三度目の提言 (前編)

2014年10月15日 16:00

ここ2、3年で海岸猫の数は激減した。

がために機能しなくなったエサ場もあるが、それでも海岸にはいくつかのエサ場が現存している。

私はそれらのエリアも訪れて海岸猫を撮影しているのだが、記事にしていない写真のデータが溜まる一方だ。

なんとなれば、病のせいかそれとも薬の副作用のせいか、集中力が持続せず、その結果更新が大幅に遅延しているからである。

それに加えて、いきおいもっとも気掛かりな海岸猫の記事を優先してしまうからだ。

と、いうことで今回もリンの物語を綴ることにする。



湘南海岸、夕刻。
この日の海は白波を立てて、大きな波音を響かせている。

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エリアに到着すると、すぐにリンが姿を現して私を迎えてくれた。
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リンは鳴き声ひとつ上げずに、ゆっくりと近づいていくる。


そして、私の脚に身体を擦りつけて歓待の意思をあらわす。
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こういう落ち着いた態度のときは、穏やかな日々を過ごしていた証左だ。


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好奇心といくぶん警戒心のこもった面持ちでリンは海側を見つめている。


リンの視線の先には、バーベキューに興じる若者の集団がいた。
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波音と競いあうように、大きな笑い声と喚声をあげる若者たち。


かまびすしい声を発するニンゲンは、猫にとって忌避すべき存在なのだろう。
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リンは後ろを一度も振りかえらずに、出てきたときと同じようにゆっくりとした足取りで防砂林の中へ戻っていった。


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そうして、緘黙したままエサ場の食器の脇に端座した。


散乱した食器はカラスの仕業だと推測される。
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海岸では水を替えても海風の運ぶ砂が入りこみ、すぐに濁ってしまう。


育児中のリンはより栄養を摂らねばならず、食事量が通常の2~3倍に増える。
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が、リンはよほどの空腹でもないかぎり鳴き声をあげて訴えることはない。野良とは思えないつつしみ深さだ。


飲料水用のPP製の容器を洗い、新鮮な水に替える。だが数時間もすれば、海風が元の濁り水に戻してしまうだろう。
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主食用の食器も水道の水で洗った。


その食器に持参した猫缶を盛ると、リンはおもむろに食べはじめる。
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飢えている様子を微塵も感じさせない食べ方だ。おそらく午前中に『 父親 』から十分な食事を与えられたのだろう。


「ところでリン、タクローはどうしたんだ。いつもなら猫缶の匂いを嗅ぎつけて姿を見せるはずなのに‥‥」
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しかし食事中ということもあり、リンは何も答えてくれない。


食事を終えたリンは、そそくさとエサ場を離れて歩きはじめた。
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「リンは4匹の子供が待つあの場所へ行くつもりだ」私はそう直感した。


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腹を空かせた子供たちのために急いでいるのだろう、リンは最短距離を選んで歩を進めている。


ところが私の脇を通り過ぎたときだった。
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リンはいきなり立ちどまると、防砂林の奥を凝視しはじめた。なにかの気配を感じ取ったのか?


しばらくすると、リンは再びためらいのない足取りで歩みはじめた。
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再び歩みを止めたリンは鉄骨の陰に身を隠して、今自分が歩いてきた方向を険しい目付きで見つめる。
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仔猫の居場所を知らせたくないリンは、私以外の追跡者がいないか確認しているのだろう。


「そうだ、用心するに如くはない。ここ(防砂林)には様々な外敵が潜んでいるんだから」
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リンはみたび立ち止まると、コンクリの土台に乗り、少しでも高いところから防砂林の様子を見ようとしている。
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と、いっても猫の視力は存外悪くて、かなりの近視である。その代わりに聴力が優れているから気になる物音を聴きとったのかもしれない。


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やがてリンはエリアから出て、防砂林を仕切るように設けられた道路を横切っていく。
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リンは、以前の経路を正確にトレースしている。我が子が待つ、灌木の中のねぐらへ向かっているのは、もはや疑いようがない。


