この爪で何を掴みたかったのだろう‥‥?」と。



(念のためネットで前述の各小動物の骨格を調べてみた)
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(その結果、顎の骨、いわゆる下顎骨が猫のそれと一致した)


写真では分かり難いが、犬歯の先は摩耗して丸みを帯びている。
(犬歯:人でいう糸切り歯、猫の場合も犬歯と呼ぶ)
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それにどんな意味があるかというと、ある程度の年齢を経た猫の可能性が高いということだ。


火事の現場から少し離れた松の根元に埋葬用の穴を掘った。
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この為にスコップを用意してきたのだ。


と、そのときである。先日会ったキジ白が、防砂林の奥から突然姿を現した。
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私との距離は7~8メートル、しかし今回は逃げる気配を見せない。


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「お前も、火事の現場を検証するつもりなのか?」


が、キジ白にそんな気はさらさらなかったようだ。
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キジ白はいきなり焼け焦げた松の木に跳び乗った。
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そして、そのままするすると松の木を登っていく。猫は安全な高いところが好きで、木登りの技量も長けている。


しかし、登るのは得意でも降りるのは苦手で、高い木から降りられなくなった猫の映像がときおりテレビなどで報道される。
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ただそういう事例は、外敵から逃れるために垂直の木を無我夢中で登った結果が多く、キジ白はその辺のことを考慮し、降りやすい曲がりくねった木を選んだと思われる。


ビルの3階程の高みから辺りを見回すキジ白。自分の縄張りの様子を窺っているのか、それとも居なくなった家族の安否を確かめようとしているのか。
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何を見ていたのか分からないし、目的を達することが出来たのかも分からないが、キジ白は樹上で器用に踵を返すと、慎重な足取りで降りてきた。


松の木のでこぼこした樹皮は手掛かりもあり、降りるのも容易いだろう。
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それまで私の存在など無視していたキジ白だが、ここで初めて私と目を合わせた。


ニンゲンにはこの降り方は出来ない。しかし猫とてこの態勢では自慢の爪も役に立つまい。
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案の定、途中で耐えきれずにキジ白はジャンプした。


体操競技で言うところの減点なしの着地をしたキジ白は、私を一瞥した。「ドヤ顔か?」
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「なんの為に掘られた穴なのか、お前に分かるか?」
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「それは仲間を埋める穴だ。同じ血を分けたお前の眷族かもしれない白骨を埋葬する穴なんだよ」


この子はこの防砂林で生まれ育った。リンの子か孫にあたると思われ、もうすぐ1歳を迎える。
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野良猫の寿命は4~6歳と飼い猫に比してはるかに短い。この海岸猫があと何年生きられるか、それはほんにんの生命力と運の善し悪しで決まる。


それにしても‥‥。
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このキジ白、さっきから木に登ったり、私から付かず離れず周りをうろついて、如何にも無聊そうだが‥‥。


もしかしたら、キジ白はそれとなく私に訴えているのかもしれない。
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どうにも落ち着かないので、私は埋葬を後回しにして、この海岸猫の要望に応えることにした。


このエリアにもエサ場が存在する。主食用の食器が二つ、飲料水用の食器が一つ、とエサ場としての最低限のモノは揃っている。
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そばに発泡スチロール製の猫ハウスもあるが、しかしこの状態では使えないだろう。


私の後を追ってきたキジ白は、植込みの中から私の行動を窺っている。
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初めからここにいたのか、近くの植込みにキジトラの姿も見える。


そのふたりの為にわざわざ食器を分けて猫缶を盛ったのに、なぜか同じ食器に窮屈そうに鼻先を突っこむキジトラとキジ白。
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ひとつの食器で食事をすることが習い性となっているのかもしれない。


キジトラが隣りの食器に一瞥を投げたが‥‥、
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すぐに元の食器に視線をもどし、キジ白と頭をくっつけ合って食事をつづける。


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一皿目の猫缶が殆んどなくなっても、キジトラは執拗に欠片を貪っている。先に食べ終えたキジ白はすぐに二皿目にいかず、あらぬ方向を見ている。


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ややあって、キジ白はゆっくりと隣りの皿に近づいていった。


すると、すぐにキジトラも同じ皿に移って、さっきと同じようにふたり仲良く猫缶を食べはじめた。
「キジ白はキジトラが食べ終えるのを待っていたのか!?」

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一連の行動をみて私は確信した。このふたりは同じ母猫の乳を飲んだ兄弟だと。


