想いの行方 (中編)

2015年02月28日 18:30

受け容れてくれる相手がいなくなったコジローの想い、相手に拒まれつづけるシロベエの想い、それらの想いはいったい何処へ行くのだろう?


シシマルエリア、夕刻‥‥。
Sarea-M07-100c.jpg
コジローは目を見開き、視線を一点に集中したままじっとしている。


急変したコジローの態度を目の当たりにした私は、彼の視線の行き着く先を確かめるべく背後を振り向いた。







コジローの視線が捉えていたのは、さっき別れたばかりの新参の茶トラだった。
Sarea-M07-101d.jpg

Sarea-M07-102d.jpg

Sarea-M07-103d.jpg
茶トラは民家の庭と空地を通り抜け、別の砂利道を我々と同じ方向へ歩んで来たのだ。


茶トラが何処へ向かうのか確かめようと、私は彼との距離を縮めそのまま後を追った。
Sarea-M07-104c.jpg

Sarea-M07-105c.jpg
聴覚の優れた猫のこと、砂利道を歩く私の足音とカメラが発するシャッター音は感知しているはずなのに、茶トラは一度たりとも後ろを振り返らない。


警戒心を解いているのか、それとも私の行動を知っていながら無視しているのか、茶トラの足取りはあくまでも悠揚として、まるで散歩を楽しんでいるようだ。
Sarea-M07-106c.jpg

Sarea-M07-107c.jpg

Sarea-M07-108c.jpg
やがて茶トラは草むらの中へ姿を消した。
私は追跡を諦め、その場に佇んだまま茶トラを見送った。



無警戒の猫を追跡するのはさほど困難ではないし、茶トラの出自に関する情報が得られるかもしれない好機をなぜ自ら放擲したのか‥‥、原因は私の足許にあった。


それはコジローだ。
性懲りもせず、コジローは好奇心に駆られて茶トラと私の後を追っていたのだ。

Sarea-M07-109c.jpg

Sarea-M07-110d.jpg
あのまま私が茶トラを追行していたら、コジローもずっと付いてきただろう。


コジローを引き連れて茶トラの追跡をするとなると事情が違ってくる。
Sarea-M07-111c.jpg

Sarea-M07-112c.jpg
コジローの姿を見た時の茶トラの行動は読めないし、エリアの外にコジローを連れ出したくない。


『 好事魔多し 』とはよく言ったもので、物事がうまく運んでいるときほど何故か邪魔が入る。
Sarea-M07-113c.jpg

Sarea-M07-114c.jpg
こうして、茶トラ追跡劇はあっけなく幕を閉じた。私はコジローを促して駐車場に戻ることにした。


「コジロー、戻ろう」
私はまだ未練たらしく茶トラの消えた方を見ているコジローに言った。

Sarea-M07-115d.jpg

Sarea-M07-116d.jpg
そして来た道へカメラを振ると、ファインダーの隅にシロベエの姿が入り込んだ。


「やれやれ、シロベエまで跡をつけて来ていたのか」
Sarea-M07-117c.jpg

Sarea-M07-118c.jpg
ただ、シロベエの目的は茶トラではないことは明らかだ。言うまでもないが、私を慕っての行動でもない。


シロベエの想いはただひとつ、コジローとの交誼を深めたいだけだ。
Sarea-M07-120c.jpg

Sarea-M07-121c.jpg
ところが、そのシロベエの想いをコジローはいっかな受け容れず、いつもにべもなく拒んでいる。


不自由な後ろ脚を引きずりながら、シロベエは慎重な足取りで近づいてくる。
Sarea-M07-122c.jpg

Sarea-M07-123c.jpg
シロベエの歩みは脚の障害とは無関係にどこかぎごちなく、また表情もいつもより硬い。


やがてシロベエは立ちどまると、その場に腰を下ろしてコジローと向かい合った。その距離およそ5、6メートル。
Sarea-M07-124c.jpg
一方コジローはさっきから身じろぎしないで、シロベエの一挙一動を見つめている。


シロベエは腰を上げると、思いつめたような面持ちでゆっくりとコジローへ歩み寄ってくる。
Sarea-M07-125c.jpg

Sarea-M07-126c.jpg
いつものコジローならシロベエの接近を許さず、さっさと逃げているところだが、この時はそんな気配を微塵も感じさせない。
そして‥‥。