と、そのときだった。
甲高い猫の鳴き声が聞こえてきたのは。



私は急いで周囲に視線を巡らせる。


やがて防砂林の中から一匹の海岸猫が姿を現した。


声の主はタクローだった。
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「今までどこに潜んでいたんだ?」
さっきリンが盛んに防砂林の奥を気にしていたのは、タクローの存在にあったのかもしれない。



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私にガンを飛ばしながら、タクローはなおも声を上げつづける。


突然歩度を速めて私を迂回していくタクロー。どこまでも用心深いヤツだ。
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そしてタクローは母であるリンに近づくと、鼻先を突きだした。
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猫がお互いの鼻と鼻を近づけて匂いを嗅ぎあうのは、ニンゲンでいうところの挨拶にあたり、「こんにちは」とか「元気だった」などの意味合いがある。


また、互いに敵意を持っていないという友好の意思表示でもあるのだ。
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ちなみに、ニンゲンが指先を近づけると鼻を近づけてくるのは、この習性がためである。


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タクローはあらぬ方向を見つめてひときわ大きな声を発した。
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さらにその場で円を描くように回りはじめる。この行為がいったい何を意味しているか、長年猫と付き合っている私にも理解できない。


そこで「なあ、お前の息子は何を訴えているんだ?」とリンに訊いてみた。
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しかし、リンは「子供のことなら親が何でも知っていると思ったら大間違いよ」と言っているように私をねめつけるだけだ。自らの人生を顧みて、私は納得した。


タクローはひとときもじっとしていない。
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鳴き声は発しなくなったが、せわしげに動きまわる。


空腹なときはいつもエサ場付近で待機しているタクロー。しかし、私が猫缶を開けても姿を見せなかった。
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それにさっきからの行動を見ているかぎり、私に対して何かを欲求している風でもない。


リンの行動も不可解だ。腹を空かせた子供の許へ行かないで、なぜか留まっている。
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たとえ息子であっても、幼い我が子にオス猫を近づけたくないと考えているのだろうか。母親とはそこまで徹底する生き物なのか‥‥。


動きまわるのもさすがに飽いたのだろう、タクローは灌木の陰に身をおいて私をのぞき見る。
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灌木の隙間からニンゲンの行動を観察する、私自身がこれまで何度も目撃し、ブログでも紹介してきたお馴染みの絵づらだ。


と、そのとき、巡らせた私の視界に、緊迫した様相のリンの姿が入ってきた。
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腹ばいになったリンの姿勢、これは待ち伏せ型の肉食獣である猫が獲物を狙うときにみせる。


リンの視線の先にいるのは2羽の小鳥だ。
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小鳥は雑草の中に潜んでいる虫を啄んでいるのだろう。リンと小鳥の距離はおよそ20メートルほどだ。


先ほど猫は視力が悪くかなりの近視だと述べたが、動くものを認識する能力は長けている。
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これは眼球を素早く動かす “ サッケード ” という機能が発達した猫ゆえの為せるわざだ。


だが、猫が獲物を確実にとらえられるのは1メートル以内、この見通しのいい場所でリンが小鳥に気づかれずに近づくのは不可能だし、小鳥自身がその距離まで寄ってくることもないだろう。
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それでも肉食獣の本能がそうさせるのか、リンは身じろぎしないで小鳥の動きに神経を集中している。


このあと、私は先日会った『 父親 』のひとりと再会を果たすことになる。
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『 父親 』と会う機会を待ち望んでいた私は、リンのことで相談を持ちかけた。

この話し合いで、私は意外な事実を知らされる‥‥。


〈次回へつづく〉



* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

【報告】


『あの子は今‥‥』


さて、幾人かの読者の方から、その後の様子が知りたいと要望があった『 実家に現れたキジトラ 』の近況を報告しよう。

気紛れな猫だからか、叔母の話だと、ときには1週間も姿を見せないことがあるという。

が、キジトラは定期的に実家にやって来ては食事をし、私が用意したねぐらで寝ていると報告を受けている。

ただ実家に住む叔母は携帯メールの送り方が分からないので、いつも電話でキジトラの様子を訊くばかりだった。

そうしたところ前回の更新のあと、従弟から「お久しぶりです」という書き出しの写メールが届いた。

そこには実家の玄関でくつろぐキジトラの姿があった。


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(10月5日撮影)