ただし、ニンゲンもそうだが、兄弟でも持って生まれた性格は違っているようだ。
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キジトラが脇目もふらず猫缶を食べているあいだも、キジ白は周りへの警戒をおこたらない。


「それにしても、リンはどうしたんだ?」
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いつもなら真っ先に駆けつけてくるリンが姿を見せないことに、私は一抹の不安を感じていた。


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私がリンの姿を求めて辺りに視線を巡らせているあいだに、キジ白は姿を消していた。
キジトラは相変わらず一心不乱に猫缶を貪るように食べている。



と、そのキジトラが食べるのを中断し、ついと後ろを振りかえった。
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その視線の先には、澄ました面持ちで端座しているキジ白がいた。
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私との距離はずいぶん近づいたが、見返す目はまだ警戒を解いていない、と雄弁に語っている。


「野良猫として一日でも長生きしたければ、その姿勢を変えないことだ。一度や二度、食事を与えてくれたニンゲンを安易に信用していたら生き残れないぞ」
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だから、食べ物に対して貪欲なこのキジトラのことが気掛かりなのだ。


私は元の防砂林の奥へ戻り、拾い集めた白骨を埋葬することにした。
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ティッシュにくるんだまま、猫の遺骨を穴の底へそっと収めた。


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「君も分かったと思うけど、もし生まれ変わってくるなら、野良猫だけは止めておくんだよ」
私は掌を合わせ、衷心からそう祈った。



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そして、私がエリアを離れようとしたときだった‥‥。


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鳴き声を上げながらリンが駆け寄ってきたのは。


「リン、お前どこへ行ってたんだ?何度も呼んだんだぞ」
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リンは私の脚に、繰り返し繰り返し身体をすり付けてきた。
「分かった、分かった、リンお前も腹が減ってるのか?」



リンの為に新たに猫缶を開けると、キジトラが物欲しそうな様子で近づいてきた。
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そして、多少遠慮がちに猫缶に口を付けた。そんな不躾な振る舞いをされてもリンは鷹揚に構えている。


やはり血を分けた家族だから寛容できるのだろう。
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こういう光景は見ているだけで微笑ましい。家族の縁が薄い私には羨ましくもある


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「お前も家族と離れず、いつまでも仲良く暮らすんだよ」


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リンがエリアを離れて何をしていたのか。

私はその場面を後日において目撃することになる。

それがために、自分が憂鬱と懊悩の淵に沈んでいくとも知らず‥‥。



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コメント

  1. マコ | URL | -

    wabiさん、いつもありがとうございます。

    身寄りの無い猫ちゃんを、埋葬して下さってありがとうございました。
    合掌しました。
    「今度生まれ変わって来る時は、野良猫だけは選ばずに・・・」の祈りです。

    食事を一緒に食べている姿を見て、
    同じ親から生まれた事で、一人ぽっちでない事に、少しだけ安堵しますが・・。
    悩みは尽きないですね。

    リンちゃんに何があったのでしょうか?
    野良猫ちゃん達には、悲しみや、苦しみしかないように感じます。
    寂しさは、当たり前と受け取っているのでしょうか?

    そしてそれを見守る人間も同じく。

    wabiさん、お身体大切にして下さいね。

  2. カノッチ | URL | -

    こんな猫たちの世界があるのですね。次回へと続く話が気になっております。

  3. imagica | URL | -

    wabiさんおはようございます

    焼死した猫ちゃん、哀れです。でも年を経た成猫なら,アスカではないと分かり少しほっとしました。

  4. wabi | URL | -

    マコさんへ

    同じ猫として生まれても、その境遇によって寿命さえ違ってくる。

    これは何も猫に限らず、ニンゲンにもいえることです。
    国、地域、出自の違いでその人の人生が決定されるなんて、
    やはり理不尽なことだと思います。

    でもニンゲンは己の奮励によって苦境を乗り越えることが出来ますが、
    猫にはその機会も与えられていません。
    野良猫にはニンゲンの助けが必要なのです。

    私へのお気遣いありがとうございます。

  5. wabi | URL | -

    カノッチさんへ

    一部のエリアを除いて周りに人家のない防砂林が住処であること、
    ボランティアの与えてくれる食事だけが生きる糧であることなど
    海岸猫たちは特殊な環境で暮らしています。
    ブログを通して彼らことを伝えていきますので、
    これからも宜しくお願い致します。

  6. wabi | URL | -

    imagicaさんへ

    白骨になった海岸猫が誰だったのか、私にも分かりません。
    でも仰るようにアスカでないことは確かです。
    アスカは今年になってから姿を消したようです。

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