シロベエとコジローはついに “ 接触 ” した。
猫同士が鼻をくっつけ合う行為はいわゆる『 挨拶 』で、握手と同様相手に敵意を持っていないという意思表示でもある。

Sarea-M07-127c.jpg
しかし私のいる位置からは死角になって、実際に鼻をくっつけ合ったか確認できない。


そこで私はふたりの気を引かないように、ゆっくりと回りこんだ。
Sarea-M07-128c.jpg

Sarea-M07-129c.jpg
「ん‥‥?」私は様子がおかしいのに気が付いた。
シロベエは鼻先を突き出しているが、コジローは逆に顎をひいて鼻を下に向けている。



コジローは寸前でシロベエの鼻を回避したのだ。
竦み上がるように背中を丸め、逃げ腰のコジロー。

Sarea-M07-130c.jpg

Sarea-M07-131c.jpg
詰め寄るシロベエも執拗だが、それを拒絶するコジローも相変わらず頑なだ。


シロベエが引き下がると、コジローもその場に腰を下ろした。しかしコジローはシロベエと目を合わせようとしない。「それにしてもミョーなシチュエーションだなあ」と私は思わず呟いた。
Sarea-M07-132c.jpg

Sarea-M07-133c.jpg
シロベエはコジローに近づき再び鼻先をすり付けた。コジローは眼をつむりじっと耐えている。


が、その我慢も限界を超えたのか、コジローは身を翻すとその場から逃げ出した。
Sarea-M07-134c.jpg

Sarea-M07-135c.jpg
あれ以上の接触は “ 浜の伊達男 ” としての矜持が許さなかったのか、コジローは憤然とした表情をしている。


カラーコーンを含めて三角形の頂点に位置するコジローとシロベエ。
Sarea-M07-136e.jpg
「これもまた、ミョーな構図だなあ」と私は思った。


シロベエとしてはさっきのコジローとの挨拶で想いを遂げられたのだろうか。
Sarea-M07-137c.jpg

Sarea-M07-138c.jpg
振りかえったシロベエの表情からその答を読み取ることは出来なかった。


敗走するようなシロベエの後ろ姿に、何かを成し遂げた充足した様子も感じられない。
Sarea-M07-139c.jpg

Sarea-M07-140c.jpg

Sarea-M07-141c.jpg
やがてシロベエは倉庫の手前まで行くと、いきなり右に曲がってそのまま草むらの中へ入った。


コジローはそんなシロベエに目もくれず、地面に身体を横たえた。
Sarea-M07-142c.jpg

Sarea-M07-143c.jpg
そして、険しい目付きで前方の一点を凝視したまま身じろぎしない。


視線を巡らせると、打ち捨てられたトタン板の陰にシロベエの姿があった。
Sarea-M07-144d.jpg
「あんなところで何しているんだ、シロベエの奴?」訝った私がそう呟いた直後だった。