私にしても言葉で「元気にしている」と聞くより、こうして写真で確認できれば実感が湧いて、安心できる。

「また会える日を楽しみにしてるよーッ」



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コメント

  1. orenge | URL | iAn.OV3g

    ありがとうございます。

    こんにちは。
    台風の影響はあまりなかったようですね。
    安心しました。^^

    ご実家のニャンコのことお尋ねしたかったのですがお体に
    負担がかかるようなことになるといけないので遠慮していました。
    こんなに元気そうな姿を見ることが出来て本当に嬉しいです。

    WABIさんもホッとされた事でしょう。
    時々この子の事もお願いします。
    無理のない程度で。

    仔猫たちも無事でありますように。。。

  2. おこちゃん | URL | -

    wabiさん、ご実家のキジトラちゃん、久しぶりですが、我が家に居るような、顔していますね。
    タクローとの親子関係も、独り立ちする様になると、他のエリアへ行ってしまうのでしょうか?
    そう思うと、淋しさとまた、心配も出てきそうです。

    台風続きで、体調の悪い方が多いですので、お体優先にブログやって下さいネ。

  3. まさっぴいの夫 | URL | -

    こんばんは!

    wabiさんやファーザーズがお世話をされていても
    リンちゃんは野生のネコさんですね。

    今回はドラマのクライマックス直前で「また来週」と
    すかされたような気がします。
    続編を期待して待っています(*^_^*)

  4. めんまねえちゃん | URL | -

    水は、すぐに濁りがちですよね. . .
    こうやってきれいになった時の水はおいしいでしょう。

    続きも楽しみにしています。
    無理なさらぬように、お体大切になさってください。

  5. wabi | URL | -

    orengeさんへ

    実家に現れたキジトラの様子は、叔母に連絡をする度に訊いていました。
    相変わらず気ままに暮らしているようです。

    意外なことに飼い猫も含めて実家を訪ねてくるニャンコが数匹いる、と聞きました。
    だからロッカーの中にエサを置いておくと他の子が食べてしまうので、
    ときおり玄関に来ては「ボク、お腹減ったよーッ」と訴えるのだそうです。

    元気な姿を見ることができて私も嬉しかったです。

  6. wabi | URL | -

    おこちゃんさんへ

    実家に現れるキジトラ君が元気でいることは叔母から聞いて知っていましたが、
    やはり写真で見ると実感がわきます。

    リン一家に今後どんな展開が待っているのか、それは誰にも分かりません。
    おこちゃんさんが仰るように、タクローはいずれ独立し自分のテリトリーを作るでしょう。
    オスのテリトリーはメスのそれより広く、また去勢していないタクローですから
    防砂林を出ていくことも考えられます。

    お気遣い、ありがとうございます。
    この病は気圧に影響されるようで、天気の悪い日は大抵体調が悪いですね。

  7. wabi | URL | -

    まさっぴいの夫さんへ

    すべての猫たちの遺伝子には肉食獣である狩猟本能が記憶されているようで、
    家猫は仮想の獲物を想定し、空想で狩りをする、いわゆる「空想遊び」で
    いきなり部屋の中を駆けまわりますが、外猫は実際に獲物を捕らえ補食します。

    更新が滞りがちなので、せめて内容を濃くしようとしたのですが、
    それだとやたらと長くなり、閲覧する人も閉口するのではと憂慮し、
    話を前編と後編に分けることにしました。
    どうかご理解を‥‥。

  8. wabi | URL | -

    めんまねえちゃんさんへ

    外で暮らす猫にとって一番美味しい水は「雨水」のようで、
    キレイな水道水がそばにあっても敢えて濁った雨水を飲みます。
    これは水道水に含まれる塩素の匂いが気になるからでしょう。

    お気遣い、ありがとうございます。
    体調と折り合いをつけながら、更新していきます。




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