シロベエがトタン板の陰から跳び出して来た。
Sarea-M07-145d.jpg

Sarea-M07-159c.jpg
その瞬間、私はシロベエの目論見を看破した。


だがコジローは微睡んでいるのか黙想しているのか、シロベエの動きにまだ気付いていない。
Sarea-M07-149c.jpg

Sarea-M07-150c.jpg
もしかしたら、さっきの出来事について深く内省しているのかもしれない。


足音を消すためか、シロベエはにわかに歩度を緩めた。
Sarea-M07-161d.jpg

Sarea-M07-162c.jpg

Sarea-M07-148e.jpg
シロベエは捲土重来を期して、虎視眈々(猫視眈々と言うべきか)とコジローの隙を窺っていたのだ。


ここに至ってコジローがやっとシロベエの動きを察知し、ふたりは正対した。しばし睨み合うシロベエとコジロー。
Sarea-M07-151c.jpg

Sarea-M07-152d.jpg
シロベエは一気にコジローとの距離を縮める。それに対してコジローも及び腰ながら身構えた。


〈次回へつづく〉


ブログランキングに参加中
気に入って頂けたら下のバナーをクリックしてください
にほんブログ村 猫ブログ 野良猫へ
いつも応援ありがとうございます


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

【猫の数え方について】


ものには決まった数え方(助数詞)がある。

たとえば鉛筆は一本、二本、靴は一足、二足、電車は一輛、二輛、原子炉は一基、二基と数える。

生き物はその種類によって大別されている。

哺乳類は『 匹 』か『 頭 』、鳥類は『 羽 』、昆虫類、爬虫類、両生類、魚類などは『 匹 』を使うのが通常だ。
変わったところだとイカは生きているときは『 匹 』と呼ばれ、死んで食材になれば『 杯 』となる。
また蝶を『 頭 』、兎を『 羽 』と数えることもある。


さて、猫の場合は一匹、二匹と数えるのが普通だが、私はこの数え方に以前から抵抗があった。
私は海岸から保護した愛猫と暮らしているが、そのことを説明するのに「私は一匹の猫と暮らしている」とは言いたくない。
なんとなれば、私は “彼女” を飼育しているつもりなど毫もなく “家族” だと思っているからだ。


だから愛猫も含めて猫のことをノミやダニと同じように一匹、二匹と数えることに心理的抵抗がある。

とはいっても、ほかに相応しい数え方が見当たらないのが現実だ。
それがために、不本意ながらもブログ開設当初から『 匹 』を使用してきたのだが、最近になって『 ひとり(独り) 』、『 ふたり 』という表現を敢えて使うようにしている。


しかしこの表記が通用するのは、『 ふたり 』までだと私は考えている。
『 さんにん 』、『 よにん 』と記すと、さすがに取って付けたような不自然さで違和感が生じるからだ。


新たな猫の数え方、この悩ましい案件について快刀乱麻を断つような妙案を持っている方がいれば教示願いたい、と切実に思っている。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *




【 コメントに関して 】
◆コメントは承認制です。
◆非公開コメントも可能です。
◆コメント返しは次の更新後にさせていただきます。
◆地名などの固有名詞を記したコメントはご遠慮ください。


関連記事
スポンサーサイト


コメント

  1. ・pokopoko・ | URL | -

    wabiさんこんばんは~o(*⌒―⌒*)o
    もうおはようございますでしょうか(汗

    私を含め家族も愛猫に対して
    1人という表現を使います。
    何故か家族の中で匹という表現にしっくり
    こないからです。

    wabiさんもおっしゃってるように
    大切な家族なので
    私達はずっと1人と呼び続けてきました。

    なのでいつまでも大切な家族でしたし
    これからも変わらないと思います(=^・^=)

  2. ケン | URL | -

    wabiさん
    こんばんわ(*^_^*)

    シシマルがいなくなって淋しくなりましたが、コジローはシシマルの後継者として、リーダーとしての自覚を持っているのでしょうか?
    このエリアを守れるのは、今の所、コジローだけだと思うのです。
    やればできる男だと思うので、コジローにはがんばってほしいです。

  3. 荒野鷹虎 | URL | -

    wabiさんへ!!

    何時も人間以上の愛情劇に感動・感激の至りです。!
    コロジーは、本当にキライでこのような冷たい態度をとっているとは思えません。涙)
    コロジーの野生の王者たる矜持なのでしょうか!

  4. おこちゃん | URL | -

    こんばんはー
    あれだけ接近していたのだから シロベーを受け入れて貰いたいものです。

    数え方は 1匹は にゃんこ、2匹は にゃんにゃん、3匹より沢山は にゃんず なんて
    おふざけで 言ったりしてますが、wabiさんのブログには 合いませんね。(笑)
    どんな呼び方があるでしょうかね?

    昨日ふと思ったのですが 動物病院では 患者さんの事を
    患者さんとは呼びませんが、なんというのですかね?

    個別には 名前で呼びますけれども。😺

  5. みい | URL | x7j9YsWM

    こんばんは^^
    うちも猫に対しては『ひとり』『ふたり』ですよ♪
    それ以上の場合は『人(にん)』の代わりに『にゃん』を使って『さんにゃん・よんにゃん・・・』です(笑)

  6. あいママ | URL | -

    こんばんわ。

    お久しぶりです。
    毎回ドキドキハラハラしながら、
    読ませていただいてます(^^)

    以前動物病院で診察してもらった時、
    ある獣医さんが、「この猫は」ではなくて、「この人は」と言っていたのを思い出しました。
    この獣医さんも動物を人間と同等に接してるようで、何だか温かい気持ちになりました。

    うちの子達も、ペット…ではなくて、家族ですから私も1匹、2匹の呼び方には抵抗があり1人2人と呼んでます☆


  7. Sabimama | URL | cbwYL0zY

    私がブログ困難な日々に更新もせずにいましたが、ご訪問して頂きありがとうございました。
    この様な猫同士の外の生活は自身を強く保ち、安全に生きて欲しいと思います。
    野良として生きる厳しさを二匹で支えあえば、、、と、思いますが、
    人間の思惑通りにはいきません。
    どんなに頑張っても小さな可愛い猫です。強く生きて欲しい。
    お顔の汚れが外の生活を物語っています。
    この子らの目の鋭さが、外の厳しさを物語っています。
    汚くても、その健気さが可愛いです。
    このな子らを見守っている方がいる事がうれしいです。

  8. wabi | URL | 0MXaS1o.

    ・pokopoko・さんへ

    そうですよね、愛猫に“ 匹 ”という数え方は使いたくないですよね。
    私も実際に我が家の愛猫や海岸猫に対しては“ ひとり、ふたり ”と語りかけます。

    その後も猫の数え方を考えているのですが、多くの人に認知される助数詞は思いつきません。
    しばらくは各々の名前を使っていこうと思っています。

  9. wabi | URL | 0MXaS1o.

    ケンさんへ

    このエリアで私の呼びかけに応えてくれるのはコジローだけになりました。

    私もシシマル亡きあとは、そんなコジローにリーダーとしての自覚を持って
    ほしいと思っています。
    ただ“ 浜の伊達男 ”はシャイですから率先してその任に就くことは無さそうですね。

    それでも彼の覚醒に期待したいと思います。

  10. wabi | URL | 0MXaS1o.

    荒野鷹虎さんへ

    いつも過分なご評価をいただき恐縮しております。

    ご指摘のようにコジローはシロベエを忌み嫌っているわけではないと
    思われます。
    簡単に迎合はしませんが、このふたりが喧嘩をしているところは
    見たことがありませんから。

  11. wabi | URL | 0MXaS1o.

    おこちゃんさんへ

    コジローの本心は未だにわかりません。
    シロベエとの関係をこれからも見守っていくつもりです。。

    猫の数え方、本当に頭を悩ませています。
    今後は出来るだけ“ 匹 ”という数え方をしないよう心がけようと
    思っています。

    基本的には名前で呼ぶつもりです。

  12. wabi | URL | 0MXaS1o.

    みいさんへ

    やっぱり“ 匹 ”とは呼べませんよね。
    しかし私のブログで“ にゃん ”を使うと、取ってつけた感があり
    悩むとことです。

  13. wabi | URL | 0MXaS1o.

    あいママさんへ

    皆さんが同じ感覚を持っていると知って安心しました。
    やはり愛する家族を“ 匹 ”とは呼べませんよね。

    匹の語源は二つ一組みのことで、馬の尻が対になっているので
    多くの動物に使われるようになったそうです。
    それがあって『匹夫、匹婦』と書くと、身分の低い卑しい男女を
    表すようになるなど、蔑称にも使われるようになったのでしょう。

    ですからよけいに匹は使い難い助数詞です。

  14. wabi | URL | 0MXaS1o.

    Sabimamaさんへ

    Sabimamaさんの喪失感を想うと、やはり気になり
    ブログを訪問せずにはいられませんでした。

    小さく脆い命だからこそ大切に扱わなくてはならない、というのが私の考えです。
    それは家で暮らしているか、外で暮らしているかにかかわらずそう思います。

    私は彼らの生き方から多くのことを学びました。
    ただ生きることだけに懸命な彼らの姿勢を見るたびに生命の尊さを感じます。
    そして、他人の命や自分の命をも軽んじるニンゲンが多いことに忸怩たらざるを得ません。
    我々はもっと謙虚でなくてはなりません。
    何事に対しても、誰に対しても。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)